
すべてを記録し、振り返る。
走行データをあらゆる角度から数値化するGPSサイコンは、ライドを楽しむために欠かせないもの。
かつてGPSサイコンといえばGarminが市場を独占していましたが、ここ数年で競争力のあるプレイヤーが次々とこのマーケットに参入し、僕らサイクリストにとって新たな選択肢が生まれています。
しかしその分だけ、多種多様な機種が存在することで自分に最適な1台への絞り込みは手間になったとも言えます。
ここではGarminを含むGPSサイコン主要5プレイヤーから発売されている各モデルを、クラス別に機能比較。GPSサイコン選びのマイルストーンにしてください。
text/Tats(@tats_lovecyclist)
1. GPSサイコン主要5メーカー
Garminは今でもシェアの多くを担うことは変わりありませんが、WahooやLezyneなど後発メーカーの台頭も見られます。本記事では国内で入手できるメーカーに絞って比較します。
Garmin – サイコン界の巨人

『Garmin Edge』シリーズはGPSサイコンの代名詞であり、GPS計測精度は他メーカーの追随を許していません。「ガーミン買った」という宣誓はサイクリストとしてひとつ階段を登ったことを感じさせる象徴的なセリフ。
Edgeシリーズは、エントリー向けの100系、スタンダードの500系、フラッグシップの800系、大画面の1000系という4カテゴリに分けられます。
全方位に向けた死角のないラインナップを揃え、GPSサイコンのスタンダードとしての地位を確固たるものにしています。
※Garminモデルだけを比較する場合は以下の記事を参照してください。
Wahoo – ジャイアントキリングの最有力となる拡張性

ポストガーミンとして勢力を伸ばしているWahooの『ELEMNT(エレメント)』シリーズは、「ELEMNT BOLT」「ELEMNT ROAM」の2つをラインナップ。
ELEMNTの最たる特徴は、光と音を駆使したナビゲーションのわかりやすさと、スムーズなスマートフォン連携。
スマホアプリの設定はELEMNT側に即同期されるため、ファームウェア・地図・項目のアップデートが容易に可能です。
またトップシェアを誇るスマートトレーナー「KICKR」との連携機能もあり、拡張性の高さも大きな強み。
ELEMNT ROAMのレビューはこちら
Lezyne – 圧倒的なバッテリー&価格競争力

LezyneのGPSシリーズは、エントリー向けの「MACRO」系*、スタンダードの「SUPER」系、大容量バッテリーの「MEGA」系に分けられます。
これらは価格競争力の高さもさるところながら、最たる特徴はバッテリー駆動時間が圧倒時に優れているところ。中でもMEGA XLは最長48時間と、長時間のブルベにも対応可能な最高クラス。
*「MACRO」系は、加速センサー・気圧高度計が非搭載なので注意が必要
Xplova – スマートフォンのようにあやつる操作性

トレンドに乗ったプロダクトづくりをする新鋭台湾メーカーXplova(エクスプローヴァ)。
GPSサイコンは「X3」と「X5 Evo」の2ラインナップで、Android OSをベースにしたフラッグシップのX5 Evoは、これまでもっさりしていたサイコンのUIに新感覚のサクサク動作をもたらし、スマートフォンに飼い慣らされた僕らの指に馴染みのある触覚を思い出させてくれます。
カメラ付きサイコンという新しいジャンルにも、ガジェット好きの食指が思わず動くもの。
X5 Evoのレビューはこちら
Bryton – GPSサイコンを最も身近にするラインナップ

