2023年にデビューしたGIROのフラッグシップヘルメット『アリーズ スフェリカル(Aries Spherial)』。
『シンセ(Synthe)』や『イーサー(Aether)』のように長年ヘルメットの新しいスタイルを築いてきたGIROの最新モデルは、これまでと何が違うか。アリーズを半年以上着用しているAtsushiがその実態を語る。
Atsushi(@a2c_nice_sun) 大手自動車メーカー勤務。Café du Cyclisteアンバサダー。ニース駐在時にウェアブランドのモデルとなり、現地での撮影や、フランスに聳え立つ数々の山岳をメインにライドしていた結果、ヒルクライム好きになる。オシャレで速いがモットー。 ●アリーズ着用サイズ:M(グローバルフィット) ●ほかの所有モデル&サイズ:KASK Protone M、Sweet Protection Falconer M |
Reivew / Atsushi
Edit & Photo / Tats [PR]
レーシーに、先を見据えて。
GIROのヘルメットと聞くと、連想するイメージは2つある。
ひとつは、レーシーな存在であること。Team VismaやCANYON SRAMのようなトップチームに提供しているし、ホビーライダーでもレースに重きを置いているサイクリストがよく使っている。形状もスピード感をイメージさせる格好良さが際立つ。
もうひとつは、安全性に強い意識を向けていること。GIROはMIPSをいち早くヘルメットに採用し、さらにそのMIPSをモデルチェンジのたびに進化させている。ほかのメーカーも後追いでMIPSを採用するようになり、ヘルメットの安全基準はGIROによって底上げされている。
快適さや使いやすさといったユーザー目線のつくり込みだけでなく、安全性を含めて一歩先を見据えていて、チャレンジングなモデルを提案し続けているのがGIROブランドの特徴だと感じる。
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アリーズを着用するヴィンゲゴーとヨルゲンソン
ただ反対に、GIROのヘルメットは「キノコになりやすい」「重い」といった声も過去に聞いたことがあった。これはイメージだけなのか、実際にそうなのだろうか。
Aries Spherical
←アリーズ(Aries) | イーサー(Aether)→
『アリーズ』は『イーサー』の後継モデルとなる。
アリーズ NEW | イーサー | |
構造 | ポリカーボネートシェル EPSライナー AURA II Reinforcement アーチ |
ポリカーボネートシェル EPSライナー |
MIPS | Spherical Technology™ MIPS搭載 | Spherical Technology™ MIPS搭載 |
インナーパッド | 汗の吸収を高めるDryCore™システム | 熱を逃がす最小限のパッド |
フィットシステム | Roc Loc® 5+ Air | Roc Loc® 5+ Air |
サイズ | M: 頭囲 55-59cm / 横幅17.7cm L: 頭囲 59-63cm / 横幅18.7cm |
S: 頭囲 51-55cm / 横幅17cm M: 頭囲 55-59cm / 横幅17.8cm L: 頭囲 59-63cm / 横幅18.8cm |
安全基準 | CE-EN1078(欧州) JCF公認(日本) |
CE-EN1078(欧州) JCF公認(日本) |
重量 | 280g(アジアンフィット実測値) | 290g(アジアンフィット実測値) |
価格 | ¥48,840 | ¥48,400 |
・価格差はほぼなし
・国内はアジアンフィットのみ展開(アリーズはSサイズなし)
・アリーズはイーサーと比較し、2.3%冷却性能に優れ、4%空気抵抗を削減し、5%軽量化しているとのこと
スペック上、アリーズはフラッグシップモデルとして正統進化を遂げている。
ロードレースの高速化に対応したという形状。前面の表面積が減り、空気の排出や整流を意図している
シンセ以降、GIROはフラッグシップモデルのデザイン言語を継承しているが、アリーズは前モデルと比較するとスマートなシェイプになった。ヘルメットがより頭に近い位置になって、GIROの代名詞だった「キノコ」を回避するようになっている。
実際の着用イメージで、キノコを脱したスマートさは明らか
アリーズに新たに採用された半透明の「AURA II補強アーチ」は、飛散防止の役割を持つ。肉抜きされたシェル全体を風の流れを妨げることなく繋いでいる
もちろんアイウェアホルダー付き
二重構造シェル
GIROと言えばMIPS。従来のMIPSはヘルメット内側にライナーを取り付けて、外部シェルから独立して動く構造だったが、イーサーから採用されている「スフェリカルテクノロジー」は、外部シェルが2枚に分割して動く構造。
前後左右にうねうね動く
スフェリカルは可動域が広く、衝撃をいなすように和らげる。
またライナーが不要になったため、ヘルメット内部がすっきりするようになった。エアフローの向上、軽量化、フィット感アップなど、安全性と機能性が相互に高まっている。
Pros/Cons
