【Aethos 2レビュー】エートスの系譜が切り開く孤高の“ライドクオリティ”は、我々を絶え間ないスペック至上主義から解放するだろう。

後続モデルはもう出ないかもしれないと思っていたSpecializedのAethosだが、2025年9月に『Aethos 2』として再び我々の前に現れたことは本当に驚きだった。
見た目も走りもコンセプトも孤高の存在だったAethosが、なぜ復活し、どう進化を遂げ、どのような体験をもたらすのか?
Specializedバイクに精通する3人のライダーとともに、西伊豆の山々を走りながらその真意と本質を探っていく。

レビュアー

Ryuji Taka
Ryuji@ryuji_ride
愛媛在住。スポーツバイク歴16年。POCアンバサダー。自転車専門誌の編集者、サイクルウェアメーカーといった経歴から業界や最新プロダクトに精通。Specializedのバイクは過去にTarmacを3台乗り継いでいる。
Taka@koolt4844
外資系企業勤務。Specializedライダー(S-Crew)。MAAP/BOOKMANアンバサダー。さまざまな山々をつないで一度に距離300km/標高4,000m以上獲得するライドを好む変態。メインバイクはS-Works Aethos 2とS-Works Tarmac SL8の2台。
anna  
Anna(@annannanna1002
Specializedライダー(S-Crew)。走ることが大好きで、休みのたびにさまざまな山に遠征。思い立ったら日帰りで磐梯吾妻スカイラインに行くほど行動力に溢れる。メインバイクはS-Works Tarmac SL8。
 

ライター & フォトグラファー

Tats Tats Shimizu@tats_lovecyclist
東京在住。編集長&フォトグラファー。海外ブランドと幅広い交友関係を持ち、メディアを通じてさまざまなスタイルの提案を行っている。同時にフォトグラファーとして国内外の自転車ブランドの撮影を多数手掛ける。

text & photo / Tats@tats_lovecyclist)[PR]

だから再び市場に現れた。

S-Works Aethos 吉本司氏

今でも色褪せない初代Aethos

2020年に登場した初代Aethosは、ここ数年の新型ロードバイクの中で、最も異質で、最も誤解されたプロダクトだった。Aethosに掲げられたのは“完璧な走行性能(ライドクオリティ)の追求”というコンセプトだが、スペック重視&レースバイク嗜好の強いマーケットにおいて、これが正しく機能するには、土壌がまだ成熟していなかったというのが現実だった。つまり、「ライドクオリティって何?Aethosって速くないの?」という感じだ。

だから当時は“UCI規定6.8kgを無視した軽さ”という記号がひとり歩きして、一部でホビーレーサーのヒルクライム専用機として売り出されたり、あるいは「ガチ勢じゃない人のための自転車」という限定的なレッテルが貼られたりすることとなった。

本来Aethosが目指したのは、特定の用途に特化したものではなく、走りに対して純粋な心地よさや快楽を追求する姿のはずだった。
だからフレーム形状はタイムレスなもので、S-Worksロゴは小さく、バイクがその存在を主張するのではなく、Aethosに乗ったサイクリスト側を主役に置くようなプロダクトデザインになっている。にもかかわらず、販売サイドやエンドユーザーによる安易な記号化が、このバイクの本質的なポテンシャルを覆い隠してしまった。

それでも当時、LOVE CYCLISTメンバーのうち2名が初代Aethosを選んでいる。マーケットのシェアに対してはかなり高い割合だろう。Aethosの哲学は、伝わる人には確実に刺さっていたということだ。

発売当時から異質な存在だったAethos。初代Aethosオーナーの吉本氏は「My Aethos」という企画で“息が長いバイク”とその魅力を語っている

ただ、このコンセプトがより広く浸透するためには、ひどく時間がかかるのは間違いない。ライドに向き合う価値観そのものが異なるからだ。スペックやブランドに多くの価値を見出すマーケットにおいて、サイクリストの評価軸が切り替わるには、初代Aethosの製品寿命だけでは短すぎる。

