
アメリカで設立されたブランド『COROS(カロス)』の最新GPSサイコン「DURA」が日本に上陸した。バッテリー稼働時間は最大120時間で、価格は39,600円。
競合の中で群を抜く数値に驚くが、GPSサイコンに求められるのは、バッテリーと価格だけではない。GPS精度、ナビゲーションの正確性、センサー接続の安定性、操作性、視認性。そのすべてが高い次元で揃って、初めて信頼できるデバイスとなる。価格を抑えれば、どこかに妥協が生まれるのが一般的だ。
COROS DURAはどうだろうか?その答えを、ハードな環境で使用しながら確かめていった。
レビュアー
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Ryuji(@ryuji_ride) |
text & photo / Ryuji(@ryuji_ride)[PR]
edit / Tats(@tats_lovecyclist)
COROS DURA

2014年にアメリカで設立された『COROS(カロス)』は、GPSウォッチの分野で急成長を遂げた。マラソン世界記録保持者エリウド・キプチョゲ、トレイルランニング界のレジェンド、キリアン・ジョルネ。そして日本のトップマラソンランナー、大迫傑。世界トップクラスのアスリートたちがCOROSを選んでいる。
COROSの製品は、エンジニア自身がアクティブなアウトドア愛好家であるという背景がある。トップアスリートからのフィードバックが、次の製品開発やソフトウェアアップデートに反映されている。実際に使う人々の声を聞いて改善を重ねることが、COROSの開発姿勢だ。
GPSサイコン『DURA』も、世界トップクラスのサイクリスト——ヘイリー・スミス、コール・パトン、フレディ・オベット、ハンナ・オットー、アミティ・ロックウェル——の協力を得て開発された。Traka 360(スペインで開催される全長360kmのグラベルレース)、Unbound 200、ノヴェ・ムニェスト・マウンテンバイク・ワールドカップといった過酷なレースでテストされた、実戦的なデバイスだ。
COROS DURA製品スペック
| 稼働時間 | 最大120時間 (デュアルバンドGPS:70時間) *ソーラー充電機能あり |
| 充電時間 | 2時間でフル充電 |
| 重量 | 本体102g / マウント53g |
| ディスプレイ | 2.7インチ MIP反射型カラータッチスクリーン |
| 操作方法 | デジタルダイヤル バックボタン タッチスクリーン |
| 内蔵メモリ | 32GB |
| GPS | デュアルバンド(マルチGNSS対応) |
| 防水性能 | IP67 |
| 接続 | ANT+、Bluetooth、Wi-Fi |
| 対応センサー | パワーメーター、心拍計、スピード/ケイデンス、電動シフト、Garmin Variaレーダー、CORE センサー(CORE1/CORE2) |
| 税込価格 | 39,600円 |
スペックシートに記された数字“最大120時間連続稼働”を見たとき、正直目を疑った。デュアルバンドGPSモードでも70時間。ソーラー充電でさらに稼働時間が延長される。
Garminと比較してみると、最上位モデル『Edge 1050』でも、バッテリー駆動時間はGPSモードで約20時間。評価の高い前世代の『Edge 1040 Solar』でも、GPSモードで約35時間、ソーラー充電を加えて最大45時間(これでも十分にロングライフだ)。
対してDURAはその倍以上。これはGPSサイコンの常識を書き換える数字だ。「1200kmブルベ(制限90時間)をノー充電で完走」が現実味を帯びる。週末の200kmライドを3回こなしてもまだバッテリーが残る。充電方法を考慮する必要がない。
DURAの画面上部には、ソーラーパネルが搭載されており、直射日光1時間ごとに稼働時間が最大2時間延びるという。
120時間という圧倒的なベースバッテリーに、実用レベルのソーラー充電が組み合わさることで、最適な日光条件が確保できれば、バッテリー消費をほぼゼロに近づけることさえできそうだ。
Garminとのスペック比較
| COROS | Garmin | |||
| モデル | DURA | Edge 840 Solar | Edge 850 | Edge 1050 |
| 発売 | 2024.10 | 2023.4 | 2025.9 | 2024.6 |
| ディスプレイ | 2.7インチ | 2.6インチ | 2.7インチ | 3.5インチ |
| 重量 | 102g | 89.9g | 113g | 161g |
| タッチスクリーン | ● | ● | ● | ● |
| 内蔵メモリ | 32GB | 32GB | 64GB | 64GB |
| 稼働時間 | 120時間 +ソーラーで延長 |
26時間 +ソーラー6時間 |
12時間 (節約36時間) |
20時間 (節約60時間) |
| GPS | デュアルバンド(マルチGNSS対応) | |||
| メーカー保証 | 2年 | 1年(オプションで1年延長) | ||
| 税込価格 | ¥39,600 | ¥85,800 | ¥85,800 | ¥126,800 |
Garminの現行モデルと比較すると価格差は歴然だ。それでいて、バッテリー駆動時間ではDURAが圧倒している。
もちろん、Garminには長年の開発で磨き上げられたGPS精度、トレーニング機能(FTPテスト、VO2Max推定、リカバリーアドバイザー等)や、エコシステムの充実(Garmin ConnectとのシームレスなSync、膨大なアクセサリー対応)といったアドバンテージがある。特にEdge 1050は、AMOLEDディスプレイによる鮮やかな表示や、最新のルーティング機能など、フラッグシップモデルならではの先進性を備えている。
しかし、「これからGPSサイコンの導入を検討している」や「STRAVAなどのサードパーティ製アプリでデータ管理をしている」、そして何より「充電の心配から解放されて自由に走りたい」といったユーザーには、DURAの方がフィットする可能性が高い。
その他COROS DURAの優位性
COROSウォッチとの連携
COROS PACE 3やAPEX 2といったGPSウォッチを併用すると、パフォーマンス、リカバリー、睡眠、ストレス、HRV(心拍変動)といったフィットネス全般のデータ指標を一元管理できる。
しかも会員登録や月額料金は不要だ。Garminでは一部の高度な機能にGarmin Connect Premiumの契約(月額780円)が必要だが、COROSではすべて無料で利用できる。
COROS Training Hubという無料のトレーニング分析ツールも提供されている。ウェブベースで、PCからアクセスできる。トレーニングの推移、ピーク時期の設定、疲労管理など、詳細な分析が可能だ。
アプリ内で完結するサポート
製品登録から問い合わせまで、DURAはスマホアプリで一元管理できる。シリアル番号や購入情報が自動連携されるため、やり取りもスムーズ。
アプリ経由で直接メーカーサポートにアクセスできるほか、本体ログを送信することもできるため、トラブルが起こっている状況をメーカーが素早く把握することができ、解決までのやり取りがスムーズとなる。
またアプリ内でFAQや診断機能を利用でき、簡単な問題は自己解決可能だ。

