携帯ポンプ(ハンドポンプ)を使用する機会は限られていますが、いざ使うとなったタイミングでは、いかに手早く作業を終えられるかどうかが最も重要。
ポンプは基本的に携行性と作業性がトレードオフの関係にあるので、所有者の多いモデルをレビューしながらそれぞれの観点で使い勝手を比較します。
text/Tats(@tats_lovecyclist)
Contents
1. 定番3モデル比較
携帯ポンプはラインナップが多すぎるため、携行性の高い小型タイプの中から、現行の人気モデル3つ*をピックアップ。
*2023年1月にSNS上でアンケートを行い、所有者の多かった3つ
LEZYNE(レザイン)とTOPEAK(トピーク)の2モデルは同価格帯で、同社のラインナップの中で最もコンパクトです。
LAND CAST(ランドキャスト)は有名な中華系OEM製品。20cmと18cmの2サイズあり、本レビューでは携行性の観点から18cmのショートモデルを使用しています。
それぞれ実作業を行い、項目別の評価を以下の表にまとめています。
3モデル比較表
モデル | LEZYNE ポケットドライブHP ¥4,950 |
TOPEAK ローディTTミニ ¥5,390 |
LAND CAST マジックポンプ ¥2,540 |
---|---|---|---|
携行性 | ★★★★★ | ★★★★☆ | ★★★☆☆ |
全長 | 140mm | 165mm | 180mm |
重量(実測) | 76g | 90g | 97g |
作業性 | ★★☆☆☆ | ★★★★★ | ★★★★☆ |
ポンピング | 重い | 軽い | やや軽い |
空気圧実測 – 100回 | 1.2bar | 1.8bar | 1.5bar |
空気圧実測 – 200回 | 2.1bar | 3.4bar | 2.8bar |
空気圧実測 – 300回 | 3.3bar | 4.7bar | 3.9bar |
プロダクトデザイン | ★★★★★ | ★★★★☆ | ★★★☆☆ |
※空気圧計測時のタイヤはContinental GP5000S TR(チューブレスタイヤ)を使用。
各モデルレビュー概要
LEZYNE POCKET DRIVE HP:質感や手の馴染みが素晴らしいが空気があまり入らない
TOPEAK ROADIE TT Mini:作業性と携行性いずれも優れており使い勝手が良い
LAND CAST Magic Pump:デザインがチープだが使い勝手は良い
2. レビュー①:LEZYNE ポケットドライブHP
携行性 ★★★★★
全長14cmと非常にコンパクトで携行性抜群。製品名の通りバックポケットに入るし、ツールケースやハンドルバーバッグにも余裕で収容できます。
プロダクトデザイン ★★★★★
Lezyneのプロダクトはどれも機能美を備えており、ポケットドライブも質感や手の馴染みが素晴らしい。また内蔵されているホースを取り付けてポンピングする構造も、コンパクトなボディでよく設計されているなと感じられます。
美しい溝のパターンがLEZYNEっぽさを演出
作業性 ★★☆☆☆
デザインや携行性は素晴らしいの一言ですが、実作業ではポンピングの重さが気になります。100回あたりから重さを感じ始め、200回を越えると1ストロークあたりの負荷が高く、300回近くだと1回1回踏ん張らないとポンピングできません。
実際に入る空気量も他モデルに比べると少ないため(300回3.3bar)、出先で使うときは負担が大きくなることを覚悟する必要があります。
内蔵されたフレックスホースを使うのでバルブに負荷を与えづらい構造
一見扱いやすいがポンピングは重い
3. レビュー②:TOPEAK ローディTTミニ
携行性 ★★★★☆
ポケットドライブほどではないものの、全長16cmのサイズ感はちょうど良い感じ。ツールケースやバーバッグにさくっと入ります。
プロダクトデザイン ★★★★☆
3モデルの中で最も主張しないデザインで堅実さを感じられます。表面に細かい溝のあるマットな質感は手馴染みが良い。
グリップしやすい細かい溝
作業性 ★★★★★