昨年の冬からアリーズを半年以上使ってきた
購入したのは2023年11月。同価格帯の別モデルと悩んでいたが、イベントで着用したときのフィット感とデザインの良さにに惹かれて購入を決意。それ以来アリーズを頻繁に使ってきた。
Pros
被り心地はお世辞抜きに最高
自分の頭の形状にぴったり。アジアンフィットとグローバルフィットをそれぞれ試着したが、自分の頭には横幅の狭いグローバルの方が合っていた。ただ日本人の多くの方にはアジアンフィットが合うと思うので、一度試着してみてほしい。
グローバルフィットのMサイズを着用。ほかのブランドでは、KASK Protone Mサイズ、Sweet Protection Falconer Mサイズがフィットする
微調整が効くフィットシステム
「Roc Loc 5 + Air」と呼ばれる上下左右に調整できるフィットシステムが使われている。同価格帯の他社ヘルメットのシステムと比べても軽い使い心地。締め付けも微調整が効くのでブレないのが良い。
ただしダイヤルが小さめなので、厚手のグローブを使用する寒い季節には操作しにくいのが唯一難点。
フレームが細いので通気性も良く蒸れにくい
顎紐の材質がソフトなので、顎まわりのストレスはない。紐が意外と長いので、バタつかないよう余ったものは折り畳んでいる
重量はこれまで気になったことがない
アジアンフィットの実測値はMサイズで280g。他メーカーの軽量クラスのヘルメットは200g台前半なので、手に取った時の重量差はあるけれど、被っていて重さを感じるほどではない。
シクロクロスのような凹凸の激しいコースを走ったり、100km以上のライドをしてもストレスを感じたことは一度もないので、重量で購入を迷っているならそれほど気にする要素ではないと思う。
アリーズは重量バランスが良く、首に負担がかからない
灼熱ライドでも熱が籠もらない
アリーズはクーリング性能の高さを謳っている。撮影日のライドも、最高気温が39°C近くになるタフなコンディションだったが、内部に熱が籠らずヒルクライムを楽しめたので通気性がとても良いと感じた。年々夏が暑くなっているので、冷却性能が高いヘルメットは重宝する。
灼熱ライドこそアリーズ
頭がブレないエアロ効果
速度域が上がっても頭がブレにくいので、整流性能の高さを感じる。
風抜けも非常に良いので、ヘルメットによる抵抗がかなり低い。今まで以上に、速く安全なダウンヒルが可能になり超楽しい…!
ダウンヒルの風抜けが気持ち良い
インナーパッドが優秀
アリーズのパッドには、汗の吸収を高める「DryCore」システムが使われている。走行中にこのシステムの効果を気にすることはあまりないが、振り返るとアリーズを被ったライドでは走行中に汗で目が痛くなる事が少ない。
ただどんなパッドでも物理的な吸水量の限界はあるので、炎天下で停車すると、パッドの許容範囲を超えて汗が流れ落ちてくる。これは仕方がない。
パッドが汗を大量に含んでも肌にベタつかないような表面処理になっているので、ヘルメット内は快適
Cons
ステッカーが剥がれやすい
GIROのロゴはステッカーだが、使用しているうちに剥がれてくる。ここはできれば改善してほしい。
後頭部のAが少し剥がれている
ヘルメット用リアライト
アリーズはバックル部分に専用のリアライト「ROC LOC 5 LED」を装着することができる。
明るさ (持続時間) |
点灯モード 20ルーメン(1.5時間) 点滅モード 30ルーメン(10時間) |
充電 | microUSD *約2時間でフル充電 |
重量 | 20g(実測値) |
価格 | ¥3,982(税込) |
対応モデル | 最新のRoc Loc 5 フィットシステム採用モデル* *ARIES、AETHER、ECLIPSE、HELIOS、SYNTHE、SYNTAX、AGILIS、RADIXなど |
ライト中央のボタンを押すと、消灯→点灯→点滅→消灯…の順番で光り方が変化
ヘルメットを被っているとどういう風に光っているか自分では見えないので、ボタンクリックのたびに今のステータスは覚えておく必要がある(あるいは一緒に走る仲間に教えてもらう)。
バイクのリアライトよりも高い位置で光るので、車からの視認性が高まる
走行中にボタンを押せるので、バイクに取り付けているライトよりも手軽にON/OFFできるのが良い。点滅モードで10時間持続するので、ナイトライドの補助灯として使っている。
風を追い抜く完成形ヘルメット
完璧なフィット感とスマートなシェル構造。アリーズは、シンセから続くフラッグシップの象徴的デザインを完成形に至らしめたと感じている。
このスタイリッシュな雰囲気はGIROしか出せないし、それこそがGIROを選ぶ理由だとも言える。
そして見た目だけでなく、スフェリカルテクノロジーの安全性、アップデートされた空力や快適性が加わることで、パフォーマンス面でもサイクリストのライドを最大限にサポートしてくれるようになった。
アリーズは、風を追い抜いていく高速域のライドを、速く安全に、よりエモーショナルなものにしてくれている。
Reivew / Atsushi
Edit & Photo / Tats
[PR]提供 / ダイアテック株式会社