Raphaはただのアパレルブランドではなく、グローバル規模で最も大きなサイクリングコミュニティを形成しているブランドだ。クラブハウスやRCCを軸にした強固なコミュニティの枠組みは、他業種のスポーツウェアブランドも参考にするほど、突出した成功事例と言える。
Raphaについては2017年と2019年にブランド分析を行っているが、それから数年が経ち、競合の台頭やコロナ禍を超えてなお、未だに新たな自転車スタイルを最前線で切り開く存在であることは変わっていない。だから再びRaphaにスポットライトを当てたいと思い、今回はRapha Tokyoの協力のもとで初めてプロダクトのレビューを含む企画となる。
レビューするのは、RCCメンバーのHaseと、Raphaをはじめさまざまなブランドを着こなしてきたMeiのふたり。それぞれのRaphaとの関係性を紡ぐストーリーを追いながら、ブランドとプロダクトの現在地を追っていく。
レビュアー
Mei(@meisan_no_yakata) Love Cyclistアソシエイト。デジタルマーケティング会社に勤務するビジネスパーソン。ブルベやヒルクライムなどさまざまな自転車の楽しみ方に触れてきた中で、今は「ひと山、ひとカフェ」というライドスタイルを確立。所有バイクはCervélo Caledonia-5。 |
Hase(@hxsx_ryxhxx) RCCメンバー。ある程度辛さのあるライドを好み、ほかのRCCメンバーと毎週のようにハードなコースを走る。ソロライドではシングルスピードバイクでのロングライドやヒルクライムにハマり中。思うがまま非合理的な縛りプレーを好んでおり、全体的にM気質。所有バイクはOpen Cycle U.P , Cinelli Superstar discなど。 |
Review / Mei & Hase
Edit & Photo / Tats [PR]
Contents
1. 「プロ」を冠したウェア
クラブハウスマネージャー福田氏
「Raphaを選ぶならやはり『プロチーム』を着てほしいと思います」とRapha Tokyoクラブハウスマネージャーの福田氏は言う。
Raphaは常にレースの最前線で戦ってきたから、勝利を勝ち取るために研究開発を重ねている。だからこそ主力の『プロチーム』コレクションは名ばかりではなく、激しい勝負の世界で通用するためのものとなっている。
「『コア』シリーズ*を選ぶ方は多いですが、やはり着心地は全然違うものです。」
*エントリー層向けのオールラウンドモデル
コアだけを着て、Raphaのウェアはこういうものだ、と判断するサイクリストは実際に多いのかもしれない。ただコアは購買層を広げるための後発のコレクションであり、プロチームはブランドの初期からあるラインナップだ。
プロチームジャージの大枠は現状2種類ある。改良された最新の『プロチーム』と、従来のプロチームをベースにした『プロチームトレーニング』。
同じプロシリーズでも2つのつくりや着用感はかなり違う。MeiとHaseの比較レビューはどちらがフィットするか参考になるだろう。
※ウェアに対する評価は2人とも大きく変わらないが、レビュー表現は感覚が伝わるように各自が感じたものをそのまま掲載している
2-①. MeiとRaphaの関係性
ブルベジャージがRaphaとの出会いだった(写真は2019年)
Meiが自転車をはじめた8年前、ショップにウェアを探しに行くと、いかにマシなものを選ぶか、という気持ちで買い物するしかなかった。それだけ選択肢が限られていた時代のことだ。
しばらくはマシだと思えるウェアで走り続けていたが、あるときRaphaの存在に気づく。求めていたウェアに出会えたと思って、それからバイトで貯めたお金を大事に持ってブルベジャージを買ったことが、彼女とRaphaとの関係のはじまりだった。
当時は学生だったから、「もうこれ以上サイクルウェアは増やさなくていいな」と思っていたものの、ラインナップを見るほど、色とりどりの世界が目の前に開かれて、次第にウェアの深い沼にハマっていく。
