Text by Tats(@tats_lovecyclist)
美しいヘルメットの潮流が来る。
かつて僕がロードバイクを始めて間もないころ、ヘルメットはあくまで機能性商品という認識しかなかった中で、数え切れないほどたくさんのヘルメットを所有している仲間がいました。
会うたびに違うヘルメットを着けてくる彼に対し、なぜそんなにヘルメットが必要なのかと聞いたとき、彼が「ファッションだから」とさらっと言い放ったことは、その後の僕のスタイル形成に少なくない影響を与えました。
そして数年経ってトレンドが少し移り変わった今、ロードヘルメットには新たな潮流が生まれています。
その渦の中心にいるのが「Sweet Protection」。今アツいこのブランドの最新ヘルメットFalconer IIを詳しくレビューしていきます。
レビューの前提条件
- ・筆者の頭部は周長57cm、楕円型
・Falconerの着用サイズはM
・ユーロフィット/アジアンフィットの2モデル存在する場合はいつもユーロフィットを選択
※本記事で使用するヘルメットはTOKYO WHEELS提供のものです。
Sweet Protection – スウィートプロテクション
ヘルメットブランドは数多くありますが、優れたスタイルを持つブランドの選択肢はある程度絞られてくるもの。
そこにはKASK、GIROといったメジャーブランドだけでなく、POCやSmithといったコアなファンを持つブランドが存在します。そして最近、ノルウェーのブランド「Sweet Protection」が新たにその潮流に加わりました。
©Sweet Protection
Sweet Protectionの設立は2000年。
この歴史あるブランドは、90年代のスケートボードやフリースタイルカヤックによって作られたカルチャーの影響を受けながら、スキー・スノーボード・MTBなどアクションスポーツのプロテクションギアを開発してきました。
ロードヘルメットをリリースしたのは、まだ遠くない2017年のこと。
「身につける人を鼓舞し、その限界を押し上げる」というコンセプトを元にした高品質なプロダクトは、洗練されたライドスタイルを求める今の時代の流れによって、Sweet Protectionを一気に人気ブランドへと押し上げていきます。
Falconer II MIPS – ファルコナー II
Sweet Protection – Falconer II MIPS
カラー | マットブラッククローム / マットホワイト / マットネイビー |
重量 | M 280g / L 300g |
価格 | ¥37,800(税抜) |
ファルコナーは『Design & Innovation Award 2017』のロード部門を受賞しており*、そこで高く評価されたのは「スピードとスタイルが2in1となったクールな世界観」という点。
その後継モデルとなった“ファルコナーⅡ”は、従来のデザインは踏襲したまま「MIPS搭載モデル」と「エアロモデル」を展開しています。そして今回レビューするのはMIPSモデル。
*ドイツで毎年開催されている、自転車業界の優れたプロダクトをカテゴリ別に選出するイベント
デザインがつくる完全性
北欧デザインが導くもの
北欧デザインの特徴は、「線や色を多用しない」「同じパターンを繰り返す」など、飽きのこないシンプルさにあります。
IKEAの家具、マリメッコのテキスタイルといった、僕らが北欧でイメージするようなもののベースにあるのは、長い冬を家の中で過ごす北欧のライフスタイル。同じ場所でずっと過ごしても飽きず、そして少し心が和むようなデザインになっています。
シンプルで飽きのこない北欧テイスト
こうしたコンセプトの全体感は、バイクギアにおいても、 たとえばデンマークのブランド「Pas Normal Studios」のジャージや、スウェーデンの「POC」のヘルメット/アイウェアを見ても明らか。
Falconerのデザインプロセス
そしてノルウェーのSweet Protectionに目を向けると、そのデザインプロセスはこれまでのヘルメットとは全く異なることが見て取れます。
多くのヘルメットは、いかに空力や重量を考慮しながら球状になるようにいくつものパーツを繋いでいくかというプロセスが一般的。そこにあるのは足し算によるデザインの形成。
対してFalconerは、まず最初につるりとした球状が存在します。そこからまるで彫刻をするように、内在する運命的な形状を削り出しているかのよう。この引き算のプロセスによって、まったく無駄のないプロダクトデザインとなっています。
ひと目で洗練されていると感じるのは、その形状に何かを足したり引いたりする必要のない完全性があるから。
被ってわかる、そのスマートさ
だからこそ、被ったときのシルエットも驚くほどスマート。
ヘルメットは、フレームと同じようにエアロ化や軽量化が進行しています。
特にエアロ化を受けて、以前よりも凹凸の少ないすっきりしたフォルムがよく見られるようになりました。でもFalconerのすっきり感は、ほかのどのヘルメットの追随も許さないほど。
空気の抜けが良いエアロ形状
そしてフィット感も「ヤバい」の一言。僕の頭部の形状は比較的楕円形なので、普段のヘルメットはユーロフィットを選択していますが、Falconerも絶妙なフィット感。ただGIROのように完全な楕円というより、少しアジア系寄りの楕円なので、ユーロフィットが合わない方もフィットしやすそうに感じます。
KASKのようにアジャスターを上下させて被りの深さを調節することが可能
ストラップは柔らかいナイロン製
ロードスタイルのレベルを引き上げるカラーリング
ヘルメットは白と黒ひとつずつあればどんなコーディネートにも対応できますが、シンプルなウェアを着るときは、ほかの部分で違いを出したくなることがあります。
Falconer IIのカラーバリエーションは、白や黒のほかにもマットネイビーが存在。これが絶妙に良い色…!
単純にネイビー1色を塗っているのではなく、マットとグロスを塗り分けることで立体的で存在感のあるシルエットを生んでいます。
ロゴにはキャメル色。ネイビー地には絶妙な差し色が最高
限界を押し上げるプロテクション
安全性に関しても、EUの厳格な安全規格「CE EN1078」を満たしており、他メーカーと差異はありません。
回転性衝撃を緩和するイエローのMIPSシート
そしてMIPS(多方向衝撃保護システム)も搭載。
落車したときに、頭部には回転性の衝撃が与えられることが多いことから、その衝撃を緩和して脳障害リスクを軽減するために生み出された構造がMIPS。
ヘルメットの内部に黄色いシートが1枚配置されていて、回転性の衝撃が加わったときに、そのシートが頭の動きに合わせてずれることで、衝撃エネルギーを逃してくれるような構造です。
ミニマリズムに込められたすべてのもの
ヘルメットに対して僕らが最も求める要件は“安全性”ですが、それをクリアしたモデルが数多く出回っている中では、次に「どれだけ僕たちを興奮させてくれるのか」ということが選ぶ基準になります。
Syntheをレビューしたときも興奮が止まらない気持ちでしたが、Falconerも「早く明日これを着けて走りたい」というムラムラした感情が溢れ出るヘルメット。
ミニマムな形状の中で込められた、安全性と、エアロと、デザイン。
すべてが凝縮されたFalconerは、僕が望むスタイルへと導いてくれる大好きなヘルメットです。
Highs
- ・無二の北欧ミニマルデザイン
・帽体が小さく超スタイリッシュ
・頭部のフィット感が絶妙
・MIPS搭載による安心感
Lows
- ・アジアンフィットがない
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