まだ知らない道への入り口。
サイクリストの走る道に舗装路以外の選択肢が積極的に加えられるようになり、「オールロード」や「グラベルロード」という言葉が熱気を帯びて伝えられる昨今。その熱量は自転車機材だけでなくウェアにも波及し、特に今シーズンから本格的に従来のレーススタイルの枠組みから外れたラインナップが各ブランドから出始めています。
それらを代表するコレクションといっても過言ではないのが、MAAPの『Alt_Road(オルトロード)コレクション』。オルトロード(=新たな道/もう一つの道)の世界観からは、ひと目見て「あぁ、これから僕たちはこの方向に向かって走るんだ」と思えるほどのインスピレーションを受けました。それがどういった意味を持つのか、実際に着用して感じた詳細を見ていきたいと思います。
Review/Ryuji & Hiroko
Text & Photo/Tats
*本レビューのウェアはMAAP提供のものです。
1. Alt_Road Collection
アースカラーを基調として、どこかスチームパンクのような世界を感じさせる色合いのレイヤードスタイル。
オルトロードのコンセプトは、「モジュール化されたもうひとつのアパレルコレクション(Modular Alternate Apparel Collection)」というもの。この意味についてMAAPは多くを語っていませんが、これまでのMAAPの世界観を一新し、すべてを再設計したコレクションが構築されていることは明らかです。
スチームパンクのような世界観に衝撃を受ける ©MAAP
モジュール化されているのは、ジャージ・Tシャツ・ビブ・アウターといった各アイテム。それぞれが同じカラーパレットと目的機能で統一されているため、どの種類やカラバリを組み合わせても、自分のスタイルに合ったオルトロードの世界観が構築されます。
今はグラベル/ダート/オープンロードといった道が選択できるように、機材もウェアもそれに合わせて好きなように選べるということ。オルトロードは、カテゴリの垣根を超える先進的なコレクションとして鮮烈な存在感を示しています。
それぞれの“オルトロード”スタイルとともに
2. オルトロードジャージ
Alt_Road LS Jersey(¥23,000)
オルトロードジャージの特徴
・メリノウールベースの柔らかさと保温性
・締めつけ感の抑えられたフィット
・深く収容力の高いバックポケット
・エモーショナルなカラーリング
コレクションの中核となる『オルトロードジャージ』。過酷な環境に対応するために配置された様々なパネルの切り替えが、色の配置と綺麗に調和しています。
生地に採用されたのは、「NATURALMATCH」という新たな機能性素材。合成繊維の伸縮性・耐久性と、メリノウールの通気性・吸水性を組み合わせた、少し厚みのある生地。
ほかのMAAPウェアと比べると締めつけ感は抑えられているので、柔らかく体にフィットして気持ちいい。
肌面は控えめの起毛具合。保温と通気のバランスを見ると、グラベルライドやスピードレンジ低めのライドに向いていると感じます。
ダボつきやすいサイドのウエストの生地を変えることで綺麗なシルエットが出る
メリノウールだと少しラフな着用感になることが多いけれど、この見え方はさすがのMAAPだなと思う仕上がり。
メンズのバーガンディカラーもエモい。シリーズキット以外の、普通のショートパンツでも合わせやすい汎用性のあるデザインです。
ポケットの位置は気持ち高めだけれど、深さがあるので収納力は十分。
丈夫な生地なので、グラベルライドで必要なミニポンプといったちょっとしたツールも入れやすい。
男女それぞれの体型に合わせてシルエットは異なる
3. オルトロードサーマルベスト
Alt_Road Thermal Vest(¥20,000)
オルトロードサーマルベストの特徴
・内側がモコモコした起毛素材
・撥水加工で悪天候に対応
・MAAPロゴが控えめ
・バックポケットあり
暖かくドライな状態をキープする、『オルトロードサーマルベスト』。
高機能ウェアに使われる温度調整素材「Polartec Alpha」と防風素材を組み合わせ、DWR(耐久性撥水)加工を施すことで、雨風を防ぎながら通気性を高めたハイエンドアウター。
