新車を買うのはワクワクする。人が新車を買うのを見るのもワクワクする。なぜそれを選んだ?どんなパーツ構成?どんな乗り味?人のこだわりを見るのってむちゃくちゃ楽しい。
ここ1年は、ラブサイメンバーで新車購入の波が来て、15人が新しいバイクになった。それぞれのストーリーを見ていこう。
Edit & Photo / Tats(@tats_lovecyclist)
*Part1はこちら↓
Standert Kreissäge RS(Tats)
Tatsが選んだのは、Standert(スタンダート)のレーシングロード『Kreissäge RS(クライスゼーゲRS)』。
これまではFactor O2(ロード)とFactor LS(グラベル)の2台体制だったが、同じFactor同士乗り味が重複する部分があった。長年カーボンに乗ってきたこともあり、そろそろ違う素材のバイクに乗りたいと思うように。
Factor LSに乗るようになってからO2の使用頻度が減っていた
ただレーシングな味付けは損ないたくなくて、ずっと気になっていたブランドがドイツのStandert。アルミやスチールなどの金属系ハイエンドフレームを作っており、オールドスタイルな形状とモダンなグラフィックの組み合わせがとても良いと感じていた。中でも特に、スカンジウム合金でつくられたトップレーサー『Kreissäge RS』の乗り味を体験してみたかった。ただ人気モデルのため、54サイズはいつもすぐ売り切れる。
しばらく在庫補充や新モデルの情報を追いかけていたところ、2024年5月にUDHに対応した新モデルが発売されたため、リリース時間に合わせてPCの前で正座待機してオーダーした(翌日には54サイズは売り切れになっていた)。
コンポーネント構成
グループセット | SRAM Red XPLR AXS E1 |
ホイールセット | Zipp 303 Firecrest |
タイヤ(幅) | Vittoria Corsa Pro TLR (28c) |
ステム | Deda Superbox DCR |
ハンドルバー | Deda Superzero DCR Alloy |
バーテープ | Burgh Cycling / ‘X’ Stealth |
シートポスト | Zipp SL-Speed Carbon Seatpillar |
サドル | S-Works Power with Mirror |
重量 *ペダル込 | 7.8kg |
フレームセットで購入し、パーツは走り方に合わせてセレクトした。フレームとグループセットの個性が強いので、それ以外はZippやDedaなど定番メーカーで揃えることで全体をバランスさせている。
ギアは1×13の「Red XPLR AXS E1」。ロードバイクのフロントシングル化は1年ほど前から検討していて、その意図は軽量化というより、変速動作の効率化やメンテナンス性の向上を狙ったもの。
現行のKreissäge RSは、ロードフレームの中でも数少ないUDH対応フレームのため、Red XPLR選択の後押しになっている。
ギア比はフロント46T/リア10-46T。以前のFactor O2はフロント46-33T/リア10-33Tだったので、同じギア比をカバーしている。Red XPLRはグラベルがメインターゲットとはいえ、13速でギアレンジが広い上に、トップ4枚が1T刻みとなっている。そのため高速域でのギア選択に違和感が生じず、ヒルクライムから高速巡航までどんな速度域にも対応できる。
ホイールとタイヤは走りのキモなので、信頼性の高いプロダクトを選択
Team Standert Brandenburgに供給されているチームカラー。複数のスポンサーロゴが塗装されている
DedaのSuperboxによってフル内装化
スカンジウムの元素記号シールがダウンチューブに貼られる
スカンジウム合金という古い素材にも関わらず、フル内装、ディスクブレーキ、UDH対応といった最新テクノロジーに対応していてるあたり、「現代に蘇ったハイエンドアルミロード」という感じがしてたまらない。
Kreissäge RSインプレッション
加速:Standertのバイクはクリテリウムレースが起源なだけに、かかりが良くて初期加速に非常に強い。35km/h以上の伸びも悪くないが、空力的に高速域の維持は得意ではない。もう少し高いハイトのホイールにすれば平坦の高速域は楽だろうなと感じることも。
ヒルクライム:軽量化したおかげとフレーム反応の良さできびきび進む。
ハンドリング:かなりクイックで小回りがきく(ホイールベースも短め)。380mmと幅を狭めにしたのもあって操作のダイレクト感が強く、特にダンシングでバイクとの一体感を感じられる。ただダウンヒルではアンダーステア気味になるため若干気を遣う。
