ロードバイク用サドルの選び方ガイド&おすすめモデル

ロードバイク用サドルの選び方&おすすめ

お尻との最高の相性を得るために。

ロードバイクのサドル選びは、人によって相性の問題があるため最適解が難しいと言われています。
特に発生しやすい問題が、接触している箇所が痛くなるという点。サドルと触れる骨盤や尿道などへの影響はデリケートな問題につながるため、痛みが出た時点で早めに対処する必要があります。
ほかにも座面が安定しないペダリングがしづらいといった、走行パフォーマンスに影響する問題も起こり得ます。

最初は皆完成車についているサドルに乗り、それを使い続けていくうちにこういった問題点が見えてくるもの。
そこで自分に合った快適なモデルを最短で見つけることができるように、サドルの形状による特徴を見ながら必要な情報をまとめていきます。

1. サドル7形状からの影響を把握する

サドルの乗り心地は、以下7つの形状の違いが影響を与える部分。
まず自分が今使っているサドルがどのような形状かを把握し、現時点で問題がある場合はどの部分が問題を生み出している箇所か、あるいはより良いペダリングのためにどの部分を変更すべきなのかを判断する材料にしてください。

① 縦座面の反り

サドルの選び方 - 座面形状縦

サドルを横から見たときに座面が平らなフラットタイプ(画像上)はポジションの前後移動が柔軟なため、お尻の位置を変えたり深い前傾姿勢が取りやすい形状。ただしペダリングが安定していない場合は違和感があるかもしれません。
股間の圧迫は少ないため、女性はフラットタイプの方が痛みが出にくいと言われています。

反っているタイプ(画像下)は、凹んでいる部分にお尻がホールドされます。安定感が高いのでペダリングしやすいというメリットがありますが、逆に股間側が圧迫されるため痛みが発生してしまう人もいます。

② 横座面の丸み

サドルの選び方 - 座面形状横

後ろから見たときの座面は、フラットになるほどお尻を“面”で支えることでポジション移動がしやすくなり、股間への痛みが出にくくなります(画像左)。

逆に丸みを帯びるほどお尻が凸部に固定されてペダリングが安定。ただし一点に圧が集中するため痛みが出ることも(画像右)。

メーカーによっては、両者の中間に位置するセミラウンドタイプもあります。

③ 穴空き

サドルの選び方 - 穴あき

尿道や前立腺などの股間の圧迫を最小限にするための形状が穴空きサドル(画像上)。
その目的の通り、股間の中心部の痛みは最も出にくい形状ですが、逆に恥骨や坐骨などほかの接触面に対して余計に加重されるため、中心以外の部分が痛くなる可能性もあります

④ サドルの幅

サドルの選び方 - 幅

サドルの幅は、坐骨の幅に合わせて選択
女性は男性よりも坐骨幅が広いため、ワイドタイプの方がフィットする傾向にあります。

また、幅が広いほど荷重を安定して支えることができるので、ロードバイクをアップライトポジションで乗っている場合はワイドタイプ(画像右)を選択し、深い前傾をとっている場合はナロータイプ(画像左)にするという選択方法もあります。

⑤ パッドの厚み

サドルの選び方 - パッド有無

薄いパッド(画像上)は、硬くて反発が少ないため高ケイデンスのペダリングに向いています。
逆に厚いパッド(画像下)は、痛みが出にくい点と、反発が少ないためトルクをかけたペダリングでも安定しやすいのがメリット。

またパッドの一切ないカーボン素材タイプは、軽量化目的や短距離のレース用途として最適。

⑥ レールの素材

サドルの選び方 - レールの素材

シートポストと接合するレール部分はカーボン素材と金属素材(チタンやクロモリ)に分かれます。
カーボンは軽量で、振動吸収性もほかの素材より少し優位なので、お尻の痛み軽減にも若干の効果があります。金属素材は丈夫で取り扱いがラク。

