パワーメーター購入ガイド – Quarq / Garmin / Stages / Favero etc.

パワーメーター購入ガイド

パワーメーターは、「スピード」という外的要因に左右されやすい値ではなく、「パワー」という個々の純粋な出力を数値化することができる機材。

かつては30万を越える高価格帯のモデルしか存在しませんでしたが、ここ数年でラインナップの増加と低価格化によって、パワーメーターはより身近な存在になりました。完成車にも、トップモデルだけでなくミドルレンジ(Giant TCRなど)にパワーメーターが組み込まれるケースも出てきています。

またZwiftが楽しめるスマートトレーナーが急激に普及したことで、インドアでパワーを知ったサイクリストが実走でもパワーを把握したいというニーズを生む後押しになっています。

つまり、いわゆる“ガチ勢”だけでなく、幅広いライドスタイルのサイクリストにとってパワーメーターを導入する土壌ができ上がっているのが現在。

そこで、各モデルの特徴を比較しながら最適なパワーメーターの選び方を見ていきます。

*本記事は2019年公開記事を現状に即し改訂したものです。

1. パワーメーター導入ガイド

パワーメーターの種類

パワーメーターの場所

パワーメーターが組み付けられる場所

パワメーターは「歪みゲージ」を用いてパワーを計測します。このゲージにトルクが加えられると歪み量が計測され、それを回転数と掛け合わせて算出される値が、出力を表すワット数(W)。つまりパワーとは「トルク×回転数」のことを指します。

パワーメーターを取り付ける場所はいくつかありますが、2021年現在では「クランクスパイダー/チェーンリング」「クランクアーム」「ボトムブラケット」「ペダル」の4箇所が主流となっています*。

*PowerTapがリアホイールハブ型のパワーメーターを出していましたが、ホイール選択の自由度が狭まるためマーケットに広く受け入れられず、2021年に製造中止となりました。

クランクスパイダー/チェーンリング

クランクスパイダー型パワーメーター

SRMが開発した最も歴史のあるスパイダー型。
スパイダーとチェーンリングの間の歪みゲージにより計測する仕組みで、非常に高い精度が特徴。クランク長も自由に選ぶことができる。
ただSRMを筆頭に高価なモデルが多め。

主要メーカー SRM, Quarq, Power2Max, FSA
価格帯 8〜30万円

クランクアーム

クランクアーム型パワーメーター

クランクアームにゲージを備え、スパイダー型と同様に精度が高いタイプ。
上位モデルは左右のアームに歪みゲージを設けることで両脚計測ができるのが大きなメリット

アームの裏側にセンサーがついており、その出っ張りがフレームと干渉するモデルもあるので注意が必要(最近のモデルは出っ張りが薄くなっている)。
導入後は気軽にクランク長を変えられないので、自身の使用する長さがフィクスしている場合にのみ選択するのがベター。

主要メーカー シマノ, 4iiii, Stages
価格帯 4〜20万

ボトムブラケット

ボトムブラケット型パワーメーター

歪みゲージをアクスルの中に入れることで精度の高い数値が計測できるBB式。電子機器が内側に入っているので破損リスクが少ない点もメリット。
ただし組み付けは割とシビアで、BBの規格にも依存するので、フレームを替えたとき移植できない場合も。

主要メーカー ROTOR
価格帯 10〜18万円

ペダル

ペダル型パワーメーター

ペダルを取り替えるだけで使える最も手軽なパワーメーター
複数のバイクで使いたいときに付け替えができ、両脚計測もできるが、露出しているので転倒時の破損リスクがある。

クリートは2021年3月時点ではLOOK KEOとShimano SPD-SLの選択肢のみ。
*2021年Speedplayペダルのパワーメーターもリリース予定

主要メーカー Favero, Garmin, SRM
価格帯 8〜13万円

パワーメーター価格相場

パワーメーターの黎明期は20〜40万円の価格帯のモデルしかありませんでしたが、今ではより入手しやすいものが登場しています。
現在の価格レンジは5万〜15万あたりで、高価なモデルほど精度と耐久性に優れる傾向があります。

またパワーメーターを検討しているサイクリストの多くはすでにGarminなどのパワー表示できるGPSサイコンを持っているかもしれませんが、もし所持していない場合は合わせて対応サイコンの購入が必要となります。

以下から「クランク式(スパイダー/アーム/BB)」と「ペダル式」に分けて、2021年における代表的なモデルを挙げていきます。

 

