GPSサイコン主要メーカー比較購入ガイド – Garmin / Wahoo / Bryton / iGPSPORT

走行内容を数値化するGPSサイコンは、ライドを定量的に評価するために欠かせないもの。
かつてGPSサイコンといえばGarminが市場を独占していたが、ここ数年で競争力のあるプレイヤーが次々とこのマーケットに参入し、サイクリストにとって新たな選択肢が生まれている。
しかしその分だけ、多種多様な機種が存在することで自分に最適な1台への絞り込みは手間になったとも言える。そこで主要プレイヤーから発売されている各モデルを、クラス別に機能比較する。

text / Tats@tats_lovecyclist

*本記事は2020年公開記事を現状に即して大幅に改訂したものです。

GPSサイコン主要メーカー

GPSサイコンの勢力図は、グローバル規模では「GarminかWahooか、それ以外か」となっている。メーカーはほかにも多数あるが、このツートップに迫るほどのメーカーは現状存在していない。ただ国内では、代理店が取り扱うことになったBryton(台湾)とiGPSPORT(中国)の2社がシェアを伸ばしている。

Garmin – GPS精度とハードウェアが強み

GPS計測精度で業界最高レベルのGarmin(ガーミン)。創業年となる1989年頃は、ちょうどGPSシステムが一般に広く利用可能になったタイミングであり、以来GPSを用いた高度なテクノロジーに重点を置いて製品が開発されてきた。

GPSサイコンの「Edge(エッジ)」シリーズは、エントリー向けの100系、スタンダードの500系、フラッグシップの800系、大画面の1000系という4カテゴリに分けられる。全方位に向けた死角のないラインナップを揃え、GPSサイコンのスタンダードとしての地位を確固たるものにしている。

※Garminの各モデルだけを比較する場合は以下の記事を参照

Wahoo – UXを重視したトップブランド

Garminと勢力を二分するWahoo(ワフー)。Wahooが生まれた2009年は、フィットネス機器が注目を集めていたタイミングであり、またUX(ユーザーエクスペリエンス)という言葉が一般に広く浸透した時期でもある。
Wahoo ELEMNT開発の出発点は、Garminよりも優れたUXの製品が作れるという確信から始まっている。そしてスマートフォンとシームレスに連携するGPSサイコン「ELEMNT(エレメント)」が生まれた。

ラインナップは、「ELEMNT BOLT」「ELEMNT ROAM」の2つ。UXを重視した操作性が卓越しており、スムーズなスマートフォン連携によって直感的に迷うことなく扱うことができる(ソフトウェアアップデートも頻繁に行われている)。

サイコンマウントはWahooオリジナル規格

ELEMNT ROAM v2のレビューはこちら

Bryton – グレード別の豊富なラインナップ

大手GPS関連企業から独立した社員が2009年に立ち上げた台湾メーカー「Bryton(ブライトン)」。当初はエントリー層が求めやすい1万〜2万円台がメインの価格帯だったが、近年はハイエンド系のラインナップも充実している。

モデル名は判りづらいが、モノクロ液晶のエントリーグレード400シリーズ、カラー液晶のミドルグレード700シリーズ、トレーニング機能が充実したプレミアムラインSシリーズに大きく分かれる。

サイコンマウントはBrytonオリジナル規格

*Brytonにはエントリー機の『Rider17(¥9,460)』もあるが、ナビ機能を備えないため本稿では割愛

iGPSPORT – 開発スピードで市場ニーズに応える

2012年創業の「iSPSPORT(iGPスポーツ)」。製品開発スピードが早く、最新機能を詰め込んだモデルを毎年投入している。まだ動作の安定性に欠ける部分はあるが、ソフトウェアアップデートにより改善を続けており、その点を理解した上で選択したいメーカー。

ラインナップはベーシックな機能に絞ったBSCシリーズと、多機能なiGSシリーズに分けられ、それぞれナンバリングでグレード分けしている。

サイコンマウントはGarminと共通

*BSCシリーズにはエントリー機の『BSC100(¥6,050)』もあるが、ナビ機能を備えないため本稿では割愛

 

