text/Tats(@tats_lovecyclist)
こんにちは。業界の話題に触れたり内なる物欲をさらけ出したりする、四半期に一度くらいの定例企画です。
“ロードレーススタイル”の転換期
最近までロードバイクは、オールラウンド・エアロ・エンデュランスという3カテゴリでの展開がメインでしたが、今はオールラウンドとエアロが統合しつつあり、またグラベルロードの隆盛によってエンデュランスの立ち位置も微妙になったりと、明らかにロードの開発リソースが絞り込まれています。
また新型DA発表でも多くの人が感じたことだと思いますが、この先ロードの分野では、改善はあってもイノベーションは起こり得ない状況です。
欧米を中心に、マーケットの軸は本格的にグラベルロードへ移りました。
そのグラベルも、カテゴリの細分化が進み、アドベンチャー用・トレイル用・レース用といったカテゴリごとのラインナップが増えています。Supersix EVO CX/SEやCruxのように、本来は性質の全く異なるシクロクロスとグラベルロードが統合される例もあり、ロードよりもグラベルの新モデル発表の方が目新しいことが多くてワクワクするほど。
シクロ用「Supersix EVO CX」(左)とグラベル用「Supersix EVO SE」(右)。フレームは両モデル共通という力技
国内に目を向けると、“日本は道がちゃんと整備されているからグラベルロードは浸透しない”ということが数年前から言われてきました。ただグラベルロードの本質は、「砂利道を走るためのバイク」ではなく、「より多様な走り方を許容するバイク」であると思っています。ロードレース用バイクでも色々な走り方はできますが、その許容される範囲がさらに広がる。
欧米メーカーのラインナップがそういった思想を持つバイクへシフトすることで、それらを輸入している日本のマーケットも強制的に変化を求められることになります。世界的に自転車が“太いタイヤ”に転換していく中で、レースでの勝利を目的としない僕たちの多くは、もうロードレース向けにしつらえた“25cスタイル”だけに固執し続ける必要はなくなりました。
とはいえ、スポーツバイクの供給が世界的に不安定なのは周知のことです。新しいバイクもパーツも入手自体が困難なので、スタイル転換はこの先3年くらいで少しずつなされていくものだと思います。
僕自身も、もう1台スタイルの異なるバイクを手元に置きたい気持ちが日に日に強くなっていますが、希望のモデルを入手できる目処が立たないので、それまでは動向を見守る段階なのかな、と行き場のない情欲を抑えてるような状況です。
アパレルも多様化へ
マーケット転換の流れは、同様にアパレルへも波及しています。
これまでオンロードウェアで人気を博してきたブランドが、以下のような異なるスタイルの提案を今まで以上に押し出すようになりました。
Rapha | MTBコレクション Exploreコレクション |
MAAP | Alt Roadコレクション |
la Passione | Gravelコレクション |
Isadore | Gravelコレクション |
Café du Cycliste | Gravelコレクション |
Café du Cyclisteは「グラベルサイクリングとは?」という疑問に対して、こう伝えています。
グラベルサイクリングの定義は非常に広いのです。グラベルとは全てのライダーが求めるものであり、ライダーの希望によって決めることもできます。
グラベルサイクリングは、オフロードでありオンロードです。世界中の離れた場所へと現実逃避できる、冒険心溢れるオフロードであり、身近な場所から始められるオンロードでもあります。
(中略)グラベルは、新しいバイクを買う最高の理由と言えるでしょう。
引用元: https://www.cafeducycliste.com/jp_ja/la-gazette/what-is-gravel-cycling/
“グラベルはオンロードでもある”とはっきり言っていて、だからグラベル系コレクションはどんな道で着ても良い。むしろ街中を走ったりカフェに立ち寄るのであれば、レーサースタイルよりもグラベルスタイルの方が調和します。
ファッションは時代の思想を反映するもの。新たな選択肢が提示されるようになったことで、今が時代の転換点に入っているということを実感しています。それにどう向き合っていくかが今後のスポーツ自転車界の焦点だと思っています。
KASK WASABIが良い
11月発売のエアロヘルメット「WASABI」の丸っこいフォルムが愛おしい。
同じエアロヘルメットでも、UTOPIAのようなピュアレーシング感がないので、普段のライドでも全然使えるだろうし、シティライドやアドベンチャーにも合う。落ち着いたマットカラー展開も今っぽい(¥38,500/270g)。
シェル中央部の開閉機構で温度調整できるので、溺愛するValegroの唯一の弱点「寒い」をカバーする冬向きモデルになってくれそうな気がします。
最近は小物類もグラベルスタイルで提案されるように ©KASK
Raphaがカスタムを終了
2019年に開始し、大きな話題を呼んだRaphaカスタム。2021年5月に一旦新規受付を停止しており、8月に再開見込みとなっていましたが、再開されないまま終了となりました。
工場の生産ラインが混雑しているため一時停止しているとされていましたが、結果的には収益の立つ見込みがなくなったことが直接的な要因のようです。
Raphaカスタムは品質こそ優れていたものの、Champion SystemやBioracerのような既存カスタムメーカーと価格競争力では劣っており、多くのユーザーのニーズ(質の良いカスタムジャージを安価に作りたい)を満たすことはできなかったもよう。
親会社がRZC Investmentになってからは、採算の厳しい事業は迷わずクローズする方針になっているようで、カスタム部門もかつてのトラベル部門と同じ道を辿ることになりました。
カスタムは終了したとはいえ、Raphaの既製品のラインナップはさらに強力になっています。オフロード展開、カラーバリエーションの目新しさ、他ブランドとのコラボなど、ほかのブランドの追随を許さない先進的な取り組みは、変わらず僕たちをワクワクさせてくれます。
参照:https://cyclingtips.com/2021/08/raphas-custom-division-has-been-shut-down/
Fingerscrossedが今年も可愛い
ここ数シーズン愛用している「FINGERSCROSSED(フィンガーズクロスト)」のソックス。
このブランドは、従来ソックスとボトルだけの展開だけでしたが、今シーズンからはスカーフとヘッドバンドもラインナップに追加。
ローズ、キャメルといった絶妙なニュアンスカラーが素敵すぎて、冬の刺さるような空気をあえて楽しみたい気分になります。
もちろんオーバーソックスと色を合わせて。
次のタイヤは「Continental GP 5000 S TR」
マーケットが変化していても、これまで通りオンロードスタイルも楽しみたい気持ちは変わらない。
現状はSchwalbe Pro Oneのチューブレスを使っていますが、次のタイヤのために、Continentalから新しく発売されるチューブレスレディタイヤ「グランプリ5000S TR」をオーダーしました。現行チューブレスモデルの「グランプリ5000 TL」は全くはまらないことで有名でしたが、今回ははめやすくなっているもよう。またグランプリ5000TLより20%速く、50g軽いということ。
幅は28cで、カラーはブラウンサイド(ずっとブラウンにしたかった…!)。年内あたりに入荷する予定なので楽しみです。