【My Aethos #3】元嶋 佑弥 – 自転車とモータースポーツの絶妙な関係。

数々の名車を手がけたエンジニア、ピーター・デンクによって生み出されたSpecializedの『Aethos(エートス)』。

既存のモデルには存在しない設計思想だったため、エートスについて語られるときは、わかりやく「軽さ」だけに注目されがちでした。でもその本質は、自転車のスタイルに多様性をもたらす全く新しいカテゴリのバイクだということ。

それを感じ取ったサイクリストは、すでにエートスを選んで自分に合った遊び方を楽しんでいます。本企画で取り上げるのは、そんなサイクリストたちのストーリー。

第3回は、プロレーシングドライバーである元嶋氏のスタイルにフォーカスします。

元嶋 佑弥@motojima5555
福岡県出身、名古屋在住。SUPER GTに参戦する現役レーシングドライバー。2010年よりレースに参戦し、以来数々のタイトルを獲得。ロードバイク好きとしても知られており、レースのない日は常に自転車でトレーニングを行なっている。メインバイクはS-Works AethosとTarmac SL7。

text & photo/Tats@tats_lovecyclist)[PR

1. レーシングドライバーのライフスタイル

── 元嶋さんは現役のレーシングドライバーなので、シーズン中(4月〜11月)はレースを主体とした生活を送っているかと思います。ちょうど今はシーズン真っ只中ですが、どんな1週間を過ごされていますか?

元嶋:僕は3カテゴリにエントリーしているので、この時期はほぼ毎週レースに参戦しています。レース自体は土日のことが多いのですが、本番前にも走るので、水曜日にはサーキット入りして日曜日まではずっと車に乗っているかたちです。

── 水曜日〜日曜日の間はほとんど家にいないんですね。ほかの日は休息に充てているのでしょうか。

元嶋:空いていれば基本的にロードバイクでトレーニングしています(笑)。走るの大好きなんですよ。
でも自宅周辺で走れるのは、月・火と水曜の朝しかないので、その中でがっつり長距離乗り込みます。ときどき車にも積んで、レースの遠征先や仕事の出張先でも乗っています。
あとはジムでパーソナルトレーニングをしていますね。これはどれだけ忙しくても週1回はお願いしていて、プロの指導でしっかり追い込んでいます。

── 身体が休む暇がないのでは!?

元嶋:たしかに(笑)。周りからもストイックだってよく言われます。
でもときどき今日のインタビューみたいに仕事が入るんですよ。それがちょうど良いレストになっています。

── 仕事がレスト…!

元嶋:もちろんオーバートレーニングにならないように、医師と一緒に体調管理をしっかりしています。もともと意識しないとハマりすぎてしまうたちなので…。
あと「Oura Ring」というスマートリングを使って睡眠の質も見ていて、常に自分の身体の状態と向き合うようにしています。

Oura Ringの睡眠管理画面(左)。指輪型のデバイスは1回の充電で数日持つし、Apple Watchのように寝ているとき邪魔にならないためずっと愛用している

──専門家と一緒にコンディショニングされているんですね。その調子だとオフシーズン(12月〜3月)もずっと自転車乗っていそうで…。

元嶋:正解です(笑)。ほぼ毎日走り込んでいます。

──(笑)。

元嶋氏が参戦する「SUPER GT」とは

1年間のシリーズ戦を通じて獲得したポイントで、ドライバーとチームの2つのタイトルを争うレース。1回あたりの走行距離は250-800kmで、着順に応じてポイントが付与される。
1台のマシンを2人のドライバーが交代で乗る、1回のレースで使用できるタイヤは6セットまで、ドライバーの成績に応じてウェイトハンデが搭載される、といったルールの元で行われる。

 

