自転車用電動ポンプの歴史は比較的浅く、2017年にオーストラリアのFumpa(フンパ)が小型モデルをリリースし、その後いくつかの競合が参入するようになったことで広がりを見せている。日本でも2〜3年ほど前から電動ポンプの存在が徐々に認知されはじめ、特に扱いやすさから、『CYCPLUS(サイクプラス)』を使うユーザーが増えている。
電動ポンプは「空気入れ」というカテゴリでどのような立ち位置になるのだろうか?
現状は、電子機器であることから、信頼性という観点で疑問を持つユーザーがまだ少なくない。ここではCYCPLUSの各モデルと既存の空気入れシステムを比較しながら、そのメリットやリスクを詳しくレビューしていく。
Text & Photo / Tats(@tats_lovecyclist)[PR]
緊急時のためだけではなくなった
CYCPLUS3つのモデル。無印→Pro→Pro Maxと、命名ルールはiPhoneに倣う
電動ポンプを選ぶ理由は「楽だから」だ。でも楽なのは、ボタンを押して空気を充填できることだけではない。
CYCPLUSの電動ポンプは3モデルあるが、最新の『AS2 PRO』と『AS2 PRO MAX』は0.1bar単位で空気圧管理ができるようになった。これによって電動ポンプの使い途が大きく拡張した。
モデル | AS2 | AS2 PRO NEW | AS2 PRO MAX NEW |
本体重量 | 97g | 120g | 205g |
サイズ(mm) | 46.5x28x65 | 49x28x70 | 60x32x81 |
最大空気圧& 充填スピード |
6.9bar 180秒 |
8.3bar 120秒 |
8.3bar 75秒 |
空気圧管理 | – | ◯ | ◯ |
バッテリー (タイヤ700C25) |
300mAh 約5.5bar×2回分 |
420mAh 約7.6bar×2回分 |
600mAh 約8.3bar×4回分 |
拡張チューブ | 別売 | 付属 | 付属 |
満充電まで | 20分 | 30分 | 1時間 |
充電ポート | Type-C | Type-C | Type-C |
用途 | 出先の緊急時 | 普段使い 出先の緊急時 |
普段使い 出先の緊急時 |
自転車 | ロード | ロード グラベルロード |
ロード グラベルロード MTB |
税込価格 | ¥13,200 | ¥16,940 | ¥19,800 |
購入リンク | ワイズロード | ワイズロード | ワイズロード |
小型軽量の『AS2』は空気の充填のみに特化しているため、あくまで緊急時のためのものだが、『AS2 PRO』と『AS2 PRO MAX』は充填スピードもバッテリーもパワーアップしており、さらに液晶が付いて空気圧管理もできる。
『AS2』はボタン1つのみ。『AS2 PRO』と『AS2 PRO MAX』はボタン3つ+液晶付き
AS2シリーズの使い方
①電源ボタンを長押し → 『AS2 Pro』と『AS2 Pro Max』は空気圧を設定
②バルブに取り付け再度電源ボタンを押す → 設定された空気圧に達すると自動的に電源OFF
電動ポンプは携帯ポンプやCO2ボンベの代替として考えられてきたが、この2モデルの登場によって、緊急時以外のデイリーユースにも使途が拡張されることになった。
つまり、ライド前に空気を入れるときフロアポンプ代わりになる。前回設定した空気圧は本体に記憶されるので、基本的には電源ボタンを2回押すだけ。フロアポンプの作業は夏だと汗をかくが、電動ポンプならボタンひとつで適正空気圧まで充填できるので、むちゃくちゃラクができる。
外出時に電動ポンプを使う際の一番の懸念点であるバッテリー切れや動作不良も、フロアポンプ代わりにすることでライド前に動作確認できるので、出先でのリスクを回避することができる。
動作すると本体がかなり熱を持つので、裸では使用しない。基本は付属のシリコンケースに付けっぱなし
TPUチューブを使っている場合は、必ず付属の拡張チューブ(『AS2』のみ別売)を取り付けてから使用する。でないと熱でチューブが溶けてしまう
既存の空気入れシステムを代替できるか
では電動ポンプはほかの空気入れシステムの完全な代替となり得るだろうか?
