Specializedサドル選び方ガイド: サドル沼を抜け出す最短ルート。

異例のヒットサドル「POWER」を筆頭とし、さまざまな形状のサドルを展開するスペシャライズド。スペシャライズドストアに来店するサイクリストは、「POWERサドルが良いと仲間から聞いたので、スペシャのサドルをいくつか試してみたい」と話す人が多いと聞きます。

こうした状況や周囲の声、また僕自身POWERサドルで沼を抜け出した体験から感じているのが、こと体に合ったサドルづくりに関しては、スペシャライズドが頭ひとつ飛び抜けているメーカーだということ。

そこで改めて、なぜサドル界でこれほど強いプレイヤーになったのか、現在どんなラインナップがあるか、そして自分に合ったサドルの選び方についてまとめていきます。

Text & Photo/Tats [PR
Powered by Specialized Japan

1. Body Geometryがもたらす世界

「インポテンツ」を解決するBody Geometry

僕たちサイクリストは、自分に合ったサドルがライドを快適にすることも、合わないサドルがロングライドに由々しい問題を発生させることも知っています。
こうした問題を「デザインで解決する」ことが、スペシャライズドのBody Geometry製品の基本的な考え方。

この思想が生まれたのは、25年前に米国の自転車雑誌で“サイクリストは一般人と比較してインポテンツになる可能性が50%高い”という記事が掲載されたことがきっかけ。
スペシャライズドは世界的な人間工学の博士と提携し、従来のサドル形状が、血流を途絶えさせて勃起不全の原因を引き起こしていたことを突き止めます。

中央部に穴や溝のあるサドル

この問題を解決するために生まれたのが、サドル中央部をカットアウトしたデザインのサドル。今や業界の定番となった穴あきサドルをいち早く開発したのはスペシャライズドでした。
ただし、形状を変えただけで本当に勃起不全が解消されるかは確かではないため、科学的な裏付けまでを開発プロセスに含めています。
それは勃起不全を防ぐ上で、必要な血流の基準値を決定すること。つまり「基準値以上の血流を維持できるものがBody Geometryサドルである」というルールを設け、基準をクリアしたサドルだけが世に送り出されています。

こうした試みがBody Geometryのはじまりで、これ以降は「問題を特定し、デザインによって解決し、科学的に検証する」というプロセスがスペシャライズドのモノづくりの根幹となっています。

女性の問題を解決するMIMIC

女性のために開発された「S-Works Power with MIMIC」

男性のインポテンツ解消から始まったBody Geometryですが、その手法を応用して女性ライダーの乗り心地も改善しようと開発されたのが「MIMIC」というテクノロジー。

最近の研究によって、女性ライダーにとっても血流の圧迫は深刻な問題があることがわかりました。そこで男性用サドルとは異なるアプローチで、複雑なフォームの組み合わせとハンモックのような圧力軽減方法を使った新しいサドルを開発します。それが2018年にリリースされた「S-Works Power mith MIMIC」。

かつては選択肢の少なかった女性向けサドルでしたが、MIMICによって「女性用サドル」という先進的なカテゴリが拡張されます(このカテゴリへの投資はスペシャライズドだからできると感じる)。

▼Love Cyclistでのレビュー

※MIMICは女性のために開発されたテクノロジーではあるものの、前側が柔らかい構造なので、前乗りを好む男性にとっても血流を改善する効果があるもよう。実際に男性でMIMICサドルを好んで使うサイクリストもいるとのこと。

そしてあらゆる問題を解決するMirror

3Dプリントサドル「Romin EVO with Mirror」「POWER MIRROR」

これまでで軟組織の問題は解決されましたが、まだ残っていた課題は坐骨の痛み。それは3Dプリントテクノロジー「Mirror」へと引き継がれます。

3Dプリントは従来のフォームと異なるのは、サドルの密度を無段階に調整できるようになったこと。坐骨の位置が複雑なハンモック構造になることで、坐骨への圧力が適切に分散されるようになります。これにより、フォームサドルの限界を超えるサドル「SW POWER MIRROR」が2020年にリリースされます。

▼Love Cyclistでのレビュー

いちMirrorユーザーとして感じるのは、3Dプリントの革新はサドル界の“End of Discussion”をもたらしたということ。Mirrorで痛みが発生したらもう手を打つ術はないのではと思えるほど、これまでのどんなサドルよりも快適にライドできる座り心地。

