光と音のGPSサイコン。Wahoo「ELEMNT ROAM」レビュー。

Wahoo ELEMNT ROAM

GPSサイコンマーケットは群雄割拠の時代。
ガーミンだけでなく、ワフー、ブライトン、パイオニア、ポラール、レザイン、エクスプローヴァなどのプレイヤーがしのぎを削り、個性のあるモデルが続々と登場。ユーザーにとっては以前と比べてライドスタイルに応じたものが見つけやすくなりました。

その中で、4万円以上の高価なハイエンドクラスは「Garmin Edge820(まもなく830発売)」「Edge1030」「Xplova X5 Evo」といった魅力的なラインナップが揃っています。
そしてWahooも、この価格帯に新たなモデル「ELEMNT ROAM」を2019年5月に発表。

ハイエンド系では後発となるため、先行する他メーカーと比べてどこが優れているか。
GarminやXplovaを使ってきた1ユーザーの視点を踏まえ、Wahoo最新作の特徴を詳しく見ていきます。

※本GPSサイコンはWahoo提供のものです。

*最新モデル『ELEMNT ROAM v2』のレビューはこちら(2024年1月更新)

1. 新型“ELEMNT ROAM”

3種の“ELEMNT”各モデルの立ち位置

モデル

Wahoo Elemnt Bolt
① ELEMNT BOLT

wahoo elemnt
② ELEMNT


③ ELEMNT ROAM

発売 2017.6 2016.7 2019.7
定価 ¥32,000 ¥35,820 ¥46,000
ディスプレイ 2.2インチ モノクロ 2.7インチ モノクロ 2.7インチ カラー
重量 60g
99.2g 93.5g
操作 ボタン
ボタン ボタン
バッテリー 15時間
17時間 17時間
地図
ナビ
特徴 ・小型エアロ形状
・KICKRとの連動
・LEDナビ
・ペダリングモニター対応
・Boltより大画面
・KICKRとの連動
・LEDナビ
・ペダリングモニター対応
・頑丈なカラー大画面
・エアロ形状
・KICKRとの連動
・強化されたLEDナビ
・ペダリングモニター対応

新たに発売されたROAMを含めると、WahooのGPSサイコンは現在「①ELEMNT BOLT」「②ELEMNT(無印)」「③ELEMNT ROAM」の3つ(もうひとつの「ELEMNT mini」はGPSなし)。

従来のラインナップである①BOLTと②無印の大きな違いはサイズとバッテリー容量。③ROAMは、①をベースに大型カラー化&機能強化したモデルとなっています。

この3つを並べると、①BOLTは「軽量小型サイコン」、③ROAM「最上位高機能モデル」という立ち位置が明確。

逆に②無印のポジションはどちらにもつかず、また新しい③ROAMと比較すると、サイズ・重量が若干上回るというデメリットもあるため、ELEMNTシリーズは小型モデルを求めて①BOLTを選ぶか、高機能モデルを求めて③ROAMを選ぶかという基準で考える方がシンプルになりました。

ELEMNT ROAMの強化ポイント

ELEMNT ROAM 外観

ROAMが機能強化されている点は、以下3つの項目。

ディスプレイ

  • カラーディスプレイ化
    ・ELEMNT無印と同じ大型2.7インチ
    ・強固はGorilla Glass採用

カラー化で見やすくなっただけでなく、スマートフォンでも使われるGorilla Glass採用で頑丈に。

LED

  • 速度/パワー/心拍数のレベルをLEDで表示可能

LEDはELEMNTシリーズならではの特徴であり、それが走行パフォーマンスに関連する項目を表示できるようになったことは大きなアップデート。

ナビゲーション

  • 豊富なナビメニュー追加(自動ルート生成・ルート補正・スタート地点バック etc)

道の開拓者たちにとっては頼もしい、ナビゲーション強化。

前モデルリリースから2年を経て、ROAMはソフト・ハードの両面から順当な進化を遂げています。
ここからは、ROAMがどのような設計思想で作られているかという観点から、カタログスペックでわかりづらい部分を中心に紐解いていきます。

 

2. 光と音のインターフェイス

使っていて最も強く感じるのは、よく光り、よく音が鳴るGPSサイコンということ。それにより、ライドを妨げない範囲で視覚&聴覚から瞬時に情報がわかるようなインターフェイスになっています。

ELEMNT ROAMのLEDライト

サイコンはスクリーンに表示される数値やマップを中心に情報を得るのが一般的。
そして基本的に走行中は周囲の状況に視覚を集中させるため、スクリーンを見る時間はほんの一瞬です。

