
ガーミンのピコ音。それはすべてのサイクリストの憧れであり、停車時にピコ音を出してドヤ顔してこそ、一流のサイクリストと言うことができる。
普通のサイコンで物足りなくなったすべてのサイクリストに、最適なガーミンエクスペリエンスをしていただくため、ライドスタイルに合った機種の選び方を一緒に見ていく。
text / Tats(@tats_lovecyclist)
*本記事は最新モデル(Edge550/850)を追加し、内容を大幅に改訂したものです。
Garminを選ぶ理由
あえて高価なGarminを選ぶ理由は?
GPSを搭載した高機能サイクルコンピュータの中で、Garminの『Edge(エッジ)』シリーズは国内トップシェアを占めるが、なぜこれほど選ばれてきたか?
多機能GPSサイコンはGarmin以外にも多数存在する。たとえばWahooのようにUIに優れた製品もあれば、Garminより遥かに安価な中国ブランドもある。
それでもなお、多くのサイクリストがGarminを行き着くのは、「ユーザー数の多さ」と「機能の安定性」が主な理由だ。
ユーザー数が多いということは、情報の集積量も多くなる。購入前の検討段階から、実際の使用中に至るまで、他のユーザーから得られる情報の恩恵は大きい。
また、GPSサイコンの先駆者であるGarminは、高精度なGPS性能はもちろん、トレーニング機能を積極的に搭載し、現在もその完成度を高め続けている。
近年は中国メーカーの台頭も著しいが、「Garmin Connect」によってトレーニングデータを一元管理できる点は、Garminを使い続ける大きな理由となっている。
単なる端末としてだけでなく、プラットフォームとしての完成度が、多くのユーザーを引き留めている。
ただし近年は、Garmin端末の値上がり幅が他メーカーと比べて大きく、一世代前のミドルクラス『Edge 540』でさえ¥63,800だ。かつて500系の端末は3万円台だったことを考えると、その機能や安定性が価格差に見合うかどうかを、ユーザー自身が慎重に見極めるフェーズに入っている。性能や信頼性、そしてブランドに重きを置くか、あるいはそれ以外に価値を見出すか。
GarminはGPSサイコン選択の軸として、改めて比較検討すべき存在となっている。
GPSサイコンでできること
Edgeシリーズをはじめとする各社GPSサイコンは、GPS・高度計・加速度計などを用いてライド上のステータスを多方面から可視化する。
▼Edgeで見る主なデータ
| 目的 | ライド中 | ライド前後 |
| ナビゲーション | 周辺地図 | ルート作成 |
| ルートナビ | ルートログ | |
| ステータス把握 | スピード | 走行距離 |
| ケイデンス | 獲得標高 | |
| 心拍 | TSS | |
| 斜度 | NP | |
| パワー | Strava連携 |
速度、ケイデンス、心拍計測はもちろん、パワーメーターを使った出力の把握、ヒルクライムのペース管理など、ライドやトレーニングの質を高めるための機能が含まれる。
また、知らないコースを開拓していくナビ機能も充実しているので、いつもと同じコースを走ってマンネリ化しがちなライドに新しい発見をもたらすことができる。
全5機種スペック比較
Garminの高機能GPSサイコンは、100系/500系/800系/1000系の4グレードに分類される。
100系:エントリーモデル
500系:ミドルレンジモデル
800系:ミドルレンジモデル(タッチスクリーン)
1000系:大画面ハイエンドモデル(タッチスクリーン)
このうち100系を除く各グレードのいずれかの最新版が毎年リリースされており、2024年に『1050』、2025年に『550』と『850』が発売されている(540と550、840と850は併売)。100系は2020年に発売された『130 Plus』以降新モデルが登場しておらず、機能的に他メーカーの同価格帯モデルに大きく劣るため、2025年時点でこのモデルを選ぶ必然性はない。そのため本記事の比較からは除外する。
Garmin Edge5機種スペック比較表
| 機種 | ![]() 540 |
![]() NEW 550 |
![]() 840 / 840 Solar |
![]() NEW 850 |
![]() 1050 |
|
| 発売 | 2023.4 | 2025.9 | 2023.4 | 2025.9 | 2024.6 | |
| スペック |
ディスプレイ | 2.6インチ | 2.7インチ | 2.6インチ | 2.7インチ | 3.5インチ |
| 重量 | 80.3g |
110g | 84.8g / 89.9g(Solar) |
113g | 161g | |
| タッチスクリーン | – | – | ● | ● | ● | |
| 内蔵メモリ | 16GB | 32GB | 32GB | 64GB | 64GB | |
| 稼働時間 | 32時間 |
12時間 (節約36時間) |
26時間 +ソーラー6時間 |
12時間 (節約36時間) |
20時間 (節約60時間) |
|
| GPS | GNSSマルチバンド | |||||
| 5Hz GPS | – | ● | – | ● | ● | |
| 機能 |
ClimbPro | ● | ● | ● | ● | ● |
| デバイス上のルート生成 | – | – | – | ● | ● | |
| 内蔵スピーカー | – | – | – | ● | ● | |
| Garmin Pay | – | – | – | ● | ● | |
| 価格 | セット* | ¥80,800 |
– | ¥85,800 *非ソーラーのみ |
¥99,800 | ¥143,800 |
| 単体 | ¥63,800 |
¥71,800 | ¥85,800 *ソーラーのみ |
¥85,800 | ¥126,800 |
|
| 特長 | スタンダード | スタンダード 高解像度 |
スタンダード タッチスクリーン |
スタンダード 高解像度 タッチスクリーン |
ハイエンド 高解像度大画面 タッチスクリーン |
|
| 購入リンク | Amazon ワイズロード |
Amazon ワイズロード |
Amazon ワイズロード |
Amazon ワイズロード |
Amazon ワイズロード |
|
*セット:ハートレートセンサー、スピードセンサー、ケイデンスセンサー付属。
稼働時間はなぜ短くなった?
スペックを見ればわかるように、最新モデル『550』『850』『1050』では標準の稼働時間が大幅に減少している。その理由はいくつかある。
・GNSSマルチバンド(5Hz)による測位精度:従来の1秒間に1回の測位(1Hz)に対し、1秒間に5回の測位(5Hz)を行う。正確な位置情報や速度計測が可能になる反面、バッテリー消費は大きく増加する。
・ディスプレイの高精細化とTFT液晶の採用:従来の半透過型MIP液晶ではなく、スマートフォンに近い高精細なTFT液晶を採用した。鮮やかさ、色再現性、視野角に優れるが、バックライトを常に使用する必要があるためバッテリー消費が増加する。
・大幅な機能強化:ライド中の補給を促す「スマート補給アラート」や、高速化したナビ処理など、走行データや体調を常に分析し続けるトレーニング機能が強化されている。こうした高度な処理が要求されることで、バッテリー消費が増加する。
Garminは最新技術を惜しみなく投入することで、「データ精度」と「ユーザビリティ」を優先的に引き上げることが核となると判断した。その犠牲となったバッテリー持続性については、バッテリー節約モード*の搭載と、ロングライド需要に対応する『540』『840』を併売することで対応している。
*バッテリー節約モード:4つの設定をカスタマイズして稼働時間を調整できるモード(画面を暗くする、地図の非表示、ディスプレイ書電力モード、衛星システム)。
Garmin Edge主要機能
基本機能

