【レビュー】MAAP/Suplest Edge3 Pro – 華やかな色彩の世界の、力強いシューズ

Edge3 pro 着用イメージ4

クイーン・オブ・シューズ。

ひと目見た瞬間に心底惚れるようなモノと稀に出会うことがあります。
MAAPが1月にリリースしたMAAP/Suplestコラボシューズの新デザインは、例外なくその稀少なアイテムのひとつ。

スイスのシューズメーカー“Suplest(スープレスト)”は2016年まで一部国内でも販売されていたものの、代理店都合で撤退してしまったため現在は馴染みが薄い方も多いかもしれません。このシューズを見るとまずMAAPによる華やかなグラフィックデザインに目がいきますが、これはSuplestの優れたプロダクトがベースにあってこそ。

そこでSuplestシューズをインプレしながら、そのデザインだけでなく、サイクリングシューズとしての性能を包括的に見てきます。

※本シューズはCYCLISMより提供いただいたものです。

1. デザインに惚れる

Edge3 pro 外観1

MAAP/Suplest Edge3 Pro – NAVY(定価¥44,800)

このシューズを求めるきっかけの99%はこのデザインだと思います。
サイクリングアパレルの世界で常に新境地を開拓するMAAPのデザインと、Suplestのハイエンドシューズが融合したこのプロダクトは、Rapha×CANYON、Cinelli×Mike Giantのような昨今のロードバイク業界での強力なコラボレーションと同じような美しい色彩を放っています。

Edge3 pro 外観4

Suplestシューズが面白いのは、特徴的なアッパーの構造を活かして2つの顔を持つことができることで、左右から見たときに受ける印象が大きく異なってきます。
MAAPが2つの顔に与えたのは、そのアイデンティティであるドットと深いネイビーの2面性。どちらも大好きな色柄なのですごく刺さります。そしてピンクのアクセントカラーも絶妙。

※仲間にジョジョっぽさを指摘されましたが、確かにブチャラティ感が溢れ出ているかも。

Edge3 pro 着用イメージ6

シューズの持つオーラが強いため、サイクルウェアとの相性は考える必要があります。お互いが衝突しないように、なるべくシンプルなウェアを選択することでその魅力が100%引き立つように。このときは同じMAAPのChaos All Weather Jerseyを合わせています。

何回か使っていくうちに細かいキズや汚れができるのはサイクリングシューズにとって宿命的なものですが、殊にこのシューズに関しては、いつまでも綺麗でいてほしいと儚く願うばかり。そんな気持ちになる初めてのシューズに出会いました。

 

2. インプレッション① – Edge3 Pro搭載スペック

Edge3 pro 機能Suplestは2007年にスイスで創業し、BMCレーシングなどトップチームに採用されるシューズメーカー。BOAクロージャーシステムしかラインナップしないハイエンドブランドで、Edge3のような上位モデルはSolestarインソールも標準で搭載する完成度の高いシューズを展開。そのスタイルはファッション性も高く、ヨーロッパ圏ではメジャーなブランドとなっています。

そんなSuplestが作る最上位モデルEdge3 Proについて、特徴的なスペックを見ていきます。

※参考までに、僕の足型について

  • ・典型的な日本人の足型に近く、甲高で若干幅広、かかとは細め
    ・イタリア型の革靴を履くと小指が当たる
  • ・普段のスニーカーのサイズ:26.0cm
    ・Edge3 Proのサイズ:41

Anatomic Wrap – 包み込むアッパー

Edge3 pro アッパー

アナトミック・ラップと呼ばれる、2枚のアッパーが折り重なるようにできる構造はEdge3の最たる特徴。
普通の靴はタン(真ん中のベロのようなもの)を左右から短く被せる構造ですが、Edge3は外側の長いアッパーが足の甲全体を多い、内側の短いアッパーでそれを被せるという面白い構造。

Edge3 pro 側面

また外観からは固そうに見えるアッパー素材も、通気孔がいくつか確保されていることもあって、触ってみると柔軟性が高く足の形にフィットしやすい設計がされています。

その素材の柔かさとアッパー構造から、「足の甲が丸々包み込まれる感覚」を初めて履いた瞬間に感じることができます。

BOAクロージャー&カーボンシールド

Edge3 pro BOAワイヤー

そのアッパーのフィット調整に使われているのは、マーケットリーダーであるBOA社のデュアルワイヤークロージャーシステム。

Edge3 pro 着用イメージ5

その調整はスムーズで、軽い力でワイヤーを均一に締め付けることができます。締めすぎたと思ったら1コマずつ逆回転すればOK。とてもシンプルで、走行中でも簡単に両方向の調節が可能。

Edge3 pro カーボンシールド

またワイヤーのルーティングに沿って“カーボンシールド”(柔らかいカーボンのプレート)が取り付けられています。これは通常のシューズであれば足の甲に食い込んでくるワイヤーの圧力を分散させるもの。
確かにLAKEのような柔らかいアッパーにそのままワイヤーをあてるシューズは、甲のせり上がった1箇所に圧がかかることを感じますが、カーボンシールドが存在することで圧が分散されて自然なフィット感に。僕のような甲高の足型であるほどその恩恵を受けられます。


