【Shimano/Campagnolo/SRAM】電動&機械式コンポーネント完全購入ガイド

ロードバイク駆動の要をアップグレード。

機材アップグレードの中で、決して安くはない投資となるコンポーネントグループセット。
ただし同じく高価な買い物となるホイールほど選択肢は多くはなく、比較的自分が求めるモデルを見つけやすいもの。

そこでロードバイクのドライブトレインを製造している3大メーカーであるシマノ・カンパニョーロ・スラムの各コンポを比較し、メリット/デメリット判断して自分に最適なグループセットを選択できるよう整理しています。
コンポの換装を検討している方は参考にどうぞ。

1. コンポーネントグレード比較表

まずグレード別に重量・価格を比較。2018年に刷新されたシマノ新型105、カンパニョーロ新型Super Record 12s/Record 12sを加えています。

※記載項目(上から):モデル名/ギア枚数/重量/参考価格
※リンクのあるものはWiggleの商品ページに遷移します

機械式

Shimano Campy SRAM
Super Record
2×12
2001g
(¥400,000)
Dura-Ace R9100
2×11
2007g
(¥200,000)
Record
2×12
2173g
(¥270,000)
Red 22
2×11
1747g
(¥240,000)
Chorus
2×11
2103g
(¥180,000)
Force 22
2×11
2046g
(¥130,000)
Force1
1×11
1805g
(¥150,000)
Ultegra R8000
2×11
2264g
(¥90,000)
Potenza
2×11
2299g
(¥100,000)
105 R7000
2×11
2530g
(¥65,000)
Centaur
2×11
2453g
(¥70,000)
Rival 22
2×11
2285g
(¥75,000)
Rival1
1×11
2215g
(¥90,000)
Tiagra
2×10
2786g
(¥35,000)
Apex
2×10
2463g
(¥70,000)
Apex1
1×10
2339g
(¥65,000)

電動

Shimano Campy SRAM
Super Record EPS
2×11
2077g
(¥600,000)
Dura-Ace R9150 Di2
2×11
2051g
(¥350,000)
Record EPS
2×11
2113g
(¥500,000)
Red eTap
2×11
1970g
(¥450,000)
Ultegra R8050 Di2
2×11
2347g
(¥180,000)
Chorus EPS
2×11
2315g
(¥320,000)

比較表のグレード分類について

・グレードの基準は変速・ブレーキ性能、耐久性、重量、価格など。その中でも価格・重量・性能面の観点からグレード分けしています。

・メーカーごとに仕様が異なるので、同一グレードに並べているグループセットが必ずしも各メーカーが謳う競合モデルと同じとは限りません。
例えばDura-Aceの対抗馬としてChorusが出されていますが、一般的にはRecordが比較対象とされます。また変速・ブレーキ性能はDura-Aceが最高クラスと言われますが、価格差からSuper Recordを上位グレードに置いています。

・重量は参考値のため、スプロケットや取り付け方法などの規格によって細かく変動します。また、国内での流通がまだ少ないディスクブレーキタイプはこの表には記載していないため、各社公式サイトを参照してください(リムブレーキモデルよりも重くなります)。

 

2. 各メーカーの特徴と動向

コンポーネントメーカーの選択はサイクリストの嗜好を反映するもの。組み付けているグループセットから何を重視しているかが感じることができるので、一緒に走る人のバイクを眺めるのは楽しいものです。
メーカーごとの特徴と今後の動向から、自分の好みを見つけてください。

カンパニョーロ – 最も美しいグループセットは12速の領域へ

イタリアンコンポーネントとして、いつの時代も惹かれる存在であり続けるカンパニョーロ。
曲線的なプロダクトデザイン上位グレードのカーボン素材がこの上なく美しく、特にシマノと比較すると指向性の違いが顕著にわかります。

カンパ独特のエルゴパワーは僕のように手の小さいサイクリストでも操作しやすく、親指を使ったシフトアップはクセになります。Chorus以上はウルトラシフト仕様なのでガガガっと多段変速も可能。

