
東京の都心に、今まで見たことのないロードバイクが現れた。
永遠に変わり続ける繁華街の密度の中を、美しく磨かれた2台が疾走する。ロードバイクの輪郭を持ちながら、工業製品とは明らかに違う気配がある。手仕事の静謐さ、素材の緻密さ、そして圧倒的な存在感。
イタリア北部の工房で、職人がカーボンを一層ずつ積み重ねて作り上げたラグジュアリーバイク、SWI Aequus(スウィ・アイクース)だ。
今回、LOVE CYCLISTはSWIからの依頼を受け、『SWI Tokyo Project』としてブランドフィルムとスチール撮影を実施した。これは単に「東京で自転車を撮った話」ではない。
text & photo / Tats(@tats_lovecyclist)
Contents
SWI ── 精度を美学に変えるブランド

SWIは、スイスの精密なエンジニアリングと、イタリアの高度な職人技が融合したハイエンドカーボンバイクブランドだ。2014年に創業者ステファノ・チェネレによって設立され、現在はスイスのティチーノで設計を行い、イタリア・ヴェネト州のバッサーノ・デル・グラッパでフレームの手作業による製造を行っている。

ブランドの最大の特徴は、高級ゴールドジュエリーの職人であったステファノの経歴に由来する。彼は、精密な中空の金細工を成形する技術と、カーボンフレームの成形プロセスに深い共通点を見出し、その知見を自転車製造に導入した。オリンピック金メダリストであり世界王者のパオロ・ベッティーニや、クラシックレースのレジェンドであるルカ・パオリーニといったトッププロによるテストと、8年間におよぶ50以上のプロトタイプ開発を経て、独自の「ユニシェル・モノコック(一体成形)」プロセスを確立した。

ラインナップは2モデル。ヒルクライムから高速巡航まで対応するオールラウンダー『Aequus』と、より軽さを前面に出したクライマー『Leve』。
SWIは「万人に合うユニバーサルなフレームは存在しない」という哲学を掲げる。ライダーの体重、出力、ライディングスタイルに応じた最適なカーボンレイアップを独自のアルゴリズムで解析し、分子レベルでのカスタマイズを行う。1本のフレームには120時間以上の緻密な手作業が費やされ、重量は640〜790gに抑えられながらも、構造的な一貫性と理想的なライドフィールを両立している。スイスのミクロン単位の精密さと、ヴェネト地方の伝統的な職人技、そして素材科学のイノベーションが結晶し、妥協のない1台を提供する。

顧客サービスはブランドの哲学の延長線上にある。購入前にスイス・ツークのファクトリーを訪問するか、あるいはSWIのスタッフが顧客のもとへ出向く。個別または少人数でのテストライド、3D Dynamic Fitの計測、そして技術スタッフとの直接対話を経て、自分だけのフレームが仕上がる。「売って終わり」の自転車ブランドとは、設計思想からして異なる。
Aequus ── ユニシェル・モノコックの頂点

「99%のモノコックは、モノコックではない」と、SWIは断言する。
一般的なカーボンフレームは複数のチューブや部品を接合して作るが、Aequus(アイクース)は異なる。F1やMotoGPでも信頼されるNTPT(Thin Ply Technology)高性能カーボンテキスタイルを、ライダーの体重や出力に合わせて最大29プライ、職人が一層ずつ手作業で積層し、単一のモールドで一度に成形する。継ぎ目も接合もない。完成したフレームは125℃・6気圧のオートクレーブで6時間焼成される。この工程によって生まれる「真のユニシェル・モノコック」は、接合型に比べて軽く、剛性が均質で、極めて高い精度を誇る。外層には美しい3Kヘリンボーン織りのカーボンテキスタイルが配され、その構造美を際立たせている。