ツインターボ仕様でポンピングが軽く、さくさく作業を進められます。200回を越えると少し手応えを感じるようになりますが、それでも力を加えながらテンポ良く300回まで到達することができます。
実際に入る空気量も多く、300回でチューブレスタイヤの適正空気圧近く(4.7bar)まで入れられるのは便利。
バルブに差し込んでレバーでロックするだけのシンプルな構造
軽いポンピングでさくさく作業できる
4. レビュー③:LAND CAST マジックポンプ
携行性 ★★★☆☆
ショートモデルで全長18cm。L字形状なのでそれなりに場所を取ります。ツールケースには入らないので、フレームに取り付けたり(アタッチメント付属)、バーバッグに入れて携行します。
プロダクトデザイン ★★★☆☆
洗練されたレザインやトピークと並べると“中華感”は否めませんが、価格を考えれば相応のつくりだと感じられます。
質感は価格相応に感じられる
作業性 ★★★★☆
押しても引いても空気が入るダブルアクション機構を備えた本製品。実際に入る空気量もポケットドライブ比で多く(300回3.9bar)、価格に対してパフォーマンスが高いと言えます。
トピークほどではないもののポンピングも軽く、300回までそれほど苦労することなく進められます。ただ公式ページに記載された“全ての携帯ポンプを過去にする”というコピーは誇大広告に感じられます。
バルブに差し込んだあとリングを回して固定するシンプルな構造
ダブルアクションで空気が入りやすい
5. 結論
LEZYNEは触っていて最も心浮き立つ質感で、持ち運びやすさも随一ですが、実際の作業では負担が大きく、いざ使うとなったときに心許なく感じます。
TOPEAKは構造がシンプルで、作業が非常に楽。あらゆる項目で最もバランスに優れていると感じられます。
LAND CASTは価格が手頃で作業性も高いので、コストをかけたくない場合に最適です。
これらの評価から総合的に判断し、個人的に手元に残したのはTOPEAKです。ただLAND CASTという選択も捨てがたく、TOPEAKの約半分のコストで一定の実用性を得られる点は大きなメリットです。
おすすめ度 ★★★★★:TOPEAK ローディTTミニ(¥5,390)
おすすめ度 ★★★★☆:LAND CAST マジックポンプ(¥2,540)
おすすめ度 ★★☆☆☆:LEZYNE ポケットドライブHP(¥4,950)
6. 携帯ポンプの必要性と携行方法について
出先で携帯ポンプが必要になるタイミングは、パンク修理か空気圧調整。
パンク修理:パンク時に空気を入れる手段はCO2インフレーターもありますが、失敗するとリカバリーできず、またスローパンクでは何度も止まって空気を入れる必要があるので、安全策として携帯ポンプの携行を推奨します。
空気圧調整:ロードバイクではあまり空気圧調整をしませんが、グラベルバイクで舗装路と未舗装路をミックスするライドのときに役立ちます(未舗装路に入る手前で空気を抜き、舗装路に入ったら空気を入れ直す)。
どう持ち運ぶ?
フレームに取り付ける:携帯ポンプにはボトルケージにポンプを固定するためのアタッチメントが付属しています。フレームの外観を損ないますが、最もシンプルな選択肢。
バッグに入れる:ハンドルバーバッグやフレームバッグなどに入れることも可能。バッグを常用しているなら、いつも中にポンプを入れておけば忘れることはありません。
ツールボックスに入れる:高さのあるツールボックスであれば収納可能。ただスペースを圧迫するのでほかに何を入れるかで取捨選択します。
バックポケットに入れる:ジャージのバックポケットで運ぶこともできます。フレームに何も取り付けたくないサイクリスト向き。
著者情報
Tats Shimizu(@tats_lovecyclist) 編集長&フォトグラファー。スポーツバイク歴11年。ロードバイクを中心としたスポーツバイク業界を、マーケティング視点を絡めながら紐解くことを好む。同時に海外ブランドと幅広い交友関係を持ち、メディアを通じてさまざまなスタイルの提案を行っている。メインバイクはStandert(ロード)とFactor(グラベル)。 |