text by Tats(@tats_lovecyclist)
インドアサイクリングでは扇風機をどうするかという問題があります。
普通の扇風機では風量が足りない。でも無骨な工業扇風機は部屋に馴染まない。
僕は最大風量とプロダクトデザインからWahooの「KICKR HEADWIND」を選びましたが、実際に使ってわかることは以下の通り:
ほかの扇風機にはないスマートな冷却が体験できる新しいカテゴリの製品。風量もすごいし、そしてとても高価。
この結論に辿り着くために、HEADWINDの詳細を見ていきます。
1. KICKR HEADWIND仕様
サイズ | 406×305×483mm |
重量 | 5.4kg |
最大風速 | 48 kph / 30mph |
接続 | Bluetooth / ANT+ |
価格 | ¥44,000(税込) |
Wahooはスマートトレーナーと組み合わせて使えるスマートファン「KICKR HEADWIND」を2018年に発売しました。
Wahooのエコシステムに組み込むため、KICKRシリーズと調和するデザインになっています。
HEADWINDは今でも唯一のスマートトレーナー専用ファンであり、インドアで使うためにはあらゆる扇風機の中で最上位の選択肢であることは変わりません。
2. 風を制御する
HEADWINDは、ほかの扇風機と同じように手動での風量調整のほか、スピード連動モードや心拍連動モードが備わっているのが特徴です。
風量の調整方法は4つ。
調整方法
①本体のボタンで調整する
前面にあるボタンで4段階の風量調整/スピード連動モード/心拍連動モードを選択できます。
通常の扇風機と同じく、走行中にボタンを押すことは不可能。
②Wahoo Fitnessアプリで調整する
Wahooアプリ(iOS | Android)を使えば、手元のスマートフォンで本体の風量を調整できます。
本体のボタンは風量4段階なのに対し、アプリでは0%〜100%とリニアに変化させることが可能。またスピード連動モード/心拍連動モードへの切り替えもアプリでOK。
(ただ普通にリモコンが付属してくれてもよかったとは思っている)
③スピードと連動する
KICKR内のスピードセンサーと自動的に接続され、Zwift内の走行速度に合わせて風量が変わります。これがHEADWINDの一番のウリであり、バーチャルライドで向かい風を再現することで、より現実感を与えるというオプションです。
※他社製のスマートトレーナーの場合は別途ANT+スピードセンサーが必要
④心拍数と連動する
ANT+心拍計と連動することで、心拍の上昇に合わせて風量が変化していく心拍連動モード。
一般的に心拍数と体温は相関関係にあるので、心拍を上げて身体が火照ると自然と冷却できます。
どのモードを使うか?
多くのインドアサイクリストは、「②Wahooアプリ」と「④心拍連動」を最も利用することになると思います。
本来的には「③スピード連動」がキャッチーな機能ですが、リアル過ぎるのでヒルクライムで低速であえいでいるときに風をよこしてくれません。そして下りになると部屋の中に強風が吹き荒れます。確かに現実世界はそうかもしれませんが、インドアではダウンヒル用にウィンドジャケットを用意しません。
あえいでいるときに風を強めてくれて、脚を休めているときは抑えてくれる。それが快適なインドアライドのためのファンのあるべき姿です。
それは「④心拍連動」モードが実現してくれます。
そして手動で風量変更したいときは、手元で「②Wahooアプリ」で調整すれば完璧。
最大48kphの風量は充分過ぎる(冬は寒すぎる)
3. セットアップ上の注意点
風の幅
HEADWINDの風はサイクリストの体を冷却するためだけに吹いています。だから風が当たるのはちょうど身体の幅+αくらい。
正面に設置するのが最適ですが、スペースの問題で斜めに置かなければならないときは、最適な位置調整が必要です。
取っ手があるので持ち運びはラク
脚の調整
後ろ側に隠された脚を出すことで、二段階に角度を調整できます(最初気が付かなかった…!)。
少し離して使うときは脚を立てますが、それほど広い部屋を用意できない場合は畳んだ状態で充分です。むしろ下から吹き上げるほうが涼しい。
電源プラグ
電源プラグはピンがひとつ多い3Pタイプ。
通常のコンセントには差し込めないので、3P/2P変換アダプタが必要となります。
3Pプラグは大きくかさばるので、L字型のアダプタ(Amazon)を推奨。
余ったケーブルは背面に巻きつける
他社のスマートトレーナーで使えるか?
他社のスマートトレーナーと直接連動させることはできませんが、ほかのセンサーと繋げることはできます。
- ・ANT+スピードセンサーやANT+心拍計を連動させる
・Wahoo Fitnessアプリを使って手元で風量を変更する
スピード連動が不要であれば(僕にとっては不要だった)、他社製品でも難なく使えます。
あとはデザインの統一感が生まれないことを許容できるか、という美学の話。
4. ラグジュアリーだけれども。
工業扇風機は雰囲気を損なうし、バルミューダやダイソンでは爽やかな風しか届かない。
少なくとも僕は、スマートトレーナーと調和するプロダクトデザインのために最初お金を払ったといっても過言ではありません。
ただ、それに加算して、インドアライド体験がこの上なくアップグレードされることは確かです。
扇風機の角度を調整して汗と格闘していた過去と比べると、スイッチを入れるだけであとはHEADWIND任せ。
この利便性を一度体験してしまうと、バルミューダが買えたはずの出費のことは忘れてしまいます。
Highs
- ・風の制御方法が4つある
・心拍連動モードが素晴らしい
・最大風速が頼もしい
・KICKRのエコシステムに組み込まれたデザイン
Lows
- ・スピード連動モードの用途は限られる
・角度調整が2段階しかない
著者情報
Tats Shimizu(@tats_lovecyclist) 編集長&フォトグラファー。スポーツバイク歴11年。ロードバイクを中心としたスポーツバイク業界を、マーケティング視点を絡めながら紐解くことを好む。同時に海外ブランドと幅広い交友関係を持ち、メディアを通じてさまざまなスタイルの提案を行っている。メインバイクはStandert(ロード)とFactor(グラベル)。 |