
今もなお無法地帯
EU(欧州委員会)が、中国の大手ECプラットフォーム「AliExpress」に対し、デジタルサービス法違反として、過去最高額となる5億5,000万ユーロ(約900億円)の罰金を科した。
なぜ巨額の罰金が科されたか
欧州委員会が問題視したのは、AliExpressにおける安全性の軽視と、抜け穴だらけの審査体制だ。
・危険性が指摘された商品が数週間にわたり放置されていた
・出品者がカテゴリーを意図的に偽ることで安全審査を簡単に回避できていた
・アルゴリズム(おすすめ機能や広告)が違法商品の露出を助長していた
プラットフォーム上には、日用品から電子機器、そしてスポーツ用品に至るまで、数多くの模倣品が流通している。自転車業界においても、Specialized、Pinarello、Cannondale、Pas Normal Studiosといった大手ブランドのロゴを冠した出所不明のパーツやウェアが低価格で販売される状態が常態化している。
EUの意図
5億5,000万ユーロという金額は、AliExpressおよび親会社であるアリババグループにとって強烈なインパクトを持つ。
AliExpressが属するアリババの国際EC部門(AIDC)の年間売上高は約167億ユーロであり、罰金はその約3.3%に相当する。一見すると売上の一部に見えるが、薄利多売の構造上、国際EC部門の単年での利益やキャッシュフローを一気に悪化させるレベルだ。これまでのデジタルサービス法違反適用事例を見ても、Temuへの約2億ユーロ、Xへの約1億2,000万ユーロを凌ぐ過去最高の制裁金となる。
欧州委員会執行副委員長のヘナ・ヴィルクネンは「危険な製品の拡散はネット通販の不可避なコストではない。企業の規模は言い訳にならない」と語っており、欧州市場でビジネスを行うのであれば、その規模に見合った安全管理とコンプライアンスのコストを必ず払う義務があると強く警告している。
それでも使い続けるか
AliExpress側は今回の罰金を不服として控訴する姿勢を見せているが、具体的な是正計画を提出する義務を負っている。今後は出品審査の厳格化、ブランド認証の強化、悪質ショップの即時排除など、劇的なシステム見直しを迫られることになる。
現在AliExpressを利用する日本のサイクリストも少なくない。
個人のYouTuberと提携したPR施策を行うほか、大規模なサイクリングイベントにもスポンサーとして協賛するなど、国内での存在感は高まっている。
ただ模倣品のパーツやウェア類が販売されているなか、未だにその管理をおざなりにしているという事実は動かせない。これがAliExpressの姿勢であることを、消費者自身も正しく認識しておく必要がある。
*参考:Golpe a AliExpress: multa de 550 millones por falsificaciones y productos ilegales(ESMTB)
著者情報
![]() | Tats Shimizu(@tats_lovecyclist) 編集長&フォトグラファー。スポーツバイク歴12年。海外ブランドと幅広い交友関係を持ち、メディアを通じてさまざまなスタイルの提案を行っている。同時にフォトグラファーとして国内外の自転車ブランドの撮影を多数手掛ける。メインバイクはStandert(ロード)とFactor(グラベル)。 |
