オルトロードジレの一番の特徴が、内側のモコモコした起毛。保温性が高く、ジップの開け閉めでメリハリのある体温調整ができます(←ここがめっちゃいい)。防風×保温がうまく機能して、閉めれば10℃程度の下り坂でも十分に温かい。
背面やサイドは伸縮性があり、汗抜けの良い素材。ポケットの収納力も十分なので、暑くなってもジレを常に着ていられるのが良い。
ジレも男女でシルエットを変えています。少しだけゆとりのある綺麗なフィット感なので、ジャージやジャケットに厚みがあっても窮屈に感じない。
表面の生地はシャリ感がある丈夫な素材(撥水加工)なのでガシガシ使えそう
バックポケットのリブにもMAAPロゴが入るディティールへのこだわり
折りたためばコンパクトに
グラベルロードの強度に最適化された保温性
4. オルトロードカーゴビブ
Alt_Road Cargo Bib(¥33,000)
オルトロードカーゴビブの特徴
・耐久性を重視した硬め&丈夫な生地
・ジッパー付きサイドポケット&リアポケットあり(ただし伸縮性は低い)
・厚めのパッドでサドル荷重OK
グラベルスタイルには欠かせないアイテムが、サイドポケット付きのカーゴビブ。オルトロードのカーゴビブが他ブランドと異なるのは、丈夫な生地・ジッパー付きサイドポケット・リアポケットの存在。激しい使い方を想定したつくりになっているし、ポケットのないTシャツを組み合わせても全然OK。グラベル/ダート/ロードすべてのシーンで使うことができる設計です。
MAAPのほかのビブ(Proなど)と比べると、全体的に硬め&丈夫な生地感なので、耐久性はあるけれど少しタイトには感じます。
苦しさはないのでサイズガイド通りでもOKですが、ゆとりを持って着たい人はワンサイズアップでもいいかもしれません。
生地は場所によって素材が使い分けてあります。前後は通常のビブにも使われるような、硬めの生地。
サイド部分はダートで転倒しても破れにくく、摩擦に強い生地。
パッドはTeam bibと同じくらい厚く、サドル荷重もしやすい。
路面からの振動に対応できるので、オフロードを含むロングライドでももたつかず快適に過ごせます。
←右サイドジップ付き/左サイトジップなし→
右サイドポケットはジップ付きなので、財布や鍵など貴重品を入れるのに最適。左はジップなしなので、スマホなどすぐに取り出して使いたいものを。
ただサイドポケットは耐久性を重視してか、他ブランドのカーゴビブと比較すると生地感がタイトになっています。そのため収納量は比較的少ない点は留意が必要です。
背面にも2つのポケットがあるので、サイドポケットの収容性の少なさはカバーできる
Alt_Roadのサイズ感
Ryuji(右) 169cm:ジャージ・ジレ・ビブショーツ すべてXS
Hiroko(左) 174cm:ジャージ・ジレ・ビブショーツ すべてXS
5. 時代をつくるスタイルと世界観。
MAAPの共同創業者であるOllieはオルトロードコレクションについてこう話しています。
ライダーたちが1つの分野に忠誠を誓う時代は過ぎ去りました。このプロダクトは、世界中のアスリートとライダーのニーズを反映し、どんな路面であれパフォーマンスを発揮できるように設計されています。
1つの分野に忠誠を誓う時代の終わり──これまでもLove Cyclistでは、走り方、自転車に対する考え方、ウェアリングなど、僕たちにはどんなことにも常に選択肢が与えられるべきだと考えてきました。
ウェアリングについては、ここ数年で既存の機能性ブランド以外の選択肢としてMAAPのような新たな価値観のブランドたちが存在するようになり、次はこうしたブランドがアパレル界をリードして、自転車の分野を越えた新しいスタイルを提案するフェーズに入っています。
その中で生まれた、グラベルウェアの真打ちとも呼べるオルトロードコレクション。細部まで丁寧につくり込まれたこのコレクションとともに、この先まだ知らない道へ積極的に挑戦していきたいと思わせてくれる力があります。
オルトロードがフィットするライド
・一定ペースで走るオープンロードライド
・積極的なグラベル/トレイルライド
・バイクパッキングなど荷物の多いライド
Review/Ryuji & Hiroko
Text & Photo/Tats