
自転車の楽しみ方が広がる昨今。メンバー、スタイリング、目的、時代性など、違った要素が組み合わさることで、ライドは毎回全く異なるセッションになる。
Snap Journal(スナップジャーナル)では、そのときどきの自転車スタイルを残すように、ライドの空気感を感じられるスナップ写真を掲載していく。
今回は大阪に新しくオープンしたショップ『.Canvas(ポイントキャンバス)』へ。2日間にわたってトーク&ライドのコラボイベントを開催してきた。
text & photo / Tats(@tats_lovecyclist)
.Canvas – ポイントキャンバス

.Canvasは5月に大阪・池田市でオープンした、自転車とカフェが融合した場所。
2フロアあって、カフェスペース、メカニックスペース、展示・販売スペース(兼イベントスペース)に分かれている。

自転車とカフェは利用する側にとっては便利なものの、お店として成立させようとすると、異文化の部分が多くて難しいだろうなと思う。カフェなのか自転車ショップなのか、どちらかに偏ると、一方がノイズになってしまうことがある。
でも.Canvasにはその違和感がない。「自転車のあるカフェ」でも「カフェのある自転車店」でもなく、ふたつのレイヤーが明確にありながら、同じ空気で繋がっている。

そう感じられるのは、カフェスペースとメカニックスペースがガラスで仕切られ、トリミングサロンのように整備の様子が見えるつくりになっていることが大きい。このレイヤー構造による見せ方が、“自転車とカフェの融合”を見事に表している。

ガラス越しに整備の様子が見られる(作業をガラス越しに見られるのはまだ緊張するらしい笑)

フードもコーヒーも本当に美味しかった
仕切りがちゃんとあるので、カフェには自転車ショップにありがちな油臭さが一切ない。
それどころか、カフェメニューのクオリティは専門店レベルで、手づくり感に頼らず、セレクトされた味として完成している。

何より心地良く感じるのは、スタッフ3人の一体感。オーナー、メカニック、バリスタ、それぞれが役割を持ちつつ、“未来を向いてお店をつくっている”ことが滲み出ている。その空間に一緒にいるだけでもわくわくする。


展示されているプロダクトはCannondale 、Allied、BlackHeart、Pas Normal Studiosなど世界観を持ったブランドセレクト。単なるカフェ併設の自転車屋ではなく、「スタイルの交差点として成立している空間」と呼ぶのが相応しい。
Day1. トークセッション

.Canvasオープン直後に、コラボイベントを2日間開催させてもらった。初日はトークイベント。
「僕らが想い描くコミュニティと自転車ショップのあり方」というテーマで、.Canvasを立ち上げたRokutoとTateguのふたりに、どういう想いでこの場所を選び、どんなショップをつくっていきたいのかを聞いた。

オーナーであるRokutoは、1年ほど前から東京で自転車に関連するビジネスの立ち上げを考えていた。当初はまったく別の事業を考えていたが、いくつもの縁とタイミングが重なり、東京から実家のある大阪に戻って、池田市にお店を開くことになった。
.Canvasのコンセプトは、Rokutoの自転車スタイルがほどよく投影されている。実家がシマノ本社から近かったこともあり、幼い頃から自転車遊びが身近にあった一方で、その情熱が競技に向かうことはなかった。
東京でラブサイメンバーに知り合ってからも、レースに出ることはなく、人とのつながりを楽しむ自転車の遊び方を心地よく感じていた(にも関わらずむちゃくちゃ脚はあるのが個人的には謎。才能か)。

店名の「.Canvas(ポイントキャンバス)」には、お店として完成された世界を提示するのではなく、お客さんと一緒に自転車の楽しみを描いていきたいという想いが込められている。「.(ポイント)」はお客さんひとりひとりを表す

メカニックのTateguは、お客さんの課題を根本から解決し、長く自転車を楽しんでもらうことが自転車ショップの役割だと考えている。走り方に合ったギア選びから、自転車を正しく維持して、走ることをずっと楽しんでもらえるように長期的な関係性を築いていくのは、量販店とは違ったアプローチになる。そしてTateguの親身な人柄がそれを実現している(個人的にもメカニックとしてのTateguさんにはここ1年とてもお世話になっている)。

.Canvas設立にあたって、知り合って1年も経っていないRokutoに一緒にお店をやらないか誘われたとき、「本当に信頼していいのか、最初は正直わからなかった」と語っていた。しかし、さまざまな人とのやりとりをともに重ねるうちに、Rokutoの誠実さと、会った人みなに好かれる人柄に信頼を置くようになった。

参加いただいたみなさんと一緒に
こうした経緯を経てかたちになった.Canvasの今後について、オフラインだからこそ言えるような内容も話してもらった1時間半。これからの自転車ショップの理想的なあり方を感じ、そしてどんな絵をお客さんたちと描いていくのかをずっと見ていきたいと思える、未来志向の話を聞くことができた。
Day2. フォトライドセッション

2日目はお客さんと一緒に、ショップ起点で走るフォトライド。勝尾寺を経由して多留見峠を登り、ハイスピードで下って帰る40km/800m↑のショートコース(トレーニングにはすごく効率良い)。

希望者はAURUM試乗車を借りて走ることもできる。今回は参加者13名のうち、3名がAURUM。



参加いただいた方々のスタイルがみな素敵。ドレスコードは“チームジャージ以外ならOK”という指定だけだけれど、ショップの雰囲気から参加者もこういうスタイルが合うだろうと考えて来てくれている(ラブサイ読者の方もたくさんいて嬉しかった)。


普段撮影するときは、ライドしながらあまり脚を止めずに撮るのだけど、13人参加いただいたので、全員分しっかり撮るために、峠の途中で休憩しながら撮影する時間を取った。みなカメラを意識せず走ってくれて、とても格好良い。


ライド後は、ショップでご飯タイム。参加者同士で交流してもっと仲良くなっていく。
こうしてライドだけじゃなく、社会的なつながりを形成する場所がショップの中にあるのってとても貴重だなと思う(東京にあったら毎週のように通っているだろうな)。

イベント終了後も、ショップの様子を見ていると、ふらっと立ち寄って見てほしいというお客さんが何人も来ていた。気軽に行きやすい雰囲気と、待っている間にコーヒーやスイーツを楽しめる空間。
また大阪にいく頻度が増えそうだし、お店の今後の展開も楽しみで仕方がない。

個人的には今乗っているStandertを組んでくれたメカニックのTateguさんがいるし、ラブサイメンバーとしても付き合いの長いRokutoさんのお店だし、ずっと応援したい。

とても居心地の良い、国内で無二とも言える場所なので、大阪以外の方もぜひふらっと遊びに行ってみてほしい。

.Canvas(ポイントキャンバス)
大阪府池田市栄本町9-2-A(Googleマップ)
営業時間 bike 10:00-19:00 / cafe 7:30-16:00
定休日 火・水曜日
.Canvas公式サイト
.Canvas公式Instagram
著者情報
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Tats Shimizu(@tats_lovecyclist) 編集長&フォトグラファー。スポーツバイク歴11年。ロードバイクを中心としたスポーツバイク業界を、マーケティング視点を絡めながら紐解くことを好む。同時に海外ブランドと幅広い交友関係を持ち、メディアを通じてさまざまなスタイルの提案を行っている。メインバイクはStandert(ロード)とFactor(グラベル)。 |
text & photo / Tats(@tats_lovecyclist)
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