比較①エントリークラス5機種

ナビ付きエントリー機種は¥10,000〜15,000が相場で、この価格帯はBrytonやiSPSPORTなどの新興ブランドの存在感が強い。地図表示はできないものの、必要な表示項目はほぼ備えるため、ライドステータスの把握には事欠かない。

メーカー Garmin Bryton
iSPSPORT
モデル
Edge130 Plus
Bryton Rider410
Rider420

Rider460

BSC200

iGS320
発売 2020.7 2019.10 2024.3 2023.9 2021.8
税込価格 ¥33,880 ¥11,000 ¥15,730  ¥11,000 ¥8,855
ディスプレイ 1.8インチ モノクロ 2.3インチ モノクロ 2.6インチ モノクロ 2.5インチ モノクロ 2.4インチ モノクロ
重量 33g 67g 55g 67g 65g
操作 ボタン ボタン ボタン ボタン ボタン
バッテリー 13時間 35時間 32時間 30時間 72時間
地図表示
ナビ
パワー
コネクタ microUSB microUSB Type-C Type-C Type-C
特徴 軽量 旧モデルで安価 上位モデルの機能搭載 基本機能搭載 72hバッテリー
購入リンク Amazon(セット)
Amazon(単体)
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各モデルの特徴

Garmin Edge130 Plus:小型軽量モデル。パワー計測はできるが、平均/ラップ/最大しか表示できない。またディスプレイが他モデルより小さいので視認性は低く、バッテリー持ちも長くはない。

Bryton Rider420 / Rider460:「Rider420」の後継が「Rider460」となるが、2モデルは併売されている。駆動時間と価格は「420」の方が優位。一方「460」は、画面の大型化、Type-C充電、ライブトラッキングやクライムチャレンジ機能など、ハードもソフトも強化されている。

iSPSPORT BSC200:特に目立つ部分はないが、エントリー機として十分な基本機能を備えるモデル。

iSPSPORT iGS320:72時間持続バッテリーと価格が強み。その分機能は絞られており、パワー表示、スマートトレーナー連携、Di2連携などはできない。表示言語は英語のみ。

どのモデルを選ぶ?

基本的な機能だけでOKであれば「BSC200」、トレーニング機能も必要であれば「Rider460」が最適。
iGS320」のバッテリーは魅力的だが、パワー計測やDi2連携ができないため長期的に見ると厳しい。またこのクラスでは、あえて高価なGarminを選ぶ理由は見当たらない。

 

比較②ミドルクラス6機種

カラーディスプレイを備え、地図+ナビ機能を持つミドルクラス。あらゆる機種のベンチマークとなるGarmin Edge540を筆頭に、多様なモデルが揃っている。

メーカー Garmin Wahoo Bryton
iSPSPORT
モデル Edge540
Edge540
Elemnt bolt
ELEMNT BOLT
V2
Rider750
Rider 750SE
Bryton Rider S500
Rider S500

BSC300

iGS630s
発売 2023.4 2021.7
2023.4 2022.1  2023.4 2023.12
税込価格 ¥63,800 ¥37,000 ¥35,750  ¥29,700 ¥21,560 ¥39,380
ディスプレイ 2.6インチ カラー 2.2インチ カラー 2.8インチ カラー 2.4インチ カラー 2.4インチ カラー  2.8インチ カラー
重量 80.3g 68g 93g  87g 67g 90g
操作 ボタン ボタン
ボタン+
タッチスクリーン

ボタン+
タッチスクリーン 
ボタン ボタン
バッテリー 26時間 15時間
40時間  24時間 20時間 45時間
地図

ナビ

パワー
コネクタ Type-C Type-C Type-C Type-C Type-C Type-C
特徴 ・多機能
・ベンチマークモデル
・エアロ形状
・KICKR連動
・使いやすいUI
・40hバッテリー ・ワークアウト充実 ・ローコスト ・45hバッテリー
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各モデルの特徴