アプリですべて完結する
四国一周1,036kmで検証したDURAの実力

筆者は普段、サイクルツーリズムに関わるツアーガイドも行っている。偶然にも、本プロダクトのテストと、台湾からのサイクリストグループとの四国一周10日間のツアー時期が重なることとなった。DURAの使用感を試す絶好の機会だと思い、ツアー中に使用してみた。
テスト条件
| 総走行距離 | 1,036km |
| 総獲得標高 | 7,243m |
| 総走行時間 | 58時間32分 |
| 総経過時間 | 86時間47分 |
| 期間 | 10日間 |
| 天候 | 晴天: 7日間 雨/曇天: 3日間 |
| 使用モード | デュアルバンドGPSモード(常時稼働) |
結果
最終バッテリー残量:33%(一度も充電せずに完走)
バッテリー性能の証明

10日間、一度も充電することなく完走できた。これは、ツアーガイドにとって革命的だ。
重要なのは、総経過時間86時間47分のうち、実際に走行していたのは58時間32分だということだ。ツアーガイドとして、食事休憩、観光、写真撮影、参加者の待機など、自転車を停めている時間が約28時間あった。その間もDURAは稼働し続け、GPS信号を捕捉し続けていた。
つまり、「ライド中の58時間」だけでなく、「待機中の28時間」も含めて、86時間47分連続でバッテリーが持続したということだ。夜間は電源オフにしていたため、実質的な稼働時間はこの数字になるが、それでも最終バッテリー残量は33%。理論上の120時間駆動は決して誇張ではないことが証明された。
晴天時はソーラー充電が効果的で、瀬戸内海沿いの快晴区間ではバッテリー消費がほぼゼロになる時間帯もあった。しかし、3日間は雨または曇りで、ソーラー充電の恩恵が限定的だった。それでも、最終的にバッテリー残量は33%。まだ余裕があった。
従来のサイクルコンピュータでは2〜3日に1回の充電が必要で、常にバッテリー残量を気にしていた。DURAなら、その心配から完全に解放されることがわかった。
DURA機能レビュー
ナビゲーション:臨機応変な対応を可能にした
1,000km全ルートをCOROSアプリで事前に作成し、DURAに同期。準備は数分で完了した。
1日目、予定を変更してしまなみ海道へ寄り道することになった。スマートフォンでルートを修正し、DURAに送信。5秒後、画面に新ルートが表示された。この柔軟性は、臨機応変な対応が求められるツアーガイドにとって非常に重要だ。
オフラインマップ内蔵のため、徳島から高知への山越えルートなど、スマートフォンの電波が届かない山間部でも、ナビゲーションは正常に機能し続けた。Googleマップベースなので、工事中の迂回路も正確に案内してくれる。
デュアルバンドGPSの捕捉速度は優秀で、電源投入から約8秒で衛星を捕捉。高層ビル街やトンネル内でも位置情報をロストすることはなかった。

