ついにGPSサイコン化。Apple Watch Ultra 2レビュー

2023年10月にApple WatchのOSが「watchOS 10」にアップデートされ、サイクリング関連機能が大幅に強化されました。これにより、Apple WatchとiPhoneを組み合わせることで、GPSサイコンに近い使い方ができるようになっています。
これからのApple Watchは、GarminやWahooなどGPSサイコンの代替となっていくのか。約1ヶ月半の使用から見えたものをレビューします。

*本記事で着用するApple Watch Ultra2はAppleより貸与されたものです。一定期間を経たのちAppleに返却されます。

text/Tats@tats_lovecyclist

Apple Watch Ultra 2

Apple Watchの現行モデルは「SE」「Series 9」「Ultra 2」の3つ。
どれでもwatch OS10のサイクリング機能は使用できますが、最上位モデルのUltra2は主にバッテリーや強度などハード面が強化されており、登山やダイビングなど厳しい環境下での使用に耐え得る仕様になっています。

Series9と比較した主な強み

・ディスプレイ輝度1.5倍(3000ニト)
・バッテリー2倍(通常36時間)
・耐水性能2倍(水深100m、ダイビング対応)
・屈強なチタニウム素材
・アクションボタンあり
・居場所を知らせるサイレン機能あり

※公式サイトによる比較表はこちら

Ultraシリーズのチタンの質感は圧倒的に良く、エッジのあるフェイスはよりラグジュアリーな印象を与える。Apple Watchを身につけてこれほど高揚感を得られるとは思わなかった。それくらいプロダクトの完成度が高い。

調整しやすい専用のループ。ちゃんとフィットし、トリコロールの配色も良い。

ケースサイズ49mmは見やすいが、やはり四六時中着用するにはでかい。日常での使用感はガジェット系のレビュアーに任せる。

目新しいダブルタップジェスチャー。電話に出たりメッセージに返信したりできる。ただ認識されないこともある

3000ニトは太陽光の下でも視認性が高い(ライド中は見ないけれど)

バッテリーの持続時間が2倍なので、1日おきの充電でOK。通常モデルと比べて、充電の手間が減るのは日常生活がラクになる。ただUltra2以外だと、終日ライドなどの長時間ワークアウトをする場合、バッテリーは不足に感じると思う

オレンジのアクションボタンはUltra2に搭載された新しいボタン。「ストップウォッチ」や「ショートカット」などいくつかの機能を割り当てられるが、GPSサイコンとして使うなら「ワークアウト」一択になるだろう

手首から心拍数も計測できる。精度も高く、ハートレートセンサーを装着する必要がない

 

Apple Watchでライドを計測する

watchOS 10では、パワーメーター、スピードセンサー、ケイデンスセンサーといったBluetooth対応のサイクリングアクセサリに自動的に接続され、Apple Watchでパワーやケイデンス計測が可能になりました
さらにApple Watchでワークアウトを開始すると、iPhoneの「フィットネス」アプリで自動的にスピード、パワー、ケイデンス情報などが表示されます。これによりiPhoneがGPSサイコン化します。

GPSサイコン化のために必要なもの

① watchOS 10が使えるモデル

サイクリング関連機能を使うためには、watchOS 10へのアップデートが必要です。

・Apple Watch Series 7以降
・Apple Watch SE 第2世代
・Apple Watch Ultra / Ultra 2

上記モデルを持っている方は、watchOS 10にアップデートすることでサイクリングワークアウトが使用できるようになります。現行で一番手頃なモデルはApple Watch SE 第2世代(¥34,800〜)。

② iOS17以降を搭載したiPhone

iOS 17にアップデートできるのはiPhone XS(2018年発売)以降のモデル。

③ ハンドルバーに取り付けるスマホケース&マウント

アウトフロントマウントなら視線移動が少なく見やすい

Quad Lock、SP Connect、Peak Designなどハンドルバーに取り付け可能なマウントを用意することで、iPhoneの画面にワークアウトを表示させて走ることができます。
Quad Lockであればケース(¥4,290〜)+アウトフロントマウント(¥5,720〜)の費用感。