2. モータースポーツとロードバイクの関係

── これほど生活の一部になっているロードバイクですが、もともとはランニングをやられていたんですよね。自転車にスイッチしたきっかけは。

元嶋:ほとんどのレーシングドライバーは、ランニングか自転車で有酸素トレーニングをしているんです。特に僕のいる「GT300」というカテゴリは耐久系のレースが多く、心肺機能は高いほうが有利になります。レース中の平均心拍数は自転車やランニングと近いので、有酸素トレーニングが効いてくる。
海外のF1ドライバーだと9割が自転車に乗っていたりしますが、日本だと自転車が走りやすい環境ではないので、どちらかというとランニングをやっている方が多いですね。
僕も最初はランニングをやっていたのですが、走り込み量が増えていくうちに膝を壊してしまって、そのタイミングで今中大介さん*にロードバイクが良いと教えてもらいました。
*元自転車ロードレース選手、現インターマックスCEO

── 今中さんがきっかけなんですね。普段のライドはどんな内容ですか?

元嶋:基本はひとりで、100〜150kmを高強度で走ります。トレーニングメニューは一緒に練習するプロロードレーサーに教えてもらって。

── それを週3回以上となるとかなり走り込んでいますね…!

元嶋:それが楽しいんですよね…(笑)。ライド中休憩はせず、水がなくなったらコンビニに入る程度なんですが、追い込めている感覚が気持ち良い。
本当はいつも仲間と一緒にトレーニングできれば良いのですが、住むエリアが離れているのでほとんどソロになってしまいます。代わりにオフシーズンになると、チームで練習することも増えます。

── 真夏でも練習量は変わらない。

元嶋:夏のライドは「レースの暑さ耐性」をつけるのにも効果的なんです。
いつも名古屋から岐阜の山に行くのですが、盆地なので山道に入ってもそんなに涼しくありません。でもおかげで熱順応ができる。

── SUPER GTのレース中はどれくらい暑いのですか?

元嶋:それがですね、むちゃくちゃ暑いんですよ。レーシングカーの中ってエアコンはないし、エンジンの熱が運転席に直接伝わるので、車内は60℃くらいになる。しかもドライバーはレーシングスーツの中に厚手の耐火性インナーを着込んでいるという。

── おぉ…それは想像以上です。クールスーツ*もあると聞いたことがありますが。
*チューブが取り付けられたスーツを着用し、そのチューブ内に冷水を循環させることで体温を下げる仕組み

元嶋:あれ20kgくらいあるので、タイムにかなり影響しちゃうんです。だから昔からクールスーツは使ってこなかったんですが、そのせいで毎年熱中症になってしまうという弊害もありました。
でも自転車に乗り込むようになってからは、レース中の暑さは全然平気になったんです。

── 自転車トレーニングがこういうところでも活きてくるんですね。

元嶋:僕が暑さに強くなってクールスーツも使わないから、相方のドライバーには我慢を強いているかもしれません(笑)。

熱順応のために真夏でも変わらず走る

レース現場では絶対にヘルメットを逆さに置いてはいけないというジンクスが。だからロードヘルメットを脱いだときも逆さにしない

 

3. AethosとSL7を使い分ける

── 現在所有しているロードバイクは。

元嶋:「S-Works Tarmac SL7(以下SL7)」と「S-Works Aethos(以下エートス)」の2台です。

── 2台ともスペシャライズドなんですね。

元嶋:その前はヴェンジにも乗っていました。以前はほかのメーカーにも乗っていたのですが、ヴェンジに乗ってからは、トレーニング主体の自分にとってスペシャライズドが一番合っていると感じたんですね。だからヴェンジをディスコンにして登場したSL7は、発売されてすぐに乗り始めたし、あとで違う乗り味のバイクが欲しくて選んだのも同社のエートスでした。

── 違う乗り味が欲しくなったというのは。

元嶋:なんて言えばいいんだろう。気分転換になる要素が必要だったんですね。
SL7は尖っていて、常に踏み続けたくなってしまうバイクなんです。僕の走り方が追い込み型で、しかもソロなので、同じ調子で続けているとさすがに「今日走るのはきつい…」と思うことがありました。
そんなときエートスの“ライディングを楽しむ”というコンセプトを知って、今自分にとって必要なバイクなんだと感じました。

