【ツール・ド・フランス】リム内幅が25mm→23mmへ回帰。レースと一般ライダーに乖離が生じる問題。

いつもUCIルールに一般サイクリストは振り回される

EnveやZippといった主要ホイールブランドで、ロードレース用ホイールのリム内幅を25mmから23mmへと縮小させるトレンドが進行している。これまで業界を席巻してきた「30c以上の太いタイヤの方が転がり抵抗が低く速い」という定説から逆行するようなこの現象がなぜ起きているのか?

きっかけは2024年のUAEツアーで発生したフックレスリムでのクラッシュ事故だ。Zipp 353 NSW(リム内幅25mm)からタイヤが完全に外れ、シーラントが飛び散る劇的な画像が拡散された。しかもホイールがフックレスだったため、その設計が原因だとする記事が即座に書かれた。当事者側はいずれも「岩に当たった」と説明し、数日後にもその事実が写真で裏付けられたものの、フックレスの悪印象は覆らなかった。

これを受けてUCIがルールの順守を厳格化し、「25mm内幅のリムには、ISO/ETRTO規格に基づき最低29mm幅のタイヤを装着すること」が事実上義務付けられた。この規定はフックレス/フックドの区別なく適用される。
つまり、これまでプロが好んでいた「25mm内幅リムに28cタイヤを合わせる」という軽量&空力に優れたセッティングがルール上不可能になった。

そのためグランツールの現地データを見ると、ポガチャルなどのエース級選手は、重量増と空気抵抗を嫌って28cタイヤへと明確に回帰している。Enveがポガチャルのためにリム内幅23.5mmのSES 4.5 Proを供給したのは、UCIルールをクリアしつつ、28cタイヤでの空力と軽量化を両立させるためだ。
現在プロレースにおける総合的な最適解は28cタイヤに落ち着いていて、それに合わせてメーカー側も23mm内幅リムへと戻し始めている。

ここで問題となるのは、ワールドツアーを走らない一般のサイクリストへの影響だ。25mm内幅リムに30c以上のタイヤを装着したときのエアボリューム増加による恩恵(転がり抵抗の低減、疲労軽減、乗り心地の圧倒的な向上)は大きく、空力的なデメリットを実用上のメリットが上回ることが多い。

ロードバイク機材はプロの仕様が一般ライダーに下りてくる構造なので、このまま行くとレース機材としては25mm内幅のホイールが市場から姿を消す可能性もある。こうしてプロ機材と一般ユーザーのニーズがさらに乖離していく可能性があるが、中国メーカーからは25mmリムのラインナップが数多く登場しているのが現状だ。となると、一般サイクリスト向けの25mmは中国系のホイールに代替され、23mmの最新レース機材は欧米ブランドが担っていくという方向性も考えられ、今ちょうどリム内幅はトレンドの分岐点にあると言える。

*参考:Wheel Brands Are Quietly Shrinking Their Rims for the Tour. That’s Bad for Regular Cyclists. (Velo)