GPSサイコンとの項目比較

走行時に表示させる項目や本体の機能を比較。

項目 Apple Watch GPSサイコン
走行ステータス
走行距離
スピード
ケイデンス
獲得標高
斜度
パワー
現在のパワー
3秒平均パワー
30秒平均パワー
パワーゾーン
TSS / NP / IF
左右バランス
データ連携
Stravaアップロード
機能
ヘルスケア
事故検出 / 緊急SOS
ナビ機能 マップアプリを使用
バッテリー* 通常時36時間
ワークアウト12時間
低電力17時間(通知を制限)
低電力35時間(心拍とGPSの測定頻度を減らす)
*Apple Watch Ultra2の場合
26〜35時間
*Garmin Edgeシリーズ

Apple Watchで一般的なライド項目は表示できます。ただし、GPSサイコンと比較すると、一部不足分が気になります。
特に「斜度」と「3秒平均パワー」はライド時に参考にすることの多い数値なので、これまでこの項目を使ってきたサイクリストはペース管理やトレーニングがしづらくなります。
これらの項目の実装予定についてAppleに問い合わせたところ「将来のプランについては回答しかねる」とのことでした。

表示項目はカスタマイズ可能。Apple Watchで項目を編集するとiPhone側にも反映される仕組み

ナビが必要なら地図アプリを使います。目的地セットだけで良ければAppleマップやGoogleマップを使えば良いし、あるいはGPXファイルを読み込むのであれば、StravaやRide with GPSなどのナビゲーション付きアプリを使えばOK。
地図アプリの選択肢の豊富さという観点では、iPhoneを使えるのはやはり強い。

操作方法

パワーメーターなどセンサー類のBluetooth接続

Bluetooth接続画面。デバイス一覧に見慣れたセンサーの名称が出てきたときは感動した

Apple Watchで設定アプリを開き、「Bluetooth」をタップして、「ヘルスケアデバイス」をタップしてから、接続したいセンサーをタップすれば接続可能。
以降はワークアウトを開始すると自動的にApple Watchに接続されます。

*Apple Watchがサポートするパワーメーター
– 4iii Precision, Precision Pro
– Favero Uno, Duo
– Garmin Rally シリーズ(SingleとDual)
– Power2Max NG
– Shimano power meters
– SRAM Quarq
– Stages left, dual sided
– Wahoo Speedplay (ペダル)

ワークアウト開始

Ulra2であればサイドボタンですぐに計測開始できる

Apple Watchで「ワークアウト」アプリを選び、「サイクリング」をタップすれば計測開始。Ultra2の場合は、サイドのアクションボタンに「ワークアウト」を割り当てることで2アクションで始められます。

iPhone側は自動的に「フィットネス」アプリが起動するので何もする必要はありません。こうしたシームレスな連携はさすが。

終了するときは右フリックで表示される画面で「終了」を選べばOK。

 

“究極”のトレーニングパートナーではない

ここまで読めば、普段GPSサイコンを使用しているサイクリストは、Watch OS10を搭載したApple Watchが自分にとってGPSサイコンの代替になるかどうか判断できると思います。
パワー計測の項目については現状は片手落ち感が否めません。Ultra2の商品ページには「究極のトレーニングパートナー」と書かれていますが、GPSサイコンと並べると“究極”は言い過ぎです。

逆にパワーメーターを使っていないサイクリストであれば、サイクリング機能としては十分です。Ultra2であればバッテリーは1日ライドしても持つし、Strava連携ができるので、ログ管理も申し分ない。
既存のApple Watchユーザーは、これからGPSサイコンを買う必要がなくなるので出費も減るはず。

個人的にはロードバイクにはGPSサイコン、グラベルバイクにはApple Watchを使っていて、これがそれぞれのライド特性にちょうどハマる

ここまでは、あくまでGPSサイコンの土俵で勝負したときにApple Watchがどこまで肉薄するかという話でした。GPSサイコンは専用デバイスなので、サイクリング機能について言えば、後発の汎用デバイスより強いのは当たり前です。ここからはApple Watch単体の話をします。

