POCハイエンドヘルメット3種レビュー:『Cytal Lite』『Cytal Carbon』『Procen Air』

僕はPOCのヘルメットが好きだ。OctalやVentralをもう何年も被り続けてきたが、そのラインナップが新たな世代へと移った。
Ventralに代わる「Cytal」シリーズから、スタンダードな『Cytal』、軽量の『Cytal Lite』、堅牢な『Cytal Carbon』。そしてTTヘルメットのように攻めた造形で話題を呼んだ『Procen Air』。
この中で、僕が使っているのはCytal Lite、Cytal Carbon、Procen Airの3つだ。これらハイエンドモデルを、好きだからこその視点を含めてレビューしたい。

レビュアー

Ryuji@ryuji_ride
会社経営者。スポーツバイク歴17年。POCアンバサダー。過去には競技者として打ち込み、表彰台に上がった経験も持つ。自転車専門誌の編集者、サイクルウェアメーカーといった経歴から業界にも精通。所有バイクはCannondale SuperXとS-Works Tarmac SL8。

text & Photo / Ryuji@ryuji_ride
edit / Tats@tats_lovecyclist

POCの中立性

POCは単にデザインが美しい、というだけではない。このブランドに感じる魅力は、その「中立性」にある。

昨今サイクリングウェアのブランドが、かつてないほど増えた。それぞれに個性や思想があり、選ぶ楽しさがある。ただヘルメットとなると、話は少し変わってきて、プロチームへの供給によるイメージ、主張の強いカラーリングや造形、国柄を映したデザインなど、ヘルメットというのは意外と雄弁で、被るだけで何かを表現しがちだ。本当の意味で「どんな装いにも中立でいられる」ブランドは、実はそれほど多くないと感じている。

その点POCは、数少ない中立性を備えるブランドのひとつだ。引き算のデザインで時代や流行に左右されない普遍性があること。特定のチームやスター選手のイメージに強く染まっていないこと。スタイリングを強要するような押しつけがましさがないこと。これらが重なって、POCというブランドに独特のニュートラルな佇まいを与えている。

だからどんなウェアを着ていても、POCのヘルメットは浮かない。その日の装いが決まっていて、そこにPOCを合わせるとすっと収まる。ヘルメットが「自分はこういうブランドだ」と主張せず、あくまで被る人のスタイルを立てる側に回ってくれる。
この引き際の良さこそ、僕がPOCを長く愛用している、いちばん奥にある理由なのだと思う。

今回レビューする3モデル『Cytal Lite』『Cytal Carbon』『Procen Air』は、同じPOCのロード向けヘルメットでありながら、その性格は結構違う。使い込んでわかった三者三様の個性を、ひとモデルずつ見ていきたい。

 

① Cytal Lite:軽さは正義

Cytal Lite(¥66,000)

重量195g(Mサイズ)
カラー– Uranium Black Matt
– Hydrogen White Matt
– Hydroge White/Uranium Black Matt
サイズ– S 50–56cm
– M 54–59cm
– L 56–61cm
価格¥66,000(税込)

Cytal Lite(以下Lite)』は、エアロを意識した塊感のある形状なのに、手で持ち上げると異様に軽い。見た目からは想像できない軽さに、視覚と触覚がバグを起こしたかと思う。被ってみてもそうで、頭に乗せた状態で「軽い」とはっきり体感できるヘルメットは、そう多くないと思う。

見た目と軽さのギャップに、仲間に持ってもらっても「かるっ」という言葉が必ず出る

少しでも軽いほうがいい

軽さはそのまま疲れにくさに直結する。だから僕がLiteを手に取るのは、まず長距離・長時間を走る日だ。一日中ペダルを回していると、頭にかかるわずかな重さの差が後半になって効いてくるが、Liteはそういった蓄積疲労が起こりづらい。

登りの多い日や、ヒルクライムレースでも迷わずこれを選ぶ。登るなら少しでも軽い方がいい

暑い日に手が伸びる

通気性も3モデルで頭ひとつ抜けている。開口部の面積が最も大きく、スピードが乗らない低速域でも冷却性が落ちにくい。ヒルクライムのように速度の出ない場面でも熱がこもらないので、暑い日に手が伸びるのは、自然とLiteになる。