またカーボン柄がフラップの間から垣間見えることで良いデザインアクセントにも。
ただワイヤーが直接アッパーに当っている根元の部分は食い込んで汚れやすくなるので、こまめに綺麗にする必要があります。

Solestarインソール標準搭載

Edge3 pro solestarインソール

ハイエンドモデルであっても、他メーカーのシューズに標準で入るインソールは心許ないものが多く、これまで使用してきたシューズはすべて手持ちのSolestarインソールに入れ替えることでその性能を最大値まで引き出してきました。

Edge3 Proにも標準で搭載されるSolestarの特徴は、「シューズ内には最もペダリング効率を高める理想的なポジションがあり、ソールスターを入れることで誰もがその理想的な場所に足を収めることができる」というコンセプトでつくられた唯一無二のインソールであるということ。熱形成のように個の足型にフィットしたものは不要という考えです。

実際に市販されているSolestar BLKを1年以上使用してきてこの考えに強く同意します。強制的にポジションをがっちり固定されるため最初は大きな違和感がありましたが、次第に明らかにペダリングがまっすぐに踏み降ろせるようになり、ペダリングスキルの向上を強く実感するようになります。

そう、気づいたらペダリングが勝手に改善されるのがSolestarです。ハイケイデンスでも安定しやすく、また踏み込みでも全く力が逃げなくなります。僕は体重が軽くケイデンスで稼ぐタイプのためその安定性の恩恵を受けるし、スプリンター体型の仲間であってもパワー伝達が違って進みやすさを感じると話しています。

Edge3 ProにプリインストールされているSolestarはエントリーグレードのものですが、Solestarを使用したことがないサイクリストにとってはそのサポート力をすぐに実感できるレベルの固さを備えています。
また後述しますが、市販のSolestar BLKに入れ替えると、このシューズはさらに真価を見せることになります。

 

3. インプレッション② – 違和感から次第に馴染む感覚へ

Edge3 pro 着用イメージ2

ひと通りデザインとスペックを堪能したならば、Edge3 Proを履いて道に繰り出します。

慣らしのステージ

シューズに付属の説明書には「最初はワイヤーは締め付けすぎないように。次第にあなたの足型に馴染んでくる」と記載されています。革靴と同じで、慣らしが必要なことは念頭に置いておく必要があります。

Suplest自身はシューズの幅を「細過ぎず広過ぎない標準の幅」と説明している通り、GiroやSpecializedのようなナローフィットシューズよりも若干幅広で、日本人型の足にとっては馴染みやすい傾向があります。

ただ僕が最初にEdge3を履いてワイヤーをしっかり締めたときに感じたのは、外くるぶしや小指にシューズが少し当たる感覚があったことで、自分の足型に合っているかどうかの懸念が生まれます。

しかし指示通りにワイヤーを緩めると少しその違和感が緩和されたため、しばらくはその状態でペダリングを続けました。
痛みが出ることはありませんでしたが、ワイヤーがタイトではない状態であり、また外くるぶしに当たる感覚は残っていたため、まだEdge3と僕は理想的な関係になっていないのだということを感じます。

次第に関係性を構築していく

それでも辛抱強くEdge3でペダリングを続けていくうち、初回のライドでも少しずつシューズとの関係性が改善されていくことを実感できるようになります。
そして2回目以降から、ワイヤーを以前より強めに締めても最初から違和感は少なく、自分の足型に馴染んでいるのを感じていきます。

ただ個人的な足型による問題なのかもしれませんが、外くるぶしにアッパーが当たらないようにワイヤーの微調整が引き続き必要で、ペダルを踏み出したあと、BOAダイヤルを右へ左へ1コマずつ回しながら最適な締め付けを探り当てる工程がまだ最初だけ発生します。それでもデュアルワイヤーシステムのおかげでその調整がストレスなくできるというのは便利なところ。

 

4. インプレッション③ – Edge3 Proが提供する真価

そうやって馴染んでいくと、次第にこのシューズが提供している価値そのものに感覚が向き、それらが足を通してより深くフィードバックされるようになります。

アウトソール – 軽く、薄く、硬い

Edge3 pro 底面

アウトソールは剛性感が高くてフラットな形状。
Edge3 Proはハイエンドモデルのため、最も薄くて硬いカーボン仕様となっています。

過去にSuplestが欲しくてショップに相談したとき、Suplestはアウトソールが柔らかくて力が逃げるという話があったため購入を見送ったことがあったのですが、そのときから時間が経った現モデルでは柔らかさなど感じることは一切なく、硬くてフラットな形状の、昨今のトレンドに沿った正しいアウトソールにアップデートされており、その状態に相応しいダイレクト感・安定感を感じられます。
このあたり、BMCレーシングのようなプロチームにも提供していることから、選手のフィードバックを受けながら最適化を続けているようです。