Garmin Edge540:前モデル530から機能・バッテリー・拡張性すべてパワーアップ。ナビ機能、パワーガイド、リアルタイムスタミナなど、コンパクトな筐体に最新機能を揃え、定番モデルの地位を確固たるものに。

Wahoo ELEMNT BOLT:スマートフォン連携のしやすさ、LEDを用いた色覚的なインターフェイスがわかりやすい。空力を考慮したエアロ形状、KICKR連動などの拡張性も強み。

Bryton Rider750SE:駆動時間40時間は全GPSサイコンの中でも最長クラス。フラッグシップのS800と機能差は少なく、価格競争力に長けているモデル。

Bryton Rider S500:ワークアウト機能が強化された小型モデル。液晶が鮮明となったりタッチパネル反応性が向上したり、全体的な性能が底上げされている。

iSPSPORT BSC300:iGS630の機能を省略し、コストダウンしたモデル。省略されているのは電子コンパス、レーダーセンサー、Di2コントロール機能など。バッテリーも少ない。ただライドに必要な基本機能は備え、フルGNSSによる高精度なナビもこなす。

iSPSPORT iGS630s:45時間というランタイムの長さが驚異的。急速充電にも対応。iSPSPORTモデルの中でも豊富な機能を備える。

どのモデルを選ぶ?

表示項目の豊富さや動作の安定性で考えると「Edge540」「ELEMNT BOLT」は強い。ただGarminは、国内価格の値上げによって相対的にコスパが悪くなっていることは確か。
あとは予算次第となるが、駆動時間を重視するなら「Rider750SE」「iGS630s」が最適。

 

比較③ハイエンドクラス5機種

タッチスクリーンモデルが含まれ、操作性や液晶の見やすさが向上するハイエンドクラス。いずれも高価だが、利便性の高い付加価値が備わっている。

メーカー Garmin
Wahoo Bryton iSPSPORT
モデル Edge840
Edge840 /
Edge840Solar
Edge 1040
Edge1040 Solar
Edge1050
Edge1050

ELEMNT ROAM
V2
Bryton Rider S800
Rider S800

iGS800
発売 2023.4 2022.6 2024.6 2022.10
2022.5 2024.4 
税込価格 ¥85,800
(ソーラー単体)
¥126,800
¥126,800
¥58,500 ¥52,800 ¥53,900
ディスプレイ 2.6インチ カラー 3.5インチ カラー 3.5インチ カラー 2.7インチ カラー 3.4インチカラー 3.5インチ カラー
重量 84.8g/
89.9g(Solar)
133g
161g 93.6g 106g 110g 
操作 ボタン+
タッチスクリーン
ボタン+
タッチスクリーン
ボタン+
タッチスクリーン
ボタン ボタン+
タッチスクリーン
ボタン+
タッチスクリーン
バッテリー 26時間+6時間 35時間+10時間
20時間 17時間 36時間  50時間
地図
ナビ
パワー
コネクタ Type-C Type-C Type-C Type-C Type-C Type-C 
特徴 ・多機能
・ルート自動生成
・トレーニング機能
・大画面
・大容量バッテリー
・ルート自動生成
・トレーニング機能
・液晶の進化
・Garmin Pay
・トレーニング機能
・エアロ形状
・KICKR連動
・使いやすいUI
・トレーニング機能
・ルート自動生成
・トレーニング機能
・大容量バッテリー
・ルート自動生成
・トレーニング機能
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ワイズロード
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各モデルの特徴

Garmin Edge840 / 840 Solar:高感度のタッチスクリーンを搭載したGarminのフラッグシップモデル。540との機能差はないが、グローブの上からも使用できるタッチスクリーンでサクサクした操作が可能。ソーラーモデルあり。

