Love Cyclist Journal Vol.12【2022年5月号】- 「場の力」を生む。

こんにちは。僕が普段感じていることや最近のトピックなどを書く不定期企画“Journal”の第12号です。

ここ最近は、業界を通して横のつながりをつくる動きが顕著だと感じていますが、僕自身も都合がつく限り、個人的に話したい方々と会うソーシャルライドを行っています(勝手に”Social Saturday”と名付けている)。

その中の会話で、「ラブサイはこれからどうしたいか」と聞かれることがしばしばあります。過去にも記事内で言及したことはありますが、それから時代や環境の変化から考え方も変わってきているので、今回のJournalは改めて今考えていることについて。

text/Tats@tats_lovecyclist

ラブサイ=コミュニティ

ラブサイに関わる人が増えたことで、コミュニティの規模も大きくなってきました。

このメディアの価値は、今やコミュニティの存在が多くを占めていて、これを存続させていくことが不可欠となっています。だから「ラブサイはこれからどうしたいか」という問いに対しては、「コミュニティを維持し、成長させること」が今最も大切にしたい点だと答えています。

どうしてコミュニティなのか、どうしてYouTuberのように自分を強く出していくインフルエンサースタイルでないのか。

僕がロードバイクを始めた8年前は、自分のために使える時間が十分にあり、自転車にリソースの多くを注ぐことができました。トレーニングしてどんどん走れるようになっていったし、遠征して走ったり、レースに出るお祭り感のようなものも楽しんでいた。また本業のマーケティングの仕事の合間にラブサイを立ち上げ、複業しながら平日もトレーニングするくらいは時間に余裕がありました。

そして2年前に双子が生まれてからは、ライフステージが大きく転換しました。子育てが生活の中心であり、可処分時間は10分の1くらい。子が居る間はすべてを彼らに注ぎ、寝かしつけたあとの1日の残りが自分とパートナーの時間(この文章も深夜に書いている)。実走は周りの協力を得てはじめてできるものになりました。少なくとも、ラブサイがない限り自転車に乗り続けることは不可能だったと思います。

同時に、自転車遊びを続けるには、一定以上の条件が揃っていること不可欠だと身に沁みるようになりました。
その中で一般的に流れている自転車遊びの提案を見ていると、可処分時間に余裕のある人に向けられたもの──ロングライド、トレーニング、ツーリング、キャンプなどが多くを占めています。

そもそも長距離を走ることを前提とした自転車だからこうなることは理解できますが、だからこそ、何らかの要因で長時間のアクティビティが不可能になった人を、ターゲット外として排除してはいけないと思っています

どうやってサイクリングをより一般的なアクティビティにするか、という議論がよくなされます。

こうした前提を頭に入れた上でひとつの回答として挙げられるのが、冒頭に大切にしたいと書いた“コミュニティの形成”です。
現在一般的な「ロングライドやトレーニングを行う集団」をさらに増やすことではなく、多様な価値観で集まる、いくつもの集団が形成されていくこと(それを“カルチャー”と言ったりする人もいる)。

この対談でも話していますが、コミュニティは、走力の境界を埋める、ゆるく柔らかな繋がり。
このようなつながりはまだ多くありませんが、人間関係の形成がオンライン上で行われ、また時間に対してシビアになっている時代の流れから、今後はそうした考え方がもっと一般的になっていくのだろうと思っています。

コミュニティを続けていく上では、僕が大事だと思っていることが4つあります。

①近い価値観の人が集まるが、同質化しない
自転車やライフスタイルに対する感覚が近い人たちが集まっているので、共通言語でコミュニケーションがとりやすい集団です。でも無理やり同質化せず、個々のスタイルを大切にすることで、今までにない価値観に触れやすくなります。
ちなみに個人的にチームジャージに対して苦手意識がありますが、それはスタイルを同質化しようとする意志を感じるためです(それを心地よいと感じる人にとっては優れたアイテムだと思います)。

②フラットな関係性で排除されない
コミュニティ内の関係性は、年齢や性別ではなく、「どんなスタイルなのか」ということでつくられます。だから誰もがフラットな関係であり、コミュニティ内で自由なつながりが作られます。たとえ個々のライフステージが変化してもそのつながりが変わることはありません。

③生き生きとした状態をアウトプットする
コミュニティは生き物のようなものなので、常に変化する「生き生きとした感覚」があります。その状態を適切にアウトプットし続けることで、多くの人たちにその感覚に触れてもらいます。そこからさらに出会いが生まれ、コミュニティに新しい風が吹き込む循環ができます。

④「場の力」を活かす
スタイルを持ったメンバーが集まるほど、その中でできることが増えていきます。
今はYouTuberやインスタグラマーのような「個」が注目されていますが、インフルエンサーマーケティングが徐々に先細りしている今、その先は「場所」が力を持っていくと考えており、コミュニティがその土台となっていくのだろうと思います。僕たちはここ2〜3年で「場の力」を活かすよう在り方をシフトしてきましたが、それが良い成果を生んでいることを感じています。

普段の会話でここまで説明することはしませんが、改めて考えていることを整理してみました。「ラブサイってそもそも何?」と聞かれることもあるので、ただのブログメディアではなく、こんなコミュニティ主導型メディア(またはメディア主導型コミュニティ)だと、なんとなくわかってもらえれば幸いです。

今号のカフェ

お気に入りのカフェについて。

夏への扉(東京都青梅市)

多摩川上流へ向かい、昭和レトロな街並みが残る青梅駅へ。その駅近くに、ハインラインの小説と同じ店名の喫茶店「夏への扉」があります(自転車は店裏の駐車場に停める)。

電車が脇を走る中、懐かしい空間の中でカレーをゆったり食べます。

懐かしげな空間が居心地良すぎる。
峠に行かず、平坦を好きなペースで走りたいとき、その目的地に最適な喫茶店です。

 

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