軽量モデルでも空力を意識した形状。テンポの速い走り方に十分対応するし、見た目にも今どきのエアロ感がちゃんと出る

軽量化の代償

ただし弱点もある。軽量化のためにアウターシェルの面積が削られていて、その分EPSライナーの露出が多い。これがなかなか繊細で、ぶつけるとすぐに凹んだり削れたりするから扱いには神経を使う。バッグに無造作に放り込むわけにはいかない。

ライナーの露出が多く、アイウェアも保持しにくいのが難点

もうひとつ地味に困るのが、アイウェアの保持だ。ヘルメット前方の開口部にサングラスを差し込んで固定したいのだが、Liteにはそれを支えるラバーがついていない。だから相性の悪いサングラスだと、保持できずにすぐ落ちてしまう。ライド中にアイウェアを額に掛けて走ることが多い人は、手持ちのモデルとの相性を確認しておいた方がいい。

Cyctal Liteを購入する(ワイズロード)

 

② Cytal Carbon:頂点に立つ

Cytal Carbon(¥77,000)

重量299g(Mサイズ)
カラー– Uranium Black Matt
– Hydrogen White
サイズ– S 50–56cm
– M 54–59cm
– L 56–61cm
価格¥77,000(税込)

Cytalシリーズの頂点に立つのが『Cytal Carbon(以下Carbon)』だ。中央を前後に貫くカーボンのウイングが、見た目にも構造にも、このモデルを特別なものにしている。

カーボンを使う理由

このヘルメットの安全性は、バージニア工科大学の安全性テストで、最高評価となる5つ星を与えられたことから証明されている。回転衝撃を緩和するMIPSを搭載していないにもかかわらず、このスコアが与えられるのは、他モデルと比較するとその凄さがわかる。

上部のウィングはカーボン素材だからこそ軽さと保護性能を併せ持つ

その理由が、中央を前後に貫くカーボンの「ウイング」にある。内部にはKoridionという素材が充填され、カーボンの強度と組み合わさることで、軽さと衝撃保護性能を両立する。ぱっと見はデザインのアクセントにしか見えないこの構造だが、しっかりと保護性能の要になっているようだ。

上質感

Carbonに手が伸びるのは、Liteほど長く走らない日だ。ハイテンポで距離を刻む日や、そこそこ登るけれど斜度は比較的緩いといったレイアウトの日に、このヘルメットの空力の良さと通気性の高さが際立つ。

通気の作りは、Liteとは考え方が違う。ベンチレーションホールの数自体は抑えられているが、その代わりに前方の開口部が大きく取られていて、取り込んだ空気が後方へ効率よく抜けていく構造になっている。POC曰く、ウイングが空気の流速を上げるのだという。実際、30km/h以上の速度が出ていれば、ヘルメットの中はかなり涼しい。低速で開口部の多さがものを言うLiteに対し、Carbonは速度域が上がるほど本領を発揮する、という住み分けだ。

フィット感もLiteとは異なる。しなやかで軽量なワイヤーのアジャスターが頭を360°均一に包み込むので、Liteと比べてCarbonの方が少し上質に感じる。

そして、Liteと使い比べて違いを感じるのがやはり堅牢性だ。アウターシェルの面積が広く、Liteのように扱いに神経を使う必要がないので、日常的にラフに付き合える安心感もある。加えて、カーボンならではの素材の高級感もある。

価格はシリーズの中でも最も高い。カーボンウイングの構造を思えば納得できるが、気軽に手を出せる金額ではないのも事実

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③ Procen Air:速さをまとう

Procen Air(¥74,800)

重量344g(Mサイズ・シールド込み)
カラー– Apatite Navy Matt
– Hydrogen White
– Pargasite Green Matt
– Uranium Black Matt
サイズ– S 50–56cm
– M 54–59cm
– L 56–61cm
価格¥74,800(税込)