空気圧管理ができる『AS2 PRO』をピックアップし、出先での緊急時対応に使われるCO2とハンドポンプの3者で比較する。
電動ポンプ CYCPLUS AS2 PRO |
CO2ボンベ | ハンドポンプ TOPEAK ローディTTミニ |
|
携行性 | ◯ | ◯ | △ |
手間 | ◯ | ◯ | △ |
空気圧管理 | ◯ | – | – |
重量 | 162g ケース+拡張チューブ込 |
160g インフレーター+ボンベ2本 |
90g |
価格 | ¥16,940 | 約¥2,000 | ¥5,390 |
潜在的リスク | バッテリー切れ 水没 |
使用ミス | バルブ損傷 |
比較すると、電動ポンプの価格はほかのシステムよりもかなり割高だが、強みは明確。ただしバッテリー切れと水没のリスクを抱える。
総合的な使い勝手は、CO2ボンベの完全な上位互換となる。かつてCO2ボンベの充填で失敗して、道行くサイクリストに声をかけて助けてもらった経験がある身からすると、使用ミスが起きないことはかなり安心だ。
CYCPLUSとCO2ボンベ2本、重量はほぼ同じだが、CO2の方が少し嵩張る
ハンドポンプは体力の消耗が激しいが、体力の続く限りは使えるため、機材そのものに対する信頼性で言えばハンドポンプはまだまだ強い。「TOPEAK ローディTTミニ」のように、ポンピングが軽いモデルを選べば、まだ出先で活躍の機会はある。
ハンドポンプはサイズが大きいので携行方法が変わるが、信頼性は高い
電動ポンプのリスク①バッテリー切れ
電動ポンプの一番のリスクが、いざというときにバッテリー切れで使えないこと。これは定期的にチェックするしかないが、先に記載したライド前に使う運用で充分にカバーできる(あるいは荷物は増えるが、モバイルバッテリーを携行する)。
電動ポンプのリスク②水没
AS2は防水仕様ではないので、携行するときは付属の防水ポーチに入れるか、防水のツールケースに入れる必要がある。直接バックポケットに入れるのは非推奨。
付属のポーチでも、家にあるジップロックでも良い
電動ポンプのイメージとCYCPLUSの実際
電動ポンプに対してネガティブな先入観もあると思う。それに対して、実際はどうなのかを検証していく。
動作音がめちゃめちゃうるさそう
これは実際にうるさい。屋内で使うと掃除機をハイパワーでかけているような感じなので、隣の部屋でもそれなりに聞こえる。ライド前に充填する場合の動作時間は(一週間タイヤを放置して1bar抜けているとして)、室内で5-10秒×2回程度なので、それが許容できる環境かどうかが目安になると思う。屋外で使用する分には気にならない。
↓騒音計による実測値
AS2 Proからの距離 | 音量 | 音の目安 |
0m | 100dB前後 | 電車が通るガード下 |
1m | 90dB前後 | ブレンダーやミキサー |
ドアを隔てて2m | 60dB前後 | オフィスの雑音 |
発生源で測ると100dB前後。電車が通るガード下くらいの騒音に相当する
サイズが大きく持ち運びづらそう
他社の電動ポンプはバルブ部分が出っ張った形状のものが多いが、CYCPLUSは立方体に近いので、かなりコンパクトに収まる。
『AS2 Pro』は一般的なツールケースにぴったり。『AS2 Pro Max』はツールケースにはぎりぎりなので、携行するなら『AS2』か『AS2 Pro』が良いと思う。
電子機器なので水とか衝撃に弱そう
本体は耐水ではない。バックポケットや非防水のツールケースで持ち運ぶ場合は、付属の防水ポーチに入れてから収納する。直接バックポケットに入れるのはリスキー。
AS2 PRO本体、拡張ホース、TPUチューブ、タイヤレバー。防水のツールケースにパンク修理セットをまるっと入れて水没の心配もない
耐衝撃については、これまでCYCPLUSの3モデルは国内で合計1万個近くが販売されているが、現状まで報告されている不具合は充電系の初期不良のみで、それも発生率0.2%以下とのこと(代理店確認済)。ハードの強度における懸念点はあまりないと考えて良さそう。