すべてのサイクリストの悩みをカバー

サイクリストの悩みに対応するラインナップ

Body Geometryの開発プロセス(課題の特定→デザインで解決→科学的に検証)によるメリットは、ただパフォーマンスの高い製品が生まれることだけでなく、さまざまなサイクリストの悩みをカバーする製品ラインナップが取り揃えられること

血流の問題、痛みの問題は個人によって発生条件が異なるもの。それをサドルの形状だけでなく、MIMICやMirrorテクノロジーといった異なる角度からもアプローチできるから、どんなサイクリストでも自分にぴったりのサドルを見つけられる可能性が高い。
それが、スペシャライズドがサドルメーカーの中で頭ひとつ飛び抜けている要因なのだと思います。

 

2. ロードサドルのラインナップ

スペシャライズドのBody Geometryサドルは、ショートノーズ「Power」とロングノーズ「Romin」の2種類がメイン。ほかにアップライトポジション向きの「Phenom」やトライアスロン用の「Sitero」などもありますが、ロードサイクリストの多くはPowerまたはRominを選択しています。

Powerシリーズ

シリーズ 特徴
ラインナップ
Power ・フラット形状
S-Works Power(¥31,900)
Power Expert(¥17,600)
Power Arc ・ラウンド形状
S-Works Power Arc(¥31,900)
Power Arc Expert(¥17,600)
Power with MIMIC ・フラット形状
・女性の問題を解消する
MIMIC採用モデル
S-Works Power with MIMIC(¥31,900)
Power Expert with MIMIC(¥17,600)
Power with Mirror ・フラット形状
・あらゆる問題を解消する
MIRROR採用モデル
SW POWER MIRROR(¥55,000)

ショートノーズの金字塔Powerシリーズは、基本となるフラット形状の「Power」をベースに、ラウンド形状の「Power Arc」、前側が柔らかい「Power with MIMIC」、合わせ鏡のようにお尻にフィットする「Power with Mirror」を展開。
基本的に前乗りを好むサイクリストは、Powerシリーズのいずれかから最適なモデルが見つけられるようになっています。

Powerシリーズ一覧(公式サイト)

Rominシリーズ

シリーズ 特徴 ラインナップ
Romin ・軽量モデル
・後端の反り返った形状
S-Works Romin EVO(¥31,900)
Romin EVO Expert Gel(¥17,600)
Romin with MIMIC ・女性の問題を解消する
MIMIC採用モデル
Romin EVO Expert with MIMIC(¥20,900)
Romin with Mirror ・あらゆる問題を解消する
MIRROR採用モデル
S-Works Romin EVO with Mirror(¥55,000)

ロングノーズの定番Rominシリーズは、軽量で前後移動しやすく、後端が反り返っているのが特徴。低姿勢のエアロポジションに向いているほか、ヒルクライムを主戦場とするサイクリストにも好まれています。
Powerと同様に「MIMIC」と「Mirror」テクノロジーを搭載したモデルを展開。

Rominシリーズ一覧(公式サイト)

製品のグレードについて

サドル製品グレード

スペシャライズド製品はS-Worksグレードを最上位とし、Pro→Expert→Compの順にグレードが変化していきますが、サドルはS-WorksとExpertがメイン。シェル素材(FACTカーボンシェル or カーボン補強シェル)やレール素材(カーボンレール or チタンレール)などが異なり、重量が剛性感が大きく変わってきます。

※注…シートポストのヤグラが、サドルレールを上下から挟むタイプの場合はカーボンレールを選択できますが、左右から挟むタイプのものはレールを破損するリスクがあるため、クロモリやチタンレールのサドルを選択します(どうしてもカーボンレールを使用したい場合はシートポストを交換)。

 

3. 最適なサドルを見つけるプロセス

このラインナップの中から自分に最適なモデルを絞り込むためにはどうすれば良いか。
稀にどんなサドルでも合う柔軟なライダーはいますが、ほとんどのサイクリストは、サドルとの相性は実際に試すことでしかわからないことを知っています。そして従来は、購入して合わなかったら別のサドルを購入するという必要以上のコストが発生していました。