こういった流れを辿るサイクリストは本当に多いだろうと思う。僕たちにとって、自転車は機材以上にスタイルが大事なのだと気づかせてくれるブランドがRaphaだった。そこから変わらずRaphaを選び続けるか、あるいはほかの海外ブランドにも目を向けるようになるかの違いはあるにしても。
「色んなブランドを着るようになった今でも、シューズや、アイウェア、ポーチなど、主に小物でRaphaを取り入れて楽しんでいます。Raphaのアイテムの持つ抜け感が気に入ってるんです。」
Meiは後者だけれど、Raphaとの関係は今に至るまでずっと続いている。
「Raphaは幅広くサイクリストの声を聞いているなと感じます。自転車を始めたての自分にとってはもちろん魅力的なブランドだったし、長年楽しんできた今になると、さらにその魅力がわかるようになりました。」
昔は「Raphaしか選択肢がないからRaphaを着る」だったのが、今では「Raphaを着たいからRaphaを選ぶ」と、ウェア選びのスタンスも変わったとMeiは言う。多様なブランドがある中でも、Raphaには常に選択肢に入れたくなる、変わらない魅力がある。
2-②. レビュー:ウィメンズプロチーム
プロチームトレーニングコレクション
ウィメンズ プロチーム トレーニング ジャージ(¥16,500)
ウィメンズ プロチーム トレーニング ビブショーツ(¥27,500)
ジャージのカラー「サンド/ローズブラウン」は、落ち着いたトーンだけれど、遊びのある色合わせで、ちょうど良い可愛さを生んでいる。
Mei「この色味!無茶苦茶可愛くないですか…!!!ラブリーになりすぎないのでとても気に入っています」
プロチームコレクション
ウィメンズ プロチーム ジャージ(¥25,500)
ウィメンズ プロチーム ビブショーツ(¥39,000)
「トップグレードのウェアだから、パキッとした見た目と少し抜け感が欲しかったので、グリーンをチョイスしました。」というプロチームジャージは、大人びたグリーンにイエローの差し色が格好良い。襟元のストライプもアクセントになっている。
ジャージ特徴比較
プロチームジャージ | プロチームトレーニングジャージ | |
フィット感 | – 身体にフィットする – 全体で体に沿う感じ |
– 身体にフィットする – 腰と腕のバンドで締まる感じ |
生地感 | – 前面背面ともに薄く高密度の生地 – 軽さがあっていい |
– 前面がメッシュ、背面が普通の布地 – 全体的にしっかりしている |
速乾性 | – どちらもサラサラすべすべで、着ていて気持ちがいい | |
ポケット | – 内側がメッシュ素材で熱が籠りにくい | – 一定の深さがあるため使いやすい |
『プロチーム』の方がフィット感、触り心地、通気性などが良いつくりになっている。「全体で体に沿う感じ」という表現は、まさに今のウェアづくりのスタンダードとなるべき状態だ。
より上質な体験を得たいなら『プロチーム』だが、『プロチームトレーニング』もプロ級だしカラバリも豊富なので、色味で遊びたいときはこちらも良い選択肢だと思える。
ビブショーツ特徴比較
プロチームビブショーツ | プロチームトレーニングビブショーツ | |
フィット感 | – 全体をキュッと引き締めて包み込んでくれる感じ – 丈感がショートでスタイルを良く見せてくれる – 裾のグリップは程よく動きを妨げない |
– 全体的に厚みがありタフな感じ – ちょっと裾のグリップがソーセージレッグになりやすいのが△ – 丈感がショートでスタイルを良く見せてくれる – 裾のグリップは少し窮屈感がある |
生地感 | – 肌触り良く速乾性が高い | – 気持ち分厚めで、履き倒せそうなタフな感じ |
肩紐 | – 生地は薄いが幅広なので安心感がある – 背面に無線ポケットあり |
– 一般的な紐のつくり – 肩紐にどーんとRaphaの文字が刻まれてるのがカッコよい |
パッド | – どちらもしっかりとした厚みと幅がある |
