ロードバイクの優れたペダリングについては諸説あり、人によって向き不向きもあるので、これがベストという正解がないもの。
これまで僕もいろいろな情報を仕入れたり、一緒に走っている速い人のペダリングを真似したりしてきました。引き足を意識すると良いとか、大きな円を描くとか、骨で押すとか、パッと聞いただけでは「?」なポイントも、いくつか実践していく内に「そういうことか」と腹落ちすることがあります。
それらを自分なりに咀嚼して、わかりやすく体系化したものをお伝えするので、ペダリングを改善して速くなろうとしている方の参考になれば幸いです。
※本記事はビンディングペダルを装着していることが前提となります。
まだの方はこちらの記事をどうぞ:ビンディングペダルの選び方ガイド&おすすめペダル
ペダリングを使い分ける場面
ロードバイクに乗るときは、特定のペダリング方法をずっと維持するのはなく、路面状況や走行状況に応じてペダリングを使い分けることが速くなる近道です。
シーンによって使い分けることで、体にかかる負荷を分散することができ、疲れがたまりにくくなるので、その結果いつもより効率的にスピードを出すことができるようになります。
個人的には主に以下の場面に合わせてペダリングを意識して変えるようにしています。
- 1. 加速&スプリント用
- 2. 巡航用
- 3. ヒルクライム用
この使い分けは、アップダウンやストップ&ゴーが多い路面を走るときは特に効果的。それぞれのペダリングで意識する体の部位と回し方のコツを以下にまとめました。
1. 加速&スプリント用:踏み込むペダリング
初期加速(ゼロ発進)や後期加速(35km/hの巡航からさらに加速するとき)するときの力強いペダリング。
大きな力をぐいぐい出すものなので、最も筋肉量の多い「前もも」を使って踏み込みます。加速やスプリントで使うので基本的に短時間用のペダリングですが、筋肉量を増やせば持続時間が増えて強力な武器にもなります。
踏み込み自体は自転車の基本のペダリングなので、誰でもできるものです。それだけに筋肉量やフォームがスピードや加速に大きく影響してくるので、以下のコツを意識して回します。
ペダリングとフォームのコツ
- ・1時→3時のときに強く踏み込み、それ以外は慣性に任せる
- ・肘をコンパクトに折りたたむ(下ハンドルポジションでも可)
- ・上体は低く倒してブレないようにする
- ・目標速度に達したらスムーズに後述の2のペダリングに移行して前ももを休ませる
スプリントペダリングを動画でチェック
↑ツール・ド・フランス2015、ステージ21最後のスプリント勝負(1:10〜)。
ちょっと全力過ぎるんですが、体をコンパクトにして踏み込むフォームのイメージはこんな感じです。
2. 巡航用:きれいに回すペダリング
同じ速度をずっと維持するときの、安定したきれいなペダリング。巡航時はなるべく楽に速度を維持したいので、「脚全体」を使って各筋肉に対する負荷を分散させます。
よく円を描くペダリングと言われていますが、ちゃんと意識しないとできないので、習得難易度Aクラスの回し方ではないかと思います。意識すべきポイントが多いので、低いケイデンスから始めてひとつひとつのコツを順番にクリアしながら習得していくと効率が良いと思います。
ペダリングとフォームのコツ
- ・太ももの付け根側に意識を持っていき、力まずに腰を安定させる
- ・お腹を少し凹ませて腰(骨盤)を垂直に立てる
- ・上死点(0時)を通るときに土踏まずを前に押し出す感覚
- ・下死点(6時)を通るときにつま先を後ろに引く感覚
- ・脚が下がるとき(1時→5時)はあまり強く力を入れない
- ・脚が上がるとき(7時→11時)はちょっと力を抜く
※脚の重さ分を浮かせて反対側の脚に負荷をかけないためです。
巡航ペダリングを動画でチェック
↑2014年新城幸也選手の合宿時の映像。腰が安定しています。スロー再生もあるので、下死点を通過するときの足首の動きなどがよくわかります。
3. ヒルクライム用:ケツペダリング
登坂時のペダリングは「お尻」で踏みます。
いや踏むのは脚でしょ、というのは当然のご意見ですが、ヒルクライムは脚をなるべく使わないようにすることが長続きするコツです。ですので、ここでは意識をお尻に持っていきながら脚を動かすことで、脚の負荷を最小限に抑えながら力強いペダリングを持続できるようになります。
ヒルクライム中は斜面を走ることで加重がお尻側に移動するので、お尻の筋肉を意識すること自体は比較的簡単だと思います。
このペダリングで坂を登る練習ばかりしていると、お尻に乳酸が溜まるのを実感できます。
ペダリングとフォームのコツ
- ・座ってダンシングするような感覚
- ・体を少し左右に揺らしながらお尻の右側→左側→右側…と順番にお尻をサドルに押しこむイメージ
- ・上体はブラケットポジションと上ハンドルポジションを適度に入れ替えて、背筋と腕を交代で休ませる
ヒルクライムペダリングを動画でチェック
↑ツアー・オブ・オマーン2016のラスト2kmヒルクライムシーン。
シッティングしている選手のペダリングを見ると体をリズミカルに振りながらお尻に加重しているのがわかると思います。
*
※今回お伝えした3つのペダリングはシッティング時のものなので、必要に応じてダンシングも使い分けることになります。ダンシングにも状況に合わせた異なるペダリングがあるので、以下の記事を参考に併せて活用してみてください。
* * *
3つのペダリング使い分けを実践することで、今までより疲れにくくなり、さまざまな路面状況に柔軟に対応できるようになりました。その結果、中・長距離を走るときは全体的なスピードアップが実感できるようになります。
これがひとつの正解ではないですし、ほかの方にとっては合わないと判断されるかもしれません。僕自身、より速くなるためのペダリングはこれからも追求していきますが、みなさんも上記を参考にしながら効率的なペダリングを追求してみてくださいね。