COVID-19を乗り越えるサイクリストとしての行動

Text by Tats@tats_lovecyclist

TOKYO2020の延期決定と3/25都知事の会見を受けて、首都圏の空気感が大きく変わったことを感じます。都民は週末の外出自粛、平日も在宅勤務を推奨されている状況で、ほかの主要都市も同様の要請がなされています。

LOVE CYCLISTもこの春は海外ブランドといくつかの新しい取り組みをする予定だったものが、すべてキャンセルを余儀なくされ、見通しの立たない状況となっています。
現在も継続してやりとりをしていますが、「It’s most bizarre(とても奇妙な状況)」「We will go crazy(頭おかしくなりそう)」といった非日常感が伝わる表現がメッセージに含まれています。

その中で強く感じるのが、海外と日本との温度感の乖離。
世界的に深刻な困難に立ち向かわなければならない現状において、まだ健康である僕らサイクリストができることは、これ以上コロナウイルスを拡散させないための行動です。

業界の各社は店舗営業自粛やパーソナルなライドを推奨するなど個別の取り組みが見受けられますが、国内大手メディアや業界団体はサイクリストの行動規範について何も発信していないので*(それに対して僕は少なからず苛立ちを感じている)、現時点のあるべき行動をWHOの情報に依拠して整理したいと思います。

基本は政府や自治体の要請に応じて行動することが大前提ですが、ライド中に感染を広めないためのガイドライン記載にあたっては、Attaquerが発信している記事「Riding out the lockdown(英文)」を大いに参照しました。快く参照許可をいただいたAttaquer Japanのブレスト氏に深謝申し上げます。

*Cycle Sportsが4/3に行動規範について発信しましたが、内容は本記事と酷似しており、ライドにおける指針に相違ありません。

更新履歴】
3/29(日):3/28時点の情報を元に記事公開
4/7(火):緊急事態宣言発令を受け、基本対処方針を元に内容を若干修正(「今行うべきでない行動/望ましい行動」に変化はありません)
4/20(月):走行中のソーシャルディスタンス(20m以上)およびマスク着用に関する記述を追記

1. WHOが推奨する行動

WHOが3/20に以下9つのアドバイスを発表しました。これは外出制限の状況下で心身ともに健康であるためのTipsです。

  1. 免疫力を高めるために健康的な食生活を送る
  2. アルコール類と糖分の多い飲み物を控える
  3. 喫煙しない。COVID-19の症状を悪化させるリスクを高める
  4. 大人は1日30分以上、子供は1日1時間以上運動する
  5. 外出が許可されている場合は、他人と安全な距離を保ちながら、散歩・ランニング・サイクリングをする
  6. 家から出られない場合は、ダンス・ヨガ・階段昇降などをする
  7. 在宅勤務時は、同じ姿勢で長時間座らない
  8. 30分ごとに3分の休憩を取る
  9. 音楽を聴く、本を読む、ゲームをするなどして緊張を解放する

ストレスが免疫を悪化させるため、これらはストレスを溜めないための行動指標でもあります。
そして4〜6で言われているように、サイクリングも健康維持のためには有益なツールのひとつ

そのためオーストラリアやヨーロッパのいくつかの国ではソロでのサイクリングが推奨されています。
ただしフランスでは自宅から半径1kmのみ、ベルギーでは計50kmまで、英国では議論の最中といったように「やり過ぎ」なライドはやるべきではないというのが多くの見解です。
同様に、日本の緊急事態宣言下においては「健康維持のための散歩・運動は認める」と基本対処方針案で伝えられており、あくまでサイクリングも“健康維持”というレベルで許可されていることを留意します。

それを受けてどんなライドをするかは各サイクリストの判断に委ねられることになりますが、先行する各国の事例を元に、今行うべきでない行動/望ましい行動は明らかにあります。

 

