Udog CENTOレビュー:モダン×クラシックなダイヤル式シューズの新境地。

イタリアのシューズブランド「Udog」が、3番目のロードシューズ『CENTO(チェント)』を2024年3月にリリースした。2年ほど『CIMA』を愛用してきた身としては、待ちに待った新作だった。
サイクリングシューズに新しい価値をもたらしてきたUdogが、ブランド初のダイヤル式シューズで、どんな体験を足元に与えるだろうか。

*本記事のシューズはUdog提供のもので、レビューはLove Cyclistオリジナルのものです。

text / Tats@tats_lovecyclist

今度はレースアップではない

Udogは2022年創業当初、CIMAとTENSIONEという2つのモデルをリリースした。いずれもこの時代に珍しいレースアップ式で、ほとんどのブランドが採用しているダイヤル式は出してこなかった。

Udogのセカンドモデル「CIMA」

その理由を創業者のAlberto Fonte氏に聞いたところ、「レースアップは美的(aesthetical)だから」と言い切った。その考え方には頷くしかなく、ダイヤル式のシューズ(主にBOAを採用したもの)は、ほとんどが同質の機能的デザインに収束している。
対して、レースアップのCIMAとTENSIONEはオリジナリティと美的性能を持ち合わせていた。

Udog初のダイヤル式「CENTO」

そんなUdogがここに来てダイヤル式を出したのは、やはりUdogユーザーの声によるものが大きいという。特にレースシーンなどで細かい調整が必要なときに、ダイヤル式の利便性は何にも勝る。
ただUdogは、BOAダイヤルを採用することには躊躇し(おそらく“美的”ではないと判断したのだろう)、Udogオリジナルの「マイクロツイストダイヤル」を設計するに至った。

BOAより30%ほど大きいマイクロツイストダイヤル。歯車のような形状がデザインされている

CENTOとCIMAのスペック比較

モデル CENTO CIMA
サイズ展開 38-48(ハーフサイズなし) 38-48(ハーフサイズなし)
アッパー マイクロファイバー ニット
クロージャー マイクロツイストダイヤル レースアップ
アウトソール カーボンソール
剛性指数11.0
カーボンソール
剛性指数11.0
重量 270g(42サイズ) 240g (42サイズ)
価格 €295 / ¥47,300 €250 / ¥39,600

・アッパー素材がマイクロファイバーになっている
・アウトソールの剛性は変わらない
・クライマーモデルのCIMAと比較すると若干重量増
・価格差はCENTOの方が¥7,700高い

剛性指数11のアウトソール。ヒールカップは交換できない

付属インソールは柔らかいのでSolestarに付け替えて使っている

 
 
 
 
 
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CENTOを履くアレッサンドロ・デ・マルキ

 

マイクロツイストダイヤル

今までにない2つのダイヤルの位置関係

創業から間もないブランドが、オリジナリティ溢れるプロダクトを次々と出せるのは、創業者のFonte氏の力に拠るところが大きい。彼は、Fizikのブランドディレクター、Pinarelloのセールスディレクター、KASKのマーケティングディレクターというキャリアを経て、そこから得た知見からユーザーが本来必要なものをつくるプロデュース力に長けている。

マイクロツイストダイヤルは、ダイヤル式が必要だというユーザーの声に対してUdogが出した答えだ。
一般的なダイヤル式シューズは、ダイヤルが2つ横に並んでいるが、CENTOは位置がねじれていて、それぞれが異なる役割を持つ。

ダイヤルの位置が離れているので、それぞれの役割が明確に違うことが感じられる

サイドダイヤル:側面のかなり低い位置に取り付けられ、足首を覆うようにホールドする

フロントダイヤル:TWS(テンション ラップ システム)を締め上げる役割を持ち、甲の中心部を包み込むように均等に圧力がかかる

ダイヤルは1コマ1コマ細かく締め付けられていき、反対方向に1/4回転すると一気にリリースされる。いずれも軽い力で回すことができ、カチカチした触感が心地よい。

紐は耐久性の高いダイニーマを使用(最近多い)

TWS – テンションラップシステム

UDOGは柔らかいアッパーの固定力を高めるために「Tension Wrap System(テンションラップシステム)」という構造を開発している(TENSINEやDISTANZAに採用)。
通常のシューズは足の甲だけを締め上げるつくりだが、TWSは専用ストラップがシューズの底部を包むように通ることで、足全体を包み込むようにアッパーを締め上げている。

