Text by Tats(@tats_lovecyclist)
「早くみんなと一緒に走りたい」
「終息したらグループライドしよう」
“ソーシャルディスタンス”という言葉が浸透し、生活のすべてにおいて6フィートという物理的な距離を空けることを意識するようになりました。そうして離れた距離の分だけ、僕たちはより繋がりを求めるようになっているのではないかと思います。
この1ヶ月、スマートトレーナーをはじめとするローラー台が桁違いに売れ、サイクリストたちがZwiftでミートアップをする様子はソーシャルメディアを通して頻繁に見るようになりました。
また外でソロライドをしながら、またいつかグループライドができるようにと願う冒頭のテキストを見ることも同様です。
世界がこうなる前に一緒に走ってきたコミュニティのメンバーは、僕を含め積極的に室内ライドができるような環境ではなかったりするので(もちろん好き嫌いの問題もあるけれど)、それぞれがソーシャルディスタンスを保ちながらライドしています。
モチベーションがふわふわと漂っている中で、少しでもソロライドをアゲるために、僕たちはときに「ZOOMでいつでもライド仲間とつながれる状態にして走る」という手段をとっています。
ZOOMでつながるソロライド
今はインフラと化しているZOOM。
ライドにも取り入れるときはこんな感じ↓で。
- ・全員同じ時間に走る(6:00〜9:00とか)
・各メンバーのコースはバラバラ
・ZOOMの会議室を空けておいて、メンバーが好きな時間に入れるようにする
・休憩中話したいときにZOOMに入って、誰かがいれば会話する
こうすることで、グループライドでしていたような会話をソロでもすることができます。
30分走って自転車を停め、ZOOMに誰かがいれば少しやりとりする。
「今○○まで来ました。今日寒いっす」
「そのウェアの色いいね」
休憩が終わったら「ちょっと走ってくる」といって退室。会議のように時間が決まっているものではなく、カジュアルに出入りができる部屋がそこにある状態。
運動することに気乗りしないときでも、誰かとつながっていると思えば走るモチベーションになるし、ソロでもウェアリングなどにちゃんと気を遣いたいと思える。
人と話すことが以前より少なくなっている今、こうした手法で人との接点を増やすことは、心を健全な状態にするためにもすごく有効だと感じています。
それぞれのソロライド
カメラは変わらず持ち歩く
緊急事態宣言下において、僕は子どもと過ごすことに多くのリソースを割いているため、ライドは(妻の協力をもらいながら)人の少ない早朝に短い時間で行うものになっています。
これまでのソーシャルライドのような動きはしばらくできないので、こと自転車においては“パフォーマンスを下げすぎない”という意識低い系の向き合い方。
だから自宅から10km圏内で人が集まらないルートを選んで、フィットネスレベルの疲労感を得るような走り方をしています。
逆に日々のほとんどを過ごす「おうち時間」を満たすことで(コーヒーを入れたり楽器を演奏したり子どもと遊んだり)、自分のいる世界のバランスが保たれています。
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ライド仲間はここ1ヶ月でどのように生活やライドスタイルを切り替えたか、ZOOMを通して何人かに話してもらいました。
Hiroko:家の近くは休日になると人が集まるので、あまり外は走らなくなりました。走るときは裏道を通って、人のいない広場で休憩して帰るショートライド。
その代わりにトレーニングチューブを買って家トレしたり、時間帯を選んでランニングしています。
Hiroki:20分くらいで山へアクセスできるところに住んでいるので、周辺をひとりで走っています。こういう時期のライドには恵まれた環境。
ただ最近はクロスバイクでサイクリングする人が増えている感じなので気をつけています。
Rin:大学が休校で、バイトもできないのが今の状態。そんな中ただ一人暮らしの部屋にいるだけなのはつらいので、サイクリングという趣味があって助かっています。
SS2020の新しいジャージを着て走ったり、私服で走りつつテイクアウトしたコーヒーと一緒にオープンエアな空間で読書したり、ソロライドで息抜きができています。
Mei:おうち時間を充実させています。特にコーヒーを入れる時間を大切にしていて、カフェのテイクアウトで買ったスイーツと一緒にいただいたりしながら、いろいろこの先について考えを巡らせます。
ライドは豆やコーヒー器具を買うために、カフェとの往復で気分転換するのがメイン。
Isadoreのマスクで走る
こうしてそれぞれがソーシャルディスタンスを保ちながら工夫してライドしているとはいえ、人通りのある道においてはマスク着用が推奨されています。
僕たちが着けているのは、グランツールで活躍したヴェリトス兄弟によるスロバキアのブランド「Isadore」のオリジナルマスク。
パンデミックに伴い今多くのメーカーがマスクの生産を始めていますが、Isadoreは非常に動きが早く、3月下旬には地元の工場でマスクを生産し、地域のヘルスケアシステムにも寄付することを決めていました。
合わせて、Isadoreオンラインストアで何か購入すると、全員にもれなくこのマスクがプレゼントされます。
僕もこの取り組みを知ってすぐIsadoreで買い物をしましたが、ちょうど同じタイミングでヴェリトス氏からも連絡があり、やりとりの中で仲間の分もシェアしたい旨を伝えると快くマスクを人数分送ってくれることに。
Isadoreのウェアは元トッププロ選手によるブランドだけあって、レースをリスペクトした上でのウェアづくりに納得感があって大好きでした(昨シーズンの冬もIsadoreを最もよく着ていた)。
そしてこの取り組みによって、Isadoreは社会とつながりを深める優れたブランドなのだと認識を新たにしています。
Not #solitude
サイクリングはスポーツである以上に、ライフスタイルの一部であり、コミュニティを形成するものでもありました。
そうした向き合い方をためらわず実践できた以前の世界。
もうそこには戻ることはないと脅かされながら、幸い今の僕たちはフィジカルディスタンスを越えてオンラインでつながることができる。
Zwiftでミートアップしてもいいし、ソロライドの合間にZOOMしてもいい。あるいは周りがトレーニングしているからといって無理に走ることを選ばなくたってもいい。
僕たちサイクリストも、そうして少しずつ、新しい世界に適応しようとしています。
Text by Tats(@tats_lovecyclist)