快適性:スカンジウム合金はアルミとは別物だった。どちらかと言うとカーボン寄りでしなやか。チューブレスタイヤとの組み合わせで、かなり衝撃をいなしてくれているように感じる。
総評:総じて操作感の良さと軽快感が突き抜けている。バイクと一体になれる感覚がこれまで乗ってきたどのバイクよりも強く、ライドそのものが非常に楽しくなった。
Standertは気になっているサイクリストが多いと聞く。直販のみで、完成車は日本に発送しておらず、フレームセットでしか購入できないが、組んでくれるショップが近くにあれば非常におすすめできる(今回は大阪の立具氏に組んでもらった)。
カーボン以外のモダンな選択肢のひとつ
Tats – タツ | 東京
編集長。ロードバイクを中心としたスポーツバイク業界を、マーケティング視点を絡めながら紐解くことを好む。同時に海外ブランドと幅広い交友関係を持ち、メディアを通じてさまざまなスタイルの提案を行っている。 またフォト&ビデオグラファーとしても活動し、これまで数々の現場でサイクリストの臨場感ある自然体の姿を捉えてきている。 Standert Kreissäge RS / Factor LS @tats_lovecyclist |
Orbea Orca OMX(Shun)
Jプロツアーで活動してきたShunが選んだのは、Orbea(オルベア)の最軽量フラッグシップモデル『Orca(オルカ)OMX』。
バイクに求めるものは、レース機材としてちゃんと走れてちゃんと変速すること。一方で、機能性だけに振ったバイクは面白味がないので、自分なりのカラーが出せるモデルを検討していた。その結果、以前も乗っていたOrbeaで、かつカラーオーダー「MyO」を使ってバイクを組むことにした。
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リムブレーキのOrcaに乗っていたShun
コンポーネント構成
グループセット | Dura Ace R9270 12s Di2 |
ホイールセット | Roval Alpinist CL II |
タイヤ(幅) | Vittoria Corsa Next TLR(28C) |
ハンドルバー | The one 380mm(ステム一体型) |
バーテープ | Fizik Tempo Bondcush |
シートポスト | OC Performance XP10-S Carbon |
サドル | Selee Italia SLR Boost TM |
重量 *ペダル込 | 7.2kg |
レースではメカトラが一番タイムロスにつながるので、できる限り堅実で、メンテナンスがしやすいパーツセレクトを意識した。
撮影時はテスト用に借りているFARのホイールを装着しているが、レースではRoval Alpinistを使用
最近クランクを170mmから165mmに替えて試運用中。まだ良いか悪いかは判断できていないが、スプリントのかかりの悪さを除けば、おおむねメリットが大きいと感じている。
色はOrbeaのカラーオーダー『MyO』を利用して自分で選んだ。お気に入りポイントはメタリックシルバーのロゴ。フレームは全体的に主張が弱めのカラーリングだが、うまく光が当たるとロゴが輝いて綺麗。
My Oではトップチューブに好きな文字を入れられる。以前乗っていたリムブレーキ版Orcaに書かれていた言葉を今回も刻んだ。
Orcaインプレッション
加速:初期加速はよい印象で、35km/hくらいまでスパッと加速するイメージ。ただバイク自体の空力性能はあまり良くないので、40km/hを超えると加速は鈍い。
ヒルクライム:軽量バイクなのでとても速い。
ハンドリング:ニュートラルだと思う。以前乗っていたリムのOrcaととても似ていて、ポジションもほぼ変わらなかったので、乗り換えたときもあまり新車という感じがしなかった。
快適性:快適性は基本的にタイヤの種類と空気圧でかなり変わるので、わからない部分が多いが、不快だと感じたことは一度もないので、悪くないと思う。
総評:このフレームは、ヒルクライムに特化しているため軽さに注目されがちだが、本当の魅力はバランスの良さだと思う。
まず超高速域を除いて不満点があまりない。さまざまなレースに出場するため、どんなシチュエーションにも対応できるという点でバランスの良さは大きな武器だ。特に気持ちよさを感じるのは、ペース走をしているときと登りでペースを上げて走っているとき。高速域は確かに苦手だが、ペースで踏んで37〜38km/hで走り続けられること、登りは物理的にも感覚的にも軽いことはとても魅力的だと感じる。
Orcaのバランスの良さは、レースのさまざまなシチュエーションに対応できる
Shun – シュン | 千葉