スペシャライズドストアはラインナップのほとんどをテストサドルとして用意しているため、フィッティングやレンタルサービスで購入前に複数のサドルを試すことが可能。

今使っているサドルの痛みに悩むRyuji

そこで今回は、現在所有するサドルに不満を感じていたRyujiがスペシャライズド銀座に赴き、実際にサドルフィッティングを受けてきました。

サドルフィッティングの流れ

サドルフィッティングは①RETUL Matchで最適なサドルを導出し、②フィットバイクMuveでサドルをテストするという流れで行われます(①は無料、②は有料)。

*私服でもサドルフィッティングは受けられますが、フィットバイクで実際に乗車してテストするため、普段履いているビブショーツとシューズでの来店を推奨します。

ストアマネージャー清水氏によるサドルフィッティング

① RETUL Matchで最適なサドルを導出

簡単な質問に回答

まずRETUL Matchというデバイスを使って、ライドスタイルに関する質問──乗車姿勢、ライド頻度、ライド時間などについて回答。

座るだけで坐骨幅がわかる

次に専用器具の上に座り、指示を受けながら坐骨幅を計測。その場でRyujiの最適なサドルサイズが「143」であることが提示されます。

するとライドスタイルにフィットしそうな143サイズのサドルが複数提案されます(この提案内容は自身のメールアドレスに送信することが可能)。

テストするサドルはRETUL Matchが提案するもの以外もOK

そのラインナップを元に、次のフィットバイクでテストしたいサドルをピックアップしてもらいます。

② フィットバイクMuveでサドルをテスト

Muveというフィットバイクにまたがり、サドルを付け替えながら感触を確かめていきます。

※ここからフィッティング料金が発生。銀座店は¥1,800ですが、ショップによって料金は異なるので近くのストアに問い合わせしてください。

ペダルは全メーカー用意されている

テストするサドルの順番は自由。この日は最も人気のS-Works Powerから試します。

Power Arc、Power MIMIC、Power MirrorといったPowerファミリーが同じタイミングで比較できるため、同じショートノーズでもモデルごとの特徴がはっきりと感じ取れる。

MIMICが男性でも利用者が増えているという事実は、前乗りしたときの股への負荷がかなり軽減されることがら実感できます。

発表されたばかりのRomin Mirrorもテストできる…!ということで、早速試させてもらいました。

「これ想像以上に良い…」

Romin Mirrorを試す前はPower Mirrorが最も良いと感じていましたが、Romin Mirrorも同じくらい好感触。

フィットするモデルが見つかればそのまま購入もOK(フィッティング料金分が差し引かれます)。

Ryujiは最終的にPower Mirrorがベストだと感じ、彼の心の欲しい物リストに優先度高く追加されました(たぶん近いうちに買う)。

サドルはレンタルも可能

テストサドルは全国のスペシャライズドストアでレンタルも可能。料金はショップによって異なるので近くのストアに問い合わせてください。

新宿店・銀座店の予約はこちら

 

4. 最短ルートで運命のサドルに出会う。

Body Geometryの思想やフィッティングプロセスを通してスペシャライズドに感じるのは、「自分に合ったサドルが必ず見つけられる」という自信。
確かにスペシャライズドには、サドルだけでなくシューズやホイールにも“名作”と呼べるものが揃っており、「迷ったらまずはスペシャライズドのアイテムを試す」というのは、自転車機材においてひとつの指標になっていると感じています。自分が所持しているバイクがスペシャライズドかどうかはもはや関係ない時代

今現在サドルに不満や悩みを抱えているのであれば、解決までの最短ルートは、サドルフィッティングを受けること。RETUL Matchでサドルの候補を絞り込み、フィットバイクで実際に比較テストすれば、短時間で悩みが解消できる可能性が高い。

僕を含めた多くのサイクリストが、スペシャライズドサドルで沼を抜け出したように、まずはストアに足を運んでサドルとの運命的な出会いをしてほしいと思います(フィッティングの予約は店頭または電話で)。

新宿店・銀座店の店舗情報を見る

Text & Photo/Tats [PR
Powered by Specialized Japan

関連コンテンツ

著者情報

Tats Tats Shimizu@tats_lovecyclist
編集長&フォトグラファー。スポーツバイク歴11年。ロードバイクを中心としたスポーツバイク業界を、マーケティング視点を絡めながら紐解くことを好む。同時に海外ブランドと幅広い交友関係を持ち、メディアを通じてさまざまなスタイルの提案を行っている。メインバイクはStandert(ロード)とFactor(グラベル)。