Universal Coloursレビュー:“自分色”を引き出す、ニュートラルな美学。

Universal Colours

新しい時代を象徴する。

Raphaの台頭から約10年、ウェアブランドの主要プレイヤーもコレクションの方向性もある程度固まってきたように感じていましたが、実際はそうではありませんでした。この間も時代は変化し、特にここ2年で起きた価値観の転換は、アパレルのあるべき姿も変えていきました。

Universal Colours(ユニバーサル カラーズ)──2020年のパンデミック下で最初のコレクションがリリースされたばかりの、ロンドンのブランド。彼らが提示するのは、新しい時代を象徴するような美学と、それが落とし込まれた一連のプロダクト。それらに強く心惹かれた僕は、Universal Coloursに直接アプローチして今回レビューすることになりました。この新しいブランドを是が非でも紹介したいと思うに至ったのはなぜか、ウェアのつくりや着用感とともに見ていきたいと思います。

※2023年最新レビューはこちら↓

レビュアー

Ran(@31_ran_
基本自転車乗り。時々お医者さん。FUNRIDEでのコラム連載や、ライフスタイル提案型メディア「RIDE on LIFE」の運営など自転車に関わる幅広い活動をしている。Ranが運営しているブログはこちら→Chari Doc
Tats(@tats_lovecyclist
Love Cyclist編集長。ロードバイクを中心としたスポーツバイク業界を、マーケティング視点を絡めながら論じることが好き。同時に海外のアパレルブランドと幅広い交友関係を持ち、メディアを通じてさまざまなスタイルの提案を行っている。

Review/Ran & Tats
Text/Tats
Photo/Ryuji

*本レビューのウェアはUniversal Colours提供のものです。

1. Universal Colours – 普遍的な価値観

今トップを走る多くのハイブランドが掲げるテーマが、「ジェンダーニュートラル」と「持続可能性な製造方法」。
ロンドンで生まれたUniversal Colours(以下UC)も、Universal(=普遍的な/誰でも)という今の社会で最も大切にされる価値観をブランド名に冠しているように、性別に関係ない同じカラーパレットのラインナップを、社会的・環境的に配慮された工場で生産しています。
ただUCがほかと異なるのは、後からそういったコンセプトへ変更したのではなく、はじめから倫理的な価値観に基づいてブランドが構築されたということ。

僕が今回UCに対して、男性+女性の組み合わせで取り上げたいと話をしたところ、「ぜひそうしてほしい。ブランドとして、性別を問わず同じスタイルを提供しているので、そうすることは私たちのコアとなる価値観や哲学にはとても重要なんだ」という返事をもらいました。
僕たちもこのメディアを通して、なるべく性別にとらわれないスタイルの発信をし続けたいと考えていて、そのこととUCの価値観には強い親和性があると(勝手ながら)感じています。
そうした価値観がどうプロダクトに落とし込まれているのか。

Universal Coloursの特徴

・ジェンダーニュートラル時代のブランド
・普遍的な色彩パレットとアイコニックなロゴ
・耐久性を考慮した縫製とタイトフィット
・製造方法に配慮

 

2. ジェンダーニュートラル – 服自体の持つ力

Women

Universal Coloursウィメンズ

ジャージ: Mono Long Sleeve Jersey ¥18,600
ジレ: Chroma Insulated Unisex Gilet ¥23,300
ビブショーツ: Chroma Thermal Merino Plus Bib Tight ¥34,000

「女性用ラインに多くの努力を払っている」というUC。
リサイクルナイロンが含まれた柔らかな生地で仕立てられたウェアは、普段の服よりも手足長く、スタイルがよく見える印象を受けます。トップスは肌に沿うように生地が伸びて、ラインが綺麗に出るシルエット。かといって締め付けが強いわけでもなく、着心地も抜群に良い。

少し長めの袖。着用には少し苦労するが、タイトで手が長く見える

ビブタイツは脚の肉感を拾わないので、レギンスのような妙ないやらしさもなく、スキニーデニムのような着心地。カフェやレストランでも抵抗なく着られるラインのパンツ。
女性用ラインへの意識的な取り組みは、ただラインナップを取り揃えるだけでなく、こうした細かな形で見て取れます。

ジレはユニセックス。女性はジャージの選択サイズよりもワンサイズ下げればOK

Men

Universal Coloursメンズ

ジャージ: Mono Long Sleeve Jersey ¥21,700
ジレ: Spectrum Lightweight Unisex Gilet ¥15,500
ビブショーツ: Chroma Thermal Merino Plus Bib Short ¥24,700
ニーウォーマー: Mono Lightweight Knee Warmers ¥6,200

女性用ラインに注力しているからといって、メンズにリソースを割いていないわけではなく、服自体に込められた思いやパワーは同じ。スタイルがよく見えるという印象は女性用と変わらないし、生地の質感、着たときの気持ちよさは、このブランドを手にして良かったと感じられる鮮やかな仕上がり。

長袖ジャージの裏面は起毛していて、単体で着るなら12℃〜15℃くらいが最適な気温。それ以下のときはジャケットやジレを重ね着したり、ベースレイヤーで調整します。

ビブの紐は、よくある生地との一体型ではなく、お腹の部分で縫い付られています。お腹の圧迫感がなくなって、長時間着用したときのストレスが軽減されるつくり。
また腹部には高さのある起毛素材が配置され、お腹が冷えないように配慮されています。