だからAethosは再び市場に現れた。

初代から5年を経て現れたAethos「2」

Specializedはただ売れる領域を追うメーカーではなく、マーケットを開拓するメーカーだ。プロダクトを通して新たな価値とライド体験を生み出していく。Aethosの系譜を続けることで、初代を選んだサイクリストには「あなたは正しい選択をした」と伝え、そして競争を第一としないサイクリストには、「これから先も新しい選択肢が用意されている」と伝える。たとえ初代のコンセプトが後付けだったとしても、新型 Aethos 2が満を持してリリースされたのは、過去の誤解を拭い去って、ブランドが当初描いていた哲学を結実させるためだと考えるのは、決して穿ちすぎではないはずだ*。

*初代はエンジニアのピーター・デンクが好きなようにつくったフレームが良かったのでAethosとして売り出すことになったという経緯がある。デンクはすでにSpecializedを去っているが、Aethos 2はデンクの設計思想を受け継いだエンジニアたちがつくった

初代から継承されるAethos独自のロゴは、Specializedのラインナップの中でも境界線が引かれたような孤高の存在感がある

それは単なるフル内装化やジオメトリ更新ではなく、走りの質(=ライドクオリティ)そのものを作り直すことに繋がっている。今回、3名のライダーによる多角的な実走レビューを通じて、Aethosの系譜が切り拓こうとしている新たな世界線を明らかにしていく。

 

初代とSL8との境界線

Aethos 2を理解するために、
初代Aethosから何を変えたか
Tarmac SL8とどう棲み分けたか
まずこの2点を整理したい。

初代Aethosからの変化

初代Aethosは、Tarmacとジオメトリーが同じだったことで、レーシングバイクじゃないのにレーシーなポジションという矛盾を抱えていた。だから余計にレーシングバイクとの棲み分けが難しく、軽さを全面に出すしかなかった。しかし、新型でスタックハイトやホイールベースを延長し、エンデュランス寄りのジオメトリに振っている。

初代よりもヘッドチューブが伸びたことは外観上もよくわかる

ヘッドチューブが長くなったことは、初代Aethosオーナーがスペーサーを積んだ状態で乗っていたことが多かったことによる変更点だ。
この点は賛否あるだろう。大きいサイズではスタック換算で15mmも高くなっているため、初代Aethosをコラムベタ付けで乗っていたオーナーにとってはポジション変更を強いられるし、見た目の間延び感は否めない(ただし、日本人にマッチした小さいサイズはスローピングが緩やかになり、前作に比べて美しさを増している)。

54サイズで見ると、ヘッド角が73°→72.5°と若干寝て、BBハイトが268mm→267mmと低くなり、結果ホイールベースも14mm伸びた。

ジオメトリは更新されているものの、Aethos 2は初代が確立したシルエットをベースにしている。丸型チューブを基本とした一筆書きのような形状のフレームは、リムブレーキ時代のバイクのように美しく、今の時代でも古さは一切感じない。

コックピット周りは大きく変化している。完全内装化はわかりやすく、トレンドの追従であることは間違いないが、上位グレードの完成車には一体型ハンドルが取り付けられ、 Aethosらしい引き算のデザインがより引き立つようになった。

走らせてから明確な違いにも気づく。ハンドリングは、初代にあった「ハンドルのくるくる感」が少しマイルドになって、扱いやすい味付けになったと感じる。
フォーク周りの印象も変わった。初代で気になっていた、ダンシング時にパワーが逃げるような感覚が緩和され、しっかり反応する。結果として登りも下りもピーキーさから一歩引いて、走行感が全体的に落ち着いたと感じる。

平坦を走行した時にトルクを掛けると力が抜ける感覚があったが、Aethos 2にはそれがない

初代よりも安定性と反応性が高い次元でまとめられ、今まで以上に多くのユーザーが扱いやすいバイクになっている。

Tarmac SL8との棲み分け

「勝つ」という目的が明確なSL8

SL8との線引きもはっきりしている。Aethos 2は速さの勝負をするバイクではない。ゼロ発進から35km/hくらいまでの加速は気持ち良く速度に乗っていくが、40km/hに近づくにつれて伸びが弱まる。これは空力の設計思想とライダーのフォーム制約(スタックの高さ)の両方が影響する。つまりAethos 2は一定以上の速度を維持して削り合う領域に最適化されていない

対して SL8が得意なのはまさにそこだ。トルクを掛けた時の反応性、高速域の維持。タイムを出したい、勝ちたい、という目的が明確なら迷いなくSL8を選ぶべきだ。

Aethos 2を選ぶ理由は、「ロードバイクの軽快感や楽しさを素直に感じたい」という感覚に尽きる。長距離を走ってもTarmacより身体への負荷が少なく、より長い時間を楽しく感じさせてくれる。余裕あるポジションも含めて 、ずっと走り続けらるような感覚が残る。「競うことよりも、自転車に乗ることが好き」という感覚が少しでもあるサイクリストなら、この特性がライドをより心地よくすることは容易に想像できると思う。