台湾メーカーBryton(ブライトン)のGPSサイコンは、エントリー層が求めやすい1万〜2万円台がメインの価格帯でしたが、近年はハイエンド系のラインナップも充実しています。
ベーシックモデルは「Rider420」。安価な分、画面解像度やナビの使い勝手は他メーカーに劣る点は留意する必要がありますが、国内ではチーム右京とスポンサー契約を結ぶように、プロユースにおいても問題のない機能性を持ちます(Rider420からナビ機能を除いた「Rider320」もあり)。
ハイエンドモデルでは「Rider750」に加え、2022年には小型化した「S500」と大画面&大容量バッテリーの「S800」が登場し、Garmin800系と近い機能の中、価格面で優位に立っています。
2. 比較①エントリークラス5機種
必要最低限の機能を備える¥20,000前後のエントリー機。
ほとんどのモデルは地図表示できないものの、ナビは備えているので、新たな道を開拓することもある程度は可能です。
メーカー | Garmin | Lezyne |
Xplova | Bryton | |
モデル |
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発売 | 2020.7 | 2016.12 | 2019.11 | 2018.3 | 2019.10 |
税込価格 | ¥28,880 | ¥18,200 | ¥24,200 | ¥21,780 | ¥18,150 |
ディスプレイ | 1.8インチ モノクロ | 2.0インチ モノクロ | 2.0インチ モノクロ |
2.2インチ カラー | 2.3インチ モノクロ |
重量 | 33g | 76g | 60g | 80g | 67g |
操作 | ボタン | ボタン | ボタン |
ボタン | ボタン |
バッテリー | 13時間 | 24時間 | 28時間 |
20時間 | 35時間 |
地図 | – | – | ● | – | – |
ナビ | ● | ● | ● |
● | ● |
特徴 | 軽量 | 長持ちバッテリー | 地図搭載 | カラー液晶 | 低価格 |
購入リンク | Amazon(セット) Amazon(単体) |
Amazon |
Amazon | Amazon |
Amazon |
各モデルの特徴
●Garmin Edge130 Plus:パワー計測が平均/ラップ/最大しか表示できない制限はあるが、それ以外はGarminらしい安定の仕上がり。ディスプレイがかなり小さいので視認性には注意。
●Lezyne SUPER GPS:バッテリーの持ちが良く、値段もナビ付きの中でかなり魅力的。
●Lezyne SUPER PRO GPS:SUPER GPSの進化版。縦横表示・地図搭載・バッテリー強化・軽量化など、¥3,000の価格差に見合う内容が魅力。
●Xplova X3:機能的な特徴は薄いものの、ほかにはない大きなカラー液晶の見やすさが特徴。意外とバッテリーも強い。
●Bryton Rider420:前モデル「Rider410」になかった簡易ナビ機能が追加され、またパワーメーター接続もできるためトレーニングには必要十分なスペックを持つ。いわゆる“コスパ最強”と言われるモデル。
どのモデルを選ぶ?

このクラスはモノクロ液晶の「SUPER PRO GPS」か「Rider420」のバッテリー持ちが突出しています。やはりバッテリーが長持ちするほど使い勝手がよく、価格対スペックを見てもGarminよりもかなり良心的。
3. 比較②ミドルクラス6機種
スタンダードモデルが揃う¥30,000前後は最も人気の価格帯。あらゆる機種のベンチマークとなるGarmin Edge540を筆頭に、多機能なモデルが揃っています。
メーカー | Garmin | Wahoo | Lezyne | Bryton |
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モデル |
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発売 | 2023.4 | 2021.7 (第2世代) |
2018.6 | 2018.6 |
2020.11 | 2022.1 |
税込価格 | ¥54,800 | ¥37,000 | ¥26,400 | ¥28,600 | ¥32,780 | ¥39,380 |
ディスプレイ | 2.6インチ カラー | 2.2インチ カラー | 2.2インチ カラー | 2.7インチ モノクロ | 2.8インチ カラー | 2.4インチ カラー |
重量 | 80.3g | 68g |
73g | 83g | 93g | 87g |
操作 | ボタン | ボタン |
ボタン | ボタン | ボタン+ タッチスクリーン |
ボタン+ タッチスクリーン |
バッテリー | 26時間 | 15時間 |
32時間 | 48時間 | 20時間 | 24時間 |
地図 | ● | ● |
● | ● | ● |
● |
ナビ | ● | ● |
● | ● | ● |
● |
特徴 | ・多機能 ・ベンチマークモデル |
・エアロ形状 ・KICKRとの連動 ・LEDナビ ・ペダモニ対応 |
・長持ちバッテリー ・見やすいカラー液晶 |
・圧倒的バッテリー ・大画面 |
・良コスパ | ・Type-C充電 ・ワークアウト充実 |
購入リンク | Amazon |
Amazon | Amazon |
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Amazon | Amazon |
各モデルの特徴
●Garmin Edge540/540 Solar:前モデル530から機能・バッテリー・拡張性すべてパワーアップ。バッテリーを拡張するSolarモデルもラインナップ。ナビ機能、パワーガイド、リアルタイムスタミナなど、コンパクトな筐体に最新機能を揃え、定番モデルの地位を確固たるものに。
●Wahoo ELEMNT BOLT:LEDを用いた色覚的なインターフェイスがわかりやすく、空力を考慮したエアロ形状、KICKR連動などの拡張性が強み(2021モデルはカラー液晶化)。
●Lezyne MEGA C GPS:シャープ製カラー液晶を採用して見やすさを重視したモデルで、特にナビゲーション時に進むべき道がわかりやすいのが特徴。
●Lezyne MEGA XL GPS:圧倒的48時間バッテリーで泊りがけのライドでもOK。そしてディスプレイも大きく、縦・横どちらでも使える新感覚のサイコン。
●Bryton Rider750:ほかのフラッグシップと遜色なく価格競争力に長けているモデル。後発の750はセカンドグレードとされているが、860と機能差はなくバッテリー持ちも750の方が長い。
●Bryton Rider S500:2022年最新機種。860/750よりも小型化され、バッテリー持ちも強化。液晶が鮮明となったりタッチパネル反応性が向上したり、全体的な性能が底上げされている。ワークアウト機能も強化。Type-C充電となった点は地味に嬉しい。
どのモデルを選ぶ?