Aequusスペック
| フレーム構造 | ユニシェル・モノコック(真の一体成型) |
| カーボン素材 | NTPT高性能カーボンテキスタイル(最大29プライ) |
| 製造 | 手積層、オートクレーブ焼成(125℃ / 6気圧 / 6時間) |
| フレームセット価格 | €10,900〜 |
| 完成車価格 | €21,000〜(仕様による) |
SWI Tokyo Project ── 東京と共鳴する

プロジェクト名は『SWI Tokyo – Experience It(体感せよ)』。
渋谷〜新宿という、永遠に景観が定まらない蠢く街並みを舞台に実施されたこの撮影は、ブランドフィルムとヒーロービジュアルの制作を目的としていた。クリエイティブリードは、SWIのマーケティングを担うMark Milburn。彼がこのプロジェクトに定めた核となる指標はこうだ。
「世界のどこにいようとも、SWIを体験する唯一の方法は、それに乗ることだ。それは応答する。手の中で生きている。それは東京と同じく、芸術だ──幾重にも積み重なり、洗練され、歴史を持ち、精密だ」
東京は背景ではない。登場人物そのものだ。
ネオンが溢れ、高架線が頭上を走り、数千人が秩序正しくスクランブルに交差する──その精度と密度は、SWI Aequusの構造と驚くほど重なる。「建築的で、機械的で、幾層にも重なり、意図的で、精密で、密度の中に静けさがある」。このビジュアルの指針は、東京の形容であると同時に、このバイクそのものの描写でもあった。

我々が追いかけたのは喧騒ではなく、喧騒の中の静けさだった。
「SWIというレンズを通して、東京を世界に見せたかった。ビジネスと往来の規模だけでなく、その内側にある静けさ──交差点のあいだにある小さくて精密な瞬間を。秩序。規律。精度の上に築かれた社会の美しさ。SWIはそのすべてを通り抜けながら、エネルギーを吸収し、構造を明らかにし、複雑さの内側に明晰さを見出していく」
サイクリングは東京から逃げるのではなく、東京を変容させる。このコンセプトが、プロジェクトのすべてを貫いている。
Team

今回のプロジェクトのために編成されたのは5名のチーム。ブランドフィルムとヒーロービジュアルを制作するにあたり、SWIが世界に向けて発信したいクオリティを実現できる、トップクラスのモデルとクリエイターが集まった。東京を舞台に、それぞれのプロフェッショナリズムがひとつの仕事として結晶している。
モデル ![]() Atsushi | モデル ![]() Mochidome |
プロデューサー/フォトグラファー ![]() Tats | ビデオグラファー ![]() Large |
撮影アシスタント ![]() Shuichi |
①ブランドフィルム ─ Go Ride in Toyo
ビデオグラファーのLarge氏が切り取り、再構築した、SWIで見せる東京の世界
※映像に寄せられたライナーノーツより
東京がこれほどまでに自転車で走るのが最高な街だと、一体誰が想像していただろうか? 私たちは日本を訪れ、Atsushiとともに1日を過ごした。そして、SWI Aequus(アイクース)で街を駆け巡るのがどんな体験なのか、その目で確かめてきた。
朝起きた瞬間は、とてつもない混雑を予想するものだが、驚いたことに街は恐ろしいほど静まり返っている。路面は信じられないほど滑らかで、ドライバーたちはサイクリストに対して極めて敬意を持って接してくれる。混沌を極めていると思われがちな大都市は、実際には完璧な秩序の中にあった。
しかし、朝の静けさに目を奪われて、夕方の活気を見落としてはならない。渋谷スクランブル交差点の音や景色が証明しているように、夕方こそが、日本が本当の意味で息を吹き返す時間帯なのだ。
この素晴らしい映像を見事に仕上げてくれた日本のチームに、特大の感謝を。またすぐに日本へ戻り、君たちと最高の1日を過ごせる日が待ちきれない。
②フォトグラフィー – Tokyo through the Lens of SWI.

















text & photo / Tats(@tats_lovecyclist)




