そのため、特に情報量の多いGPSサイコンでは、ハードな環境下であってもいかに短い時間で情報を理解できるスクリーンやインターフェイスに仕上げるか、という点が競合優位性を持たせるポイントのひとつでした。

そのために「大画面化」と「カラー化」が進んでいるのが現状で、ROAMも例外なく2.7インチの大画面カラー液晶を備えるように。

でもWahooが面白いのは、それだけでなく、スクリーンの周囲に配置されたLEDによって、数値以外にも「光」で情報を理解させるUIを備えているということ。

縦に光るLEDは「速度」「パワー」「心拍数」いずれかのレベルが表示され、横に光るLEDはナビゲーションや通知用に使われます。

僕は縦のLEDでパワー表示設定しており、現在どのパワーゾーンで走っているのかがひと目でわかります。ちゃんと強度が出せているのか、あるいは出しすぎていないか──出力が無機質な数字だけでなく光の変化によって感覚的にフィードバックされるので、判別が数字を認識する以上に一瞬でできるようになります(周囲に見せたくないレース中には非表示にすればOK)。

ELEMNT ROAMの音

ビープ音はよく通る音色で、停車、スマートフォン通知、右左折などの情報を知らせます。
もちろん設定で項目別に音が出ないようにできますが、音ありにした方が効率的に情報を得ることが可能。

特にナビゲーションのときは、光と合わせて曲がるタイミングがはっきりわかるので、ナビゲーションに頼りたいシチュエーションではROAMに圧倒的な優位性があります。

 

3. スマートフォン側に寄せるUI

本体の設定のほとんどは、Bluetooth接続したスマートフォンのアプリ「ELEMNT」側で行うというのがELEMNTシリーズに共通するスタイル。

アプリとの“最速”連動

ELEMNT ROAMのスマホ連携

使ってみる前は、都度アプリと本体を同期するのが面倒かと思いましたが、実際はアプリと本体の連動はタイムラグがほとんどなく、アプリの設定変更→ROAM本体への反映が1秒もかからないほどスピーディ

設定を変更したいときに都度スマートフォンを取り出す必要があるのは若干面倒ではあるものの、アプリさえあればサクサク設定できるという設計思想はシンプルでわかりやすく、「ELEMNTらしさ」でもあります。

ヘンな日本語表示には戸惑う

肝心のアプリの使い勝手については、日本語対応していて、複雑な操作学習も必要ありません。
ただ言語監修が入っていないためか、ところどころ言葉遣いが不自然

FTPの「パワー」が「電源」と表示されていたり、「編集してくだsだい(原文ママ)」と書かれていたり。

文脈を無視した直訳のせいで、ところどころラベルと機能が乖離しているところがあるため、しばらくは慣れが必要です(これはそのうち改善されるのではないかと思います)。

本体は物理ボタンによるオールドスタイル

本体は6つの物理ボタンで操作する従来ながらのスタイル。
本体側はあくまで表示を確認するのがメインなので、操作する項目はとてもシンプルです。

スタート/ストップ、表示拡大/縮小、ページ切り替えの3種くらいで、操作に戸惑うことはほぼなく、とても割り切ったインターフェイスだと感じます。

ボタンは少し固くて押しづらいのですが、MTBなどハードな場面での使用も想定されたプロダクトなので、理解して許容できる部分です。

 

4. マップ&ナビの良い点・気になる点

Take me to 目的地を設定してルートを自動生成
Get me Started ルート開始地点までのナビ
Back on Track コースを逸れたときに正しいルートまでの道のりを自動生成
Route to Start ルート走行後、スタート地点に戻るまでの最短ルートを表示
Retrace your Route ルート走行後、同じ道順でスタート地点に戻るナビ

ELEMNT ROAMのオリジナル機能(従来のものも含む)

ナビゲーション機能は従来のELEMNTシリーズと比べて大きく進化。ただ完全とは言えないため、優れた点()と気になる点()に分けていきます。

見やすいマップ&ナビゲーション

これまでのELEMNTは白黒液晶でした。モノクロの地図を読み解くことは苦難を伴い、少なくとも積極的に使いたいと思えるものではなかったことは確か。
でも今のGPSサイコンに求められているのは、間違いなく大型のカラーディスプレイであり、ROAMはもちろんその流れを汲んだモデル。

マップは幹線道路が黄色で表示されているため読みやすい。
ナビゲーションも、これから進むべき黒の破線がはっきり見えるし、何メートル先に左折するのかのターン情報も必要に応じて表示してくれます。