カスタマイズされたS-Works Aethos

── そして2台持ちに。

元嶋:やっぱり2台あると良いですね。SL7で疲れたとき「明日はエートスに乗ろう」と思うとトレーニングへのモチベーションが回復します。逆に自分を甘えさせたくないときはエートスではなくSL7に乗る、というように、切り替えのスイッチがバイクでできるんですね。だから継続してトレーニングができています。

── エートスの乗り心地はどうですか。

元嶋:SL7に比べると、踏めるポイントが広くて剛性感が適度なので乗りやすいバイクだなと感じます。
特に下りが良いです。ディスクブレーキ車はフォークエンドの剛性が上がったおかげで、リムブレーキ時代のバイクと比べると全体的に下りが安定していますが、中でもエートスは軽量に組んでも下りのストレスがないのがすごく良いです。

── やはりエートスは下りが良いんですね。

元嶋:はい、だから斜度がきつい地元の山岳コースに、エートスの乗り味はものすごく活きています。ヒルクライムから普段使いまで、1台で広い範囲をカバーできる。逆にロードレースで使うなら圧倒的にSL7ですね。

── 元嶋さんのエートスを見ると、完成車からかなりパーツを変更していますね。機材好きというのが伝わってきます。

元嶋:機材大好きです。本業で好きな機材を使えないので、趣味で機材遊びをやり尽くしています(笑)。

── 自転車で発散させている(笑)。

元嶋:しかもモータースポーツと違って、世界のトップ選手と同じ機材をホビーライダーが購入できますからね。F1を買えない僕らからすればすごく親しみやすい世界です。
スペシャライズドのバイクの場合、完成車のセットアップで性能も乗り味も完成されているので、あまりいじるところがないように思えますが、僕は結構変えて楽しんでいます。

ノコギリ型リムが特徴的なZipp

元嶋:特にホイールですね。今履かせているZippは、完成車に付属するホイールとは全く異なる性格ですが、エートスとはめちゃめちゃ相性が良いんです。

── エートスにZippを組み合わせている方は初めて見ましたが、シックなエートスに好戦的な雰囲気が加わってめちゃめちゃ格好良い。

元嶋:黒フレームとの相性も良いですしね。クランクやハンドル周りも変えて良いバランスに仕上がっているので、しばらくはこのセットアップでトレーニングしますが、また気になるところが出てくれば色々変えて試すかもしれません。

クランクはQuarkパワーメーター付き

ハンドル周りは軽量な「DARIMO」に変更

28cは長距離の乗り心地が非常に良い

── お話していると、次第にプロレーシングドライバーだということを忘れるくらい、自転車に対する熱量や感覚が鋭いですね。

元嶋:ドライバーとサイクリストの間を行き来するライフスタイルが自分にはぴったりハマっているな、と感じます。サーキットレースのあとは色々なことが頭を巡るのですが、ロードに乗っているときは無心になって良い気分転換になるので、ロードバイクはやめられないですね。

話の中で浮かび上がった、レースの前線で戦い続ける「プロ」のリアル。
エートスとSL7を交互に乗るスタイル、本業ではできない機材遊びをやり尽くす姿勢、そして1週間目一杯走るパワフルな生活スタイル──本業のために始めた自転車とはいえ、その走り方を間近で見ると「自転車がとにかく楽しい」ということが伝わってくるものでした。
尽きないパッションとエネルギーを持つ元嶋氏の今後の活動が益々楽しみです。

元嶋佑弥公式アカウント(Twitter)
Specialized Aethos
(公式サイト)

執筆・編集・写真/Tats@tats_lovecyclist
[PR]提供/スペシャライズド・ジャパン

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