京都出身。2024シーズンは山梨のチームに所属し、Jプロツアー2年目としてジャパンカップをはじめさまざまなトップカテゴリのレースに参戦。シクロクロスレースを主体としたサイクリングコミュニティ「変態志駆路倶楽部(HentaiCycloClub)」も運営している。 Orbea Orca OMX @yokoyan.jp |
Specialized S-Works Crux(Taka)
常に300km以上の超人的ライドを好むTakaは、ここ1年で『S-Works Tarmac SL8』と『S-Works Crux』の2台を生やした(今回はCruxのみ紹介)。
もう一台はS-Works Tarmac SL8
ロードバイクでAethos/Tarmacを乗り継いできた関係で、自身の身体が軽量バイク以外を受け付けなくなってきていた。Aethosを事故で廃車にしてしまい、それを機にもっとアドベンチャー・エクストリームライドに対応でき、路面状況に左右されずにどこでも走れるバイクを求めて、世界最軽量なグラベルロードバイクの『S-Works Crux』を選んだ。
納車時はZippに42Cタイヤを装着
欲しかったフレームの色・サイズが国内ラスト最後の1台だったのでラッキーだった…!納車時はZipp 303 Firecrestに42Cのグラベルタイヤを装着して、ロード用のペダルをつけて7.4kgとグラベルロードバイクとしてはかなり軽量に組み上がった。
コンポーネント構成
グループセット | Dura Ace R9270 12s Di2 |
ホイールセット | Enve SES 4.5 |
タイヤ(幅) | S-Works Pathfinder (42C) |
ステム | Roval Alpinist Stem |
ハンドルバー | Roval Terra Carbon Road Bar |
バーテープ | Enve Road Handle Bar Tape |
シートポスト | Roval Terra Carbon Seatpost |
サドル | S-Works Power with Mirror |
重量 *ペダル込 | 7.6kg |
Crux一台あればオンロードもオフロードも走れるし、ホイールとタイヤを入れ替えれば6キロ台に持っていくことができる汎用性の高さが魅力的。現在はTarmac SL8と共有している6セットのホイールセットを入れ替えて、見た目や乗り心地の違いを楽しんでいる。
撮影時はEnveを履かせているが、ほかのホイールにも入れ替えて楽しむ
パーツ的にはオンロードでの走行が多くなるであろうことを想定して、フロントはダブル。
クランク+チェーンリングはよりグラベル寄りのギヤ比を持っていくためにGRXにしたが、それ以外は軽量化のためにロード用のDura Aceグループセットで組んだ。また、エクストリームライドの際に膝への負担を最小限に抑えるために、クランク長は165mmをチョイス。
クランクとチェーンリング以外はDura-Ace
シートポストは標準の軽量Alpinistモデルではなく、Terraのコンポーネントを使用することでコンプライアンスも高められ、快適性も向上している。
砂をまぶしたような塗装。このバイクのカラーリングが何より気に入っている。
ペダルはFaveroのSPD系対応パワーメーター
S-Works Cruxインプレッション
舗装路の走行性能
30C-35Cくらいのスリックタイヤを履かせれば、グラベルロードだという印象を微塵も感じないレベルにまで速く軽快なバイクに仕上げることができる。
ただ、42Cなどの太タイヤでも、センタースリックになっていれば十分舗装路も速く快適に走れる。200km-300kmのようなロングライドでも乗り心地が良くて疲れにくい。
近々、一体型ハンドルのRapide Cockpitを導入し、快適性はそのままに、より速く、見た目もカッコよく!エクストリームライドが楽しめる仕様に変更する。
グラベルの走行性能
40C以上の太めのタイヤを低圧にして走行することで、どんな路面でも軽快に速く走ることができる。一般的なグラベルロードに比べて重量が1kg以上は軽いため、とにかくグラベルでも加速がよくて速い。
その反面、少々動きがピーキーなところがあり、ライド技術の乏しい自分のようなライダーは、路面状況によってはシビアなバイクコントロールが必要な時もある。
これからもエクストリームなライドをCruxとともに
Taka – タカ | 東京
外資系企業勤務。Specializedアンバサダー。MAAPアンバサダー。さまざまな山々をつないで一度に標高4,000m以上獲得するライドを好み、周囲からは敬意を込めて“変態”と言われ続けている。 Specialized S-Works Tarmac SL8 / S-Works Crux @koolt4884 |
Part3へ続く(2月上旬公開)
Edit & Photo / Tats(@tats_lovecyclist)