設定さえできていればあとはROAMに従うだけ、という身を任せる安心感が生まれています。

光と音のナビゲーション

ナビに対してはWahooならではのこだわりを感じます。

右左折の指示が「音」と「LED」と「ターン情報」をフルに使った十分すぎるほどのルートサポート。また間違ってルートから逸れてしまったときにも、すぐにビープ音でミスを指摘して素早くリルーティング。
あらゆる角度から、僕らがルート通りに進むように支えようとする姿勢が強く伝わってきます。

競合と比較してそこまで優位差の出るような機能ではありませんが、ROAMが全力で「こっちだよこっちだよ!」とナビしてくれる感じがして、愛着が湧くレベル

本体側によるルート自動生成(上記機能一覧①)

ルート生成機能の中に、本体側で目的地を設定して自動的にルートを生成してくれる機能がありますが、実用性に欠ける部分があります。
設定自体はすごく楽なものの、生成されるルートが最短距離を通るように引かれるため、必ず裏道をくねくねと進むことに

Garminのルート自動生成は、Garmin Connectにアップロードされる何百万ものユーザーのアクティビティログを蓄積し、実際に自転車が走ったルートを優先してルーティングする仕組みを採用しています。

またXplova X5 EvoはGarminほどの自動生成精度はないものの、タッチパネルによるルート調整のしやすさで設定の煩雑さを補っています。

Wahooはそういった仕組みや機能は持ち合わせていないため、単純に最短距離をルーティングするのみ。
本来的には、ナビゲーションを重視するサイクリストにとってルート自動生成の精度向上こそ望まれること。Wahooがこれら競合の状況を受け、どう機能改修していくかは気になるところです。

とはいえ、自動生成はあくまで補助機能として捉え、基本的には自分で引いたルートを取り込んでリードしてもらう、という従来通りの使い方さえすれば、ROAMは盤石のナビをしてくれます。

 

5. “さまよう”ためのバッテリー

ROAMは“気ままにさまよう”というroamの和訳がまさに体現されたプロダクト。
優れたナビゲーション機能だけでなく、搭載されたバッテリー(カタログ値 17時間)も頼もしい容量でした。

早朝から夕方まで終日走るとき、これまでは帰宅間際でバッテリーアラートが出ていたため、ライド記録が途中で終了するかもしれないジリジリした緊張感がありましたが、ROAMにとってそれくらいは余裕過ぎる時間。
終日ライドでも40-50%ほどバッテリーが残るので、消耗しきった後半戦でのストレスをひとつ抑えることができます。

どんなに帰りが予定より延びても、ナビと落ちないバッテリーでさまよい続けることをやめさせてくれません。素敵。

 

6. ROAMがもたらす価値

ELEMNT ROAM 外観

最後に一旦正直になると、GPSサイコンで見る数値は「パワー」「獲得標高」「TSS」など決まったものなので、どのモデルを選んだとしても走りに影響する要素はそれほど大きくはないというのが事実。

あくまで「補助的な機能でどれだけストレスを軽減し、効率化してくれるか」という観点で選ぶものだと思っています。

そういった視点で主要なハイエンドGPSサイコンの特徴をそれぞれ比較するのであれば、Garmin Edgeは「多機能」、Xplova X5は「操作性」、そしてELEMNT ROAMは「わかりやすさ」が最も突出しています。

ELEMNT ROAM 外観

LEDや音によるアラート、そして表示サイズの拡大・縮小が用意にできるUIなどで、走行中に情報を素早く手に入れるられることがROAMの最も優れた部分です。

つまりROAMは、走行情報を効率的に取得したいロングライダーに最適なGPSサイコンとしてハイエンドモデルのラインナップに加わったものだと理解。
見知らぬ土地を走る終日ライドに必要な相棒として欠かせない機材に仕上がっています。

Highs

  • ・LEDによる情報取得
    ・スムーズなスマホ連携
    ・長持ちバッテリー
    ・KICKRとのルート連動
    ・Pioneerペダリングモニター対応

Lows

  • ・本体だけで設定が完結しない
    ・バックライトがあまり明るくない

ELEMNT ROAMを購入する

Wahoo ELEMNT ROAM外観

Amazon公式サイト

 

Appendix. マウントについて

ELEMNT ROAM マウント

Wahooのサイコンマウントは、他メーカーと互換性のないオリジナル形状です。

ELEMNT ROAM マウントアダプター

もしGarminマウントをそのまま使いたい場合は、別売りのマウントアダプター(¥1,999)を使用すればOK。
僕もこのアダプターを使って、これまで使用してきたGarminマウントにROAMを取り付けています。

ELEMNT ROAMエアロ形状

ちなみに付属するマウントは、本体を取り付けることでエアロ形状になるような斬新なつくりで格好良いんです(残念ながらエアロハンドルには取り付け不可)。

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