 

Apple Watchの思想と向き合う

ヘルスケアデバイスとして

10月に開催されたAppleによるメディア向けの説明会(ランニングや自転車関連のメディアが参加した)では、サイクリング機能についての説明は最後に少しだけ行われ、時間の大部分は「ヘルスケア」についての説明が充てられました。このことは、AppleがApple Watchをどんなデバイスと位置づけているかがわかります。

2015年に発売されたApple Watchは、当初メッセージやナビなどiPhoneの機能の一部を代替するデバイスとして紹介されていましたが、次第にフィットネスやヘルスケアに関するアップデートが多くを占めるようになります。
こうしたApple Watchのコンセプト転換は、当初Appleの開発者は想定していなかったと言います。
過去のヘルスケア関連機能は、日々の活動を簡単に記録するだけのものでした。ただ、そのことによって健康的な身体を取り戻し「Apple Watchに命を救われた」というユーザーが現れたことで、健康管理デバイスとしての可能性が見出されるようになります。

Apple Watchにはアクティビティリングがある。3つのリング(ムーブ、エクササイズ、スタンド)を毎日完成させることで健康的な身体へ近づいていく

ヘルスケア関連機能は以降続々とアップデートされ、身につけているだけでユーザーの健康状態を把握してくれるようになりました。

Apple Watchが持つ主なヘルスケア機能

手首皮膚温:基礎体温計の代替として、過去の排卵を推定した周期記録ができる
血中酸素ウェルネス:COVID-19で一躍有名になった血中酸素濃度をApple Watchでも計測可能(ただし医療目的ではなくフィットネスとウェルネス目的)。バルスオキシメーターとは異なり、光を反射することで計測している
心電図:電気心拍センサーを使って心電図を計測できるほか、心房細動(不整脈の一種)を検知できる
睡眠記録: 目標睡眠時間を設定し、3つの睡眠ステージにいた時間の長さを確認できる。次期モデルでは無呼吸症候群の計測もできるという噂もある。

こうしてApple Watchは、ユーザーの健康を見守るデバイスへと進化を遂げています。
その土台の上に乗っかるのが、サイクリングやランニングなどが含まれる「ワークアウト」機能であり、日々の健康管理+トレーニングによってさらに強い身体を手に入れるという重層構造になっています。
そういった意味で、ワークアウト領域の開発はこれからさらにリソースが割かれるはずです。現状不足しているパワー関連データなどは、今後のアップデートで実装されることを期待します(中途半端なままではいられないはず)。

どんな高級腕時計よりも。

僕を含めてサイクリストはどうしても『GPSサイコン vs Apple Watch』という比較をしてしまいますが、今回のWatch OS10のアップデートを見て、「Apple WatchがGPSサイコン化した」という部分だけに着目するのは、Apple Watchの全体像を捉えきれていないと感じます。

健康と安全、フィットネスとアクティビティ、アプリと通信、そしてファッション。
マーケットにはこれよりはるかに高価な時計がありますが、どんな高級腕時計でもApple Watchが持つ機能の代替はできないし、またどんなGPSサイコンもApple Watchのように日常までウォッチしてくれることはない。
Apple Watchは自分をサポートしてくれるファッショナブルなデバイスとして長期的に付き合うものであり、今後長くサイクリングを続けられる身体でありたいと願うのであれば、未来に向けてApple Watchを導入しない手はありません。

Apple Watch(公式サイト)

著者情報

Tats Tats Shimizu@tats_lovecyclist
編集長。スポーツバイク歴10年。ロードバイクを中心としたスポーツバイク業界を、マーケティング視点を絡めながら紐解くことを好む。同時に海外ブランドと幅広い交友関係を持ち、メディアを通じてさまざまなスタイルの提案を行っている。メインバイクはFactor O2(ロード)とLS(グラベル)。