Love Cyclist Journal Vol.5【2019年11月号】- 映える世界へ。

Text by Tats@tats_lovecyclist

こんにちは。僕が普段感じていることや最近のトピックなどをラフな感じで書く不定期企画“Journal”の第5号です。

11月頭に国内最大の展示イベント「サイクルモード2019」が開催され、僕とRyujiもいくつかの企業ブースへの挨拶を兼ねて遊びにいってきました。
イベントレポートは多くのメディアが紹介しているので、展示内容について僕が語ることはありませんが、「サイクルモードが面白くなくなっている」という感想は今年も聞くことになりました。実際に足を運ぶと、なんとなくこの業界が抱える、縫うべきラインを外れたミシンのようなズレが広がっていることをいつも感じます。

それは多くの方が感じる「面白くなさ」の要因とは少し異なると思いますが、僕が本質的だと考えていることについて書きます。

未来を見越して

僕はここ2年くらい、走るときにいつもカメラを背負ってライド写真を撮るようになりました。
撮る対象のほとんどはバイクなどの機材単体ではなく、ロードバイクの「乗り手」そのもの
意図した画が作れるカメラで乗り手たちを撮ることで、ライドを色鮮やかな出来事として記録することができるだけでなく、仲間を“映える”姿で収めることができます。

これを続けてきて感じたのが、多くのサイクリストにとって、ライドの中で自分を綺麗にあるいは格好良く撮られる習慣がないということ。車体だけを撮ることはよくありますが、本来ロードサイクリングの美しさである人×馬×風景が一体となったシーンを捉えようとするサイクリストの存在は稀です。

でも実際にそのときどきのライド仲間の写真を映えるように収めていくと、(ありがたいことに)とても喜んでもらえていることに気が付きました。
僕自身もついこの間まで「映えたい」と周りに何度も言ってきましたが、本当は自分の姿を格好良く見せたいというサイクリストは潜在的に数多くいるということだと思います。

「インスタ映え」というかつて流行した言葉のように、“映える”ために撮る行為を揶揄されることもありましたが、むしろ映えることこそ人を惹きつけるということは、今の写真や動画を中心としたコミュニケーション社会では当たり前のこととなっています。

話をサイクルモードに戻すと、そこで多くの来場者が興味を持っていたものは、ブランド認知度の高いメーカーや著名人による集客力を活かした、わかりやすいプロダクトや展示でした。
逆にファッションやライド体験など、「乗り手」にスポットを当てた展示は、前者と比較すると集客を得られていない状況のように見受けられました。

もちろんこのイベントに足を運ぶ人の多くはライト層なのでこういった方向に寄っていくことは理解できますが、つまりは自転車業界のマスが、“映え”とは正反対のベクトルに位置する世界──昔と変わらず機材好きをターゲットとした「ギークの世界」が色濃いということを再認識します。

ギーク世界はその中に入り込んでいる人にとっては居心地が良く、ある程度の規模感で回っていきますが、男性社会になりやすいことや、コミュニティに壁ができてマーケットを拡げるための取り組みがしづらくなるという問題があります。

だから、もし業界全体がこれから発展する方向へ向かうとすれば、それは「ギークの世界」からより社会に対して開かれた「映える世界」へ行くことは欠かせないことだと考えています。
それはただ良い写真を撮るということではなく、映えるために着るものに気を遣うとか、社会とのつながりを意識した走り方をするといった、人やライドそのものにフォーカスすること。

つまり“機材”と同等に“ファッション”が語られるようになり、また“レースでの勝利”と並行して“個々のライドスタイル”が重要視されるような世界です。

ランニングやゴルフがストリートに馴染むファッションや遊び方で社会とのつながりを深めたように、あるいはエクササイズ型フィットネスが優れた体験からライフスタイルに溶け込んでいるように、ロードバイクも映えるための素地は多く残されていて、今も少しずつですが状況は変わりつつあります。

時間はかなりかかるかもしれませんが、今僕たちは、そういった未来を見越してこの世界と携わっていく必要があると考えています。

 

今月のライド

最近のライドで、素敵だったものをご紹介。

Isadoreライド(稲城市)

10月に開催されたTOKYO WHEELS主催の“映える”イベント「Isadoreライド」に参加しました。
スロバキアのブランド“Isadore(イザドア)”のウェアを、参加メンバー全員が着用して走るスタイリッシュなイベント。

双子のMartin(左)とPeter(右)。スタイル良すぎて悶える

さらにIsadoreの創設者ヴェリトス兄弟と一緒に走れるという素敵すぎる企画。かつてグランツールで活躍した2人の走りを近くで見ることができます。

2人の走りを追いながら

Isadoreのように抜け感のあるウェアを着たサイクリストで構成されるライドはグルーヴ感がたまりません。

ヴェリトス兄弟が引退後、レースではないゆるい強度で走るときに着るウェアが欲しくて作られたIsadore。(それでも強度はホビーサイクリストよりも圧倒的に高い…!)
グランツール経験者が持つ、レースをリスペクトした機能性があり、そして季節感やトレンドを意識したデザインが相まって終始バイブス上がりっぱなし。

育児でしばらく引きこもっていたため付いていくことに必死でしたが、ライドリーダーの強度を上げすぎない配分のおかげで約60kmの道程を楽しむことができました。

ヴェリトス兄弟とRyuji

最後はクロスコーヒーで補給

ブランド縛りだったり一定のトンマナで揃ったライドはいつも幸せになれます。それは参加メンバーの走り方やライドに対する考え方といったスタイルも必然的に似てくるからなのだろうと思います。
こういったイベントは積極的に参加したいし、自分でもやりたいと思わせてくれる一日でした。

※TOKYO WHEELSによるイベントレポートはこちら
Cycle Sports2020年1月号でもIsadoreが特集されています。

Isadoreウェアのレビューを読む

 

今月のカフェ

お気に入りのカフェについて。

WOODBERRY COFFEE ROASTERS

Woodberry Coffee

用賀駅のすぐ近くにあるカフェ「WOODBERRY COFFEE ROASTERS」。
ラックもあってサイクリストフレンドリー。

エスプレッソ系のメニューが豊富で、あとは焼き菓子が少し。
レコード音楽が流れるとても心地の良い空間です。席の関係で、1〜3人でまったりするくらいがおすすめです。

 

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