
業界に陰謀は存在しないが馴れ合いは存在する
※写真と本文は一切関係ありません
VELOのライターJosh Rossが、新型バイク発表時に各メディアの記事が一斉公開される理由について舞台裏を明かしている。
読者からは「金銭が動いているのでは」という疑いの声も上がるが、実際には陰謀めいたものは一切なく、支払いも発生していない。
直近のCanyon Grailの発表を例に、具体的な流れが紹介されている(以下抄訳)。
発表の約1ヶ月前、Canyonからレビュー依頼があり、提供されたのは発表日時のみだった。スケジュールを確認して受諾し、サイズを伝えた後は連絡が途絶え、実機は発表前に届かなかった。そのため発表当日のレビュー公開には至らなかった。
代わりに発表の2日前、スペックと写真が揃ったプレスリリースが届いた。必要な情報は揃っており、長年の経験と知識を元に、Grailがマーケットでどのような位置づけになるのかを分析。他メディアが見落としそうで重要と感じるニュアンスを拾い出し、エンバーゴ(情報解禁日)に合わせて記事を公開した。
「エンバーゴ」とは、製品に関する事前情報を受け取る代わりに、メディアが特定の時刻まで報道を控えることに同意する仕組みを指す。すべてのブランドが同じエンバーゴに同意するため、まるで陰謀のように見えるが、実際には情報公開までのリードタイムで読者にとって必要な情報を網羅したコンテンツを生み出す仕組みとなっている。
ブランド側は事前に情報をオープンに共有でき、メディアは質問を投げかけて製品を深く理解する時間を確保できる。発表前に実機を受け取れた場合は、実走、撮影、技術的な詳細の追加取材まで行い、エンバーゴ解除と同時に完全にテストされた正確なレビューを公開することが可能となる。
エンバーゴが存在しなければ、情報を聞いた瞬間に速報を出す競争が起きてしまう。結果として、各メディアが同時に公開する体制こそが、読者に対して最速で必要十分な情報を届ける手段となっている。
国内においても同様であり、各メディアや販売店に一律プレスリリースが送られたり、事前にクローズドな製品発表会が開催されたりする。プレスリリースが送られるタイミングは各メーカー/代理店まちまちで、1ヶ月前の場合もあれば前日に来るときもある。
ときどきエンバーゴを無視して(忘れて)フライング投稿してしまう販売店がいるが、そういうときはペナルティが課せられているのかもしれない。
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ここからは余談だが、製品発表会での参加メディアの顔ぶれはある程度固定されているため、新製品ラッシュのシーズンには毎週のように顔を合わせることになる。そうなると製品発表会というより、ある種の定例会のような雰囲気になっていく。
あるメーカーのメディア向け製品発表会での話だが、試乗時間の途中である媒体が「ここから撮影タイムにしましょう」と提案した。その後各媒体が順番に同じ場所で、同じフォトグラファーを使って製品やライドの様子を撮影し始め、「こういうときはお互いに助け合わなきゃ」とデータを共有しながら、和やかに作業が進んでいった。
自分たちは別の場所で撮影を進めたが、他媒体はビジュアルを差別化せず、似たようなカットを使うという姿勢に少なからずカルチャーショックを受けた。
競合関係にあるはずのメディア同士が素材を共有していく——ベテランメディア勢の間には、長年の付き合いから生まれた独特の文化が根付いていると感じた出来事だった。
*参考:The Real Reason Every Cycling Site Publishes Reviews at the Exact Same Time(Velo)
著者情報
![]() | Tats Shimizu(@tats_lovecyclist) 編集長&フォトグラファー。スポーツバイク歴12年。海外ブランドと幅広い交友関係を持ち、メディアを通じてさまざまなスタイルの提案を行っている。同時にフォトグラファーとして国内外の自転車ブランドの撮影を多数手掛ける。メインバイクはStandert(ロード)とFactor(グラベル)。 |
















