『Sardine(サーディン)』で携帯工具の世界に新風を巻き起こしたequiptが次に放つプロダクトは、ペダルレンチ『Cucumber(キューカンバー)』。Sardineをひと回り大きくしたような形状だが、これまでのペダルレンチと使い勝手がどう異なるのか。Sardineを愛用しているRyosukeがその実力を確かめた。
Cucumberレビュー概要
特徴
長さ200mm、重量216gのペダルレンチ(税込¥11,500)/ 6mm+8mmのヘックス
Highs:
早回しがとにかくラク/クランク周りの狭い空間でも干渉しづらい/握りやすくトルクをかけやすい
Lows:
破損の可能性があるため固着したペダルには使えない/使用頻度によっては少々高価
レビュアー:Ryosuke(@r_miki1991) スポーツバイク歴8年。AIの研究開発職。ロードバイクを始めた当初は仲間とストイックに走り込んでいた。その後Pas Normal Studiosを着始めたことをきっかけに、PNSやLove Cyclistのコミュニティに加入。それぞれのスタイルに刺激を受けながらライドを楽しんでいる。 |
Review & Photo / Ryosuke
Edit / Tats
*本レビューのCucumberはAlternative Bicycles提供のものです。
拝啓ペダルレンチさま
何を隠そう私は自転車のセルフメンテナンスのなかでペダルを外す作業が最も苦手だ。一応10年弱ほどロードバイクを所有しているため、経験からレンチを回す方向はわかっているつもりでいる。それでもペダルを外そうと試みるたびに「こんなにも硬かったか?もしかして回す方向が逆か?」と毎度悩ませられる。固着しているわけではなくとも、ペダルを外すことに苦労するのは、単純にこれまでの工具が使いにくかったからだ。
思い返せば「ペダルレンチ」という工具について真剣に考えたことがなかった。というのも私が長年使っていた旧Speedplayペダルは、15mmのペダルレンチで付け外しをするのだが、工具の選択肢が非常に少ない。使用頻度に鑑みると、安価な間に合わせの工具でも、半年に一度くらいの頻度でやってくるメンテナンスを乗り切ればなんとかなってしまう。
仲間とグラベルライドするようになり、ペダルレンチに対する思いが変化していく
状況が変わったのはここ1〜2年のこと。仲間たちの間でグラベルライドが流行るようになり、私も例に漏れず多様なライドスタイルを楽しみたくなった。そこでレーシングフレームからオールロード対応のフレームに乗り換え、「1バイク×2ホイールスタイル」で走るようになった。ロード用とグラベル用のホイールを2セット所有し、その日のライドに合わせた装備で出かけている。
←ロード用ホイール+Speedplayペダル | グラベル用ホイール+X-TRACKペダル
そこで問題となったのが、今までは半年に一度くらいだったペダル付け替え頻度が増えたこと。 私がSPDシューズ用に使っているペダル(LOOK X-TRACK)は、最も主流な8mmのヘックスレンチで取り付けるタイプだ。その他のメンテナンスに使っているSwiss Toolsヘックスレンチであれば精度や耐久性は全く問題ないものの、本体が細く角張っているので、クランク周りの狭い空間では、ツールを握りづらく力もかけにくい。
そうなると、ペダルレンチに求めるものが明確になってくる。
比較的強いトルクを必要とするので、ツールの握りやすさと力のかけやすさは何よりも大切だ。また、ペダルと取り外しをするときは、クランク、フレーム、ホイール、地面など、工具に干渉するところが多いので、作業中の取り回しの良さも必要だと思うようになった。
そのタイミングでCucumberが登場した。
2色展開のCucumber(¥11,500)
equipt Cucumber
ずっしりとした重量感があるアルミ製の本体
Sardineを使って、equiptが使い勝手とプロダクトデザインに並々ならぬこだわりを持っていることは体感していたが、Cucumberにもそれらのこだわりが踏襲されていた。
表面はブラスト処理をしたようなサラサラとした手触りの加工。切削加工線と光沢が特徴的だったSardineとは表情が少し異なる。これはキュウリ(cucumber)とイワシ(sardine)の違いをイメージしてデザインに落とし込んだのだろうか、工具のコンセプトに統一感があるからこそ細部の違いが際立つように感じる。
Sardineと並べると表情の違いが明確
“ペダルレンチ”でウェブ検索すると、多くのものが工具然とした見た目をしていて、琴線に触れるものはなかなかない。
そんなペダルレンチたちの中で、Cucumberは「おっ!」と思わせてくれる唯一無二の存在感がある。ツールとしての使い勝手はSardineで裏付けされているから、なおさらサイクリストたちの食指は動くだろう。
他の工具と並べてもCucumberのスタイルの良さが際立つ
Pros/Cons
Pros
作業が爆速化するトルク締め→早回しのシームレス移行:Sardineの代名詞である「トルクをかける→早回し」のシームレスな移行が、Cucumberでも実現されている。一度早回しを体験すると、ほかの工具が手間だと感じるほどとにかくラク。作業が爆速化する。
ペダルを取り付ける
ペダルを取り外す
狭い空間でも干渉しづらい取り回しの良さ :クランク周りは空間が狭いので、レンチを外すことなく一連の作業を完結させられる点が非常に嬉しい。これであればペダルの付け替えに使うのはもちろん、ペダルのグリスアップも頻度を上げてもいいなと思える。
小回りが効いてクランク周りに干渉しづらい
握りやすくトルクをかけやすい:柄の最も太い部分の断面は25×20mmの楕円形で、この形状は握り込んだときにぴったり手にフィットする。これまで使っていた工具は、作業を終えたときに手のひらが痛くなっていたが、Cucumberの形状は手のひらに食い込むことがないし、しっかりと力をかけることができる。
ペダルを回すために生まれた形状
Cons
固着したペダルには使えない:固着したペダルに使用するとCucumber破損の可能性があるので、その場合はショップに持っていく必要がある。ただCucumberによってペダル交換の億劫が解決されるので、ペダルのグリスアップの頻度を上げられて固着リスクが減るという好循環を生むかもしれない。
使用頻度によっては少々高価:ペダル付け替えは、一般的なロードサイクリストにとってはまだ頻度が高くないように思う。年に数回しか取り外ししないようなケースだと、高機能な工具の必要性を感じないかもしれない。私のように1バイク2ホイールで、ペダルも頻繁に付け替えるようなケースにはフィットするので、自分のスタイルに合っているかで価格の正当性が決まってくるだろう。
早回しが解決するすべてのもの
Cucumberを導入してからペダル交換のストレスが大幅に減った。また、ホイールを2セット使い分けていることと、スマートトレーナーに自転車をセットすることが多いことから、スルーアクスルを着脱するために6mmヘックスの出番も意外と多い。Cucmberには6mmヘックスのビットもついているのでホイールの着脱もCucumberでササっとできてしまう。
6mmヘックスは頻繁にスルーアクスルの着脱に使う
個人的な経験でいうと、愛用しているスマートトレーナー「Xplova Noza S」は、通常のヘックスレンチだと本体に干渉するため、スルーアクスルを締め込む作業が地味にストレスだった。これもCucumberの早回しで解決できたことがとても嬉しい。
フライホイールがレンチに干渉するのがストレスだった
Cucumberだと早回しで解決できる
8mmヘックスで着脱ができるようになったWahoo製Speedplayペダルへの買い替えが急がれるというのが私の中のうれしい悲鳴だ。
Review & Photo / Ryosuke
Edit / Tats
関連コンテンツ