ロードバイクが与える身体への影響、とりわけセックスに関連すること

ロードバイクに乗るということは、健康的な肉体を手に入れたり、不要なストレスを発散させたりと、身体に対していくつかの良い影響を与えることにつながります。

反面、サドルから下りたときには、姿勢の悪化や体型の崩れなど、決して良いとは言えない問題も生じることがあります。さらに、長時間サドルに乗り続けることによる生理的な影響(特に妊娠可能性への影響)も男女問わず懸念事項として常に存在しています。

ものごとには良い側面と悪い側面があり、ロードサイクリングにおいても例外はありません。そこで、それぞれの側面から、ロードバイクに乗ることが身体に与える影響について詳しく見てみたいと思います。

1. ポジティブな影響

まずはポジティブな側面として、ロードバイクには以下のようなメリットが挙げられます。

若さを手に入れる

ロードバイクに乗る人に若々しく見える人が多いことは事実です。それは有酸素運動により基礎代謝が上がることで、細胞レベルで若返っているから。正しい食事と有酸素運動の組み合わせは若さを手に入れる近道。

ただ太陽光線だけは若返りの天敵なので、皮膚の老化を防ぐためにも日焼け止めをしっかり塗っておくことは忘れずに。

肉体の強化

筋トレをすると病気になりにくいと言われているように、筋肉に含まれるアミノ酸は免疫力を高めるもの。そしてロードサイクリングは、身体の中で最も大きな筋肉である太ももを強化するため、免疫力が大きく高まることが期待できます。

個人的にもライドの強度を上げるようになってから、本当に体調を崩すことが少なくなり、仕事にも良い影響が出ています。繁忙期で周りがばたばたと体調を崩していく中でも、ひとりだけ元気でやることが増えるという状況(いいのか悪いのか)。

ボディシェイプ

定期的な肉体への負荷がもたらすダイエット効果はもちろん高く、毎週乗り込んでいるサイクリストはすべからく無駄な脂肪が削ぎ落とされてシュッとしている傾向にあります。

でもだからといって痩せていないロードバイク乗りを揶揄するのは的外れで、そういったサイクリストはほかのことに楽しみを見出しているのです。

精神の開放

仕事で鬱屈した気持ちを、走ることで発散することができるサイクリストは多いはず。
少なくとも走っている間はネガティブなことを考える必要もなく、精神が解放されるような気分になれます。それを習慣化することは心に良い作用をもたらすことにつながります。
その効果は、サイクリングがうつ病の発生を減少させるとも言われるほど。

よりセクシーに

男性について言えば、セクシーさというのは何も顔立ちに限った話ではありません。
何を持ってセクシーか判断するのは個人の嗜好に依存しますが、いわゆる「男性としての魅力」を磨くチャンスはサイクリングにはあります。
たとえばグループライド中に率先して集団を引く男らしさや、パンクなどのトラブル時にメンテを任せられる安心感もセクシーな要素。そして前述の肉体が強化されることによるセックスアピールもひとつのセクシー要素。

つまり本当の紳士に顔立ちは関係ないということ。ロードレースは紳士のスポーツと言われていますが、その精神性を普段のサイクリングから併せ持っておくことでセクシーな男性になることができます。

もちろん女性であっても、サイクリングをする健康的な女性が魅力的であることに間違いはありません。

 

2. セックスに関するネガティブな可能性

サドルしかしこれらの優れたメリットを見た上でも、サドルの上で長時間過ごすサイクリストたちの頭の中には、それがどのようなネガティブな作用を身体にもたらすのか、とりわけ股間に与える影響についての心配が常につきまとうことになります。
つまり、男性であれば精力の減衰やEDといった障害が発生する可能性があるかどうか、ということ。

果たして本当に悪影響があるのかどうか、いくつかの研究データ*を引用しながらまとめていきます。
*How will cycling affect my sex life?(cyclist.co.uk)