3メーカーの中では価格が頭ひとつ抜けていて、シマノ独占市場の中で敢えてカンパを使うユーザーは「愛車には美しさを重視したい」「イタリアンバイクであればイタリアンコンポを組み付けたい」といったそれなりのこだわりがあるもの(自分のことですが)。

新型スーパーレコード

2008年に10速→11速化を先行したカンパは、10年後の2018年にも他メーカーに先駆けてリア12速モデルをリリース(まずは機械式のみ)。
ただの美しさだけでなく、先進性も見せてくれることに改めてマーケットが沸き立ちます。

12速はギア間のギャップが少なく状況に応じて細かい切り替えができるため、対応できるシチュエーションが拡がります。実際にシフトチェンジのスムーズさも劇的に向上していることが実感できるレベル。

さらなる多段化はドライブトレインにおけるひとつの流れになっていきますが、カンパがその先陣を切ってくれました。

スラム – ドライブトレインの開拓者は攻め続ける

超軽量なグループセットレバー1本で変速をすべてまかなうダブルタップを求めるならスラムに。
多段変速もでき、クリック感も気持ちがいいシフト周り。特にeTap独特のパドルシフトや左右同時押しフロント変速はF1を操縦するような感覚になれます。
またアメリカンコンポなので、Cannondale・TREK・Specializedとのデザイン上の相性も素晴らしいもの。

MTB市場で握る大きなシェアを武器に後発でロード市場に参入したスラムは、シェアを奪うために最も軽量なグループセットや無線通信方式の電動コンポeTapを投入することで大きな存在感を示します。

そして最も新しいスラムの進化は、「フロントシングル」というカードを切ってきました(フロントギア2枚→1枚)。
MTBでは当たり前で、軽量化・メンテナンス性という観点からとても有用なフロントシングルは、ワイドレシオのスプロケットを組み合わせることで、ロードバイクに組み付けた場合でも対応力の幅をできる限り持たせています。

まだフロント2枚に比べると実用性が限定的なのは発展途上のため仕方がないものの、クライム専用やグラベル用など、用途を限定したバイクを組み立てるのであればフロントシングルは優れた選択肢。
一般的なロードレースに1×11で対応するのはハンデを背負うことになりますが、今後カンパのようにリアのさらなる多段化が進んでいけば、フロントシングルの汎用性はさらに高まっていきます。近くロード用1×12が出る噂もあり、すでにROTORが1×13を発表していることからも、スラムもこの流れに乗っていくことと思います。

奇しくもカンパのリア多段化とスラムのフロントシングル化の2つの流れが組み合わさることで、ロードバイク用グループセットの未来が垣間見えるという状況。

シマノ – 巨人は正当進化する

そして極東の巨人シマノ。
ほとんどのサイクリストがシマノのコンポーネントで組まれた完成車を最初に購入するので、誰にとっても馴染み深いのはもちろん、プロでもシマノ機材の使用率が一番高く、実用面で最も信頼のある国産メーカー。
安定した性能を重視するのであれば、変速性能の高いシマノはグレードアップの選択肢としてテッパン。メンテできるショップが多いところもメリットです。

漆黒のデュラエース

ここ最近はカンパやスラムのように尖ったアップデートはなく、巨人の動向はしばらく静かなもの。ディスクブレーキ対応や変速性能の細かいアップデートで強固なシマノ帝国の基盤を固めていく、シェアNo.1メーカーとして極めて堅実な戦略をとっています。

今後見せてくるであろう、他社を追随する動きに要注目。

 

3. 電動/機械式の選択ポイント

機械式か電動か

今年Specializedのトップモデルが電動コンポしか組み付けることができなくなったように、次第に電動×ディスクブレーキがコンポーネントのスタンダードになっていく時代は遠くありません。
少なくともメンテナンスや組み付けの観点から、電動は機械式に比べてメリット以外ないので、ショップから見ても電動を推していきたい気持ちはあるはず。
もしアップグレードの際に電動か機械式か迷った場合は、以下が判別するポイントとなります。