どちらも見た目の違いはほとんどなく、より自然なフィットという意味では『プロチーム』に軍配が上がるが、タフに履き倒したい場合は『プロチームトレーニング』も良い。
プロチームトレーニングビブが生む脚の「段差」は気になるかもしれない
包み込むようなフィットと短めの丈感のプロチームビブ
3-①. HaseとRaphaの関係性
RCC歴3年となるHase
RCCメンバーであるHaseは、同じクラブメンバーと一緒に、毎週のようにハードなライドを楽しんでいる。彼にとってRaphaウェアの良さは何かと聞くと、少し考えてこう答えた。
「スタイルがあって、機能面でも品質面でも他のブランドより優れていると感じています。ただRapha以外にもおしゃれなブランドがあって、目移りしそうになるのは正直なところです。」
“目移りする”という言葉は、ほかのRCCメンバーからも聞くことがあった。それでもRaphaだけを着続けているのはどうしてだろう。
「ウェアだけでなくて、コミュニティメンバーの存在とか魅力的なイベントの開催とか、サイクリングカルチャーを支えていることが、ずっと支持したいブランドだと思わせてくれます。」
Raphaの活動が自転車カルチャーを下支えしていることは、RCCメンバーではないサイクリストにも知られていることだ。
プレステージ、ウィメンズ100、フェスティブ500などRaphaが企画するライドイベントは、ブランドの枠を超えて幅広いサイクリストに走るモチベーションを与え、新たなコミュニティの形成にも寄与している(Meiもウィメンズ100を通して新しい女性サイクリストとの繋がりを得ている)。
「個人的には、販売収益が転移性乳がんの研究に寄付される『ワンモアシティ』キットの発売には、自身の経験もあって非常に感銘を受けました。」
Raphaは自転車文化をより良い方向へ進めるための社会的な活動を多角的に行っている。『ワンモアシティ』以外にも、自閉症児へのサポートを行う『アンビシャス220』や、世界中の自転車競技団体を支援する『ラファ ファウンデーション』といったように。
こうした活動は、ほかのブランドに目移りしたとしても、変わらずRaphaを選ぶことに対して、十分な説得力を与える。
これからもRaphaを選び続けるというHase
コラム:RCCと交わって
Raphaを語る上で外せないのが、コミュニティの根幹を成すRCCだが、外から見ると、RCCはどこか閉鎖的で近寄りがたいコミュニティのように感じる(ダークネイビーのRCCキットが余計に威圧感を与えている)。本当にそうなのだろうか。
今年に入って、ひょんなことからLove CyclistメンバーとRCCメンバーは、一緒に定期的にライドをするようになった。
RCC x Love Cyclist ©Satoshi Fukuda
その中で感じたのは、メンバーひとりひとりが持つスタイルの多彩さと、コミュニティが持つナレッジの豊富さだった。
同じブランドの中にさまざまなスタイルを持つメンバーがいるRCC。真摯に競技に取り組む者もいるし、Haseのようにシングルスピードの非合理的な縛りライドを好む者もいる。Raphaウェアのラインナップが、さまざまなスタイルを許容する素地になっている。
各メンバーの知見が、ライドの度にコミュニティ間で共有され、ライドをするたびに何度も咀嚼され最適化していき、それがコミュニティ全体にゆっくり浸透していく。
そうして生まれるライド・機材・スタイルなどに対するナレッジは、ショップのような単一コミュニティだけでは到達するのが難しい幅と奥行きを持っている。
閉鎖的だと思っていたコミュニティは、実際は想像以上に開放的で得られるものが大きい場所だった。
HaseがRaphaを選ぶ理由を「ウェアだけではない」と言ったのは、サイクリングカルチャーを下支えする活動に加え、RCCによる無二の体験価値という、重層的な要素からくるものだということがわかる。
3-②. レビュー:メンズプロチーム
プロチームトレーニングコレクション
プロチーム トレーニング ジャージ(¥16,500)