地図+ナビ:Edgeは日本詳細道路地図を搭載しており、その地図を元に目的地までのルート設定を行うことができる。また内蔵されている気圧高度計により、数秒のタイムラグはあるが、現在走っている道の斜度も表示される。
グループトラック:同じGroupTrack機能があるEdge同士の位置情報を表示できるもの。グループライドで集団が分かれてしまったときでも、仲間が今どこにいるかわかる。
事故検出:端末には加速度計が内蔵されており、事故による衝撃を受けたと判断されると、位置情報を自動的に緊急連絡先に送信するようになっている。ただし誤動作もある程度発生する。
トレーニング機能(主要機能のみ抜粋)
Stravaやガーミンコネクトのセグメント対応、バーチャルパートナー、FTP+VO2Max計測など、基本的な機能のほか、Garminオリジナルのトレーニング機能を備えている。

クライムプロ:ヒルクライマーのための機能。コースナビを実行すると、内蔵地図データを元にヒルクライム中の頂上までの残りの距離と平均勾配をリアルタイムで表示する。ヒルクライムのペース管理に役立つ。
バイクアラーム:アラームをセットすると振動を検知して本体が警告音を発するもの。バイクから離れて休憩するときに安心できるが、センサーが過敏なので使いどころは限られる。

リアルタイムスタミナ:自分のこれまでのトレーニングデータを元に、自分の残り体力が何%あるかを表示する。出力パワーの目安を表示してくれるため、ハンガーノック予防や長距離ライドのペース管理などに役立つ。
パワーガイド:自分のパワーカーブとFTPのデータを元に、コースにパワーターゲットを割り当てる。自分の力に応じて区間ごとの出力が表示されるため、最後まで力を出し切ることができる。
サイクリング能力とコースの要求:走行データから、自分の脚質を判定してくれる。脚質タイプはエンデュランススペシャリスト/クライマー/スプリンター/チャレンジャー/パンチャーなど。自分の長所と短所がわかり、それぞれを伸ばすためのトレーニンプランも提示。
サポート機能(Edge850/1050のみ)

デバイス上のルート生成:Garmin Connectを使わずデバイス上でコースを作成できる。地図上で路面のタイプを確認できるので、コースの設定やライド中のルート変更に役立つ。
内蔵スピーカー:スピーカーが搭載され、音声案内によるナビゲーションや自転車ベル機能を備える。
Garmin Pay:もともとGarminウォッチに搭載されていたGarminオリジナル電子決済「Garmin Pay」を使用可能。
あなたにぴったりのEdgeは?