電動/機械式の判定4ポイント

① 変速性能

ギアシフト

電動コンポの変速で大きく変わるのは2点。

  • 1. クリックのストローク幅が少ない
    2. フロント/リアともに変速が高速に決まる

ストローク幅が少ない=指先に少し力を込めるだけでカチッとギアが切り替わるので、変速がすごく楽に。
機械式はワイヤーを引っ張っている感覚がありますが、電動は完全にスイッチを押している感覚。 ボタン長押しで多段変速できたり、フロント変速がクリックだけでできるようになるので、ギアの使い分けが機械式と比べて頻繁にできるようになります(フロントに合わせてリアが最適化されるDi2のシンクロシフトも面白い)。

こういった特性から、信号ストップの多い都市部のライドや、クリテリウムのようにコース内で速度域が目まぐるしく変わるレース、そして頻繁に緩急がつく山岳コースなど、電動は幅広い範囲での対応力が生まれます
弱ペタのメンタル弱泉君は2年生になってからペース配分を最適化できるように電動コンポを取り入れましたが、まさにそういった使い方が楽にできるようになります。

② 重量

重量

電動はパワーユニットなど電力系統のパーツが必要になるため、同一グレードで比較すると機械式より100g前後重くなります。
そのためクライマーのようにグラム単位で車体の軽量化を目指している場合は、機械式のほうに分があります。

③ 価格

価格

電動コンポの一番のデメリットはその値段の高さ。上位グレードだと機械式よりも10万円以上跳ね上がるので、この価格差に投資する価値があるかどうかは判断に迷うところです。
ただ一番安価なシマノのアルテグラDi2はほかの上位グレードの機械式コンポよりも安く入手できることもあって、電動はかなり現実的な選択肢に入っています。

④ メンテナンス性

メンテナンス性

機械式の場合はワイヤーで変速をするため、ワイヤーテンションが変わった場合に変速調整を行ったりワイヤー交換が必要になってきます。
逆に電動は一度セッティングをしてしまえば、落車などでクラッシュしない限り同じコンディションで走る続けることが可能。もちろん防水なので、電力系統部分のパーツが雨に濡れることを心配する必要もありません。

電動のバッテリー充電が面倒に感じるかもしれませんが、1度充電すれば1000〜2000km走行できるので、週末だけ乗るサイクリストであれば多くても月1回程度で済みます。

どちらがベストな選択か?

電動のメリット 機械式のメリット
・正確でストレスのない変速
・メンテナンスフリー
・軽量
・安価

最終的にどちらを選ぶかはライドスタイルや予算に応じた判断になりますが、電動のほうが重量以外の項目で機械式を上回ることは間違いありません。
軽量化を極めていく場合を除いて、予算があれば電動を選ぶほうが最適。

 

4. ギャラリー

ここでは各メーカーの機械式グループセット最上位グレードの外観を、パーツごとに比較していきます。
左からDura-Ace R9100(シマノ)、SuperRecord(カンパニョーロ)、Red22(スラム)。

シフトレバー

シフト/ブレーキレバー

クランクセット

クランクセット

リアディレイラー

リアディレイラー

ブレーキキャリパー

ブレーキキャリパー

印象 – impression

Dura-Ace ストイックなオールブラックは有無を言わさない戦闘機仕様。
Super Record まだらになったカーボン模様の荒々しさ、そして揺るがない曲線美の絶妙なギャップにただため息が出る。
Red22  主張の強いアメリカンなクランク。全体的にソリッドな形状がモビルスーツみたいで興奮。

コンポーネントは新しいモデルが出るたびに「前のデザインが良かった」というリアクションをするのがテンプレート化しています。

かつて僕もDuraAce9100系を見たとき「前のデザインが良かった」とそのままリアクションしましたが、だんだん見慣れてオールブラックも格好良いと思うように。
またカンパの12速モデルは、クラシカルなデザインをあとにして大きくイメージを変えてきましたが、トレンドのエアロ形状フレームに合うようなプロダクトデザインを「あえて」しているのがわかります。

そうやって人は変化にもすぐ対応していくもので、周囲を気にせず自分が素敵だと思ったグループセットを愛でるのが一番。

* * *

上位コンポネントへの換装はほぼ趣味の域なので、自分が満足できるようにじっくり悩みながらこだわっていきたいですね。