ロードバイクの特定の走力を強化するヒント<2. スプリント力>

スプリント力

ロードレースの中で最も華々しいスプリント。
ゴールスプリントで全身を躍動させながら前へ前へ進む集団の姿、タイミングを図って一気に逃げを仕掛ける姿など、スプリントはレースの局面を変化させるポイントで行われるので視覚的にも面白いものです。

レースでなくとも、グループライド中に突然スプリント合戦が始まったりもするし、「もがく」という表現がありますがソロライド中に自分の力を振り絞って最高時速を出すのも楽しい。
そんな普段のサイクリングにもスパイスを与えてくれるスプリント力を強化するヒントをお伝えします。

1. 基礎編

体格のハンデはあるのか

一般的にトップスプリンターは全身筋肉隆々とした体格をしており、ずば抜けた心肺機能優れた上半身の筋肉で脚の力を支えています。そのためスプリンターというのは生まれつきの体格である程度向き不向きが決まっていると言われています。

たしかにそういう側面もありますが、体格で劣っていても鍛えれば良いスプリンターになることはプロサイクリストが証明しています。
例えば、マーク・カヴェンディッシュは175cm/70kgとスプリンターの中では少し小柄であるものの、技術や爆発力などで体格のハンデを補ってツールで通算30勝(歴代2位)を獲得しています。

体重を減らす必要はない

体重とパワーは相伴って伸びるもの。クライマーと違ってスプリンターは必ずしも体重を減らす必要はありません。無理に減量すると筋肉も減らす可能性があり、リカバリーも遅くなってしまいます。

もし痩せる必要があるのであれば除脂肪体重を計測して、体脂肪率を減らすことに注力します。ただ非常に注意深く食事とトレーニングを厳格に組み立てなければならず、専門的な領域になります。

目安となる体脂肪率

体脂肪は生きていく上では不可欠なもので、ひと桁台からさらに絞るというのはアスリート的でやり過ぎ感があります(プロクライマーの場合は4-5%が理想的と言われていますが)。
スプリンターおよび一般的なサイクリストは、男性は6-13%女性は14-20%あたりが理想的な体脂肪率です。

 

2. 応用編

パワーウェイトレシオを意識すること

スプリンターにとっては単に筋力だけではなく、「パワーウェイトレシオ」が非常に重要となります。
パワーウェイトレシオは出力重量比を意味し、同じ体重でも出せるパワーが大きい方が有利ということです。逆も然りで、パワーが同じでも体重が軽いほうが有利となります。

共にトップスプリンターであるグライペル(184cm/82kg)カベンディッシュ(175cm/70kg)を比較すると、体格を見る限りグライペルの方が出力ワット数が(たぶん)大きいですが、カベンディッシュのほうが体重が軽いので彼のほうが良いタイムが出せる、ということです。

パワーウェイトレシオを高めるためには、前述の体脂肪率を目安とした食事管理とトレーニングが必要となります。

 

スプリンターのための基本ドリル

スプリントドリルと呼ばれるスプリント力を鍛える代表的な練習メニューはいくつかあります。以下のようなトレーニングを普段のライドの中に取り入れてみてください。

  • ① 短い坂をなるべく重いギアで全速力で20秒上る
    ② 下りをシッティングで強く加速する
    ③ 1人目と2人目で先頭を交代し、「引き」と「スプリント」を鍛える(リードアウト練)

▼リードアウト錬の方法

②と③はコースやメンバーの条件が揃わないと難しいですが、①は普段のサイクリングコースで行うことができます。

スプリンターのための筋トレ

ロードバイクに乗ってもがくことがスプリント力を鍛えるために最適な方法ですが、筋力トレーニングによって更に力を伸ばすことができます。
クライマーの筋トレと異なる点は、より重い抵抗で行うというところ。そのため自重トレーニングではなく、負荷が調整できるマシンやウェイトトレーニングが向いています。

鍛える箇所は全身
下半身の太もも(大腿四頭筋、ハムストリング)、お尻(大殿筋)、ふくらはぎ(腓腹筋)は言うまでもなく、体幹と上半身の筋肉を磨き上げることで、完璧に近いバイクコントロールを可能にして、エネルギーのロスを防ぐことができるようになります。

意識すべき筋肉とトレーニングメニュー例は↓こちらの記事を参考にしてください。

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その他の走りを強化する

参考ページ:How to build the perfect cycling body(cyclist.co.uk)