ラインナップが豊富で、絞り込みが難しいミドルクラス。
特に「Edge540」と「Rider S500」のスペックはバランスが良く、価格面で見るならS500が強い。またKICKRを所有している場合やエアロを極めるなら「ELEMNT BOLT」、バッテリーとコスパ重視なら「MEGA XL」というような観点で選ぶことができます。
4. 比較③ハイエンドクラス5機種
タッチスクリーンモデルが含まれ、操作性や液晶の見やすさが格別に向上するハイエンドクラス。いずれも高価ですが、利便性の高い付加価値が備わっています。
メーカー | Garmin | Wahoo | Xplova | Bryton | |
モデル |
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![]() Rider S800 |
発売 | 2023.4 | 2022.6 | 2022.10 (第2世代) |
2017.10 | 2022.5 |
税込価格 | ¥74,800 | ¥109,800 | ¥58,500 | ¥54,780 | ¥52,800 |
ディスプレイ | 2.6インチ カラー | 3.5インチ カラー | 2.7インチ カラー | 3インチ カラー | 3.4インチカラー |
重量 | 84.8g | 133g |
93.6g | 120g | 106g |
操作 | ボタン+ タッチスクリーン |
ボタン+ タッチスクリーン |
ボタン | ボタン+ タッチスクリーン |
ボタン+ タッチスクリーン |
バッテリー | 26時間+6時間 | 35時間+10時間 |
17時間 | 12時間 | 36時間 |
地図 | ● | ● |
● | ● | ● |
ナビ | ● | ● |
● | ● | ● |
特徴 | ・多機能 ・Type-C充電 ・ルート自動生成 ・トレーニング機能 |
・大画面 ・大容量バッテリー ・Type-C充電 ・ルート自動生成 ・トレーニング機能 |
・エアロ形状 ・KICKRとの連動 ・LEDナビ ・Type-C充電 |
・滑らかな操作 ・ビデオカメラ |
・Type-C充電 ・大容量バッテリー ・ルート自動生成 ・グループライド機能 |
購入リンク | Amazon | Amazon ワイズロード |
Amazon | Amazon |
ワイズロード |
各モデルの特徴
●Garmin Edge840/840 Solar:高感度のタッチスクリーンを搭載したGarminのフラッグシップモデル。540との機能差はなく、グローブの上からも使用できるタッチスクリーンでサクサクした操作が可能。ソーラーモデルあり。
●Garmin Edge1040 Solar:GPSサイコンの頂点に君臨するモデル(主に価格的に)。ほぼスマートフォンな大きさに、豊富なトレーニング機能や自動ルート生成機能などのさまざまな付加価値。さらにソーラーバッテリーで最大45時間持続。長時間サドルの上で過ごしながら未踏の地を開拓するサイクリストのためのモデル。
●Wahoo ELEMNT ROAM:ELEMNT BOLTをベースに大型化&カラー化したモデル。LEDナビによる情報がわかりやすく、スマホ連携しやすい点もWahooならではの強み。第2世代ではデュアルバンドGPS採用でナビゲーションが強化され、また充電ポートがType-Cに変更。
●Xplova X5 Evo:サクサクUIで端末設定やナビもラクラク。ドライブレコーダーとしても使える動画撮影機能付き(バッテリーには注意)。WiFi接続でしかスマートフォンと連動できないところは弱点。
●Bryton Rider S800:大画面、大容量バッテリー、そして価格が魅力的。スペック上はEdge1040に肉薄するハイエンドモデルの有力機種。
どのモデルを選ぶ?

