iPhone 16 Proレビュー:ライド用カメラとしての実用性と作例。

iPhone16 Proを使い始めて1ヶ月半経った。これまで使っていたのは14 Pro。
iPhoneを最新化する目的はほぼカメラの性能向上なので、買い替え以降いろいろとカメラの実力を測ってみた。
この記事では、16 Proのカメラ周りの設定と作例を中心に最新機種をレビューしていく。

*本記事は改正道路交通法で規定される安全運転義務に反する内容は含まれておらず、走行中のスマートフォン使用を推奨・推進するものではありません。

text & photo / Tats@tats_lovecyclist
model / Anna, Taka, & Hiro

iPhone 16 Proカメラスペック

最新のiPhone=最新のコンデジ。トリプルレンズはあらゆる画角を網羅する

▼背面カメラのスペック(抜粋)

  14 Pro 15 Pro 16 Pro
レンズ 超広角 13mm
12MP, f/2.2
13mm
12MP, f/2.2
13mm
48MP, f/2.2
広角 24mm
48MP, f/1.78
24mm
48MP, f/1.78
24mm
48MP, f/1.78
望遠 77mm
12MP, f/2.8
77mm
12MP, f/2.8
120mm
12MP, f/2.8
Apple ProRaw
4Kビデオ撮影 24〜60fps 24〜60fps 24〜120fps
Logビデオ撮影
アクションボタン
カメラコントロール  ● 

毎年「カメラしか変わっていない」と揶揄されるiPhoneだが、そのカメラの進化が著しく、特に16 Proはスペックだけ見てもすごい。焦点距離が13-120mmをカバーできるし、動画は4K60fpsまでLog撮影できる。

レンズは超広角と望遠が進化した。
超広角レンズ(13mm):12MP→48MPのマクロ撮影ができるようになった
望遠レンズ(120mm):3倍→5倍の光学ズームに対応するようになった

真ん中の広角レンズは14 Proのときから変化はない。センサーサイズも1/1.3インチのまま(今後大型化を期待したい)。ちなみにフロントカメラも進化はないが、自撮りが苦手でほとんど使わない。

個人的に期待していたのは、Logビデオ撮影カメラコントロールでの撮影体験の変化。結論から言うと、前者は素晴らしいが、後者は微妙だった。

 

カメラコントロールとアクションボタン

カメラコントロール

コンデジにような横持ちポジション。人差し指の位置にあるボタンでズーム倍率などの設定変更ができるようになったが…

16 Proには新たにカメラコントロールボタンが右側面に追加された。このボタンでは、カメラアプリの起動のほか、シャッター、ズーム倍率、設定変更ができる。
使う前はコンデジのように撮影体験が向上するものだと思っていた。でも実際は、要求される操作が繊細すぎて、操作ミスや反応しないことが頻繁に起きる。正直、ズーム倍率や設定変更は縦位置のUIを使ったほうが普通に早い。

ボタンが端末底面から微妙に遠いのでシャッターも押しづらい

ただカメラの起動ボタンとしては優秀で、ロック画面でダブルクリックすると、ノールックで即座にカメラが立ち上がる。前機種ではいかに素早くカメラを起動するかに苦心していたが、カメラコントロールのおかげで瞬時にカメラ起動できるようになった。
今のところ、カメラコントロールボタンはカメラ起動の役割だけを担わせている。シャッターは音量ボタンを使った方が誤動作が起きない。

縦持ちでも横持ちでもシャッターは音量ボタンを使ったほうが押しやすい

アクションボタン

音量ボタンの上にあるアクションボタン

15 Pro以降、左側面にはアクションボタンが搭載されている。アクションボタンを長押しすると、あらかじめ登録しておいた機能やアプリを呼び出すことができる。
もちろんここからカメラアプリも起動できるが、代わりに動画撮影用アプリ『Blackmagic Camera』の起動を割り当てている。

プロ向けなのに無料で使えるBlackmagic Camera

動画撮影は純正カメラよりBlackmagic Cameraの方が調整できる範囲が大きい。Log撮影できるし、手ぶれ補正が純正よりも優秀。

記録として撮るなら純正カメラでも十分だが、ポストプロダクション(後工程)を考えるとBlackmagic Cameraで撮ることがほとんどになった

撮影の役割を2つのボタンに与える

写真→純正カメラ、動画→Blackmagic と役割を決めることで、どちらかを撮りたいタイミングで瞬時に撮影開始できる

ということで、写真撮影するときはカメラコントロール、動画撮影するときはアクションボタン、という割当になっている。コンデジと比較したiPhoneの最大の弱点は、カメラ起動の手間と遅さだったが、専用ボタンを2つ割り当てられるようになったことで、ようやくコンデジの撮影体験に限りなく近づいたと言える。

さらにスマホ用マウント(Peak Design)を使うことでタイミングを逃さない

 

写真作例

iPhone 16 Proで撮影した作例を載せていく。すべて写真モードを使ってProRAWで撮影後にLightroomで現像したもので、ポートレートモードなどほかのモードは使用していない。今のiPhoneがどれくらいの実力なのかを知る参考にしてほしい。