「Raphaは小文字ロゴの方がデザイン的に個人的に好みなのですが、プロチームならでは大文字ロゴは力強さ、堅牢さを感じてこれもこれで良いなと思っています。」とHaseは言う。『プロチームトレーニング』のイエローは一見派手だけれど、着てみると不思議と落ち着きのあるトーンだ。
プロチームコレクション
プロチーム ジャージ(¥25,500)
プロチーム ビブショーツII(¥39,000)
『プロチーム』はシンプルなネイビー1色と思いきや、袖は細いストライプになっていたり、裾にはエンボス加工のようなロゴマーク、首元のファスナーを下げると“路上の囚人”を意味するボーダーがちらりと見えるなど、細部へのこだわりが見られる。
ジャージ比較
プロチーム | プロチームトレーニング | |
フィット感 | – 肌にピッタリ沿うような感覚 – 袖口が柔らかく好み |
– 肌にピッタリ沿うような感覚 – 袖口が硬くアームカバーとの相性が良さそう |
素材 | – 前面背面ともに薄く高密度の生地 – 上品な質感がたまらない |
– 前面がメッシュ、背面が普通の布地 |
速乾性 | – いずれも乾きやすく、汗やドボンしたあともすぐに乾いて汗冷えしない | |
ポケット | – 使いやすい – 物を入れても垂れ下がらない |
– 使いやすい |
2つの感じ方の違いはMeiとほぼ変わりなく、特に『プロチーム』は「ベースレイヤーは無くていいなと思ってしまいます」とHaseが思えるほど、素材や縫い目の肌当たりが心地よい。前傾姿勢をとることが自然になるような型・裁断のようで、キビキビ走るのが楽しく感じる。
ビブショーツ特徴比較
※撮影時は『プロチーム』のみ着用していたため、Haseが普段履いている「コアビブショーツ」との比較となる
プロチーム | コア | |
フィット感 | – 履いているときはコアと同じ印象 – 漕いでいるときにサドルとのコンフリクトがない – ダンシングする際のサドル離れが良い |
– 履いているときはプロチームと同じ印象 – 漕いでいるときにサドルとコンフリクトが発生する – ダンシングする際に引っかかりやすい |
生地感 | – 肌触りの良い生地 – 通気性や速乾性が高い |
– 普通の生地 |
肩紐 | – プロチームはメッシュ素材で速乾性に優れるが、肌触りの好みは分かれそう | |
パッド | – 厚さはどちらもそこまで変わらないが、プロチームは肌に当たる面の加工や絶妙な配置の調整があって、たぶつくような感覚がない |
普段は『コア』を履いているHaseだが、初めて『プロチーム』で走った感想を聞くと「これはコアシリーズには戻れないな…」という、作り手がニヤリとするような回答だった。
履いた瞬間は違いがそれほどわからないものの、走ってみるとサドルとの相性がよく考えられた生地やパッドの配置なので、レースのようなシリアスな場面ではマージナルゲインに一役買うはず。レースシーンでなくても、ピュアにライドを楽しむことができるという点では『プロチーム』のメリットは大きい。
サドル上のストレスを消失する『プロチーム』。肌と生地の境界が滑らか
4. いつもここから。
Raphaのクラブハウスに行くと、いつも歓迎されていると感じる。落ち着いたトーンの接客は心地良く、試着体験はわくわくする。たとえほかのブランドを着ていたとしても「全然気にしなくて良いですよ」とスタッフたちは口を揃えて言う。
その心地良い体験は、ロードバイクを買って間もないころに初めて訪問したときから変わっていない。
「憧れのおしゃれなウェア」の原点がここにあって、原点だけれど、行くたびに最前線に触れることができる。これからもRaphaから新たな価値が生まれ、僕たちサイクリストをわくわくさせてくれるだろう。
その行末を測る基準が『プロチーム』であり、進化し続けるそのつくりは、これからも変わらず注目していたいと思う。
Review / Mei & Hase
Edit & Photo / Tats
[PR]提供 / Rapha Japan