TTヘルメット寸前まで攻めた大胆な造形。『Procen Air』は、POCがロードのために用意した「究極のエアロ」だ。

最初「えっ」と思った

正直に告白すると、初めて見たときは引くくらいインパクトのある見た目だなと思った。でも他ブランドのエアロ特化型ヘルメットと並べてみると、Procen Airの洗練された造形が際立つ。同じような造形でも、Procen Airはただ奇抜ではなくて、ちゃんと美しい。この系統のヘルメットならProcen Air一択だと思っている。
エアロという機能をこれだけスタイリッシュに成立させるのは、POCにしかできない芸当だと思う。

今ではすっかりこの造形に惚れ込んでいて、用もないのに手に取ってしばらく見惚れていることがある

独特の抜け

Procen Airに手が伸びるのは、平地がメインの日だ。エアロの恩恵がはっきり出るのは、やはり高速巡航や向かい風の強い日で、明らかに速く感じる。頭に風が引っかからない独特の抜けの良さを一度知ると、風の強い日ほどこのヘルメットを被りたくなる。
寒い日にも良くて、顔に直接受ける風が減るぶん走りやすい。エアロヘルメットの地味だが嬉しい副産物だ。

通気性も、30km/h以上出ていれば内部に風が入って抜けていくので、速度さえ乗っていれば熱はこもらない

似合う自分であるために

ひとつ個人的な感覚を書いておきたいのだけれど、このヘルメットは確実に乗り手を選ぶ。
きちんと練習を積んで、身体が仕上がっていないと、Procen Airには釣り合わないと感じる。速さをまとうためのヘルメットだからこそ、被る側にもそれ相応のコンディションが求められる。だからこそ、「似合う自分でいたい」と思わせてくれるヘルメットでもある。

気になる点

フィット形状は気になる。先の2モデルと比べて、Procen Airは内部がやや欧米寄りの形状が強い。全てグローバルフィットのMサイズを使っていて、Cytal LiteもCarbonも問題なく被れる僕でも、Procen Airだけは少し幅が狭く感じた。頭の形によっては、試着で確認しておきたいポイントだ。
そして、使いどころも限定される。通気性はエアロヘルメットとしては優秀な部類だが、速度が上がってこその涼しさなので、さすがに日本の真夏には正直いって出番がないと思う。

サングラス代わりのシールド込みで344g。見た目ほど重く感じず、エアロヘルメットにありがちな、頭にズシっと乗っかる感覚がない

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新モデル『Amidal』

この3モデルに続いて、POCから『Amidal』というヘルメットが登場した。
CytalとProcen Airが比較的レースシーンでの使用を想定しているのに対して、Amidalの用途はロードに加えて通勤・街乗りまでを想定しており、価格も¥44,000(税込)と、Cytalシリーズより一段抑えられている。

特徴はスリムなシルエット。頭に近いコンパクトな形状で、後部に補強ゾーンを設けることで構造的な強度を確保している。安全面ではMIPS Air Nodeを搭載。重量はSサイズで300g、Mサイズで310g。また、Knogと共同開発したリアライト用のマウントを備えているのも特徴で、ヘルメット後部にライトを装着できる(ライト本体は6,750円で別売)。カラーは11色展開と幅広い。

これは実際に使用していないため、新しいラインナップの一つとして紹介するにとどめておく。

 

選べるハイエンド

3モデルを使い分けていると余計に感じているが、僕はこの3つのどれもが好きだ。

軽さで自由をくれる『Cytal Lite』。堅牢さと上質さで気分をアゲてくれる『Cytal Carbon』。速さと美しさをまとう『Procen Air』。それぞれ狙いは違うのに、どれもPOCらしさを感じる。余計なものを削ぎ落とし、それでいて何かの模倣でもない。

どのモデルを選ぶかは、どんなライドを大切にしているかと同じこと。POCは、どの問いにも一つずつ答えを用意しているので、自分のライドに一番近いモデルをぜひ見つけてほしい。

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text & Photo / Ryuji@ryuji_ride
edit / Tats@tats_lovecyclist