2. サイクリストとしての社会的行動

今行うべきでない行動

グループライドを行う

同居しているパートナーと2人で走ることはできますが、いつも通り仲間と一緒に走ることは感染リスクを高めます(たとえそれが2〜3人でも)。外出制限がない場合でも、たとえば朝に集団で皇居周回練をするといった行動は、感染予防の目的と相反しています。
また1人で走っている際に、ほかのサイクリストと前後で並ぶことになった場合、走行中は20m以上、停車時は2m以上の間隔(ソーシャルディスタンス)を空けるようにします。

ライド中ほかのサイクリストと密な交流をする

ソロライド中に知り合いのサイクリストに偶然出会った場合でも、密な交流は避けます。
WHOによるとCOVID-19は汗によって感染はしませんが、咳やくしゃみの飛沫がかからないソーシャルディスタンスを保つ必要があります。

カフェに立ち寄る

座席間の距離が密接なスターバックス型カフェは感染リスクを高めます。
広いテラス席のように座席間に間隔があって密閉されていない場所はリスクが抑えられますが、ソーシャルディスタンスが保てない場合はできる限り利用を避けます。

大きなリスクを伴う走行をする

怪我をして病床を埋める事態は最も避けるべきことです。
慣れない道・交通量の多い道を走らない、夜間走行をしない、明るいライトを付けるなど、トレーニングよりも安全運転が優先されます。
併せて、自分がどこを走るかを事前に家族などに伝えておくことも大事です。

体を酷使する

体内のグリコーゲンを使い果たすと、免疫系は正常に機能しなくなるため、ハードなトレーニング前後に他者と接触した場合は感染リスクが高まります。
日本政府が緊急事態宣言下においては「健康維持のための散歩・運動は認める」と発表しているように、トレーニングではなくフィットネスレベルの強度を意識します。

ボトルの水を吐き出す/放出する

自身が潜在的な感染者である可能性を考慮し、使用中のボトルの水は飲用だけにします。口をゆすいだり、体の冷却には使用しません。

望ましい行動

ソロで走る

COVID-19は感染者の飛沫が何らかの経緯で顔に触れたときに感染すると説明されており、ひとりで走っている限りそのリスクは少なく、予防面でも健康面でも現状はソロライドが最適な選択肢となっています。
ただし、自身や家族に疑わしい症状(発熱・咳・嗅覚障害など)が出ている場合を除きます。

人とすれ違うことの多いエリアを走行する場合は、ソーシャルディスタンスを保つことに加え、飛沫拡散防止のためにバフやマスク着用が望ましいと考えられます。

適度な負荷で走る

60〜90分程度のサイクリングは免疫システムを活性化させます。自粛期間にパフォーマンスを上げることは難しいかもしれませんが、短時間×適度な負荷でベースを維持することは可能です。

室内で走る

外出を制限されている世情はインドアトレーニング業界にとっては好機でもあります(実際にスマートトレーナー記事のPVも平常時の1.5倍に伸びている)。
Zwiftを使ったバーチャルなグループライドであれば、たとえ実際に会えなくても仲間とつながることができます。

走ることを楽しむ

サイクリングは公道を使ったスポーツなので、今サイクリストは平常時以上に社会との関係性を考えながらライドスタイルを選択する必要があります。
とはいえ、まだイタリアやスペインと違って外出制限が限定的な現状は、特定条件下でソロライドを楽しむことができます。
上記のような望ましくない行動を避け、ストレスを発散し、結果として体の免疫を高めるような社会的な行動ができるのは、サイクリストに今与えられている特権です。

見えないものを振り払った先へ

花が咲き、ずっと望んでいた雪解けの季節が訪れましたが、実際は見えないカーテンが目の前にかかったような状態が続いています。このカーテンは、ひとりひとりが精神的につながり、適切で紳士的な行動を行った先に開かれるものだと思います。
そうしてまた仲間と一緒に、何ものにも遠慮することなく外を走る瞬間が訪れることを心から願っています。

Hopefully you are well and looking after yourself and those close to you.

Text by Tats@tats_lovecyclist