GravelKing ZX:新型センタースリックタイヤで南会津のあらゆるグラベルを走る。

本稿は、Panaracerの新型グラベルタイヤ『GravelKing ZX』の実走レビューであり、5月にメーカーから招待を受けた南会津のメディア向けイベントの参加レポートだ。

正直に言っておくと、イベント前夜には素晴らしい食事やクラフトビール、お土産が振る舞われ、ライド当日は丁寧なガイドがつき、エイドが充実し、地元の方々の温かい歓迎も受け、めちゃめちゃ楽しい2日間だった

自ずとプロダクトに対して好意的になることを踏まえたうえでのレポートだが、感じたことは率直に綴っている。

text / Tats@tats_lovecyclist
photo / Tats & Panaracer

Day 1:ご飯とビールと、ZX。

夜は冷え込む5月中旬に、南会津マウンテンブルーイング・ビアフリッジに集う。醸造所直営のタップルームで、地場産ホップを使ったクラフトビールが並ぶんでいた。

2Fでプレゼンテーションが始まる

GravelKing ZX(以下ZX)』は、パナレーサーが“混合路面において過去最速”と位置づける新作グラベルタイヤだ。センタースリックとサイドノブを組み合わせた3ゾーントレッドを採用し、舗装路での低転がり抵抗とグラベルコーナーでのグリップを1本にまとめている。サイズ展開は、現時点で45Cと50Cの2本立てで、チューブレスレディ対応。35Cと40Cは今夏発売予定。

GravelKing ZXラインナップ一覧

サイズ ETRTO トレッド/サイド 重量 税込価格
700×45C 45-622 ⬛️黒/⬛️黒 560g ¥6,930
700×45C 45-622 ⬛️黒/🟫茶 560g ¥6,930
700×50C 50-622 ⬛️黒/⬛️黒 640g ¥6,930
700×50C 50-622 ⬛️黒/🟫茶 640g ¥6,930

プレゼンテーションでは、開発者から新たなトレッドパターンを導き出した経緯や、グリップや転がりの詳細なテスト結果を伺うことができた。数値は出せないが、レースに有利な条件下で、欧州ブランドを凌ぐ性能を示していた。

GravelKing ZX(¥6,930)

ZXのトレッドパターンは3つのゾーンに分かれていて非常に特徴的。

センタースリック:舗装路や固く締まったグラベルの転がり抵抗を最小限に抑える滑らかな部分。
内側鬼目ヤスリ:ブレーキング時やコーナリング初期に作用し、ペダリングパワーを伝えてトラクションを生み出す。
外側ノブ:高速コーナリング時に踏ん張りを効かせてコントロール性を担保する逆ハの字形状。

プレゼン後はお弁当やビールをいただきながら親睦会へ。メディア・代理店・リテールなど業界関係者がコンパクトに集まる

 

Day 2:南会津グラベルと、ZX。

翌朝8:30に台鞍スキー場の手前にある「ほしっぱの家」に集合し、ブリーフィングを受けてから9:30スタート。コースは全長55kmで、うちグラベル区間は30km以上ある。

LOVE CYCLIST編集部からAnnaとTatsが参加。それぞれSpecialized Crux(45C)とCanyon Grizl(50C)に乗る

出発していきなりグラベルが始まる

このエリアは熊が頻繁に出るため、コース途中ではガイドがピストルを鳴らして鉢合わせを防ぐ。
またトレンディ商会の熊鈴も全員に配られる。地元のサイクリストをガイドに立てて、こういうローカルな文脈ごと体験できるイベントはなかなか味わえないので期待値が高まる。

終始活躍したトレンディ商会の熊鈴

そしていきなり登る

路面は変化に富んでいた。シングルトラック、ダブルトラック、細かい砂利、大粒の石、ぬかるんだ泥、そして突然現れる舗装路。フラットなグラベルはほとんどなく、荒れた山の中を縫うように進んでいく。欧米のグラベルレースのような環境とはほど遠いが、ZXのあらゆる特性を測るには理想的なフィールドだった。

ペースは速い。参加者はさすが業界関係者だけあって、みなさんきちんと脚がある。休憩は短く、テンポよく進んでいく(雲行きが怪しかったので時間を巻きたいという意図もあった)。

おもてなしに歓喜

途中、地元の方々によるエイドが設けられ、野菜やお肉など地域の食材が振る舞われた。美味すぎた。普段のグラベルライドではもちろん自分で補給食を持ち歩くが、今回はガイド、補給、熊対策、サポートカーといったあらゆるものが用意されているので、手ぶらで気兼ねなく走ることだけに集中できる。接待グラベル。こういったユーザー向けイベントももっとあればいいなと思う。グラベルの敷居が下がる。

険しいグラベルは続くが、誰一人トラブルなく進んでいく

舗装路も織り交ぜたコース。舗装路のヒルクライムは、ロードバイクの感覚を知っているだけにきつかった

ランチポイントとなった広場では、地元の幼稚園児たちが和太鼓でお出迎えしてくれた。自分の子どもと歳が近いので思わずほっこりする。接待グラベルの真骨頂。

雨雲が接近して急激に気温が下がる

お昼を食べたあと、雨が振り始めたので急いで帰路につく。激しい雨が降ったり止んだりで撮影はできなかったが、ウェット路面の下りも滑ることなく安心してラインをキープできた。

泥だらけになってフィニッシュ

 

ZXインプレッション

試走コースはあらゆる路面が包含されていたため、ZXの向き/不向きが明確に感じ取れた

センタースリックの恩恵は、舗装路や締まったグラベルでよく分かる。ちゃんと転がるし、明確にスピードに乗る。

一方、斜度のあるガレ場でトルクをかけると、やはりずるっと滑ることもあった。これはセンタースリックを選んだ以上のトレードオフだ。ラインや踏み方を変えながら進んでいくしかない。

ただサイドの特殊な形状のノブは想像以上に食いつきがよく、下りでバイクを傾けてもラインを外す怖さがなかった。ハの字に広がった形状は、前日のプレゼンテーションを通じてトラクションを正確に保つためのものだと聞いていたが、実際に試走を通じて危ないと感じる場面は一度もなく、GravelKingの名前に恥じない走破性を確かに感じ取れた。

50Cを履いていたので、舗装路ではさすがに重さを感じた。舗装路の割合が多いなら、45C以下の方が良いかもしれない。ただグラベルでの50Cは、40Cや45Cと比べるとはるかに安心感があったので、路面の環境によってどのサイズが最適なのかは変わってくるだろう。

正直に言えば、今回のようなテクニカルなコースであれば、個人的には『X1』を選ぶ(実際に私物のグラベルにはX1を取り付けている)。
でも『ZX』は、ロードバイクとグラベルバイクを1台に兼ねるライダーや、レース・ファストグラベルのシーンで確実に存在感を放つ1本だと思う。

 

南会津また来ます。

今回メーカーや地元の方々からのおもてなしに加えて、南会津のロケーションが圧倒的に素晴らしかった。路面の豊富さ、グラベルへのアクセスの良さ、峠から見渡す山並み、麓に広がる田園風景。「これを求めていた」と何度声を上げたかわからない。帰路の舗装路で、早すぎる先頭集団からひとり千切れたあと、田園風景の美しさにひっそり涙がこぼれた。プライベートでも必ずまた行く。

パナレーサーは、このイベントをきっかけとして、南会津でまたサイクリスト向けイベントを計画しているという。そのときは読者の方々もぜひ参加して、この素晴らしい土地を全身で味わってほしいと思う。

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text / Tats@tats_lovecyclist
photo / Tats & Panaracer