硬いソールは長距離で疲れやすいというデメリットがありますが、100km台レベルではまったく問題ありません。そもそもSolestarインソールを装着している限り足の裏はしなりにくいので、逆に固いアウトソールでないとソールスターを装着している意味は半減します。

ヒールカップ&トーボックス – 確実に包み込んでくる

かかとからつま先までを包む部分の構造については、ほかのシューズと履き比べて特徴的な形状を2つ感じ取ることができます。

Edge3 pro ヒール

ひとつは小ぶりなヒールカップ
かかと部分がタイトにできていて、ホールド力が高くなっています。日本人の多くはかかとが細めなので、この形状にうまくフィットする方は多いと思います。僕もそう。
キュッとかかと部分を包んでくることで、ペダリングの上下運動に対してずれることなく追従してきます。

Edge3 pro つま先

もうひとつが高いトウボックス
履いたときに指が動かせるくらいにつま先部分に空間が生まれるようになっています。アッパーに指が当たりづらく、快適で踏み込みの力もかけやすいつくり。
遊びがあることでずれるわけではなく、甲やかかとなどほかの部分でしっかりホールドされているので、ただ快適性とパワー伝達のためにこの空間は価値ある存在となっています。

アナトミックラップ形状のアッパーに加え、かかとでホールド、つま先だけ自由をきかせる構造は、全方向から足を包み込みながらペダリングしつづける足をサポートする最適な手法として、深く丁寧に考え抜かれて設計されているということを感じます。
エントリーやミドルグレードのシューズと履き比べると、この違いはとても顕著にわかります。

そして、Solestar BLKとの狂おしいほど優れた相性

Edge3 pro solestarインソール比較

Solestar BLK/左、付属Solestar/右

Solestarを搭載することを前提に設計されたシューズであれば、手持ちのSolestar BLK(ブラック)との相性も良いであろうことを期待し、試しに入れ替えてライドしてみました。

結果的にかなりの別モノになります。特に実感するのは、かかと中央部のサポートと、つま先のグリップ力。

付属品と市販品は、形状やサポートする箇所は似ているものの、そもそもの素材が異なります。付属Solestarは樹脂製でほんの少し柔らかさを感じますが、BLKはガッチガチのカーボン素材のため、ペダリングするときの安定性、パワー伝達力が抜群に向上します(本当に固い!)。
またBLKはかかとなど部位ごとににうまく凹凸を再現し、さらに表面のグリップ力も高いこともあり、付属品でも充分なフィット感にも関わらず、さらに1mmも動かない強固な安定が生まれます。

どんなシューズにも使えるSolestar BLKですが、フラットで固いアウトソールを持つEdge3との親和性は間違いなく、このシューズの持つポテンシャルがMAXまで引き出されます。
それはまるで虎に翼、獅子に鰭のような、「完全体Edge3」を生むフュージョン。

普段BLKに馴染んでいる足にとって、Edge3に唯一足りなかったのはこの感覚なのだとこのとき実感します。当初気になっていた、少しだけ足首に当たる感覚も薄まり、走行しながらの調整もほとんど不要に。
BLKを入れることで、ますますこのシューズが好きになりました。

 

5. ファッションと機能を200%で満たす孤高のシューズ

Edge3 pro 着用イメージ1

手にとって細部を見るほど、よく考えられて作られたシューズだと実感します。
1足に対してどれだけの工程を踏んでいるのかと思うくらい、足の形状に最適化された素材が複数組み合わされていて、その精細なスタイルに、MAAPのオリジナルデザインが満点の親和性で運命的に融合しています。
高価だけれどそれに見合った、ただ美しく、ただ力強いシューズ。

Pros

  • ・エクスクルーシブなデザイン
    ・Solestarインソール標準搭載
    ・日本人の足型にも合いやすい型
    ・超優れたホールド感&高いパワー伝達

Cons

  • ・馴染むのに時間がかかる場合がある
    ・汚れが気になってしまう

 

6. Suplestシューズのサイズ選択

Edge3 pro 付属シューズバッグ

すでに国内での取り扱いがないため試着できる機会がないことがネックですが、GIROやLAKEと比べるとほんの少し幅がゆったりめなので、スニーカーのサイズをベースに選択すれば問題のないサイズ感です。
僕の普段のスニーカーのサイズは26.0cmで、Suplestは41を選択。甲が高く若干幅広な日本人的足だと認識していますが、前述の通り履いているうちに馴染んできます。
自分はかなり幅広だという認識があるサイクリストは、1サイズ上げる必要があるかもしれません。
Suplest公式サイトのサイズガイドも参考にしてください。

MAAP/Suplest Edge3 Proを購入する

maap/suplest edge3 proMAAP/Suplest Edge3 Pro(CYCLISM)
※昨年発売された別カラーWhite/Aquaもあります。

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今回はMAAPとの素敵なコラボがあって日本でもCYCLISMから入手できますが、LAKEが日本に再上陸したように、Suplestのラインナップもいつか日本のマーケットに再度復活してほしいと切に願います。日本人の足型にも合いやすい、これほどいいシューズが手軽に入手しづらいというのは勿体なさ過ぎる。