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世界的にジェンダーフリーへの取り組みが進むなか、オーストラリアのBlack Sheep Cycling(以下BSC)も、6年前から女性・男性それぞれの課題解決に向けた取り組みを行っています。
その中核となるのが、毎年3月の国際女性デーを記念したWMN Ride(ウーマンライド)、そして毎年10月の国際メンタルヘルスデ−におけるMan Ride(マンライド)の2つ。
男性のメンタルヘルスに注目したマンライドは、我々はひとりではないということを示すために“コミュニティの力に明るい光を当てること”を目的としています。
2021年10月、世界中のBSCコミュニティでライドが行われるなか、ここ東京でもBSCアンバサダーのMasayukiを中心にメンバーが集結。コミュニティのつながりを深めることを意図した68kmのルート(東京矢野口発着)を走りました。
*
東京近郊に住むサイクリストは、このルートのGPXファイルをダウンロードして僕たちの取り組みをトレースしてもらうことができます。ほかの地域に住むサイクリストにとっても、このルートがコミュニティライドのマイルストーンになれば幸いです。
Text/Tats
Photo/Tats, Ryuji, & Mei
Route Editing/Masayuki
Contents
1. クロスコーヒー – yanocro
このマンライドは、矢野口の「クロスコーヒー」を発着とする68km(獲得標高623m)の中距離ルートです。より良いメンタルヘルスとコミュニティのつながりを目的とするため、強度を上げなければ総合的にリラックスして走ることができるプロファイル。
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集合場所はいつものヤノクロ。企画に賛同した9名が集まり、ライドの準備をします。
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はじめましてのメンバーが多い中、BSCのコンセプトが好きな者同士だから、すぐに全員が馴染んでいく。
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それぞれがお気に入りのBSCキットを着て
2. 裏尾根幹 – backside onekan
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尾根幹の南側を走る、通称「裏尾根幹」と呼ばれる里山コース。アップダウンが多く、グラベルも含まれるので、道の組み合わせ次第で何通りも遊べるルートです。今回極端なグラベルはルートには入れていないので、ロードでもそれほど苦労せず進むことができます。
はじまりはちょっとしたアドベンチャー感を楽しみながら、コミュニティのグルーヴ感も高めていく。
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マンライドのテーマは、男性が精神的な問題を抱えていたとき「大丈夫と言わなくてもいいんだよ」「それについて話してもいいんだよ」ということを伝えています。
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往々にして男性は、社会において「男らしさ(=タフで弱音を吐かない)」を求められることがあります。ときにストイックになり、ときにプレッシャーにさらされることがありますが、困難に立ち向かい続けることが男らしさだという観念のために、自分が直面する問題について誰かに話すことに抵抗があったり、躊躇したりします。
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もちろん、だからといって女性が自分の問題についていつもオープンに話すわけでもありません(特に日本では、欧米と比較して女性の方が精神的な問題を抱えている数が多いとされている)。「マンライド」という名前ですが、メンタルヘルスのネガティブな部分をコミュニティの力を通して再構築できれば、性別はあえて区別しなくても良いと考えます。
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社会生活で困難に陥ったとき、自転車に乗ることは、そこから抜け出して自由になることを意味します。だから走っているとき、僕たちは徐々にマインドがオープンになっていく。
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また、そこに社会生活とは異なるもうひとつのコミュニティがあれば、実生活で問題に直面したときの退避場所にもなります。
僕たちサイクリストの多くは、社会と自転車生活を行き来していますが、自転車コミュニティの存在は、社会生活とそこにおける心の健康という両輪をまわすために欠かせないものになっていることが多いと思います。
3. 城山湖- lake shiroyama
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コミュニティを通して走ること。それは対話や共感を通してメンタルヘルスにプラスの効果をもたらしてくれます。
坂を登ることだって、ただ苦しいだけでなく、共感性の高い行為にもなる。
今回のコースにも、城山湖に向かう距離2.7kmの短めな登りを含めています(もちろん登りたくなければ、このルートを回避して次の章に進んでOK)。
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適度な登りを楽しんだあとは、城山湖を眺めながら少し対話を楽しむ時間。
4. パンパティ – pain pati
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そしてランチタイム。普段はカフェで語るのが好きだけれど、せっかく秋の日差しが気持ち良いから、外でお昼を食べるのが僕たちのマンライド。
そこで、城山湖近郊を走るサイクリストに馴染み深いパン屋さん「パンパティ こむぎのおはなし」へお昼を調達に。
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それぞれ好きなパンをセレクトし、BSCのサコッシュに入れます。たくさん買って、家族のおみやげも忘れないメンバーも。
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プチピクニックへ出かけよう
5. 津久井湖城山公園 – shiroyama park
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パンパティから3kmほど離れた場所にある津久井湖城山公園へ移動。
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バイクは日陰で休ませて
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買ってきたパンを広げてランチタイム
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人数が多くても広々とスペースを使うことができる芝生広場。自転車から離れてそれぞれが勝手気ままに過ごす、オフの時間。
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時間の流れがゆるやかになり、走行中の気持ちよさとはまた違う開放感がたまらない。
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心地よい時間の名残り惜しさをあとにして、帰路につきます。
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帰りは尾根幹を通って
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68kmの比較的短いコースですが、尾根幹の裏表、ショートクライム、ピクニック時間といった要素が詰まった道のりをMasayukiが引いてくれました。
ただ走るだけであれば午前中で終えられるし、ちょっと足を伸ばして津久井湖の先も含めれば、走りに重点を置いたライドもできる。僕たちが辿った道以外にも、自分たちのコミュニティに合った楽しみ方で走ってもらえると幸いです。
6. “Community is everything.”
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世界中がパンデミックの恐怖に陥った1年半前、同じ自転車を生業とする海外の友人がこう話しかけてくれました。
Remember, distance shouldn’t stop connection. Community is everything.
──距離が離れていてもつながりは消えないということを忘れないで。コミュニティがすべてなんだ。
人との物理的・心理的な距離を強制的に離された当時と比べると、今の状況は大きく前進していて、距離が近づいていることは本当に喜ばしいと感じます。
コミュニティというのは流動的なものですが、たとえ人が変わっていっても、同じ「好き」を持つ人とつながれば、距離関係なく垣根は存在しなくなります。
だからハッシュタグ「#manride」で同じように走っている世界中のコミュニティを見ていると、ライダーは一人ではないし、“コミュニティがすべてだ”ということを感じさせてくれます。
僕たちはマンライドのコンセプトに賛同し、今回のようにつながりをつくるためのことをできるだけしたいと思っています。読者の方もどんな形であれ、それを実践してもらえると嬉しいなと思います。
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– Team Man Ride in Tokyo –
Rider/Masayuki, Danny, Kaho, Kekke, Hiro, Shosei, Mei, Ryuji, & Tats
Route Editing/Masayuki
Text/Tats
Photo/Tats, Ryuji, & Mei
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Special Thanks to CYCLISM