昨年の夏にメルボルン発のブランド「MAAP(マープ)」のウェアを初めてレビューしましたが、当時と比べると都内でもMAAPを着たサイクリストが本当に増えてきたと感じます。
MAAPのウェアは次々と感性に刺さるデザインが数ヶ月おきに投入され、国内でも千駄ヶ谷の盆栽自転車店や仙台のKK CYCLEなどで行われた展示イベントにより露出も増え、それらが感度の高いサイクリストに浸透しつつあるのだと思います。
もちろんデザインだけでなく、機能性やフィット感などのパフォーマンスはハイブランドならではのもの。そこで、昨年よりも更にクオリティが上がった今年の新ラインナップについて、昨今のMAAPデザインの特徴とともに詳しくレビューします。
*本レビューで着用するウェアはCYCLISM提供のものです。
※2020年最新ウェアのレビューはこちら
1. MAAPとそのデザイン
MAAPのデザインは、カラーやパターンなどからひと目でMAAPとわかるようなオリジナリティを感じます。それはなぜか。
著名なファッションデザイナーにMAAPのウェアを見てもらったところ、“ここ最近ファッション業界で流行している80sのデザインをサイクルウェアに取り入れ、今の時代に合うようにうまく昇華させている”という捉え方をされていました。
事実、80s(1980年代)のデザインはファッション業界だけでなく最近はWebデザインなどでも取り入れられるようになり、そのスタイルは世界的なトレンドとなっています。
80sデザインのカラーやパターンをモチーフとし、現代にアレンジしている最近のMAAPウェア
Source of 80s photo: http://inspirationfeed.com/articles/design-articles/80s-design-2017/
上記の例からもわかるように、こういったトレンドを精力的に、スピード感を持って自ブランドに取り込むMAAPの姿勢は、これまで国内に存在していたサイクリングアパレルの枠組みを拡張するものです。
それは、Raphaがベーシックで原点回帰を常とするコンサバティブなブランドであるのとは対照的で(それ自体は素晴らしいコンセプトであるものの)、RaphaからMAAPへのブランドスイッチが一部で実際に進行しているのも、このような取り組みの方針が潜在的な理由となっているものと思われます。
こういったことも踏まえて、今回レビューをしていきます。
今回レビューするウェア
MAAP Segment Pro Base Jersey(¥22,000)
MAAP Team Bib Short 2.0 Black(¥29,000)
2. レビュー:Segment Pro Base Jersey
鮮やかなグリーンが印象的なデザインのジャージで、その大胆な配置と、横に走る2本のネオングリーンがまさに80sに近い配色。その上下をブラックとネイビーというダークトーンでまとめることで、派手過ぎない現代向けのアレンジに。グリーンもネイビーもとても綺麗な色です。
素材はナイロン76%とポリエステル24%の混紡。サイクルジャージの表面はつるつるとしているものが多い中、このジャージの生地はさらさらときめ細かく、肌触りが柔らかい。皮膚に優しい素材感です。
前身頃を裏から見た状態。公式サイトの写真で見たときは、色の切り替えはほかのジャージのようにプリントで再現しているものかと思っていましたが、実際は異なる色の生地をこのようにフラットロックステッチで縫い合わせています。ジャージの機能とはまったく関係ない部分のこだわりですが、狙った色を表現するための柔軟な発想を感じられます。
昨今のトレンド通り、襟は低く首元がすっきり。首への締め付けがないのでジッパーを上げても苦しくありません。
胸元の“MAAP”ロゴはさり気なく反射素材(フラッシュ撮影)。これもネオンデザインが流行した80sを連想させます。
裾や袖の裏側には、シリコングリッパーを使わず、ゴムバンドを内蔵することで腕に密着させています(Warsawのジャージと同じつくり)。柔らかい生地感が損なわれず気持ち良い。
このように身体へのフィット感は絶妙。シワはほとんどできず、苦しくもない。
左右とも傾斜なく真っ直ぐ取り付けられたバックポケットは高い収容力があります。以前レビューしたMAAPとBellroyコラボのPhoneポケットもすっぽり収まって統一された世界感が非常に良いです。
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意図したデザインを再現するために、テンプレート通り設計するのではなく、どのような生地をどのように組み合わせるのが最適か、デザインひとつひとつに対して丁寧に設計を行っていることがわかるウェアです。
実際にライドで使用しても、着用したときのフィット感、速乾性やポケットの使い勝手などの機能性、そして美しいデザインなど、どの観点からも期待を上回る品質で、所有満足度がとても高いジャージです。
あえて弱点を挙げるとしたら、ひとつは緑色の部分の汗ジミが目立ちやすいという点(ただし乾くのは早い)。
また3色の生地を縫い合わせているため、強引に脱ぎ着しようとするとその部分が損傷するリスクがある点が挙げられます。高価なジャージなので丁寧に扱いますが、疲れたときに無理矢理脱ごうとしないように注意が必要です。
3. レビュー:Team Bib Short 2.0
従来のTeam Bib Shortsから素材やシルエットに変化はありません。昨年レビューした通り非常にフィット感が高く、ストレスを全く感じない素晴らしいつくりのビブショーツ。しかし、“2.0”というバージョン名が示すように、メジャーアップデートされた部分があります。
それがこの真紅のシャモアパッド。人間工学に基いて開発されたパッドは、最新のサドルテクノロジーを反映し、サドルと接するポイントの圧力を的確に軽減することを目指したつくり。
ちょうど中心から隆起しているのがわかります。サドルに乗ったときに一番圧がかかるパッドの前側に厚みを出していて、路面からサドルを通して伝わる振動を軽減。逆に後ろ側は適度な厚みに抑えており、お尻にかけてのフィット感を高める仕様。実際にサドルにまたがると、しっかりしたクッション性や安定性を感じることができます。
肩紐は幅広なので、肩に食い込まず快適。
シリコンを使っていないのに適度なフィット感を実現する裾は、レーザーカットした2枚の素材を接着したもの。
膝上5cmくらいのちょっと長めの裾がかっこいい。ペダリング中も足の動きに沿ってずれないので扱いが楽です。
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アップデートされたシャモアパッドの性能は素晴らしく、200km近いライドでも終始痛みが出ないレベル。合わないパッドだと100km程度でもお尻がもぞもぞしてくることがあるので、パッドの品質というのはウェアの中でも最も重要な要素のひとつです。
そういった点でもこのビブショーツに弱点という弱点はなく、価格さえクリアできれば、迷うことなくMAAP上下セットで選ぶことができます。
4. サイズ感について
ProBaseジャージ:サイズガイドに記載の胸囲からサイズを選択します。Proシリーズはレースフィットのため、タイトな作りとなっています。締め付けが苦手な方は1サイズ上げて調節してください(ただしサイズガイド通りの方が綺麗に着こなせます)。
Teamビブショーツ:サイズガイドに記載のウエストからサイズを選択します。通常のタイトフィットなので、ジャージと違いサイズアップする必要はないと思います。
サイズガイド:https://cyclism.jp/pages/maap-size-chart-maap/
※僕の場合、身長177/胸囲86/ウエスト74で、それぞれSを使用しています。
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※今回は半袖ウェアのレビューですが、長袖も新作が発売されています。