ツアー中のナビは安定していた
ディスプレイ:強い日差しでも常にクリア
DURAは、2.7インチのMIP(Memory In Pixel)反射型カラータッチスクリーンを搭載している。
MIPディスプレイは、液晶のドット毎に独自のメモリを持つことで、画面が更新されない限り電力をほとんど消費しない。そして反射型であるため、外部光(太陽光や室内光)を利用して表示する。つまり、明るければ明るいほど、ディスプレイが鮮明になる。
太平洋岸の強い日差しの中でも、DURAの画面は常にクリアだった。バックライトが環境に応じて自動調整されるため、夜間走行やトンネル内でも視認性を失わない。
2.7インチというサイズは、テンポの速いライド中でも速度、距離、心拍数、パワー、ケイデンス、地図すべてが、一目で把握できる。地図の詳細を見るには若干小さいと感じる場面もあったが、ピンチ操作で拡大できるため実用上の問題はなかった。

直射光の中でもディスプレイは鮮明
操作性:10日間ストレスフリー
DURAは、タッチスクリーン、デジタルダイヤル、そして物理ボタンという、3つの操作方法を組み合わせているが、特にデジタルダイヤルとタッチスクリーンの組み合わせが秀逸だった。
デジタルダイヤルは、COROSのGPSウォッチで定評のある操作系で、回転させることでメニューをスクロールし、押し込むことで決定する。
グローブ着用時でも確実に操作でき、タッチ感度を抑えた設計により汗や雨による誤作動は一度もなかった。

操作性の高いデジタルダイヤル
安全機能:万が一への備えに
インシデント検知機能は、転倒や事故を検知すると緊急連絡先へ自動で位置情報を送信する。幸い今回は使う場面はなかったが、一人でガイドを務める際、この機能があることは精神的な支えになる。
バイクアラーム機能は観光時に重宝した。道後温泉や高松の栗林公園で、DURAを装着したまま観光。自転車が動かされると大音量のアラームが鳴るため、盗難の抑止になる。
ツアーガイドとしての結論
10日間、1,036kmを走破し、DURAはあらゆる場面で期待以上のパフォーマンスを発揮した。
一度も充電せずに完走できたことが最大の収穫だ。バッテリーの心配から解放されることで、参加者の安全管理やサポート業務に集中できる。
また、ナビゲーション、GPS精度、操作性、安全機能といったツアーガイドに必要な要素が、高いレベルで実装されていることもわかった。
本デバイスはCOROSの代理店NCDより提供を受けたものだが、使用してみて率直に「これは使える」と感じた。次回のツアーでも私はDURAを使うだろう。そして、可能であれば参加者全員にもDURAを使ってもらい、グループトラッキング機能も試してみたい。

ツアーガイドのような長旅にも必要な機能を備える
課題と進化:まだ発展途上のプロダクト
DURAはまだ完璧ではない。発売当初、海外の著名レビュアーDC Rainmaker氏は、厳しい評価を下した。「データ記録の精度、ルーティングの信頼性、リルーティングの機能が、競合他社に追いついていない」と。
実際、初期のファームウェアでは、パワーデータの記録に不具合があったり、レーダーアラートが通知に埋もれてしまう問題があった。
しかし、COROSは迅速にアップデートを繰り返している。ユーザーからのフィードバックを受けて、ソフトウェアを改善し続けたことで、発売から数ヶ月が経過した今、多くの問題は解決されている。パワーデータの記録精度も向上し、ナビゲーションの安定性も改善された。
COROSは、アップデートに積極的なブランドだ。GPSウォッチでも、発売後に大幅な機能追加を行ってきた実績がある。DURAも、今後さらに進化していくだろう。

バッテリーライフの強みがあるので使いながらアップデートにも付き合っていける
最もプリミティブな問題に向き合う。

あらゆる機材は、それ自体が目的ではない。あくまで、自転車の時間をより豊かにするための手段だ。
朝、家を出る。サイコンの電源を入れる。今日は100kmでも200kmでも、好きなだけ走ればいい。道に迷ってもナビがある。それを表示し続けるだけのバッテリーもある。DURAがもたらすのは、そういう自由だ。
DURAは派手な機能で武装するのではなく、「バッテリー」という最もプリミティブな問題に、真正面から向き合った。ソーラー充電という先進技術を、実用性のために投入した。そして、価格を抑えることで、より多くのサイクリストに手が届くものにした。
Garminらが提示する「高機能で、高価格」という従来のGPSサイコンにおける方程式に対し、COROSは「実用的で、手が届きやすい価格」という新しい価値観を提案している。
GPSサイコンは、サイクリングを記録するためだけのものではない。自転車の時間をデザインするためのツールだ。DURAはその時間を自由なものにするだろう。

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text & photo / Ryuji(@ryuji_ride)
edit / Tats(@tats_lovecyclist)
[PR]提供 / NCD株式会社
