2. 【クランク式】モデル10選

Quarq – クオーク

Quarq Dzero Dub パワーメーター

DZero DUB / DFour DUB

スラム傘下に入ったクオークは、スラムのAXSコンポーネントに採用されているDUB規格のスパイダーを採用し、軽く耐久性のあるスパイダー式パワーメーター「DZero DUB」をリリース。

走行中に自動キャリブレーションしてくれるので校正作業は不要。デザイン性の高さはあらゆるパワーメーターの中でも群を抜いています。

DZero DUBは別売のクオークDUBアームの使用がマストですが、シマノクランクを使いたいユーザー向けに「DFour DUB」もラインナップ(R9100/R8000/R7000対応)。DZero DUBと同じ機能がシマノユーザーも使用できます。

モデル 種類 精度 計測 電源 価格 購入
DZero DUB
スパイダー ±1.5% 両脚 電池式 ¥85,700 Amazon

※自分の環境に最適なQuarqパワーメーターのモデルを絞り込むには「Find your Power Meter(公式サイト)」を参照してください。

Stages – ステージズ

Stages パワーメーター

Power L

アメリカのStagesは、アーム型のモデルをリーズナブルな価格帯で展開。
特に左クランクで片足計測する「Power L」は、105グレードで約5万円とかなり手頃な価格。左クランクを交換するだけですぐに使えることに加え、純正クランクと比べて重量+20gに抑えてあります。
シマノ、Camapagnolo、FSAなど多くのクランクに合わせたモデル展開も強み。

Power LR

Power Lの後発として登場したのが、両脚計測タイプの「Power LR」。左右クランクそれぞれに独立したセンサーが設けられ、左右パワーバランスやペダルスムースネスなどを把握できるようになっています。
重量も純正から+35gで、取り付けもラクなので、手軽な取り回しができるStagesの強みが活かされています。Dura-AceとUltegraの2モデル展開。

モデル 種類 精度 計測 電源 価格 購入
Power L アーム ±2% 片脚 電池式 ¥46,500 Wiggle
Power LR アーム ±1.5% 両脚 電池式 ¥106,000 Wiggle

  Stages一覧を見る(Wiggle)

ROTOR – ローター

Rotor パワーメーター

2INpower DM / INpower DM / Inspider

楕円リングQ-RINGSやコンポーネントUNOなどのバイクパーツを展開するスペインのROTOR。
そのパワーメーターはQ-RINGSを使用することを前提として作られているため、楕円使用時の計測精度が高いことが特徴。ROTORらしいデザインも格好良い。


ソフトウェア面でも、ペダリング分析「TORQUE 360°」や、パワーピーク位置を導き出す「OCA」などオリジナルの解析ツールが揃い、効果的なQ-RINGSのセッティングが可能となっています。

ラインナップは、左右独立したパワー計測が可能な「2Inpower DM」と、片脚計測の「Inpower DM」、そしてスパイダー計測の「Inspider」の3モデル。

精度と耐久性を重視するならワールドチームで採用されている「2Inpower」、コストを優先するなら「Inpower DM」、クランク長を変更する可能性があるなら「Inspider」という自由度の高い選び方ができます。

モデル 種類 精度 計測 電源 価格 購入
2Inpower BB N/A 両脚 充電式 ¥178,000 Wiggle
Inpower BB N/A 片脚 電池式 ¥100,000 楽天
Inspider スパイダー N/A 両脚 充電式 ¥89,800
PBK

Power2Max – パワーツーマックス

Power2max NG パワーメーター

NG

パワーメーターの祖SRMと同じスパイダー型を展開するドイツのPower2Max。そのデザインはクランク周りに独特の存在感を与えてくれます。
トップモデルの「NG」はワールドチームのモビスターやUAEエミレーツにも使われ、±1%の誤差という精度も最高クラス。

NGeco

廉価版の「NGeco」。誤差±2%、充電式ではなく電池式といったハード面での差に加え、左右差/トルク/ペダルスムースネスの計測ができないといったソフト面でコストが抑えられています。
ただし、ソフトは各項目€50追加で支払えばアップデート可能。

モデル 種類 精度 計測 バッテリー 価格 購入
NG スパイダー
±1%
両脚
充電式
¥135,000
楽天
NGeco スパイダー ±2% 両脚 電池式 ¥78,000 楽天