 

実走レビュー

Taka |↑Anna | Ryuji

3名のライダーによる実走で得られた感触をまとめていく。3人が共通して感じたポイントが多いため、誰が言ったかは区別せず、そのままAethos 2の性格として整理している。

登坂性能

Aethos 2の登りは、「軽いから楽」という雑な結論にはならない
そうではなく、「登りに関してはケチのつけようがない」というのが最も適切な表現だと思う。淡々と自分のリズムで登るも良し、誰かと掛け合いながら登るも良しで、どちらの登り方でも、バイクの反応は途切れない。

象徴的なのはダンシングのフィーリングだ。リズムの遅れがないので、ペダリングが自然と速くなる感覚があって、ギア一枚分は重くしても進めると感じさせる。ここにAlpinist CLX Ⅲが組み合わされると、適度なしなりも加わって、テンポ良く登っていける。急な登りでもスムーズにペダリングができ、シッティングでもグングン登っていく。

「トルクを掛けずともスイスイ登る感覚が残る。重いギアでも軽いギアでも安心して登坂ができる」というAnna

つまりAethos 2は、登りを速くするというより、登りを整えるような上質な味付けだと印象だ。

平地巡航

平地で気持ちいいのは、0〜35km/hくらいまでの加速だ。実際に速いかどうかはともかく、この速度域はTarmacよりも気持ちよく、速度に乗っていく感じが病みつきになる。ストップアンドゴーの多い都内だと、これだけでライドが楽しくなる。 

エアロポジションは取りづらい

一方で、速さの限界もある。40km/hに近づくにつれて速度の伸びが弱まるのだ。フレームはカムテールではないし、ヘッドチューブの長さのせいでエアロフォームに限界がある。だからこそ、25〜35km/hくらいで走らせるのが一番気持ちがいい。ここは欠点というより、Aethos 2が「どの速度域を主戦場にするか」をはっきり選んだ結果だということは間違いない。

ハンドリング

ハンドリングも尖ったものではない。初代に比べるとハンドリングが少しマイルドになり、比較的多くの人が扱いやすい味付けになったと思う。動きは非常にスムーズで自然で、ロングライドでも疲れを感じさせない。 

「速い下りのコーナーでも的確に曲がっていける」とRyujiは感じ取る

下りはさらにわかりやすい。軽量バイクだが、ダウンヒル時に軽量特化型の危うさを感じにくい。ヘッドチューブの延長分で前作よりも少しハンドリングにどっしり感が加わり、路面の情報を的確に処理しながら曲がっていける(だからいつもより速度が出てしまうこともある)。ホイールベースの延長やヘッドチューブの変化が素直に性格に表れている。
ただ、突風などが吹いた場合にはAethosの軽さがマイナスに働き、ヒヤッとする場面もあった。

乗り心地と剛性感

レーシングバイクでも振動吸収性に優れたモデルが増えた今、Aethos 2が突出して乗り心地がいいバイクとは言い切れないが、嫌な振動の伝わり方はしないし、どちらかといえば優しい方のフレームだと感じられる。

クリアランスは32c→35cになり、道の幅が広がった

Aethos 2の総合的な快適性を決定づけるのは、タイヤクリアランスと運用による。35mmまでのクリアランスがあるので、太めのタイヤを低圧運用して路面の凹凸を吸収する乗り方も成立する。特にAlpinist CLX IIIと34cタイヤの組み合わせは非常にしなやかで、ロングライドに最適だと感じた。振動吸収性もしっかりとあり、軽快で楽しく、いつまでも走っていられる気がする。 

疲労についても同じだ。アップライトなポジションなので、300km前後のロングライドでも、今までのような疲労感を感じにくい。足当たりの良さ、振りの軽さ、そして走行時の突き上げをフレームでいなしている感覚が、脚を削られにくい方向に働く。速いペースでゴリゴリ走るなら当然脚は削られるかもしれないが、Aethos 2が主戦場とする速度域で走る限り、疲労は少なくなることがわかっている。 