ちなみに6月からCYCPLUSの代理店がNCD株式会社になった。NCDは『Xplova』や『Altalist』ブランドを取り扱っており、ユーザーサポートが手厚いことで知られている。Love CyclistでCYCPLUSを含めてこれらのブランドを推奨するのも、NCDの存在が大きい。
シリコンケースを常に被せておくので汚れや衝撃は緩和される
本体が小さいから充填に時間がかかりそう
充填速度は『AS2 Pro』『ASP Pro Max』がかなりパワーアップしていて、充分早い。ライド前に空気を入れるだけなら10秒前後だし、パンク時にゼロから入れても、5barまで1分程度で充填される(タイヤ30c)。
CO2ボンベのように一瞬ではないが、ハンドポンプのように延々とシュコシュコする時間に比べれば気楽な待ち時間だ。飛行機輪行で空気を抜かなければならなかったときも、到着後にサクッと充填して走り出せたのが最高だった。
ただしチューブレスタイヤのビード上げはできない。
女性でも扱いやすいのが良い
バッテリー切れが不安
コネクタはType-C。『AS2 Pro』は30分でフル充電
「AS2 PRO」はフルバッテリーで7.6bar×2回(5.5bar×4回)使える。最大4回パンク対応できるので(チューブを持っていれば)、充分に不測の事態には対応できる。
でも出先で「バッテリーなくて使えませんでした」が一番避けたい状況。長期間未使用だと放電してしまうので、ライド前にいつもAS2を使って充填する運用をすることでバッテリー切れのリスクを回避することができる。
バッテリー残量は電源ボタンを押すと、ディスプレイ左下に3段階で表示される
値段が高そう
確かに比較すると高い。ほかの空気入れシステムを代替するなら『AS2 Pro(¥16,940)』か『AS2 Pro Max(¥19,800)』を選びたいが、そうなると一般的なハンドポンプの4〜5倍の価格となる。
とはいえ、ハンドポンプにかかる時間と体力をお金で買っていると考えれば、タイパ&コスパ的な納得感はある。
AS2 ¥13,200 | AS2 Pro ¥16,940 | AS2 Pro Max ¥19,800(税込)
ゲームチェンジャー
改めて電動ポンプ(CYCPLUS)のメリットを挙げると、2つに集約される。
0.1bar単位の自動空気圧調整*:乗り心地や路面対応力を決める空気圧を、定量的に細かく管理できる。グラベルライドで細かく空気圧を調整するとき、出かける前にいつも決まった空気圧まで充填するときなど、出先でも家でも幅広い使い途がある。しかもボタン操作だけで正確。ハンドポンプやCO2ではこれができない。
*『AS2』を除く
時間と体力の節約:高速で空気が入るAS2は体力を温存でき、大幅に時間も節約できるため、ライドそのものにリソースを割くことができる。女性でも手軽に扱えるし、操作ミスは発生しない。
かつて電動ポンプが出始めのころは、やたらうるさい動作音がエンターテイメントとして消費され、イロモノではないかという思いが強かった。あるいは多くのサイクリストが感じるように、電子機器に対する信頼性に不安もあった。
しかしここに来て、実績のある「CYCPLUS」から液晶付きの『AS2 PRO』と『AS2 PRO MAX』が登場し、電動ポンプはただの緊急対応用デバイスから、どんなシーンでも使える万能デバイスへと進化した。
家でもライドでも、CYCPLUSを一度使うともう手放せない。
Text & Photo / Tats(@tats_lovecyclist)
[PR]提供 / NCD株式会社
著者情報
Tats Shimizu(@tats_lovecyclist) 編集長&フォトグラファー。スポーツバイク歴11年。ロードバイクを中心としたスポーツバイク業界を、マーケティング視点を絡めながら紐解くことを好む。同時に海外ブランドと幅広い交友関係を持ち、メディアを通じてさまざまなスタイルの提案を行っている。メインバイクはStandert(ロード)とFactor(グラベル)。 |