アッパーが柔らかいからこそこの仕組みが活きており、シューズの方から自分の足に合わせに来ている感覚がある

 

Pros/Cons

1,500km以上走行した上での使用感をレビュー

Pros

マイクロツイストダイヤルxTWSの相乗効果

マイクロツイストダイヤルのおかげで、TWS(テンション ラップ システム)の存在感がより強くなったと感じる。ダイヤルを締めるほどアッパーが足を包んでいく感覚が明確になって、「シューズと足が一体化している」ことをはっきり感じられる。当初ダイヤル式を拒んでいたUdogだったが、ダイヤルによってTWSがより活きるようになったという事象が面白い。

ダイヤルの紐がTWSのストラップを適切に締め上げる

つま先が広い

Udogシューズはすべてトーボックスが広く、日本人らしい幅広の足でも指先を圧迫することがない。GiroやFizikなどデザインが良いモデルでも、狭くて履けないシューズが多いなか、Udogのつくりは日本人的足型にとって非常にありがたい。他ブランドで「使っているうちに馴染みます」というシューズもあるが、CENTOは最初からずっと馴染む。

トーボックスが広く長時間履いていられる

クラシカルとモダンが融合したデザインが最高

CENTOは一般的な白シューズと比較すると足元の存在感が強い…!TWSストラップ、歯車模様のダイヤル、クラシカルなパンチング配列──ひとつひとつの要素が強めだけれど、うまく調和していて絶妙に格好良い。CENTOはCIMA以来の一目惚れで、やはりUdogが大好きだと思えた。

唯一無二のデザイン

疲れにくい高剛性アウトソール

カーボンアウトソールの剛性指数*は11。他社モデルの剛性指数を見ると、S-Works Torchが15、シマノのRC9が12、RC7が10なので、CIMAは程良い範囲に収まっている。実際に素直にパワー伝達してくれる感覚があるし、剛性感が高すぎて長距離で疲れることもない。
*剛性指数:プレートに40kgを荷重した際に生じるしなり量から測定される値

インソール「Solestar」との相性も良い

汚れを落としやすい

ニット素材のCIMAは、汚れたときに中性洗剤でブラッシングしなければいけなかったが、CENTOはマイクロファイバー素材で手入れがラクになった。ライド後にスペシャルクリーナーでさくっと汚れ落としすれば、いつも綺麗な状態で履けるのが良い。

さっと汚れが落ちるマイクロファイバー

脱着がむちゃくちゃ楽

タンの素材が薄いので、ダイヤルリリースしたあと、力をかけずに脱ぐことができる。家を出てすぐに忘れ物に気づいたとき、土足厳禁な古民家カフェに入るとき、オールアウトして帰ってきたときなど、その恩恵を受けることは多い。

リリースしてすぐに脱げる

Cons

ふとしたときにダイヤルが緩んでいる(走行時以外)

ダイヤルは反対方向に1/4回転するとリリースされるが、ふと気づくとダイヤルが緩んでいることがある。ずっと自転車に乗っている分には起き得ないが、信号待ちでクリートをはずしたときに、何かの拍子でペダルにダイヤルが接触したりすると簡単にリリースされてしまう。
BOAのように引っ張ってリリースする機構ではないとこういうことが起きるため、気づいたときはさっと締め直している。

休憩しているときに緩んでしまうことが(走行には影響ない)

 

“美的”なダイヤル式シューズ

レースアップは美的だ。ではダイヤル式はそうではない?
Udogが世に出したのは、ダイヤル式でさえイタリアの美的感覚を投影したシューズだった。クラシカルであり、モダンでもある。クリーンであって、力強くもある。繊細な部分もあって、レーシーな部分もある。そういったいくつかの要素を、美的性能としてまとめ上げたシューズはCENTO以外にない。
大好きなレースアップのCIMAは今でも履くが、CENTOの出番の方が圧倒的に多くなった。

Udog CENTOを購入する(TOKYO WHEELS)

著者情報

Tats Tats Shimizu@tats_lovecyclist
編集長。スポーツバイク歴10年。ロードバイクを中心としたスポーツバイク業界を、マーケティング視点を絡めながら紐解くことを好む。同時に海外ブランドと幅広い交友関係を持ち、メディアを通じてさまざまなスタイルの提案を行っている。メインバイクはStandert(ロード)とFactor(グラベル)。

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text / Tats
photo/ Tats, Mei, & Mochidome