カーボンは高価なので、自分に合った形状を見つけるまでは金属レールのサドルで色々な形を試すのがおすすめ。

⑦ノーズの長さ

サドルの選び方 - ノーズの長さ

Specialized“POWER”サドルのヒットを発端とした近年のトレンドとして、ショートノーズのサドルが増加傾向にあります。
ノーズが短い分、深い前傾姿勢をとっても股間の圧迫が抑えられ、どんなポジションでも力強いペダリングを可能にする形状。
前後移動範囲は狭いので、ポジションの前後移動が必要なサイクリストは通常のロングノーズを選択します。

ショートノーズの詳細はこちらから↓

 

2. サドルのおすすめ6メーカー

サドルは前述の通り相性の問題があるため、「このモデルがおすすめ」ということは提示できませんが、流通量の多い大手6メーカーなら、豊富なラインナップから自分に最適なモデルを見つけることができます。
好きなデザインのメーカーとその形状を元に、次にまたがることになるモデルを絞り込んでいってください。

1. Selle Italia – セラ・イタリア

セライタリア

セラサンマルコとともに「世界2大サドルブランド」と呼ばれるセライタリア。1897年創業と古い歴史を持ち、常に最先端のサドルを開発し続けています。
ちなみにほかのブランド名にも出てくる「セラ」とはイタリア語でサドルの意味。

セラ・イタリアサドルの4シリーズ

SP-01 分割したサドル後部がサスペンションの役割を与え、ペダリングを安定させるモデル。ショートノーズモデルあり
SLR フラットな座面で、骨盤の幅が狭い人向けのレーシングモデル
FLITE ノーズから中央部にかけてのラインが細く、骨盤の幅が広い人向けのモデル
NOVUS ホールド感が高い座面で、オールラウンドなクラシカルサドル。ショートノーズモデルあり

セラ・イタリアのフィッティング方法

セライタリアはオリジナルのフィッティングシステム「idmatch(idマッチ)」を開発し、骨盤の幅と傾き、大腿最上部の周囲長から最適なサドルの形状を導き出すことができます。国内でidmatchを受けられるショップはこちらのページ下部から検索可能。

セライタリアのサドル一覧を見る
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2. Selle San Marco – セラ・サンマルコ

セラサンマルコ

1935年創業の世界2大サドルブランドであるセラサンマルコ。
数多くの有名選手に愛用され、トップサイクリストの要望を取り入れながら開発を続けています。

サンマルコサドルの4シリーズ

Mantra マントラ 快適性を重視したフラット形状モデル
Aspide アスピデ ペダリングパフォーマンスを向上させる最軽量のラウンド形状モデル
Concor コンコール 癖の少ない伝統的なスタンダードモデル
Shortfit ショートフィット 深い前傾姿勢を可能にする快適なショートノーズモデル

セラ・サンマルコのフィッティング方法

セラサンマルコのフィッティングシステム「DiMA(ディーマ)」は、年齢・痛みの強さ・骨格・ハンドルとサドルの落差・ライディングスタイルの5つの要素から自分に合ったモデルを導き出すことができます。

セラサンマルコのサドル一覧を見る
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3. Astute – アスチュート

アステュート

アスチュートは2013年に創業し、ベネチアを拠点に革新的な製品を産み出している新興ブランド。ほかのサドルメーカーにはないモダンな形状は、近年のフラットデザインフレームと良くマッチします。

アスチュートの3シリーズ

アスチュートのロードレース用サドルはフラット形状のSKYシリーズラウンド形状のSTARシリーズがあります。

SKY CARB スカイカーブ シェルとレールにカーボンを使用したフラット形状の最軽量ハイエンドサドル
SKY LITE スカイライト 軽さと強度を両立したフラット形状のミドルレンジサドル
STAR LITE スターライト プロユースに敵うラウンド形状の高機能サドル

アスチュートのサドル一覧を見る
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4. Prologo – プロロゴ

プロロゴ

プロロゴは「touch」というブランドキーワードを元に、サイクリストが触れる部分のアイテムであるサドル・バーテープ・グローブなどの感触にこだわったラインナップを展開しています。