各モデルの特長を紹介。自分に合った1台を見つけるためのマイルストーンにしてほしい。
Edge 540
バッテリーライフが強みのスタンダードモデル

Edgeのミドルレンジ500系の中でも完成度の高い『540』(¥63,800)。
内蔵バッテリー26時間と駆動時間が長く、機能は今もスタンダード機として十分過ぎる性能になっている。
*ソーラーモデルもあったが2024年に販売終了
上位モデル840との違いは、タッチパネルの有無・内蔵メモリ容量(Edge540: 16GB、Edge840: 32GB)・重量(5gの差)の3つ。普段のライドでナビを活用する機会が少ないユーザーにとっては、540で事足りることがほとんど。
Edge 550
最新の高精度GPSを求めるボタン派ユーザーへ

スタンダード機の進化版として登場した『550』(71,800円)。
最大の特長は測位性能の大幅な向上。GNSSマルチバンドの測位頻度が従来の1Hzから5Hzへと高速化され、極めて高い精度とリアルタイム性を実現している。加えて新プロセッサーによる処理速度の向上、そして高精細化した2.7インチディスプレイを備える。
トレーニングデータ計測と事前ルートのナビゲーションが主な用途であり、最新の高性能システムを、ボタン操作だけでOKというユーザーに最適。
540→550の大きな変更点
- ・稼働時間劣化:32時間 → 12時間(節約モード36時間)
・サイズ変更:57.8 x 85.1 x 19.6 mm → 54.6 x 92.2 x 16.8 mm
・重量アップ:80.3→110g
・CPU&解像度強化:高精細&処理が滑らかに
Edge 840
バッテリーライフ+タッチスクリーンですべてのライドを快適に

高感度のタッチスクリーンを搭載したGarminのミドルクラス『840』(¥85,800)。
機能は540と同等だが、ソーラー対応モデルがラインナップされ、バッテリー駆動時間に圧倒的な信頼性がある。
840はグローブの上からも使用できるタッチスクリーンでサクサクと操作できるなため、操作性を重視する場合や、ナビを活用する機会の多いサイクリストにとっては540よりも840が有力候補となる。
Edge 850
最高の操作性・精度・ナビゲーションを求めるユーザーへ

スタンダード機の機能拡張版となる『850』(85,800円)。
550と同様に、GNSSマルチバンドの測位頻度が5Hzへと高速化され、極めて高い精度とリアルタイム性を実現したほか、新プロセッサーによる処理速度の向上、高精細化した2.7インチディスプレイを備える。
550との違いは、タッチパネル対応とフルスペックナビゲーション機能の搭載にある。タッチ操作による直感的な地図のスクロールや、本体単体での目的地検索が可能。
最新の高性能システムと高度なナビゲーションを、タッチパネルで快適に操作したいサイクリストに最適。
840→850の大きな変更点
- ・稼働時間劣化:26時間+ソーラー6時間 → 12時間(節約モード36時間)
・サイズ変更:57.8 x 85.1 x 19.6 mm → 54.6 x 92.2 x 16.8 mm
・重量アップ:89.9.3→113g
・CPU&解像度強化:高精細&処理が滑らかに
・デバイス上でのルート作成機能追加
・スピーカー搭載:音声ナビや電子ベルを鳴らすことが可能
・Garmin Pay搭載:Edge本体でタッチ決済可能
Edge1050
圧倒的な視認性と操作性を求めるフラッグシップユーザーへ

フラッグシップ機の『1050』(¥126,800)は、大画面モデルのユーザビリティを極限まで高めたモデル。
高精細なTFT液晶を採用してディスプレイの解像度が大幅に向上したほか、CPUも強化されたことで、地図の見やすさや操作感などグラフィック表現が格段に進化している。
また音声ナビゲーションを可能とするスピーカーの内蔵、Garminウォッチに搭載されていたタッチ決済(Garmin Pay)への対応といった機能も備える(これらの機能にお金を払う価値があるかどうかは各自に委ねられる)。
ナビゲーション、データ計測、そして支払いを統合し、GPSサイコンをよりスマートフォンに近い存在へ近づけた一台は、視認性と快適な操作性を最優先するサイクリストに最適。
1040→1050の大きな変更点
- ・稼働時間劣化:35時間+ソーラー10時間 → 20時間(節約モード60時間)
・サイズ変更:59.3 x 117.6 x 20mm →60.2 x 118.5 x 16.3 mm
・重量アップ:133g→161g
・デバイス上でのルート作成機能追加
・CPU&解像度強化:タッチスクリーンが滑らかに
・スピーカー搭載:音声ナビや電子ベルを鳴らすことが可能
・Garmin Pay搭載:Edge本体でタッチ決済可能
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著者情報
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Tats Shimizu(@tats_lovecyclist) 編集長&フォトグラファー。スポーツバイク歴12年。海外ブランドと幅広い交友関係を持ち、メディアを通じてさまざまなスタイルの提案を行っている。同時にフォトグラファーとして国内外の自転車ブランドの撮影を多数手掛ける。メインバイクはStandert(ロード)とFactor(グラベル)。 |






















