あなたは自分自身をクライマー、スプリンター、オールラウンダーといった枠に規定していますか?
おそらく相当走り込んだサイクリストであれば、自然と脚質が何かに特化していたり、あるいは所属するチーム内での役割があるかもしれません。プロのレースではチーム内で個々にルーラー、ヒルクライマー、スプリンター、そしてエースといった役割が与えられています(弱虫ペダルのチームがまさにそう)。
初心者・上級者に関わらず、サイクリストはそれぞれの体型や性格によって得意分野があります。坂バカやスピード狂と自称したり、ブルベ大好きな人がいるように。そしてもちろん苦手分野もあります。
そこでロードバイクで速く走るために必要な3つの力―ヒルクライム力・スプリント力・持久力について、それぞれの力を伸ばすための取り組み方のヒントを3回に分けてお伝えします。
得意分野を伸ばすか、苦手なところを克服するか、強化したいポイントに対して取り組むべきメニューの参考になればと思います。まずはヒルクライム力についてどうぞ。
クライミング – 登坂力
坂は不思議なもので、普通は上りたくないと思うサイクリストが多数ですが、ときどき坂を上りすぎて坂を見ると心が踊ったり笑顔になるような変態も少なからずいます。
坂といっても何キロも続く山道だけを指すのではなく、市街地を走っていても必ず道の起伏はあるので、すべてのサイクリストにとって登坂力は避けては通れないスキルです。
1. 基礎編
基本は体重
クライミングは地球の重力に逆らって上へ上へと目指して走るため、一番の障害となるのが、車体およびサイクリスト本人の重量です。他の人より体重がオーバーしているだけで大きなハンデを背負うことになります。余分な荷物を抱えて上るようなもので、貴重なエネルギーが余計に消費されるので、登坂力を伸ばすには脂肪を落とすことが最優先事項となります。
ちなみに筋肉がつきすぎて体重が重いスプリンター体型のサイクリストも身近にいて、彼は緩い坂はとても速いのですが、激坂は筋力ではカバーできないと潔く諦めています。自分の向き不向きの見極めができていてるクールなサイクリストです。
普段のライドコースで坂を避けないこと
坂が苦手な場合、心理的に坂のないルートを選んだり回り道してしまいたくなりますが、意識的に普段のライドで坂をルートに組み込んでいくことで体を慣らしていきます。
いざというとき上れない体にならないように。
近くに山がない場合の対処法
平野部に住んでいて近くに良い山がない場合はどうトレーニングするべきか困ります。わざわざ毎回輪行して山に行くのも面倒くさい。
そんな場合でも、数百メートルの短い坂なら近所にあるはず。その坂を繰り返し繰り返しアタックするのも効果的です。ただ上るだけでなく、アウタートップ固定+ダンシングオンリー、ケイデンス固定+シッティングオンリーなどメニューを複数を組み合わせることで、同じ坂でも飽きないように工夫できます。
もし短い坂もない場合は、室内の固定ローラーで重い負荷をかけるのもとても効果的。
どちらの方法でもしっかり登坂力を鍛えることができます。
2. 応用編
トレーニングを行う上でクライマーが集中して取り組む必要がある領域は「心肺機能」「筋力」「安定性」の3つです。
「心肺機能」を高める
心肺はライドを習慣化して、心拍を上げるようにしていれば自然と一定レベルまでは強化されていくものです。
それよりも上を目指す場合はインターバルトレーニングを意識的に取り入れるのが有効です。
前述の「短い坂を繰り返しアタックする」のがまさにそれで、しっかりウォームアップした上で坂の長さに応じて5〜10回程度上り下りを繰り返します。下るときはペダリングを止めずに軽く回しておくようにします。慣れないうちは最初から飛ばし過ぎないように注意してください。
「筋力」と「安定性(体幹)」を強化する
筋力と安定性は4つの方法で効果的に鍛えることができます。
1. スクワット
あらゆるサイクリストの最も基本となる筋トレであるスクワット。太ももの前後(大腿四頭筋+ハムストリング)とお尻の後側面(大殿筋)を連動して鍛えることができる優れたメニューです。
2. ランジ
スクワットと強化できる部位はほぼ同じですが、スクワットよりも腰への負担がありません。
さらに自重で物足りなくなった場合はバーベルやダンベルを持って負荷を調整することもできるので自由度の高いトレーニングです。
3. クランチ
普通の腹筋でも効果的ですが、体幹を合わせて強化するのに効果的なのがクロスクランチ。脚を固定する必要がなく、場所を選ばないのが魅力的です。
4. プライオメトリック・エキササイズ
ぴょんぴょん飛び跳ねるエキササイズです。筋肉の膨張と収縮が短時間に起こり、それを体に染み込ませることで瞬間的な筋肉の爆発力を鍛えることができます。上の筋トレと組み合わせれば、より筋肉の力を引き出すことができる体になれます。
ただマンション住まいだとやりづらいのが難点。
※なぜ安定性(体幹)が必要なの?
足から生み出された力を体幹を通して上半身に無駄なく伝えるため。体幹が下半身の筋肉と上半身の筋肉を伝達する役割を持っているというイメージ。ぶれない体がつくられると、脚だけで踏むペダリングから全身を使った安定感のあるペダリングができるようになる。
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個人的に坂は好きなのですが、好きになる前と比べても坂がつらいことには変わりはありません。たぶんどれだけ走っても楽になることはないでしょうが、それでも上りたいと思わせる魔力があるのが坂道の不思議なところです。
その他の走りを強化する
参考ページ:How to build the perfect cycling body(cyclist.co.uk)