快適性と反応性が、ちょうど良いと感じられる絶妙な味付け

剛性感は、「硬いのに当たりが良い」というタイプだった。フレームのたわみを感じにくい部類のバイクだが、脚当たりは良く、スッとタイムラグがないままに前に進んでいく。激しくダンシングしてもパワーが逃げるような感覚が緩和されていって、しっかり反応する。

※Aethos 2は履かせるRovalホイールで性格が変わる。『Alpinist CLX Ⅲ』はゼロ発進が非常に素晴らしい反面、30km/h以上を維持することを考えると、ホイールは変更したい、という欲がすぐ出る。『Rapide CLX Ⅲ』や『Rapide Sprint CLX』を試したくなるのは自然だ。フレームが軽くクセがないからこそ、ホイールの差が露骨に出る。Aethos 2は完成車のままでも楽しいが、“いじる楽しさ”が前提に組み込まれている。

Rapide CLX IIIで高速域仕様 | Alpinist CLX III×34cタイヤで長距離仕様
Takaはホイールを替えてさまざまなライドに対応している

 

“The road bike for the many”

Aethos 2は、25〜35km/hが最も気持ち良いと感じられるように、速さで人を説得するバイクではない。速さの軸で上書きせず、楽しさの軸を更新したバイクだ。だから向き不向きははっきりと出る。 

Aethos 2が向いているのは、一定以上の速度を維持して削り合う走りよりも、気持ち良い速度域で自分のリズムを作りたいような人だ。登りでリズムが乱れず、下りでも危うさが少ない。その素直さは、バイクの存在感を透明にし、自分の感覚で走る時間を濃くしてくれる

ただし「Aethosはゆるいバイク」という先入観は捨てていいレース機材ではないが、レースに出られないわけではない。現にツール・ド・フランスの山岳ステージで、Kasper AsgreenがAethosを選んだことがある。 
低強度でも楽しく、高強度でも楽しく、乗って楽しく、観て美しく、短いカフェライドから500kmオーバーのウルトラロングディスタンスまで、ロードバイクの楽しさをどこでも味わい続けられる。そういう幅がAethos 2の本質だ。

だから我々は、Aethos 2を“The road bike for the many(多くのサイクリストのためのロードバイク)”と呼びたい。
もう「ヒルクライマーのための」「カフェライダーのための」といったレッテルはAethosには要らない。速さのヒエラルキーの中で“どこに位置するか”という定義自体が、このバイクの説明としてズレているからだ。
SpecializedがAethos 2で“Perfect Ride”というコンセプトを提示しているが、これは既存の評価軸から離れて「自分にとっての究極」を走りの中で見つけていくことだ。Aethos 2はスペックもレッテルも他者との優劣も無視して、登りでも平地でも下りでも、自分だけの気持ちよさを積み上げていく。

そうしてAethos 2が切り拓く新たなライドクオリティの世界線は、我々のロードバイクの価値基準を「速いかどうか」だけから次第に解放していくだろう。

Takaは発売直後にS-Works Aethos 2を購入し、毎週のように300km以上の“Perfect ride”を実践している(写真はRapide Sprint CLXを装着)

 

Aethos 2 全ラインナップ

フレームは「S-Works」と「Pro」の2グレード。完成車はアセンブルされるハンドルとホイールの違いで3つの価格帯に分かれる

  ハンドル ホイール 重量
*56サイズ
価格
S-Worksグレード
Shimano Dura-Ace Di2完成車 Roval Alpinist Cockpit II Roval Alpinist CLX III 6.05kg ¥1,760,000
SRAM Red AXS完成車 5.98kg
フレームセット 595g ¥770,000
Proグレード
Shimano Ultegra Di2完成車 Roval Alpinist Cockpit II Roval Alpinist CL II 6.73kg ¥1,100,000
SRAM Force AXS完成車 6.71kg
Shimano Ultegra Di2完成車 Roval Alpinist bar, Alloyステム Roval C38 7.12kg ¥792,000
SRAM Force AXS完成車 7.05kg
フレームセット 705g ¥473,000

*記載価格は2026年1月時点のもの

Specialized Aethos 2ラインナップ一覧(公式サイト)

Aethos2特集ページ「Perfect Ride」(公式サイト)はこちら
Aethos2試乗車展開店舗一覧はこちら

text & photo / Tats@tats_lovecyclist
[PR]提供 / Specialized Japan