プロロゴの4シリーズ

SCRATCH スクラッチ ラウンド形状モデル
NAGO ナゴ セミラウンド形状モデル
ZERO ゼロ フラット形状モデル
Dimension ディメンション 245mmショートノーズ×143mm座面の前乗り向けモデル

各ラインナップとも人間工学に基づいたデザインを採用し、ペダリングロスが最小限になるような形状にしています。またDimensionを除く上位モデルには「CPC」という滑り止め素材が使われ、グリップ力だけでなく通気性・振動吸収性も高められているのが特徴。

プロロゴのフィッティング方法

フィッティングシステム「MY OWN(マイオウン)」を使えば、骨盤の幅や柔軟性を計測して最適なラインを選ぶことができます。国内でMY OWNを受けられるショップはこちらから検索可能。

プロロゴのサドル一覧を見る
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5. fi’zi:k – フィジーク

フィジーク

1996年創業のSelle Royal社が展開しているサドルブランド名がフィジーク。パフォーマンスを損なう穴あきサドルは作らないというポリシーが特徴でしたが、2017年に穴あき「OPEN」ラインもリリース。技術革新により性能の高い穴あきサドルの開発が可能になりました。プロロゴと並んで国内で入手しやすいブランドです。

フィジークの3シリーズ

ARIONE アリオネ フラット形状で最もノーズが長く、体の柔軟性が高いライダー向けのモデル
ANTARES アンタレス フラット&ワイド座面を持ち、適度な柔軟性のあるライダー向けのモデル
ALIANTE アリアンテ ラウンド形状で、骨盤を倒して乗るライダー向けのモデル

フィジークのフィッティング方法

フィジークのフィッティングシステムは「Spine Concept EVO(スパインコンセプトEVO)」と呼ばれ、乗り手の脊髄の柔らかさや骨盤の回転具合いに応じて最適なサドルの形状が決まるという独自の理論にもとづいて測定されます。

フィジークのサドル一覧を見る
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6. Specialized – スペシャライズド

スペシャライズド サドル

総合自転車メーカー・スペシャライズドのサドル開発は、もともと男性のED対策のために始まったため、ラインナップはすべて穴あき。
ホビーサイクリストにとって、走行中のパフォーマンスだけでなくサドルから降りたときの影響も考え抜かれたプロダクトが提供されます。女性専用設計のサドルが多いことも特徴。

スペシャライズドの3シリーズ

Romin ローミン 深く腰掛けて前傾姿勢をとるサイクリストに最適なラウンド形状モデル
Toupé トゥーペ 前後移動の多いサイクリスト向けの柔軟性の高いフラット形状のモデル
Power パワー 溝が広く股間への負担が少ない、ショートノーズモデルの金字塔

このほか、長距離のライドに向いたエントリーモデル“Avator”や、女性専用設計のサドル(Oura/Ruby/Lithia)も展開。

スペシャライズドのフィッティング方法

スペシャライズドは「Body Geometry Fit(ボディ・ジオメトリ・フィット)」を用いた簡易フィッティングで骨盤の幅を計測し、最適なサドルを導き出すことが可能。BGフィットが受けられる全国の店舗はこちら

スペシャライズドのサドル一覧を見る
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3. 新たなスタンダード「ショートノーズ」サドル

今最もトレンドの形状、ショートノーズ。
もともとはトライアスロンで使われていたものが、SpecializedのPOWERサドルが爆発的に販売を伸ばしていることを発端に、ロードバイク市場でも定着化。各メーカーから2017年以降ショートサドルが次々と発売されています。

ショートノーズのメリット

  • ・軽量&見た目がすっきり
    ・前傾ポジションが長時間維持できる
    ・股間の痛みが発生しづらい
    ・ダンシング→シッティング移行がスムーズ

よりアグレッシブに走りたいサイクリストや、股間の痛みを気にするサイクリストは積極的にショートノーズモデルを試せるタイミングに来ています。

以下では代表的なショートサドルを紹介。ショートサドルについてもっと深く知る場合は、↓こちらの記事を参考にしてください。

1. 【Specialized】S-Works パワー(¥28,000)