※モデル:Anna, Taka, & Hiro

望遠レンズだと圧縮効果もあって、これまでのスマホらしくない画になる

センサーが小さいので暗部は解像感が弱い。無理やりソフトウェア処理で補っているという感じで人物のディティールも潰れる

寄ったときの解像感は良い。カメラ側の設定をせずにシャッターを切ってもこれだけの画になるのはさすが

これも寄り。望遠が120mmになったことでポートレート構図が撮りやすくなった

アウトフォーカスになっている文字の滲み具合に不自然さを感じるが、コーヒーの質感は良く出ている

光が少なくてもこちらに向かってくる被写体をブレずに収められる

iPhoneのカメラはシャッタースピードを手動変更できないが、林道のような暗い場所で撮ると自動的にシャッタースピードが遅くなるので、流し撮りができる

連射するとRAWで書き出ししてくれないので、動いているサイクリストを撮るときは狙ったタイミングでシャッターをうまく切る

山と雲、アスファルトの質感がいい感じ

機材だけの写真は記録的で面白味はないので、撮るときは陰影などを意識する。これはフレームの表情がちゃんと出ている

 

4K動画からの静止画書き出し

16 Proにしてもうひとつやりたかった撮り方が、動画をLog形式(Apple ProRes Log)*で撮影し、動画編集ソフトでLUTを当ててから静止画を書き出すというもの。iPhoneは15 Pro以降Log形式で撮影できるようになり、動画でもカラーグレーディングが容易になったが、それを応用して動画の1コマを写真として使ってしまう。

*Log形式 … 撮影時の明部/暗部の情報が豊富に保存される形式。あとでPremiere Proのような編集ソフトを使って色味や明暗の調整が細かくできる

スマホの画面で表示させる分には4Kの解像度でも耐えられる

iPhoneでは写真を連射するとProRAWで保存できないため、乗車中の状態を適切に撮るのが結構難しい。動画を撮って書き出せば、そのシーンで最も格好良いポジションを捉えることができる。手間はかかるし、解像度は写真に劣るが、失敗が少なくなる。

スプリントの速度を写真で捉えようとするとシャッターを押すタイミングが難しい。動画切り出しであれば最適な構図を選べる。ただしこの画像からわかるように、iPhoneの動画は逆光に非常に弱いので、カメラマンの立ち位置は要注意。

これは書き出したものをさらにPhotoshopで手を加えているが、4Kの解像度があれば表現の自由度が高い

 

iPhoneの実用性とコンデジの存在

iPhoneをカメラとして見たとき、14 Pro使用時はまだコンデジに分があると考えていたが、16 Proの撮影体験とアウトプットはほとんどのコンデジを上回るようになった(APS-CセンサーのGR系やX100系を除く)。iPhoneではシャッタースピードや絞りが調整できないため画作りに限界があるのは確かだが、生成AI活用や動画書き出しなどで工夫のしようはある。
動画撮影も、強力なセンサーシフト式手ブレ補正を備えるiPhoneが圧倒的に優秀になっている。

スマートフォンカメラの進化が著しい中、比較対象となっていたコンデジは新機種の投入が少なくなり、両者の差が埋まった。コンデジの代表格だったSony RX100シリーズも、2019年発売のM7から新モデルは投入されていない。
今コンデジは、FUJIFILM X100VIのような高級路線、SONY ZV-1FのようなVlogカメラ路線、RICOH G900IIのようなタフネス路線など、専門的な用途や独自のニーズに応える方向にシフトしている。こうした方向性は、ライド用カメラとして考えるとちょっと用途とズレてきてしまう。オールドコンデジも昨今は注目されているが、趣味性が高いためiPhone比較という文脈からは外れる。

「カメラ何がおすすめ?」と聞かれたら、数年前だったら予算に応じてコンデジかミラーレスのどちらかを答えていたが、今だと最新のスマートフォンかミラーレスの2択になる。特にライド用カメラとして考えるなら、ほとんどの人にとっては最新のスマートフォンを買った方が幸せになれる時代になったと感じる。

というわけで、今後も16 Proをカメラサブ機として使いながら、撮影の引き出しをさらに増やしていく。

その他気に入った/気になった点

カメラ以外のアップデートについて個人的なトピックをいくつかピックアップ。

◎ 電池持ち:かなり良い。iOS18から充電上限が設定できるようになり、90%で設定していても1日持つ。上限を設定することで、バッテリー寿命が伸びやすくなっている(iPhone15以上で設定可能)。

◎ Safariの「気になる項目を非表示」:iOS18からSafariでナビゲーションメニューや広告など閲覧を阻害するものを非表示にできるようになった。

ショートカットに「コントロールセンターの表示」が追加:iOS18.1から追加された。通常コントロールセンターは画面右上からスワイプダウンして表示させるが、片手操作するときに遠すぎて親指がつる。画面下端にショートカットアイコンを置くことでコントロールセンターの表示が簡単になった。地味に嬉しい。

△ Lightning→Type-C:可もなく不可もなく。ほかの家族はLightningのiPhoneだし、家の中ではmicroUSBさえ撲滅できていないのでオールC化は数年後になりそう。

Apple Intelligence:現在は米国のみ。日本語は来年対応予定。

iPhone 16 Pro 6.3インチ 米国版 SIMフリー【eSIM専用】5G 用 ミリ波 対応 (デザートチタニウム, 256GB)
Interactive Communications International

著者情報

Tats Tats Shimizu@tats_lovecyclist
編集長&フォトグラファー。スポーツバイク歴11年。ロードバイクを中心としたスポーツバイク業界を、マーケティング視点を絡めながら紐解くことを好む。同時に海外ブランドと幅広い交友関係を持ち、メディアを通じてさまざまなスタイルの提案を行っている。メインバイクはStandert(ロード)とFactor(グラベル)。

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