いずれのモデルも、クランクアームはシマノ以外の各社純正クランクを組み込むことができます(シマノユーザーはROTORのものを推奨)。

Power2Max製品一覧を見る

4iiii – フォーアイ

4iiii precision パワーメーター

Precision Pro / Precision

2010年に設立されたカナダの4iiii。
シマノのクランク(105/アルテグラ/デュラエース)をベースとしたモデルを展開し、両脚計測の「Precision Pro」と片足計測の「Precision」をラインナップ。

クランクアーム型の中では最も安価なクラスに入りますが、「Presicion Pro」はスペシャライズドとパートナーシップを組んでワールドチームにも採用されており、信頼性の高いパワーデータを得ることができます。

機種 精度 計測 電源 価格 購入
Precision Pro アーム ±1.5% 両脚 電池式 ¥87,000 Wiggle
Precision アーム ±1% 片脚 電池式 ¥37,800 Wiggle

4iiii製品一覧を見る

 

3. 【ペダル式】モデル6選

Favero – ファベロ

Favero Assioma パワーペダル

Assioma DUO / Assioma UNO

計測精度とコストパフォーマンスを兼ね備えたペダル型の最有力モデル「Assioma」。両足計測のDUOと左足計測のUNOの2つをラインナップしています。

ほかのモデルと異なり、取り付けにトルク管理が不要なので取り扱いがラク。
また計測精度も高く、IAVテクノロジーと呼ばれるFaveroオリジナルの計測方法でパワーを算出。ペダリングが不安定になりがちな上り坂でのダンシングや、楕円リングのペダリングでも±1%の正確な数値を抽出してくれます。
国内では2021年より取り扱いが始まりました。

SPD-SLモデルも今後リリース予定。

機種 精度 計測 バッテリー 価格 購入
Assioma DUO ±1% 両脚 充電式 ¥80,000 Amazon
Assioma UNO ±1% 片脚 充電式 ¥51,000 Amazon

▼Assioma DUOのレビューはこちら

Garmin – ガーミン

Garmin Rally RK/RS

Rally RS200/RK200

2017年にリリースされたVector3の後継機として2021年4月に「Rally」シリーズが登場。

特筆すべきはSPD-SL対応モデルの登場です。これまでパワーペダルはLOOK KEO対応モデルしかなかったため、導入を見送っていたサイクリストにとって新たな選択肢が生まれました。

SPD-SL対応モデルは「Rally RS」、KEO対応モデルは「Rally RK」と名付けられ、さらに両足計測モデルには末尾に「200」という番号が振られています(Garminらしいナンバリング)。

価格はVector3と据え置き。Assiomaと異なり、取り付けにはトルク管理が必要なので注意。

Vector3は初期ロットに不具合が多く交換対応となったサイクリストが多くいましたが、Rallyは接続周りの安定性強化、バッテリカバーの強度アップ、スペアパーツのラインナップなど、より強固なサポートが期待できます。

Rally RS100/RK100

Rallyの片足計測モデルが「100」系。100系を購入後、両足計測をしたくなった場合はアップグレードキット(¥69,000)を導入することで200系に変更可能ですが、割高になるので予算があれば最初から200系を購入した方が良さそう。

機種 精度 計測 バッテリー 価格 購入
Rally RS/RK200 ±1% 両脚 電池式 ¥128,000
Rally RS/RK100 ±1% 片脚 電池式 ¥79,000

LOOK x SRM

LOOK SRM パワーペダル

EXAKT Dual / EXAXT Single

LOOKとSRMのパートナーシップによって2018年に生まれたペダル型パワーメーター。
LOOKが開発に加わっているため形状が美しく、また元祖パワーメーターSRMによる計測精度の高さもセールスポイント。
重量も片足150gと、158gのGarminよりも若干軽量。
SRMのパワーメーターとしては最も安価ですが、それでもほかのペダル型と比べると1.5〜2倍ほど。
片足計測のSingleと両足計測のDualをラインナップ。

機種 精度 計測 バッテリー 価格 購入
EXAKT Dual ±1.5% 両脚 充電式 ¥175,000 Wiggle
EXAKT Single ±1.5% 片脚 充電式 ¥95,000 Wiggle

 

