
3Dプリンティング技術を使ったサドルのラティス(格子)構造は、サドル界のイノベーションとして定着した。TREKも遂に『Aeolus AirLoom(アイオロス エアルーム)』シリーズで3Dプリントサドルを投入。
Fizik、Specialized、Prologoなどに続く後発のなか、どのような座り心地に落とし込まれているか?ミドルグレード「Aeolus Pro AirLoom」の実走レビューを中心に、エントリーグレード「Aeolus Elite AirLoom」との比較も行う。
レビュアー
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Miharu(@mih.tokuyama)
177cm/68kg。学生時代は自転車競技部に3年間所属し、表彰台に上る実績を残してきた。ロード競技からは引退したが、変わらずスピード感や刺激も含めたメリハリのあるライドを好み、CXレースにも参戦している。 |
edit & photo / Tats(@tats_lovecyclist)
*本記事のサドルはトレックジャパン提供のもので、レビュー内容はLOVE CYCLISTオリジナルのものです
Aeolus AirLoomサドル

Aeolus AirLoomサドルは、ショートノーズ形状をベースに、やや細身で広いセンター開口部が特徴。
3グレードあり、今回レビューするのはProとEliteの2つ。
| グレード | RSL | Pro | Elite |
| 幅 | 135/145mm | 145/155mm | 135/145/155mm |
| レール寸法 | Oval 7x10mm | Oval 7x10mm | Round 7x7mm |
| シェル素材 | OCLVカーボン | カーボンコンポジット | ナイロンコンポジット |
| レール素材 | OCLVカーボン | OCLVカーボン | オーステナイト |
| 重量(145mm) | 164g | 180g | 242g |
| 価格 | ¥59,900 | ¥44,900 | ¥29,900 |

145mmを使用。TREKのサドルであることが一見わかりにくいので、ほかのメーカーの自転車にも問題なく使える
実走レビュー

AirLoomサドルの特徴を端的に言うなら、以下が挙げられる。
・細身のショートノーズ
・ポジションが定位置に固定
・クッション密度が最適
・大きなセンター開口部
細身のショートノーズ

ほかの3Dプリントサドルよりもすっきりしたフォルム
これまで使っていたサドル(Shimano PRO Stealth)では、ノーズ左右のエッジが当たり、硬さに対しても不満があった。Aeolus AirLoomサドルではこの不満は大幅に解消されている。
フォーム素材のAeoluサドルよりもノーズ部分が細身になっていて、ペダリングを阻害しない。スムーズに回転できることを実感でき、バイクの見た目も非常にすっきりする。
ポジションの定位置化

サドル表面のグリップ力は、ツルツルではないがガッチリ固定でもない。もともとPrologoのラバー素材のようにガッチリと固定するものは好まなかったので、この適度なグリップはちょうどいい。サドル後方から中央にかけて設置面は安定し、安定したペダリングができる。

座面がウェーブしているためポジションがある程度固定される
ノーズは前後移動できる充分な長さがあるが、基本的にはポジションが定位置に固定される。完全にスタイルに応じた好みではあるが、個人的にはシクロクロスにいいなと思う。
クッション密度の最適化 & 穴開き形状

骨が当たる部分はしっかり柔らかさがあり、支えてほしい後ろ側は充分な硬さがある。この快適性は3Dプリントテクノロジーならではだと感じる。

表面は競合モデルとは異なり、穴が細かく平滑性が高い

中央に空いた穴のエッジ部分の処理は、やや立っている印象がある。80km程度の走行では、サドルの形状が元になるような痛みは発生しないが、100kmを超える長距離になるとエッジ部分が気になってくる。
ただツールやアンバウンドグラベルのような長距離レースでも使用されているので、穴開きサドルが問題ないサイクリストであれば全然使えると思う。
ProとEliteの違い

↑Elite | Pro↓
Aeolus Pro AirLoom(¥44,900)とAeolus Elite AirLoom(¥29,900)の形状は共通しているが、フレームとレールの素材が異なるので、実際の乗り味にはかなり差を感じる。

Eliteのシェル素材はナイロンコンポジット
特にEliteモデルは、指で押し込むとしなるほどボディの剛性が柔らかい。実走でも少し沈み込む感覚があり、パワー伝達という面では弱いが、股への負荷や路面からの突き上げ振動が抑えられて、長距離向きという印象。

また重量も60gの差があるので、比較するとバイクの振りやすさが違う。
重量を犠牲にして快適性を重視するならElite、高強度ライドでパワー伝達効率と軽量性を追求するならPro、という選び方となりそう(さらにレーシング性能を求めるならRSLになる)。
3Dプリントサドルの間口を広げる

競合のS-Works Power with Mirrorと比べると、Aeolus AirLoomは、ポジションが固定される点が大きく異なる。それ以外では、ペダリングのスムーズさ、そして重量において優位性を持つ。
何よりほかの3Dプリントサドルと比べて価格が抑えられているのが強い。今では5〜7万のラインナップが当たり前になっているが、AirLoomサドルは3万〜6万の範囲で選べる。
後発だからこそ、入手しやすい選択肢を提示してきたAirLoomサドル。穴開き部分のエッジが気にはなるが、Aeolusサドルの基本形状がこれまでも一貫してフィットしてきたサイクリストあれば、AirLoomテクノロジーは、確実により良い選択肢となる。
Aeolus AirLoomサドルを購入する(TREK公式サイト)
edit & photo / Tats(@tats_lovecyclist)
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