価格レンジが広いため予算次第というところもありますが、タッチパネル付き多機能モデルを求めるなら「Edge840」、開拓精神溢れるライダーは「ELEMNT ROAM」、トレーニングやウルトラディスタンス志向であれば「Edge1040 Solar」、コストを抑えて高性能&多機能モデルを求めるなら「RIDER S800」、というような観点で絞り込むことができます。
5. GPSサイコンを選ぶ理由
GPSサイコンの優位性
高価なGPSサイコンを選ぶ理由はサイクリストによりさまざまですが、GPS非搭載のサイコンと異なるのは以下の3点。
正確なデータ計測と表示
スピード、ケイデンス、走行距離といった基本的なデータの記録に加え、気圧高度計を用いた正確な獲得標高や、パワーメーターと連動したワット数(W)の取得が可能。それを大画面の液晶に表示することで、ライド中のあらゆるコンディションを即把握できます。またライド終了後の走行データはスマートフォンにBluetoothで自動的に同期されます。
ナビゲーション機能
事前に引いておいたルートに沿って走行できるナビ機能を備えます。エントリーモデル以外はマップも搭載(マップを頻繁に利用する場合は見やすいカラー液晶を推奨)。特にGarmin、Wahoo、Xplovaの上位モデルはナビ機能の使いやすさが際立ちます。
ワークアウトプラン
Stravaライブセグメントの表示、FTP計測、VO2MAX計測といったトレーニングに欠かせない項目の把握以外にも、ワークアウトプランを作成したりダウンロードすることが可能。
GPSサイコンで見る主要なデータ
データはライド中に必要なものと、ライド前後に見るものに分けられ、その中で「ナビゲーション目的」と「ステータス把握目的」の項目があります。
GPSサイコンで見る主なデータ
目的 | ライド中 | ライド前後 |
ナビゲーション | 周辺地図 | ルート作成 |
ルートナビ | ルートログ | |
ステータス把握 | スピード | 走行距離 |
ケイデンス | 獲得標高 | |
心拍 | TSS | |
斜度 | NP | |
パワー | Strava連携 |
特にパフォーマンス向上を目的とする場合は「GPSサイコンで計測→スマートフォンにアップして振り返る」という流れの中で、ライドの質を上げていくことができます。
そこで見る指標は、距離を稼ぎたい人なら走行距離、山好きは獲得標高、パワートレーニング中の人はTSSやNPなど。
通常のサイクルコンピュータからGPSモデルにすることで、サドルを降りているときも含めてライドを楽しめるようになります。
* * *
GPSサイコンひとつ取り付けるだけで、走りの質の楽しみも大きく変わるもの。この記事を参考に自分に合ったモデルを見つけ、さらなるロードサイクリングの深みへと駆け出してください。
Garmin Edgeシリーズのみを比較する
著者情報
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Tats Shimizu(@tats_lovecyclist) 編集長。スポーツバイク歴10年。ロードバイクを中心としたスポーツバイク業界を、マーケティング視点を絡めながら紐解くことを好む。同時に海外ブランドと幅広い交友関係を持ち、メディアを通じてさまざまなスタイルの提案を行っている。メインバイクはFactor O2(ロード)とLS(グラベル)。 |