Universal Colours(ユニバーサルカラーズ)の哲学は、性別を問わない普遍的なデザインと、持続可能な製品づくりに根ざしている。こうしたコンセプトに惹かれて以前からUCを好んでいるTatsとYukariが、『Mono』と『Chroma』の2つの新しいコレクションを着こなす。
レビュアー
Yukari(@hii_road) スポーツバイク歴7年。Ridleyアンバサダー。ロンドン留学中に見た「弱虫ペダル」にはまり、帰国後すぐロードバイクを購入。ヨーロッパ18カ国をバックパックで回ってきた行動力や、仕事として携わってきたファッションへの感性を活かし、自転車に関わる活動を幅広く行っている。 |
Tats(@tats_lovecyclist) Love Cyclist編集長。スポーツバイク歴11年。ロードバイクを中心としたスポーツバイク業界を、マーケティング視点を絡めながら論じることが好き。同時に海外のアパレルブランドと幅広い交友関係を持ち、メディアを通じてさまざまなスタイルの提案を行っている。 |
Review / Yukari & Tats
Photo / Tats & Mochidome
*本レビューのウェアはGEARED提供のものです。
見た目がシンプルなだけ?
高価格帯で見た目のシンプルなアパレルは数多くあるため、『Universal Colours』もそういったブランドと同じウェアだと思うかもしれない。
でも実際にさまざまなウェアを着てみると、シンプルなギアでもブランドによってまったく異なるものを感じる。それはつくり手の思想がプロダクトに影響しているからだ。レーシングの系譜だったり、地域の特性だったり、そういう背景によって「どんなサイクリストに着てほしいか」が明確にあらわれている。
UCをずっと着続けてきて思うのは、このブランドはそういった固有の特徴から離れて非常にニュートラルであるということだ。
UCは「普遍性(Universal)」をブランド名に掲げている。
自転車アパレルがシンプルになっているのは、ひとつは、「衣服は人を着飾るのものではなく、ありのままの美しさを見せるものだ」という服そのものに対する普遍的な価値観が転換していることによる。
現状のコレクションはシンプルに2つ『Mono』と『Chroma』
素材の良さはシンプルであるほど引き立つ。ではサイクリストの美しさ(あるいは力強さ)を引き出すなら?UCのものづくりの考え方は、そこがベースにあるように感じられる。
Mono:もう一枚の皮膚を着る柔らかさ
ジャージ/Mono Women’s Short Sleeve Jersey(¥25,000)
ビブショーツ/Mono Cargo Women’s Bib Short(¥31,000)
“日常使いのプレミアム品”とUCが言うように、『Mono(モノ)』はカッティングも色も上品な仕上がり。サイクリストの肌に沿う滑らかさが視覚的にもよくわかる。
カッパー(赤褐色)はジャージではあまり見られない色だが、自然界の色彩と調和しやすく、木々の色合いや地面の色と美しくマッチする。ビブのブラックは引き締め効果があるので、ジャージの温かみとバランスが取れ、全体的にエレガントで洗練されたスタイルに仕上がっている。
Monoの生地は、薄手のイタリア製リサイクル素材。表面はツルツルしており、着用するとすべすべ。着用感はもう一枚の皮膚のよう。伸縮性が非常に高く、袖口も圧迫感がなく、着ているのを忘れるくらいの着心地。
そしてついにUCにもカーゴビブショーツが登場した。細かいメッシュのポケットは、ベースの生地に馴染んでいるため“アドベンチャー感”があまり出ていない。だから普段のライドで着るのにちょうどよい。
裾は深くシリコングリッパー付きで固定力が高い
素材はトップス同様ツルツルなリサイクルナイロン。摩擦がほとんどないのでペダリングがサドルと干渉しない。
背面にもポケットがあるので、予備のウェアなどが必要なライドにも使える
男女それぞれ専用に設計されたパッドはカバー範囲が広く、全体的に厚め。長距離のライドでも不快感が出ないようになっている。
『Mono』はシンプルさと上品さを兼ね備える。まるで第二の皮膚のようなフィット感は、いつものライドのパートナーにうってつけだ。
Chroma:耐久性とパフォーマンスを兼ねる最高峰
ジャージ/Chroma Men’s Short Sleeve Jersey(¥30,000)
ビブショーツ/Chroma Men’s Bib Short (¥42,300)
ハイパフォーマンス系の『Chroma(クローマ)』は、2023年から抜本的にアップデートされ、非常にスタイリッシュになった。
旧モデルよりも丈が8cmほど短くなり、袖が長めのラグランスリーブになった。生地は上質なフランス製ナイロンで柔らかさと耐久性を併せ持つ。実際にほかのカラーを昨年から頻繁に着ているが、ぜんぜんヘタれない。
UCらしいニュートラルな雰囲気にしようと思って、パープルのジャージに調和しやすいティールのビブを合わせ、中性的なイメージを構築した。ティールのビブは上にどんなカラーを持ってきても合わせやすい。
ジャージ実測値はXSサイズで87gと軽く(Monoは96g)、速乾性が高く、よりパフォーマンスを重視するときに良い。
ビブもアップデートされていて、腰回りのフィット感がより快適になった。素材はトップスと同じフランス製ナイロン。この生地は本当に気に入っていて、使用頻度が高いにも拘らず長持ちしていて、耐久性の高さがわかる。サスペンダータイプの肩紐は丈夫で、耐久性が高い。
パッドは股の中央部に厚みがあるけれど、それ以外は薄く、座ったときのダイレクト感はMonoよりも高いと感じる。
すっきりした切りっぱなしの裾。シリコングリッパーには「UC」の文字がデザインされている(水をかけると浮かび上がってくる)。
タイトなChromaでセットアップしたときの統一感が良い
『Chroma』はパフォーマンスを重視するだけでなく、末長くスタイリッシュに着こなしたいときに最高峰のコレクションだ。
だからこそUniversal Colours。
ここ1年の社会情勢は、海外ブランドのような輸入モノを遠い存在に追いやっている。
またライフスタイルにおいて、衣食住の“衣”のウェイトは下がっていると言われるし、自転車においてはもともと衣よりも機材が優先される世界だった。
ではなぜあえてUniversal Coloursを選ぶか?
UCと同時期に立ち上がり、似たようなコンセプトを持つブランドはいくつもある。しかし、数年経った今、その一部はマーケットから姿を消し、UCは代表的なブランドとして存続し続けている。それはUCのプロダクトが、単なる流行に終わらず、本質的な価値を提供しているからだと言える。
この時代に着るものを選ぶとき、僕たちが考えたいのは「自分がどうありたいか」、そしてそのことによって「自分が関わる世界をどう良い方向にしていけるか」ということ。このブランドが提示する普遍性と機能性の美学は、登場から4年経った今でも、まず第一の選択肢に入れたい魅力を放っている。