高いと言っているのは誰?MAAP創業者が語るウェアの価格戦略

黒字経営を続けるMAAPのブランド戦略

オーストラリアの『MAAP』が、ロンドン・ソーホーに新たな旗艦店をオープンした。共同創業者のJarrad SmithへのインタビューがCycling Weeklyに掲載されており、サイクリストの購買行動や市況について示唆に富む内容になっているので抜粋して紹介する。

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Smith氏は、同ブランドのキットを「affordable luxury(手の届く贅沢)」と表現する。

「ルイ・ヴィトンのハンドバッグのように5,000ポンドもするような突飛なものではない。しかし、喜びをもたらし、運動を促し、コミュニティへの参加を後押しする製品となっている」とSmithは語る。

店内に並ぶジャージの価格は130〜235ポンド(¥27,000〜¥49,000)、ビブショーツは195〜265ポンド(¥40,000〜¥55,000)。市場で最も高価というわけではないが、300ポンドを超えるビブショーツを販売するブランドと比べても遜色ない価格帯となる。

「人々はより高品質な製品に対して、少し高くても支払う意欲がある」とSmithは述べる。最近ローンチしたPro Air ジャージは最も高価な部類に入るものの、パフォーマンス、フィット感、素材の機能性において満足度が高く、支払う価値があるという。

同社の業績もこの戦略を裏付けている。Smithは詳細を明かさないものの、MAAPは黒字経営を続けており、常に「高成長ブランド」であったと説明している。

一方、同じ市場の競合は苦戦を強いられている。MAAPの新LaBから徒歩数分のソーホーにクラブハウスを構えるRaphaは、年間営業損失2,120万ポンドを計上した。RaphaはMAAPよりも概して安価だが、ジャージやビブの価格に対する批判をSmithはどう受け止めているのか?彼は「誰が言っているかによる」と答える。

「売れていなければ作っていない。そうした声の主はおそらく我々の顧客ではないか、手が届かないと感じているか、デザインの美学を理解していないかのいずれか。MAAPのロゴが付いているから価格を設定しているわけではない。デザインチーム、選定する素材、サステナブルな素材といった製造コストがかかる。1枚のジャージには4種類の素材が使われており、そのほとんどがイタリアのミル製で、世界最高品質のライクラを使用している」

さらにSmithは着用時の快適性にも言及する。特にビブについては、本格的に乗り込むようになるほど、サドル上での快適性がライドにおいて最も重要な要素となる。初心者は安価なエントリーブランドから始めるかもしれないが、一度MAAPのビブを試せば、その快適性を実感し、より長く乗れるようになるという。

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MAAPのプロダクトを見ていると、SKUは多いにもかかわらず、ひとつひとつをあまり大量には作っていないように映る。売り切れが多く、再入荷が限定的なのがその証左で、需要を見ながら供給をコントロールするという意思が感じられる。

また「誰が言っているかによる」というSmithの言葉は、ブランド経営の核心を突いている。価格への批判が、実際にその製品を使っている顧客からの声なのか、そうでないのかによって意味は全く異なる。
実際にまわりを見てみても、ハイエンドキットを批判する声の多くは、それを着ていない人たちから生まれている。

MAAPは批評家ではなく顧客を見てものづくりをしており、こうした姿勢が継続的な黒字経営に結びついているのだと伺える。

*参考: ‘If we weren’t selling them, I wouldn’t make them’ –MAAP founder on cycling kit prices, the state of the market, and opening a London store(Cycling Weekly)

著者情報

TatsTats Shimizu(@tats_lovecyclist)
編集長&フォトグラファー。スポーツバイク歴12年。海外ブランドと幅広い交友関係を持ち、メディアを通じてさまざまなスタイルの提案を行っている。同時にフォトグラファーとして国内外の自転車ブランドの撮影を多数手掛ける。メインバイクはStandert(ロード)とFactor(グラベル)。