冬用なので厚みがあって風をほとんど通さないウィンタービブショーツ。パッドは多くのトップブランドが採用している「Elastic Interface」の長距離用モデル(Road Performance Space)。適度な厚みで痛みを感じることはなく、パットが細めなのでペダリングが大変スムーズ。
※季節柄ニーウォーマーを組み合わせていますが、真冬はレッグウォーマーに替えれば対応できます

「見た感じ」と「着た感じ」。どちらも考えられていて、走ることの気持ちよさと、着ることの心地よさをともに満たしてくれる力を持っています。

ころっとした可愛いサイズにまとめられるジレ

袖と側面には反射テープがプリント

 

3. デザイン – 魅力を引き出す

ブロックカラーのウェアを一言で表すなら“シンプル”かもしれません。
でもUCを着ていると、ただシンプルなだけでなく、サイクリストを非常に「ニュートラル」なポジションに据えてくれるように感じられます。ストイックでもなく、カジュアルでもなく、どちらにも振られない状態。それはなぜか。

ここでブランド名に立ち返ると、UCは「Universal(普遍性)」を掲げています。
従来のサイクルウェアは、ブランドそれぞれが個性的なデザインを展開し、その個性で自分を表現するというスタイルが一般的でした。
それがここ2〜3年で次第にシンプルになっていったのは、ひとつは、「衣服は人を着飾るのものではなく、ありのままの美しさを見せるものだ」という服そのものに対する普遍的な価値観の転換が影響しています。

つまりUCのプロダクトが提供するのは、なにか特別なブランドカラーに染めることではなく、サイクリスト自身の持つ優れたもの──美しさなのか、力強さなのか、可愛さなのか──を引き出すこと
だから調和のとれる落ち着いた色彩であり(どのカラーを組み合わせても合う)、ラインの綺麗に出るシルエットでもある。

その中で、すぐにUCのプロダクトだと認識できる、「●」がふたつ並んだアイコン。これだけで、新しいブランドは存在感を示すのに十分です。

UCのアイコンは遠くからでも視認できる

 

4. 製造方法 – より良い未来へ

もうひとつUCの哲学が顕著に表れているのが、ウェアの製造方法に対する考え方。
倫理的・持続可能な観点から製造することをブランドの立ち上げから目標として掲げ、欧州で最も有名なウェアメーカーのひとつ「LTP*」と提携してウェアを開発。生産は欧州を中心に、いくつかのブルーサイン認定工場で行われています。
*LTP…Pas Normal Studiosを含む10以上の主要な自転車アパレルと提携している先進的なウェアメーカー

ただ、これを読んでいる方も感じていると思いますが、持続可能な方法で製造しているかどうかが、そのブランドを購入する主な動機になることはほとんどありません。UC自身も、製造方法がUSP(ブランド独自の強み)になるとは考えておらず、彼らのように新興ブランドがこうした取り組みを当然のようにスタートすることで、業界全体をより良い方向にドライブしていきたいという思いが込められているようです。

またサステナビリティに対する考え方として、100%リサイクル素材を用いるべきだとは考えていないのもUCらしさのひとつ。繰り返し使用し、何度も洗濯する中で長く使えなければ、素材を再生するコストや環境負荷を上回ってしまう。最終的には耐久性と素材選びを天秤にかけて、問題ないと判断した範囲でリサイクル生地を用いています(ジャージの場合は生地の58%が再生素材)。
※執筆時点ですでに数回着用しているが、目に見えてわかるような劣化は起きていない

彼らが自分たちのことを「パフォーマンス主導のブランド」と言っているように、サイクルウェアである限り、パフォーマンスが発揮できなければ、製造方法に配慮していたところで意味がない。
製造方法とのバランスに対して、うまく落とし所を見つけているようです。そしてそれは、実際の着用感とも乖離していません。

Universal Coloursのサイズ感

Ran(左) 167cm: ウィメンズジャージ XS、ユニセックスジレ XXS、ウィメンズビブタイツ XS
Tats(右) 177cm: メンズジャージ XS、ユニセックスジレ XS、メンズビブショーツ XS 
※ユニセックスアイテムを女性が選ぶときは、ジャージからワンサイズ下げます

5. 約束された未来のための選択。

ここ2年で、衣食住の中で“衣”の占めるウェイトは下がったと言われています。実際にアパレル業界の規模は減少しているし、自転車においてはもともと衣よりも機材が優先される世界でした。

ただあらためて“衣”の現状に目を向けると、大手メディアやセレブが中心となってトレンドを形成し、ユーザーにトレンド追いかけさせるやり方ではなく、DtoCブランドを中心に「着る人の魅力や価値観を引き出すもの」という観点でつくられる傾向が強まっています。

国内の自転車界においては、まだ旧来のインフルエンサーマーケティングが主流なので、こういう考え方はマイノリティですが、少しずつ自転車スタイルに対する見られ方にも変化は起きています。
Universal Coloursが提示する、ジェンダーニュートラルと持続可能性の美学は、今の世界の大きな流れの中にあり、自転車界にも明るい光を照らすテーマでもある。

この時代に着るものを選ぶとき、僕たちが考えたいのは「自分がどうありたいか」、そしてそのことによって「自分が関わる世界をどう良い方向にしていけるか」。それを考えるきっかけとなるコンセプトを持つUniversal Coloursは、今の時代に積極的に選択したいハイブランドのひとつです。

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Review/Ran & Tats
Text/Tats
Photo/Ryuji

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