Text & Photo by Tats(@tats_lovecyclist)
サイクルウェアに対して求められるものは年々変化しています。
コートや球場を貸し切って行う多くのスポーツと違って、日常と境界のない空間で行われるサイクリングで着るためのウェアが、次第にライフスタイル寄りのデザインに寄り添っていくのは自然な流れ。
その流れを早い段階からつくっているブランドが、フランスのニースで生まれた「Café du Cycliste(カフェ・ドゥ・シクリステ)」。国内でも人気が高く、今サイクルウェアを語る上では外すことができないブランドです。
今回Café du Cycliste(以下CDC)のウェアをレビューをしてくれたのは、雑誌「Cycle Sports」の編集長をつとめる吉本司氏。
話を伺うと、僕と感性がとても近くて、CDCウェアについて同じように感じていることを、吉本さん自身のスタイルをベースにとてもわかりやすく話してくれました。
※本レビューで使用するウェアはCafé du Cycliste提供のものです。
レビュアー
吉本司:月刊自転車専門誌「Cycle Sports」編集長。スポーツバイク歴は35年。ロードバイクのみならずすべての自転車選びを好み、機材からウェアまでジャンルを問わず幅広い知識を持つ。無類のファッション好きで、サイクルウェアは海外ブランドを着用することが多い。
シンプル&クリーンなサイクリングキット
ジャージ:ティシカ(¥18,495)
ビブショーツ:ブランディーヌ(¥28,085)
── 今回のレビューにあたって、ご自身が着たいと思うキットをセレクトしてもらったのですが、このモデルを選んだ理由を教えてください。
吉本:サイクルウェアを選ぶときに、自分の中で軸としているテーマがあって、それが「シンプル&クリーン」なんです。
もともとシンプルなファッションが好きで、手持ちの普段着も黒・ネイビー・グレー・ベージュのいずれかがほとんど。柄モノも好きですが、色柄が強すぎると「自分のキャラと違う」というのがわかっているので、柄があってもすっきりしたものが良いと思っています。
そんな理由で、「ティシカ」を選びました。
北欧食器のような品の良い柄が連続的に入っているので、主張はそんなになくてちょうど良い。スカンジナビアンぽいデザインは、あまりほかのブランドでは見ないので新鮮ですね。
同じパターンが連続的に入ったデザイン
カルチャーを取り込むデザインの深さ
── CDCは民族系のパターンを取り入れるのがすごく巧いですよね。以前レビューしたFarahも、アフリカ由来の布柄を違和感なくサイクルウェアに落とし込んでありました。
吉本:ヨーロッパのブランドは、自転車がその国のカルチャーとして根付いていることが多いので、ファッションアパレルのようにモチーフを自由に取り入れているように感じます。だからただ「色柄を入れたものを作ってみました」ではなくて、ちゃんと文化的背景を持ったデザインが出てくるから面白い。
── ですね。着て気分がアガるかどうかは、単にデザインの好き嫌いだけでなく、そういうカルチャー的な部分を理解しているかという、受け手自身の知識や感性にも依存するところがあると思います。そういったところを含めて楽しめるのが、海外ブランドの魅力だったりします。
Ryujiが着る「ヴァランティーヌ(¥18,495)」は、トワル・ド・ジュイという18世紀フランスの伝統的な柄をモチーフに、悪魔おじさんのようなツール・ド・フランスの象徴的な場面をイラストに落とし込んだユニークなジャージ。「歴史」と「文化」が連続する国ならではのデザイン。
── あとこういった柄モノって、ソックスとかほかの小物をどう合わせるかが結構悩むところだと思います。今回のコーディネートはブランドの雰囲気を汲み取っていただいて、バイクも含めて完璧な組み合わせだと思いました。
吉本:基本、ソックスの場合は白か黒の無地ですね。ときどきウェアに合わせて、1本ボーダーが入った柄を選ぶくらいです。
ティシカは袖の黒地面積が強いので、バランスをとるために白ソックスを持ってきています。
キャップも黒ベースのシンプルなものを。こういうスタイルが好きなんですね。
イメージを覆すジャージ
── ティシカの着心地はどうですか?