Garmin Edge1040 Solar:ほぼスマートフォンの大きさに、豊富なトレーニング機能や自動ルート生成機能などのさまざまな付加価値。さらにソーラーバッテリーで最大45時間持続。長時間サドルの上で過ごしながら未踏の地を開拓するサイクリストのためのモデル。

Garmin Edge1050:前モデル「1040」と併売されるかたちだが、その理由はバッテリー駆動時間の劣化によるものと思われる。代わりにディスプレイの解像度が上がり、CPUが強化されたことで、見やすさや操作感が向上している。1040の圧倒的な駆動時間は、ほとんどの人にとってはオーバースペックであることは事実で、“適切な距離”をライドするサイクリストにとっては、使い勝手が向上した1050の方が最適な場合もある。

Wahoo ELEMNT ROAM:ELEMNT BOLTをベースに大型化&カラー化したモデル。スマホ連携でわかりやすく操作できる点もWahooならではの強み。第2世代ではデュアルバンドGPS採用でナビゲーションが強化された。

Bryton Rider S800:大画面、大容量バッテリー、そして価格が魅力的。スペック上はEdge1040に肉薄する。

iSPSPORT iGS800:モデル名もスペックもRider S800を意識したようなモデル。バッテリー容量が圧倒的。

どのモデルを選ぶ?

この価格帯であれば動作の安定性を最重視したい。そうなると現状ではGarminとWahooが有力。
その上で、ウルトラディスタンス志向であれば「Edge840 Solar」「Edge1040 Solar」、使い勝手を重視するなら「ELEMNT ROAM」「Edge1050」が最適。
コストを抑えて高性能&多機能モデルを求めるなら「Rider S800」「iGS800」というような観点で絞り込むことができる。

 

GPSサイコンを選ぶ理由

GPSサイコンの優位性

高価なGPSサイコンを選ぶ理由はサイクリストによりさまざまだが、GPS非搭載のサイコンと異なるのは以下の3点。

正確なデータ計測と表示

スピード、ケイデンス、走行距離といった基本的なデータの記録に加え、気圧高度計を用いた正確な獲得標高や、パワーメーターと連動したワット数(W)の取得が可能。それを大画面の液晶に表示することで、ライド中のあらゆるコンディションを即把握できる。またライド終了後の走行データはスマートフォンにBluetoothで自動的に同期される。

ナビゲーション機能

事前に引いておいたルートに沿って走行できるナビ機能を備える。エントリーモデル以外はマップも搭載(マップを頻繁に利用する場合は見やすいカラー液晶を推奨)。

ワークアウトプラン

Stravaライブセグメントの表示、FTP計測、VO2MAX計測といったトレーニングに欠かせない項目の把握以外にも、ワークアウトプランを作成したりダウンロードすることが可能。

GPSサイコンで見る主要なデータ

データはライド中に必要なものと、ライド前後に見るものに分けられ、その中で「ナビゲーション目的」と「ステータス把握目的」の項目がある。

GPSサイコンで見る主なデータ

 目的 ライド中 ライド前後
ナビゲーション 周辺地図 ルート作成
ルートナビ ルートログ
ステータス把握 スピード 走行距離
ケイデンス 獲得標高
心拍 TSS
斜度 NP
パワー Strava連携

特にパフォーマンス向上を目的とする場合は「GPSサイコンで計測→スマートフォンにアップして振り返る」という流れの中で、ライドの質を上げていくことができる。
そこで見る指標は、距離を稼ぎたい人なら走行距離、山好きは獲得標高、パワートレーニング中の人はTSSやNPなど。

Garmin Edgeシリーズのみを比較する

著者情報

Tats Tats Shimizu@tats_lovecyclist
編集長。スポーツバイク歴10年。ロードバイクを中心としたスポーツバイク業界を、マーケティング視点を絡めながら紐解くことを好む。同時に海外ブランドと幅広い交友関係を持ち、メディアを通じてさまざまなスタイルの提案を行っている。メインバイクはStandert(ロード)とFactor(グラベル)。