ロードバイクを初めて間もない方や、ずっとひとりで走ってきたサイクリストと一緒に走行すると、初心者特有の癖のようなものを共通して感じることがあります。
そんな方から、もっと速くなるにはどうすれば良いかアドバイスを求められるときがあります。そこでその癖と改善方法についてお話すると、「やってみたら以前より速く走れるようになった」と言ってもらえることがあります。
そこで、そのありがちな癖を含め、初心者が速くなるための速効性の高い4つのスキル改善ポイントについてお話しします。
1. ペダリングの改善
強く踏むペダリング→軽く回すペダリング
ロードバイクを始めたてのころは、低ケイデンスでペダルを回しがち。シティサイクルでやりがちな、重めのギアでぐいぐい踏み込むようなペダリングです。
僕もかつては、クロスバイク時代の癖で、低ケイデンスのほうが楽に進めるような気がしていました。ただそのペダリングだと太もも前側の同じ筋肉しか使わないため、疲労が脚に蓄積されやすく、50km以上の中長距離を走るときには、走り切る前に脚を使いきってしまいます。
そこで、疲れにくい高ケイデンスのペダリングが必要になります。
これまで最適と感じていたギアから2枚程度シフトダウンし、ケイデンスを上げて回すようにしてみます(ケイデンスセンサーがあれば90〜100rpmくらいが目安)。
ここで重要なのが、「踏む」のではなく「回す」ことに意識を向けること。
今までとは違い、太ももの裏側やお尻の筋肉までがフルに稼働していることを感じられると思います。
最初は普段使ってこなかった筋肉を使うため、ペダリングしづらさを感じるかもしれませんが、次第に筋力がバランス良くつくことで高ケイデンスが自然になっていきます。
そうなると長距離を走れるようになるほか、アップダウンのある路面状況やストップ&ゴーが多い区間などに対応しやすくなり、結果的にスピードアップにつながります。
ステップアップのために高ケイデンスのペダリングは必須なので、慣れるようにしてください。
高ケイデンス時のよくある問題
お尻が動いてしまう
ケイデンスを上げたときに、お尻が動いてしまったり体がぴょんぴょん跳ねたりしてしまうことがあります。これは腹筋など下半身を支えるための体幹が十分に鍛えられていないことが主な原因。
ロードバイクに乗り続けて慣れることも有効ですが、自宅で体幹トレーニングを中心として筋トレを行うと、より早くお尻を安定させて回すことができるようになります。
低ケイデンスよりも脚が疲れてしまう
ペダルは軽くなって筋肉への負担が減っているはずなのになぜかすぐ疲れてしまうことがあります。そんなときは正しいペダリングができていない可能性があるので、より「回す」ことを意識してしてみてください。
踏み込むときは前ももの筋肉を中心に使いますが、回すときはお尻や後ももなどの筋肉も分散して使います。そのため、太ももよりも脚の付け根に意識をもっていくと回しやすくなると思います。
2. ダンシングの使い方
ダンシングを使うタイミングを見極める
最初は筋力不足から、ゆるい坂などでもダンシングを多用してしまいます。そしてすぐに疲れてしまい、坂の頂点に差し掛かるころには息絶え絶えにシッティングでゆっくり登ってしまうことも。
ダンシングは全身の力を使うので、特に最初のころは数秒しか持続しません。
そこで、できるだけシッティングで登るようにして、ダンシングは無理して使わないようにすることが必要です。
高ケイデンスのペダリングと筋肉を使い分けるペダリングを身につければシッティングでも淡々と坂が登れるようになります。
ダンシングはここぞというときにとっておいて、まずは安定したシッティングでの走りを優先します。
ダンシングを持続できるようにするためには
とはいえ、ここぞというダンシングがすぐにバテてしまってはもったいないところ。ダンシングは全身をフル稼働させるものなので、脚の力だけでは持続しません。
そこで自宅で上半身を中心に鍛えておきます。脚の筋肉はロードバイクに乗っているうちに自然とついていきますが、上半身は乗っているだけではなかなか鍛えにくいもの。
腹筋を中心とした体幹トレーニングをベースとして、背筋・胸筋をくまなく鍛えれば、ダンシングが速く持続するようになるだけでなく、フォームも安定するようになります。平日夜などロードバイクに乗れないときに積極的にオフトレーニングを取り入れるようにしてみてください。
3. ポジションの調整
楽なポジションの問題
ロードバイクのポジションはシティサイクルと比べてかなり前傾になるため、最初は首や背中が痛くなりやすいものです。そのため楽な姿勢で乗れるように、サドルを低く、またハンドルを高く近くセッティングすることで、上体を起こしたアップライトポジションをしがち。
乗り始めのころは、まずロードバイクの軽さに慣れるためにアップライトでも仕方ありませんが、このセッティングは空気抵抗を大きく受けるばかりか、お尻側に荷重がかかるため長時間ライドで疲れやすくなってしまいます。
成長を早めるアグレッシブなポジション
そこでできるだけ早くアグレッシブな前傾姿勢に切り替えると、成長が早くなります。
ロードバイクは全身を使って前に進む自転車であり、上体を前に倒した前傾姿勢は、空気抵抗を減らすだけでなく全身の力を効率よく車体に伝えることができます。
サドルを上げるだけでなく、ステムの高さも少しずつ下げて(コラムスペーサー1枚分ずつ調整する)、前傾ポジションに慣れていってください。ステムの長さも、余裕があれば10mm単位で交換していきます。
※もし体を倒した姿勢がつらいようであれば、ダンシング同様に上半身の筋肉を鍛えます。それだけで前傾ポジションが楽になるので、アグレッシブな姿勢で格好良く走れるようになります。
4. 変速ギアの使い方
走行状況への対応力を高める変速
ロードバイクの変速ギアはフロント2枚、リア最大11枚の組み合わせ。初心者でもリア側の変速は細かく行うことができますが、フロントはインナー(内側)かアウター(外側)のどちらかにしたままで、あまり切り替えをしない方が多いです。
しかし、フロントギアをうまく使い分けることが、あらゆる走行状況への対応力を高める一歩となります。
フロントギア使い分けの基本
- ・平坦や下り → アウター
・登り → インナー
普段はアウターで固定しておいて、登りに差し掛かかるときインナーに切り替えます。ただし、アウターからインナーにするときは一気にペダルが軽くなるので、一緒にリアのギアも切り替えて細かい重さの調整をする必要があります。フロントの変速は慣れが必要なので、何度も繰り返し練習することでスムーズに切り替えできるようにします。
最初に書いた高ケイデンスペダリングは、登りにおいてもパワーを温存するために大事なテクニックです。意図的にフロントをインナーにすることで、ペダルが軽くなり、長い坂道でも淡々と登れるようになります。
弱ペの手嶋さんが「階段は一歩ずつ登ったほうが早い」と言ったのと同じことですね。
* * *
今回お話したポイントは、いずれも最低限必要なスキル。
ただ漫然と乗るのではなく、姿勢やペダリングを試行錯誤しながら改善していくプロセスは、結果が見えたときにとても楽しいものです。ぜひぜひ、一歩ずつ階段を登っていってください。