1年前の冬、外で走ることが苦痛を伴うようになっていた日曜日の極寒ライド中に、ビルに貼りつけられた“FEELCYCLE”と書かれたパネルが僕の目に留まりました。
“CYCLE”という文字列に対し無条件に反応してしまうのはサイクリストの習性のようなもので、すぐにそれがどのような場所なのかを、スマートフォンのなめらかなスクリーン上をかじかんだ指先で検索しました。
──それから3週間後、僕はFEELCYCLEの会員、つまり“FEELCYCLIST”になり、新しいトレーニングを始めることになったのです。
1. ビンディングペダルでエクササイズ
FEELCYCLE(フィールサイクル)が行うのは、現在流行しているスピニングと呼ばれるバイクエクササイズ。これはインドアトレーニング用のスピンバイクに乗り、インストラクターの指示に合わせてペダリングをする高負荷のエクササイズのことです。
スピンバイクはポジション調整をある程度細かく行うことができ、またビンディングシューズを履いて行うため、ロードバイクと近い感覚で乗ることができます。ビンディングでポジションが出せるという点は、僕らロードバイク乗りにとってとても大事なポイント。
ニューヨークでのスピンクラス
スピニングはもともとニューヨークが盛んで、そこにはSoulCycleやPelotonといった様々な会員制スタジオが存在しています。そしてその業態を日本に本格的に持ち込んで全国で30近い拠点に展開しているのが、FEELCYCLEというフィットネスクラブ。
運営会社FEEL CONNECTIONの母体は、「ホットヨガスタジオLAVA」や「まんが喫茶ゲラゲラ」を抱えるベンチャーバンクで、FEELCYCLE事業を本格化するために2016年に分社化し、現在はGINZA SIXにオフィスを構えるイケイケの企業です。
2. レッスンの流れ
スタートまで
服装はランニングウェアなどジムに行くときのような上下で問題ありません(稀にビブショーツを履いている方も)。下着と靴下は汗でビショビショになるため着替えが必要です。
ビンディングはLOOKのペダル、そして貸し出しされるシューズはベルクロ式なので、ロードバイク乗りは問題なく脱着できると思います。
1レッスンあたり45分をかけて、1インストラクターに対して10-30人くらいの規模で10曲程度の音楽を通して激しい動作を行っていきます。
「暗闇フィットネス」と巷で言われていますが、クラブのようにミラーボールや照明が常に曲に合わせて点灯するため、真っ暗ではなく周囲をぼんやり見渡すことができるくらいの明るさはあります。
プログラム開始
曲がかかり始めると、音楽に合わせた動作を行い、ペダリングのリズムや重さ、シッティング→ダンシングの移行などをすべて指示を受けながら行います。テンポの早い曲になるとケイデンス120回転くらいは平気で回すほど。
スピンバイクは自分で好きなように負荷をかけられるため、インストラクターの指示で物足りないと思えば好きなようにトルクアップしてもOKです。
またダンベルを使った運動や、ペダリングしながらのプッシュアップなど、固定バイクならではの動作も含まれ、無酸素運動を取り入れながら上半身もバランス良く鍛えることができます。
非日常感を楽しむ
ローラー練だけではなく、あえてFEELCYCLEにも通う大きな理由のひとつが、非日常感を味わいながらペダリングできるということ。
洋楽をガンガン聞きながらバイクを漕ぐという体験は、言葉では伝えづらいですが、この上ない高揚感を得ることができます。
ロードバイクが仲間との競い合いや景色を楽しむ中で盛り上がっていくのに対し、FEELCYCLEは激しい音楽とスタジオの一体感の中で強制的にアドレナリンを噴出させられます。インストラクターの呼びかけに対して自然と雄叫びを上げる自分がいるのです。クラブってすごいよ。
このせいで何度でも通いたくなってしまう。
限界まで追い込む
トレーニング観点の話に戻ると、本気で踏めば1曲あたりにかかる負荷はかなり高く、それを10曲分通しで続けることになるため、インターバルトレーニングに近い効果を得ることができます。
FEELCYCLE自身は1レッスンで400-800カロリー消費できるフィットネス効果を訴求していますが、トレーニング目的のサイクリストにとっては、ダイエットよりもしっかり負荷をかけて追い込めることが大きなメリット。