吉本:実はCDCのウェアを着るのは今回初めてなんです。ずっと知ってはいたんですが、最近テイストが変わってきましたね。昔はメリノ系のクラシカルなブランドという印象でしたが、SS2019のウェアを着てみてこれまでのイメージが覆りました。
最新のトレンドを押さえていて、シルエットも一番着やすい形状に仕上がっている。
Pas Normal Studiosのようなシリアスライダー向けブランドにあるタイトフィットではなくて、少しだけゆとりがあるつくり。
袖周りはぴったりにできていますが、胴回りは適度なので、バランスが良くて、ストレスが全然ないのでとても気持ち良い着心地です。
メッシュ素材が使われていて、夏に最適
柔らかい生地の袖口。フィットはタイトめ
傾斜がついて取り出しやすい形状のバックポケット。真ん中にあしらわれているのは、ティシカ峠をイメージしたワッペン
進化するビブショーツ
── そしてブランディーヌ、これはかなりアグレッシブなデザインですね(笑)
パンチング加工されて素肌が見える、かなり攻めのデザイン
吉本:これは履いてみてびっくりしました(笑)。僕よりも若くてもう一絞りスリムな人が似合うかも…具体的に言うと、体脂肪12-13%以下の人が良いと思います。
夏用のビブなので、パンチング加工による冷却効果はちゃんとあると思います。冷水をかけたときとかはよさそう。ただ日焼けを気にする人は、日焼け止めをちゃんと塗っておかないといけないですね。
── 穴が空いているので耐久性が心配という声が挙がるかもしれませんが、この部分だけ素材を変えているんですよね。
吉本:はい。伸縮性が高く、強度もある生地なので、ちゃんと長く使えると思います。
── ビブの部分も特徴的です。
吉本:今出回っているビブショーツの多くは、ビブとパンツの生地がU字で一体型になっているものがほとんどですが、ブランディーヌはASSOSのビブショーツにも採用されている、ビブをお腹の部分で縫い付けるつくりですね。このつくりは腹部の圧迫感がなくなるのが良い点なんです。
肌当たりも柔らかめなので、履き心地はすごく良く考えられていますね。
── サイテック社製のパッドはいかがですか?
吉本:サポートしてほしいところは厚くなっていて、自然な立体感があります。股間の厚みもちょうどいいし、触感がソフトで変なごわつき感がない。だからペダリングも自然にできます。
あとお尻の曲線に対してパッドが綺麗に沿うようになっています。やわらかい素材感がいい感じに馴染みやすさにつながっていますね。
── 僕自身、これまでCDCは特にジャージが素晴らしいと思っていましたが、吉本さんが履いているブランディーヌを見ると、ビブがかなり進化していることがわかります。
2種類の軽量ライクラ素材を使用
裾のシリコンは最小限。かぶれやすい人にもやさしい設計
自分が気持ちよくなれる、いいウェア。
(サイズ左から)Tats: ジャージXS/ビブXS(177cm, C86 W74 H90)、吉本氏: ジャージM/ビブL(186.5cm, C94 W84 H98)、Ryuji: ジャージXS/ビブ私物(169cm, C81)
── CDCのウェアは着たときに抜け感が出て、すごくスタイリッシュに着こなせると感じます。今回吉本さんと僕とRyujiの3人でトンマナを揃えてみましたが、全然年代が違う3人でも、それぞれがキャラクターに合ったものを選べてとてもいい感じです。
吉本:いいウェアですね。デザインもシンプル&クリーンで好きだし、着ていて気持ちよくなれます。
こういうウェアを着ると、自分が正される感覚になるんです。これが似合う体になりたいって。スーツを着て背筋が伸びるのと同じですね。
CDCはウェアによってサイクリストとしての振る舞いをより良くしてくれる、そんなブランドだと思います。またこれ着て走りましょう。
── Café du Cyclisteライド、いいですね 🙂
Café du Cyclisteのウェアを購入する
SS2019は今までにないほどハイペースで新作を次々とリリース。今回レビューしたウェアだけでなく、フランス革命記念日の限定ジャージなど、カルチャーを活かした様々なデザインからきっと気に入るものが見つかると思います。