ロンドン大学の研究

5,300人の男性サイクリストに対し、「1週間あたりのライド時間」と「過去5年にED等不妊に関わる症状があったか」の2項目を比較調査しています。

結果、ライド時間は3.75〜8.5時間のサイクリストが多く、その範囲においてEDや不妊とサイクリングの相関関係は見出されませんでした。中には通勤も含めて週に200マイル(約320km)を走るサイクリストもかなり含まれていましたが、心配するほど影響はないことがわかりました。

さらには、「人が潜在的に持っている健康リスクも、ロードバイクに乗ることによる健康上のメリットの方が上回る」とサイクリングの良い側面の方を強く主張しています。身につく心肺能力やスタミナは間違いなく好影響となるはず。

ノルウェーの研究者による評価

324マイル(約520km)のライドイベントに参加した160人の男性サイクリストに、イベント後インタビューを実施したところ以下のことがわかりました。

  • ・20%(5人に1人)が陰茎の麻痺を経験していた。そして中には1週間以上麻痺が続くケースもあった。
    ・13%(男性21人)は、1週間以上勃起不全を発症した。

ネガティブな結果となっていますが、ロンドン大学の研究と違うのは、ライド条件が極端に過酷であること。長距離のブルベであるほど、股間に対しては悪影響があるのは間違いはなく、それが1週間以上の長期に渡って生殖機能を減衰させることになっていました。

都内泌尿器科のドクターの話

個人的な話となりますが、あるタイミングで泌尿器科のドクターに診てもらったときに、ロードバイクに乗ることによるセックスへの影響について聞いてみたところ、以下のような回答でした。

  • ・週末だけ乗るようなレベルであれば全く気にしなくて良い
    ・気にしなければならないのは、ツール・ド・フランスに出る選手のようにいつもサドルの上にいる場合

いちドクターの見解ですが、上の2つの実験結果と相関関係が認められ、過度なサイクリングでない限り大きな影響は考えにくいということが判断できます(自分のライドスタイルでは影響がないとわかっただけでも安心です)。

オランダの研究機関によるレポート(女性への影響)

女性への影響に関しては男性ほど研究が進んでいませんが、ISSMと呼ばれる性医学に関する研究機関が2016年1月に発表したレポートでは、ライド時に2時間以上乗ることを習慣化している女性は、男性よりも深刻な問題を引き起こす可能性があることを示唆しています。
男性は痺れや勃起不全などの症状が一般的ですが、女性の場合、摩擦による裂傷や打撲症状が引き起こされることがあるとのこと。

そのためライド時に少しでも痛みを伴う場合は、サドル形状ビブショーツのパッドに対し、男性以上に気を遣う必要があります。ただし上記と同様に、影響があるのは過度なライドを習慣化している場合がほとんどです。

もちろん人によって発生条件が異なるので、影響について正解がないという前提は変わりありません。ただ特にブルベを好むようなサイクリストにとっては、いわゆるEDといった直接的な影響は工夫をすることである程度回避できることが見込まれます。

股間への影響を抑えるためにできる工夫

  • ・適度にダンシングする
    ・股間のしびれが発生するようであればサドルの形状を変える
    ・サドルのセッティングを見直す(少し前に傾斜を付ける)
    ・長距離用の厚手パッドを搭載したビブショーツを着る
    ・陰毛を剃らない(毛は汗の蒸発を促してくれる)
    ・(そもそも)長距離を走らない

* * *

ネガティブな心配がつきまとうものの、長期にわたるロードサイクリングの習慣は、身体の状態と向き合うことに最適です。
体つきの変化を楽しむのもロードバイクの楽しみだし、どこかが痛むなら身体の声を効きながら改善していくのも自分の身体をよく知るためのステップとなります。

そうして僕たちは、絶えず風の力に押し戻されそうになりながらも、流れに逆らって力の限り漕ぎ進んでいきながら、セクシーなサイクリストになっていきます。