3. FEELCYCLEの効果
① 仲間に「速くなってない?」と言われる
強度の高いインターバルを繰り返し行うため、心肺機能が強化され、さらに筋力もアップしていることが1ヶ月もしないうちに実感できます。ライドに出かけると自然と平均速度が上がり、長距離も以前よりも疲れにくくなっているはず。
これまで平日のライド時間が取れなかったサイクリストは、週2回通うだけでも確実に速くなります。
たとえ仲間に「なんか速くなってない?」と言われても、「週末しか外走ってないよ」と正直に答えましょう。そう、コソ練に最適なんです。FEELCYCLEならね。
② ウィークデーが充実する
ほとんどのスタジオが朝7時から夜22時過ぎまでプログラムがあるため、勤務時間の前後で通うことが可能。
特に朝は比較的空いていて予約が取りやすいのと、早起きして体が暖まった状態でオフィスインできるので、業務効率が上がるというメリットもあります。
もちろん、一日の締めに汗を流してから帰るというのも仕事の疲れを発散できて気持ち良いもの(夜はちょっと予約が取りづらい)。
③ 会社にFEELCYCLE仲間ができる
オフィスの近くにスタジオがある場合は、人知れず通っている同僚がいてばったりスタジオ内で会うことも。社内で今までと違うつながりができるメリットもあります。
僕のいる会社では人数が集まってFEELCYCLE部ができ、同僚ともウェイウェイ状態に。
④ 新しい音楽ジャンルを開拓できる
年を重ねるとあまり新しい音楽ジャンルに手を出さなくなるもの。FEELCYCLEのプログラムはポップ・ロック・レゲエ・ハウスなど様々なジャンルから構成されるので、レッスンを受け続けると自然とあらゆるジャンルのヒット曲を覚えていきます。
レッスン中に気に入った曲があれば、あとで調べてDLしてみたり、そのアーティストのアルバムを聴くようになったりと、音楽の世界が広がるのもロードバイクでは得られないFEELCYCLEの上質な体験。
4. おすすめのプログラム
負荷レベル×音楽ジャンルで各スタジオとも数え切れないほどのプログラムが用意されていて、自分のフィットネスレベルに応じて選ぶことができます。
プログラムは脂肪燃焼のBB(Body Burn)系とシェイプアップのBS(Body Shape)系がありますが、ロードバイクのトレーニングとしては上半身の動作があまり入らないBB系が向いています。
BB系はBB1からBB3まで負荷レベルが設定されていて、ある程度乗り込んでいる方であればBB2以上も余裕かもしれませんが、同じプログラムでもトルクを上げることで常に限界まで追い込むことが可能。
個人的にはBB2 MLN2やRock1が負荷をかけやすい内容でサイクリスト向きかと思います(どちらもLinkin Parkがめちゃ燃える)。
まずは所属するスタジオでできる限り多くのプログラムを受けてみることをおすすめします。数をこなしていくうちに、自分が好きなプログラムが見つかるはず。
またインストラクターのノリによってもモチベーションの上がり方が変わるので、お気に入りのインストラクターを見つけるのも楽しみのひとつです。
5. リア充トレーニングのススメ
月額¥14,800(六本木のみ¥18,000)とフィットネスクラブ系では強気の料金設定ですが、何度も通いたくなる中毒性があり、また毎回の満足感が高いため、十分にその価値は感じることができます。
何よりローラー台のような修行感がなく、クラブで踊っているような感じ*にも関わらず、身体にはしっかり負荷をかけられるという状態になるのが素晴らしい。
*クラブっぽいノリなので年齢層は低めかと思っていましたが、高めの料金設定もあってか30-40代がメインの層。
平日でも雨の日でも強度の高いインターバルを心置きなくできるので、こっそり速くなりたいサイクリストはこっそりトライアルしてみることをおすすめします。きっとロードバイクが今までより速く楽しくなります;)
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都市部にはほとんど進出しているため、自分の行動範囲に合うスタジオを探してみてください。