Text by Ryuji(@marusa8478)
空気抵抗を抑えること、汗を逃がすこと、動きをサポートすること。
──どんなサイクルウェアであっても、その役割の基本は走りに集中できるようにすることです。
特に山を登るときのように、パワーを絞り出して長時間の集中が必要なとき、何を着るかによっても少なからずパフォーマンスは変わってくるもの。
だから、ちゃんと走り込みたい日には、そんな気持ちに応えてくれるようなウェアを選びたいと思っています。
*本記事でレビューするウェアはIsadore提供のものです。
クライマーのための“映える”ウェア。
Climber’s Jersey HEHUAN 2.0(¥19,980)
ブエルタなどで活躍したヴェリトス兄弟が立ち上げたスロバキアのハイブランド“Isadore(イザドア)”は、そうして限界まで走り込むクライマーたちのためのウェアもつくっています。
ジャージの名前にある“HEHUAN”は、台湾KOMでも有名な山「武嶺」から更に未舗装路を登った先にある標高3422mの「合歓山」のこと。
クライマーズジャージは、ヴェリトス氏の武嶺での過酷なヒルクライム体験にインスピレーションを得て作られているので、強度が恐ろしく高く、気温の変化が激しいハードなコンディションにも耐えうるように設計されています。
着用サイズ:XS(身長169cm/胸囲81cm)
ヒルクライム用と言われるとなんとなく、化学繊維100%で、ほかのジャージよりも軽量な仕上がりにしているのではと思ってしまいますが、クライマージャージはメリノウール混紡生地を使用。
メリノは着心地を中心に語られることが多い素材ですが、天然素材なので気温の変化への対応力があるのも強みなんです。
ちょうど夏日にヒルクライムを含むロングライドの予定があったので、クライマーズジャージを着用。
あえて厳しい状況で走ることでウェアの本質が見えてきますが、メリノ混紡でも放熱性が十分確保されていることがわかります。
登っている最中の厳しい暑さから、山頂で休んでいるときの少し冷えた空気に触れているときまで、広い気温の変化に対応してくれる、とても機能的なジャージだと感じました。
バックポケットも、第4のポケットまで付いていて収容力は十分。
柔らかな着心地と色合い。
肌触りが柔らかくて、化繊オンリーのサイクルウェアを着た時とは違う、どちらかというと普段着に近い着心地です。
少しだけゆとりのあるシルエットは、気張り過ぎない大人なサイクリストを演出してくれる感じ。
袖から脇にかけた柄は、台湾に咲く蓮の花をモチーフにしているようです。
ほどよいオリエンタルな雰囲気がすごくスタイリッシュに感じさせてくれますね。
そしてこの、日本の空の色に溶け込むかのような青の色合い。
今の季節、抜けるような青空の下で走るときに、この青味は映えます。本当に綺麗。
ビブショーツもクライマー仕様。
Climber’s bib shorts(¥22,855)
同じClimber’sと名付けられたビブショーツ。
シルクスクリーンのロゴプリントのみのシンプルなデザインですが、大腿部と側面がギザギザに織られていて、アーティスティックな模様のように見えて格好良い。
ジャージのオリエンタルな雰囲気とセットでコーディネートを楽しむことができます。
フィット感はジャージとは少し毛色が違い、かなりタイト。(Raphaならプロチームラインに近い履き心地)
素材はポリアミドが大半を占めるので高い耐久性が期待できます。
黒でもコールドブラック素材のおかげか、日差しの強いヒルクライム状況下でも、光を吸収したような暑さは感じませんでした。
より走りに集中を求められるコンディションで活躍してくれる、プロ仕様の仕上がりです。
TMF製のパッドは中間程度の厚み。ショートディスタンスのレースから150㎞くらいまでのロングライドまで対応してくれる、バランスの良いものが選択されています。
夏色に映えよう。
丁寧なウェアづくりをするIsadoreらしく、細部へのこだわりが伝わるクライマーズキット。
特にメリノ系ジャージは、一般的に非レーサーや上級者向けと思われがちですが、抜け感のあるデザインと夏山をこなせるパフォーマンスを備えたクライマージャージは、誰でも着こなしやすく、そして一気に洗練された雰囲気を纏うことができます。
今年も暑くなりそうな夏のシーズンに、“映える”ハイパフォーマンスジャージは欠かせません。
環境に配慮するエコなジャージも登場。
Text by Tats(@tats_lovecyclist)
Alternative Cycling Jersey Wild Nothing(¥19,905)
Isadoreはまた、環境に配慮したジャージをリリースしました。それが“オルタナティブ”シリーズ。
国際的なリサイクル標準基準である“GRS認証”に準拠して、廃棄物をリサイクルした糸で編まれた生地を使って、環境負荷の少ない方法でつくられたウェアです。
リサイクル生地だからといって、機能性は通常のラインとまったく遜色なく、クライマージャージを着たRyujiと一緒に夏山を走りましたが、汗をしっかり発散してくれて、終日走ったあとも清潔感は十分。
着用サイズ:XS(身長177cm/胸囲86cm)
そして、デザインも素晴らしい。
スロバキアの地元アーティストがデザインしたグラフィックはとても楽しげで、着てみると薄いピンクの色合いが「おしゃれ」という表現がぴったりな雰囲気に。
自身がエンジンとなって走るサイクリストは(燃費は悪いけれども)もともとエコな存在で、そんなサイクリストが環境を意識したジャージを選択する、そういう素敵な提案をIsadoreがしてくれます。
オルタナティブの登場によって、ただデザインや機能性を訴えるだけでなく、こうしてサイクルウェアに新たな価値観を与えるような活動をするIsadoreのことが、更に好きになりました。