text by Ryuji(@marusa8478)
“ニュートラルジェンダー”をコンセプトに掲げ、メンズ・ウィメンズとも同じデザインを展開する英国のブランド「TICCC(以下TIC)」。
シンプル、ミニマルデザインが主流になった現在も、ビビットな蛍光色やポップなドット柄を用い、流行に流されない独自の世界観から、日本国内でも根強い人気を博しています。
一見すると『デザイン>パフォーマンス』のブランドとイメージされるかもしれませんが、TICのラインナップには、軽量系やエアロ系など各シーンに最適化させたモデルが並び、フィット感はどれも硬派なレース向きのつくりです。
今回はその中でも、エアロ系ジャージの「プロタゴニスト・ジャージ」と、快適性にフォーカスした「ライド・ビブショーツ」について、詳しくレビューしていきます。
※本レビューで使用するウェアはTICCC提供のものです。
1. プロタゴニスト・ジャージ
Protagonist Jersey – £99.00
派手なトーンが定番のTICとは少し異なり、プロタゴニスト・ジャージは白黒模様のモノトーン。
TICにしては少し控えめなカラーリングですが、「プロタゴニスト=物語の主人公」というジャージ名が表すように、プロトンを牽引していくような強い意思が感じられる高コントラストのデザインになっています。
ジャージの素材はとても軽く、柔らかなもの。袖を通せばその柔らかい質感が皮膚に張り付くように体に馴染んでいきます。
同社のエアロカテゴリーに分類されるこのジャージは、その特徴として袖にエアロ性能に効果があるとされる素材を使用しています。立体的な凹凸のある表面でわざと小さな気流の乱れを作り、乱気流によって大きな風を整流するという狙いがあるようです。
言うまでもなくその効果は体感として感じることはありません。ただ、この素材の最大のメリットは、そういった空力面よりも、適度な伸縮性によるフィット感にあるように思います。
凹凸を作り出すために立体的に織り込まれた生地は、繊維の往復する距離が長く、引っ張ってもしっかりと伸びる。そのため太い腕にも細めの腕にも気持ちよくフィットします。
伸びる生地で容量が確保されている背面ポケット
また襟ぐりや裾、背面ポケットの折り返し部分には糸を使用せず、熱圧着によってシームレスな作りをしてします。これにより、密着度とエアロ効果を上げつつ、ストレスフリーな着心地を実現しています。
Highs
- ・心地良い着圧と着たときの綺麗なシルエット
・男女で全く同じコーデを楽しむ事ができる
Lows
- ・切りっぱなしの袖はほつれ易いので取扱注意
2. ライド・ビブショーツ
Ride bib shorts – £170
8時間以上のロングライド向けに設計されたライド・ビブショーツ。このビブがかなり良いつくりです。
その第一印象は、プロタゴニスト・ジャージに勝るとも劣らない肌触りの気持ち良さ。
表面が少しふわっとするような独特の素材の肌馴染みがとても良く、ずっと触っていたくなるような質感です。
切りっぱなしのシームレスな裾。気持ちよく密着する
このパフォーマンスを確かめるために行った140㎞のテストライドでは、ゆったりとしたペースでサドルに荷重がかかる走りと、ハイテンポでペダリングする走りの両方で感触を確認してみました。
前者のゆったりペースでは、厚みのあるパッドによってお尻へのストレスはほとんどなし。
逆に後者のハイテンポでは、厚みはあってもしなやかなパッドのおかげでペダリングの動きを妨げることなく、最後まで走り続けることができました。
また長時間のライドで意外とストレスを感じやすいのが、サスペンダーの張り感。サイズ選択が適正であることが前提ですが、張り感は上半身の体格などによっても好みが分かれるところかと思います。そして個人的にはあまりタイトではない方が好みです。
ライド・ビブショーツは少しだけ余裕のある、まさに僕の好みの張り感。
テストライド中も肩に食い込まず、適度なホールド感で快適に過ごすことができたところも好印象でした。
Highs
・街乗り〜ロングライドまでシーンレスに使える高い快適性
・控えめなロゴデザインなので、汎用性が高い
Lows
・切りっぱなしの裾はほつれ易いので取扱注意
3. サイズ選択について
今回僕は169㎝/C81W72H87という体型で、プロタゴニスト・ジャージ: XSサイズとライド・ビブショーツ: Sサイズを着用。サイズガイドからワンサイズアップしていますが、サイズ選択としてはぴったりでした。
初めにお話しした通り、TICのウェアは全般的にしっかりと体にフィットするパフォーマンス寄りのつくりになっていますので、もしみなさんがTICのウェアを選択する際には、普段のサイズ選択のワンサイズアップを視野に入れて検討するのが良いと思います(公式サイトにも“ワンサイズアップ推奨”と記載してあります)。
丁寧につくられた、キャッチーなウェア。
幸いなことに、僕は様々なブランドのウェアに袖を通す機会が与えられています。
いろいろなウェアに触れると、「どんな人がどうやってデザインしたんだろう」とか「なんでここの素材をこれにしたのかな」とか、作り手の気持ちになって考える事がよくあります。
そういった観点でTICのウェアを見ると、どれもエルゴノミックな視点を取り入れながら製作されていていることが伝わり、見た目以上に丁寧で真摯なモノづくりをしていることが感じられます。
レーシーに体に馴染むフィットと、流行のミニマルスタイルにはないキャッチーなデザイン。TICのウェアをワードローブに加えると、いつもの週末のライドに新たなパフォーマンスを生むスタイルが楽しめることと思います。
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text by Ryuji(@marusa8478)
photo by Tats(@tats_lovecyclist)