S-Works Power

重量159g(143mm)/161g(155mm)

ショートノーズブームを作った2015年発売のPOWER。
Body Geometryデザインによって幅広いサイクリストに合う形状は、座面の安定感と股間の痛みを軽減することにおいて最高のパフォーマンスを発揮してくれます。
よりペダリングが安定するラウンド形状のPOWER ARCもあります。

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2. 【PRO】ステルス カーボン(¥24,000)

プロ ステルス

重量172g(142mm)/179g(152mm)

Powerに追随する形で2016年に登場したPROのステルス。
Powerと比べるとノーズの幅が広く、全体がよりフラットな形状、そしてパッドはやや柔らかめ。そのため、ショートノーズにも関わらず前乗りにも対応できる懐の広さがあります。

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3. 【Prologo】ディメンション ナック(¥28,000)

プロロゴ ディメンション

重量149g(143mm)

プロロゴから2017年に登場したディメンションの上位モデル「ナック」。
POWERと同価格のため比較対象にされますが、形状の違いはあまりなく、POWERよりもわずかにパッドの厚みがあり、表面のストライプ形状プリントによってグリップ力が増しています。

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4. 【Selle Italia】SP-01 ブーストTM スーパーフロー(¥15,300)

セライタリア SP-01

重量213g(Mサイズ:130mm)/218g(Lサイズ:146mm)

セライタリアはSP-01NOVUS(ノーブス)の2モデルでショートノーズを展開。
NOVUSはロングライド向けなのに対して、SP-01はよりアグレッシブな乗り方を好むサイクリスト向き。後部の左右が独立した構造になっていて、サスペンション効果によりペダリングが安定するように。

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Appendix. サドル以外でお尻の痛みを軽減するためのポイント

基本的にサドルによる痛みは、我慢しても治らず、慣れるものでもないため、走行時に痛みが出た場合は必ず何らかの対処をする必要があります。
サドルを変えて試すというのが根本的な解決への道ですが、そのほかに痛みを軽減するために、以下の対処法も参考にしてみてください。

ポジション調整

ハンドルとサドルの落差が少ないアップライトなポジションだと、体重が後ろ加重になるためお尻に負荷がかかりやすくなります。前傾姿勢になるようにハンドル側を低くしてみるなど、サドルへの荷重を減らしてみるのもひとつの方法です。

またサドルの取り付け方もミリ単位での調整で痛みが軽減できる可能性があります。サドルが地面に対して水平になっているか、座面が真っ直ぐ前を向いているかを確認した上で、座面を前後に動かしながらペダリングしやすいポジションを探してみてください。

場合によっては、ノーズ側を少し前に傾けたセッティングにすると痛みが改善されることも。

体重調整

体重が重い人ほど座面に圧がかかるため、お尻の痛みは出やすいと言われています。そのため重い人が痛みを軽減する手っ取り早い方法は痩せることとなります。

乗り方の調整

乗っているときに痛みの発生を遅らせるために以下のような予防措置があります。

ギアを重めにする

重いギアほどペダル側に加重される割合が高くなるため、相対的にサドル側への荷重が減ることになります。ただ常に重いギアで回すのは足に負担がかかるため、ときどき重さを変えて調整する程度に。

お尻を前後に動かす

お尻の位置を前後に動かせば負荷がかかる場所が変わるため、痛みの発生が分散されます。定期的に前後移動して同じ位置に負荷をかけないように意識を。

ときどきダンシングをする

ロングライドで一定速度で巡行しているとき、ときどきダンシングをするとお尻が楽になるのを経験している方は多いと思います。痛くなる前に意識的にダンシングを巡航に取り入れることで、痛みの発生を遅らせることができます。

* * *

サドルは形状が複雑で、最初はどれが合うのかの判断が難しいもの。今のサドルの形状をしっかり把握し、新しいサドルで取り入れるべき要素を見つけることで、“サドル沼”状態から早めに脱していけることを願っています。