4. 全モデル比較表

ブランド 製品 計測精度 計測方法 バッテリー 価格
クランクスパイダー式
Quarq DZero DUB ±1.5% 両脚 電池式
¥85,700
Power2max Type-NG ±1% 両脚 充電式
¥135,000
Type-NGeco ±2% 両脚 電池式
¥78,000
ROTOR Inspider  N/A 両脚 充電式
¥89,800
クランクアーム式
Stages Power L ±2% 片脚 電池式 ¥46,500
Power LR ±1.5% 両脚 電池式 ¥106,000
4iiii Precision Pro ±1.5%
両脚
電池式
¥87,000
Precision ±1%
片脚
電池式
¥37,800
ボトムブラケット式
ROTOR
2INpower DM
N/A
両脚
充電式
¥178,000
INpower DM
N/A
片脚
電池式
¥100,000
ペダル式
Favero
Assioma DUO  ±1% 両脚 充電式
¥80,000
Assioma UNO ±1% 片脚 充電式
¥51,000
Garmin Rally RS/RK200 ±1% 両脚 電池式 ¥128,000
Rally RS/RK100 ±1% 片脚 電池式 ¥79,000
LOOK/SRM EXAKT Dual ±1.5% 両脚 充電式 ¥175,000
EXAKT Single ±1.5% 片脚 充電式 ¥95,000

まずは予算をかけずに始めたい場合は、組付けの簡単な4iiii「Precision」やFavero「Assioma UNO」が最適。
計測精度の高さや高度なトレーニング指標を求めるのであれば、Favero「Assioma DUO」、Quarq「DZero DUB」、ROTOR「Inspider」などが優れた選択肢になります。

上記を参考に、パワーメーターを導入する目的に応じて自分に最適なモデルを選択してください。

 

5. パワーメーターで把握する主要項目

パワーメーター導入後はパワートレーニングの理論に基づいて各数値を活用します。トレーニング志向でない場合は厳密に管理する必要はありませんが、各項目を知っておくとライドごとの疲労度などの把握に役立ちます。

FTP(Functional Threshold Power)

60分継続できるワット数。この数値を基準としてトレーニングを行い、数値を上げていくことがパワートレーニングの主たる目的。

PWR(Power Weight Ratio)

FTP÷体重で算出される重量出力比。3.5倍とか4倍で表され、特にヒルクライムでの力を左右する部分。

NP(Neutral Power)

標準化パワー。単純な平均値とは違って、「そのライドでもしパワーを完全に一定に保ったときに維持できるパワーの値」なので、ライドの実際の強度がわかる数値。レースのNPを把握しておくと、そのレースのレベルがわかります。

IF(Intensity Factor)

強度係数。NP÷FTPで算出される値で、運動強度を示すもの。1.0のときがFTPと同じ強度で走ったことになり、この上下に応じてトレーニングレベルが把握できます。

トレーニングレベル IF
L1: 回復走 <0.75
L2: 耐久走 0.75-0,85
L3: テンポ走 0.85-0.95
L4: 乳酸閾値 0.95-1.05
L5以上 1.05-1.15

TSS(Training Stress Score)

ライドの負荷を数値化したもの。FTP値で1時間走り続けると100ポイント貯まります。一定期間にどれだけ負荷をかけたかがわかり、通常は1週間の累計値で管理します。

TSS 強度 回復の目安
<150 翌日に回復
150-300 翌日に疲れが残る
300-450 翌々日でも疲れが残る
>450 極高 数日間疲れが残る

シリアスライダーは週に700くらいが目安という鬼畜レベル。溜まったTSSはお金ではなくFTP値に還元されます。

CTL(Chronic Training Load)

「長期トレーニング負荷」を意味し、42日間のTSS平均値(指数加重移動平均)を表すもの。徐々にCTLを上げるようなトレーニングを行うことで、体に無理をかけることなく体力レベルを向上させることができます。

選手としてトレーニングする場合、プロはCTL100、社会人はCTL60〜80がひとつの目安となっています(個人差あり)。

あらゆるサイクリストにパワーを。

Favero Assioma DUO

「パワーメーターを導入すると、ワット数を出すことだけに集中するからサイクリングがつまらなくなる」という話を聞くことがあります。確かにパワーを上げることしか考えない走り方であれば、本質的な走ることの喜びは一部失われるかもしれません。

でもそれは使い方次第。

トレーニングの時はどのしきい値で走っているのか、あるいはどれだけTSSを溜められたかという観点、ヒルクライムでは一定出力をどれだけ維持できるかという観点、ロングライドではFTPに応じた出力コントロールという観点など、シーンに応じてパワーという客観性のある数値とうまく付き合うことで、大人の余裕が生まれるライドができるようになります。

そうしてライドの幅を自然と広げてくれるパワーメーターは、ガチ勢だけでなく、ただ走ることに囚われているあらゆるサイクリストにとって価値のある機材です。

Text/Tats@tats.cyclist